音楽/音楽と漫画(漫画・アニメ映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『音楽』とは、大橋裕之の『音楽と漫画』(太田出版)を原作とした岩井澤健治監督のアニメーション映画である。楽器を触ったことのない不良少年達が思いつきでバンドを組み、その魅力にハマっていくロック奇譚だ。「第43回オタワ国際アニメーション映画祭 長編コンペティション部門」グランプリ受賞。「アヌシー国際アニメーション映画祭2020長編部門」最優秀オリジナル音楽賞受賞。

バンドでのドラムは一般的にドラムセットが使用される。ドラムセットのことやその演奏者(ドラマー)をドラムスと呼ぶこともある。ドラムセットは5種類のドラムと4種類もしくは3種類のシンバルで構成されているが、朝倉は音楽室から楽器を持ち出す際にフロアタムとスネアドラムという2種類のドラムのみを持ち出し使っていた。しかしフェスではドラムセットが揃っていたのでシンバルも叩いている。もともと音楽の経験も知識もなく、各々が自由に弾く即興スタイルだったので問題ないようだ。

『音楽/音楽と漫画』の名言・名セリフ/名シーン・名場面

研二「だからこそいいんだよ」

研二が太田と朝倉に「バンドやらないか」と言った際、楽器なんてできないという2人に対して研二は「フッフッフ」と笑い「だからこそいいんだよ」と言う。研二も音楽の知識はなかったが、初期衝動の重要性を分かっていた。この作品のメッセージとも言えるセリフだ。

ビートルズ『アビイ・ロード』ジャケットパロディシーン

バンドを始めるにあたり、3人は音楽室から研二の家へ楽器を運ぶ。その道中のシーンが、ビートルズの最後のスタジオアルバムである『アビイ・ロード』のジャケット写真のパロディになっている。本家とは進む方向が逆だ。『アビイ・ロード』というアルバムタイトルはレコーディングスタジオがあったロンドンの通りの名前からきており、その通りを訪れてジャケット写真と同じポーズで写真を撮るファンも大勢いるほど有名な場所だ。発売当初は賛否両論あったものの最も賞賛されている作品である。

坂本町ロックフェスティバル

クライマックスである坂本町ロックフェスティバルのシーンは、作品作成のため2015年に「大橋裕之ロックフェスin深谷」を開催し撮影された映像をもとに作られた。それほど力の入ったシーンというだけあって、演奏シーンはとてもリアルで実際にフェスに行った時の昂りを感じることができる。実写の動きをトレースするロトスコープという手法により再現できた生々しさである。

『音楽/音楽と漫画』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

マイペースな3人

バンドをやろうと言い出した研二はすぐに飽きたと言って練習をやめてしまう。フェスも控えているのにどうするのかと心配する周りをよそに、太田と朝倉は冷静だ。「前にもワニを飼っていたがすぐに飽きて川に放したことがある」という朝倉は気にかけつつもいつもの事といった具合に落ち着いている。フェス前日になっても研二は2人の前に姿を現さないが、太田は「ケツでリズムをとっているのを見た」ので研二は来ると信じきっている。思わず聞き返したくなるようなエピソードばかりだが、平然とそれを受け入れる太田と朝倉も研二と同様に変で面白い。

実在するバンドの登場

フェスのチラシに載った出演者一覧には、原作者の大橋裕之や実在するバンドのオシリペンペンズ、ニーネ、GALAXIEDEADの名前が載っている。

独特な「間」が存在する本作

本作には独特な間がある。特に研二が喋り出す前は異様でシュールな間が多い。それについて岩井澤監督は「アニメーションって、動かすことが基本なので、“間“というものはまず存在しないんです。でも『音楽』ではそれをあえて大胆に用いることで、物語的にもメリハリが出せるんじゃないかって考えたんです。」と語っている。

岡村靖幸の出演

各方面から評価を得た本作だが、シンガーソングライターの岡村靖幸の使い方が贅沢だという感想も多く寄せられている。それはフェスのシーンで研二がシャウトする数秒間のみの出演だからだ。楽器も止まり観客が固唾を飲んで見守る中で研二が涙を流しながら叫ぶ姿に観客は引き込まれる。本作の最大の見せ場と言っても過言ではない。

『音楽/音楽と漫画』の主題歌・挿入歌

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