音楽/音楽と漫画(漫画・アニメ映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『音楽』とは、大橋裕之の『音楽と漫画』(太田出版)を原作とした岩井澤健治監督のアニメーション映画である。楽器を触ったことのない不良少年達が思いつきでバンドを組み、その魅力にハマっていくロック奇譚だ。「第43回オタワ国際アニメーション映画祭 長編コンペティション部門」グランプリ受賞。「アヌシー国際アニメーション映画祭2020長編部門」最優秀オリジナル音楽賞受賞。

『音楽/音楽と漫画』の概要

『音楽』とは2020年1月公開のアニメーション映画である。岩井澤健治が監督、脚本、絵コンテ、キャラクターデザイン、作画監督、美術監督、編集を担当した。大橋裕之の『音楽と漫画』と『音楽 完全版』が原作となっている。岩井澤監督は約7年半に渡り個人製作を行ない、作画枚数は4万枚超、すべて手描きで作成された。実写の動きをトレースするロトスコープという手法を採用しており、手描きの作画からは想像できないほどにリアルに動く。2015年にはクライマックスのフェスシーンのために「大橋裕介ロックフェスin深谷」を開催し、撮影した映像をもとに作成した。
不良少年の研二、太田、朝倉の脱力感漂う3人は喧嘩をするかゲームをするかの毎日を過ごしていた。ある日、ひょんなことからベースを手に入れた研二は2人にバンドをしようと誘う。音楽について何も知らない3人は音楽室から適当に楽器を運び、研二の家で初めて音を鳴らす。音楽の初期衝動を描いたロック奇譚である。

『音楽/音楽と漫画』のあらすじ・ストーリー

バンドを組む

不良高校生の研二は、世界最強の拳法といわれるマカロニ拳法の使い手と噂され、校内のみならず他校の生徒からも恐れられていた。学校では立ち入り禁止と書かれた教室で同級生の太田と朝倉とテレビゲームなどをしてゆるゆると過ごしていた。研二は下校中ひったくり現場に遭遇する。たまたま居合わせたバンドマンが持っていたベースを研二に預けて犯人を捕まえ、研二は預かっていたベースを勝手に持ち帰る。翌日、太田と朝倉に「バンドやらないか?」と言うと、2人は「楽器なんてできないぞ」と言う。研二は「だからこそいいんだよ」と言って2人を引き連れ音楽室から適当に楽器を持ち出し研二の家に行く。研二は盗んだベース、太田も音楽室から盗んだベース、持てるだけ持ってけばいいよといわれた朝倉はフロアタムとスネアドラムを研二の家で弾く。「よーし適当にいくぞ」と言い「せーの」で一音を鳴らすと、研二は「今のさあスゲえ気持ちよかった」と言い、太田と朝倉も同意する。そこから3人はひたすら音をかき鳴らす。翌日研二は、同級生で唯一研二達と仲良くしている亜矢に「これから俺たちのことはミュージシャンと呼びなさい」と言う。亜矢に演奏を聞かせ、バンド名は朝倉が提案した「古武術」に決まる。

研二バンドに飽きる

学校に「古美術」というバンドがあることを知った朝倉は「俺が古美術とかいうバンド名をやめさせてくるよ」と言う。すると研二は「その前にどんな音楽をやってるのか気になるな」と古美術を探すことにする。不良トリオが自分達を探していると知った古美術の3人は逃げるしか生きる道はないと思い、フォークソング部の部室で最後の演奏をしようとする。しかしそこへ研二がやってきて「君たちの演奏をぜひ聴かせてほしいんだ」と言う。演奏を聴いて研二は「すばらしい」「次は俺たち古武術の番だ」と言って研二の家に場所を移し演奏をする。演奏を聴いて古美術のボーカル森田は「ロックの原始的な衝動のようなかっこよさを感じました」と絶賛する。そして8月に古美術が出演予定のロックフェスに参加するよう勧める。研二は二つ返事で了承し、2人は握手を交わす。フェスへの準備が進む中で森田から、テープに録音して聴くと反省点が見つかるとアドバイスを受けた古武術の3人はそれを実行する。太田と朝倉は自分達の演奏を聞いて自画自賛しフェスへの自信をつけるが、研二は急に「俺バンド飽きた」と言い出す。それから研二は練習をしなくなるが、心配する森田に対して太田は「まあどうにかするよ」とフェスへの準備を続ける。一方、古美術は沿道で演奏をしながらチラシ配りをするが誰も興味を示さず素通りされ続ける。そんな状況に森田の演奏は激しさを増しギターをかき鳴らす。その様子に観客が集まり拍手が沸き起こる。

