アオイホノオ(漫画・ドラマ)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『アオイホノオ』とは漫画家の島本和彦が小学館の漫画雑誌『ゲッサン』に連載している青春コメディ漫画と、それを原作としたドラマ作品である。1980年代の大阪を舞台に漫画家を目指す大学生、焔燃(ほのおもゆる)が若者特有の様々な誘惑や葛藤の中、プロの漫画家としてデビューし活躍する姿を描く。また1980年代当時の漫画やアニメが実名で登場している。2014年には柳楽優弥主演でドラマ化された。

ホノオモユル「かわいそうなあだち充、俺だけは認めてやろう!!」

あだち充『ナイン』にダメ出しをするホノオ

当時『ナイン』を連載していたあだち充だったがいまひとつブレイクしきれていなかった。ホノオはそれを野球漫画なのに野球の試合が出てこないことだと分析し、「かわいそうなあだち充、こんなに俺にとっては面白いのに、俺だけは認めてやろう」と漫画雑誌から切り取りスクラップしていた。
しばらくして『みゆき』の連載をはじめたあだち充をみて「俺だけのあだち充ではなくなった!!」とショックをうけたホノオだった。
今でこそあだち充と言えば『タッチ』や『ラフ』など大御所の漫画家感があるが、デビュー当時の評価が分かる貴重な名ゼリフである。

キャプテンハーロック「男には時々何をしても全く駄目な時があるのだ」

ホノオ(左)に励ましの言葉をかけるキャプテンハーロック(右)

しばしば何事もうまくいかないことが多いホノオの強い味方になってくれるのが松本零士作のキャプテンハーロックである。
ハーロックの「男には時々何をしても駄目だという時があるのだ。そういう時、男はな酒でも飲んでひっくり返って寝てればいいんだ。」いうセリフに幾度となく救われてきたホノオだった。
その後ホノオは「自らのやる気が出るのを待つ」という主人公にあるまじき期間に入る。これもハーロックの教え通りだったのであろう。

MADホーリィ「車田正美のベタを見習え!!」

MADホーリィ(左)の言葉に吹き飛ばされるホノオ(右)

ホノオはSA社に学園ギャグマンガ『必殺の転校生』を送った。ホノオに担当編集者であるMADホーリィはホノオの根本的な問題点として、「車田正美のベタを見習え」とアドバイスする。ホノオはそれをベタ=黒塗りのことだと理解し、自分の根本的な問題点が黒く塗れば解決できるものなのか、「ひょっとしてバカにされてるのでは」と不信感を抱く。
それはホノオの完全な誤解で、MADホーリィの言うベタとは「ベタベタな演出」のことであった。ホノオの作品は熱血漫画でありながら、その照れくささからギャグに逃げているとMADホーリィは感じていた。そこで車田正美の男気とエンターテインメント性を、恥ずかしがらずに真正面から訴える姿勢を見習えと伝えたつもりだった。
のちに『北斗の拳』の担当編集者となる人物がモデルらしいMADホーリィらしいアドバイスであった。

あだち充の漫画『タッチ』内で和也が死んだことにショックを受けるホノオ

和也の死にショックを受けるホノオ

あだち充の名作『タッチ』では双子の弟である和也が唐突に事故で死亡してしまう。連載されていた少年サンデー編集部には問い合わせの電話が殺到したそうだが、何も知らずサンデーを読んだホノオも天地がひっくり返るぐらいの衝撃を受けた。
日本中がショックを受けたであろう漫画を表す名シーンである。

『アオイホノオ』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

ドラマ版『アオイホノオ』

後方左から矢野ケンタロー、赤井タクミ、山賀ヒロユキ、庵野ヒロアキ
前列左から森永トンコ、ホノオモユル、津田ヒロミ

ドラマ版『アオイホノオ』はテレビ東京系の『ドラマ24』にて金曜日深夜0:12 - 0:52に放送された。全11回。
監督・脚本は島本原作の映画『逆境ナイン』も手掛け、『勇者ヨシヒコ』シリーズ、『今日から俺は!!』など日本のコメディを代表する監督、福田雄一が担当している。主演は今作が連続ドラマ初主演、またコメディ初挑戦となる柳楽優弥がホノオモユルを熱演している。
またホノオのライバルとなる庵野ヒデアキを安田顕、赤井タカミを中村倫也、山賀ヒロユキをムロツヨシら個性派俳優が演じている。彼らの名前は原作では実名で登場していたが、ドラマでは下の名前だけカナ表記になっている。
物語は前半は原作通りだが後半やや駆け足になり、ホノオは漫画家としてデビュー、庵野たちもアニメーターとしての道を歩き始めるところで終わる。
原作者の島本や岡田斗司夫らが様々な役で出演したことも話題になった。

ドラマ『今日から俺は!』にドラマ版ホノオが出演

立ち読みをしていた三橋(左)に声をかけるホノオモユル(右)

2018年に大ヒットしたテレビドラマ『今日から俺は!!』の第3話においてホノオモユルが本屋の店員としてゲスト出演した。立ち読みをしていた三橋(演:賀来賢人)に向かって「僕も漫画家を目指しているんだよ、高橋留美子のようにちゃちゃっとタイミングだけで書くような漫画家にね」と相変わらずの理論を振りかざしていた。

漫画への情熱に溢れた新人漫画家が、締め切りに立ち向かう『燃えよペン』

島本和彦が1990年から連載していた漫画家炎尾燃(ほのおもゆる)を主人公としたコメディ漫画。
『アオイホノオ』が島本自身の大学生時代からデビュー前、デビュー直後を描いているのに対し、『燃えよペン』では新人漫画家、炎尾燃の奮闘を描いている。
炎尾の成長に合わせるように『燃えよペン』、『吼えろペン』、『新吼えろペン』と連載されていた。
『燃えよペン』の炎尾燃と『アオイホノオ』の焔燃と漢字は違うが読みが一緒の主人公は、島本曰く同一人物ということである。

ドラマ版『アオイホノオ』の主題歌・挿入歌

OP(オープニング):ウルフルズ「あーだこーだそーだ」

momomo6275
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