フェスに出演する

フェス当日、太田と朝倉は観客の多さに緊張しながら研二がなかなか来ないことに心配を募らす。その頃研二はベース片手に家を出たが、丸竹工業高校の大場率いる大場軍団が待ち伏せをしていた。フェスに行かせまいと邪魔をする大場の煽りに研二はベースを地面に叩きつけて壊す。そしておもむろにリコーダーを取り出し演奏を始める。大場軍団があっけに突れている隙にリコーダーの演奏をしながら不良たちをかわしフェス会場に向かって走る。フェス会場では金髪にサングラス姿に変わった森田ら古美術の演奏が始まる。フォークからロックへと変わった古美術の演奏は盛り上がりを見せていたが、森田のギターのベルトが外れてしまい、やる気喪失した森田は演奏を中断して激しく落ち込みながら退場する。そして研二が到着しないまま古武術の出番になる。逃げたい気持ちを抑え2人で演奏を始めようとすると、研二がステージに飛び込みリコーダーの演奏を始める。「1曲目終わり」と言うと太田と朝倉に声をかけて3人での演奏を始める。その演奏を落ち込み座り込みながら聴いていた森田は立ち上がりステージに飛び込み参加する。それを見た古美術の他の2人も参加し6人での演奏になる。観客は体を揺らして盛り上がり、会場まで追いかけてきていた大場軍団も口を開けて見とれてしまう。最後に研二は高くジャンプをした後、泣きながらシャウトし、フェスは大成功に終わる。
後日バンドは解散し、教室では研二と亜矢がいい感じの雰囲気になる。それをこっそり見ていた太田は、朝倉からバンド再結成の話をされて「今日聞けばオッケーだよ」と言う。そこへご機嫌にスキップをしながら亜矢が出てくる。それに続き、バンザイをしながら研二が駆けてゆく。

『音楽/音楽と漫画』の登場人物・キャラクター

古武術

研二

CV:坂本慎太郎

本作の主人公で、校内のみならず他校の間でも有名な不良高校生。マカロニ拳法の使い手と噂されているが、本作で喧嘩のシーンは一切ない。ぼーっとした表情で、何を考えているのか分からない雰囲気を持っている。同級生の太田と朝倉とつるんでおり、リーダー的存在である。ひったくりを追いかけるバンドマンからベースを預けられ、そのまま持ち帰ったことをきっかけにバンドしようと思い立ち、古武術を結成する。ベースとリコーダーを担当する。しかし飽きっぽい性格で、バンドを始めようと言い出したわりにすぐに飽きたと言ってバンド活動を放棄する。

太田

CV:前野朋哉

研二の不良仲間。リーゼントヘアに吊り目でいかにも不良といった雰囲気だが、根は素直で真面目な様子が伺える。たまたまボクシングジムを見学したら翌日にはサンドバックを叩いていたり、バンドを始めたら研二が飽きてもフェスに向けて練習を続けたりチラシを貼ってまわったりする。3人の中では唯一、多少の音楽の知識がある。そして、古武術の3人の中で唯一たばこを吸わない。ベースを担当する。

朝倉

CV:芹澤興人

研二の不良仲間。学校では常に本を読み口数は少なく物静かな雰囲気だが、古武術というバンド名を命名したり、古美術の存在を知った時は「そのバンド名辞めさせてくるよ」と言うなどたまに発する言葉にパワーワードが多い。ドラムを担当しているが、フロアタムとスネアドラムの2つだけで練習している。

古美術

森田

CV:平岩紙

研二と同じ学校のフォークソング部に所属しており、ギター兼ヴォーカル担当。最初は他の学生同様、研二達に怯えていたが、それぞれの演奏を披露して以来意気投合した。家には3万枚くらいのCDがあり、本人曰く、「音楽だけがとりえで真面目そうに見えるが勉強も全くできない」ぐらいに音楽に没頭している。フェスのチラシ配りの際に弾き語りをしたが、誰も見向きもしないことをきっかけにフォークからロックへと転身する。フェスで金髪になるが後日黒髪に戻る。

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