アオイホノオ(漫画・ドラマ)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『アオイホノオ』とは漫画家の島本和彦が小学館の漫画雑誌『ゲッサン』に連載している青春コメディ漫画と、それを原作としたドラマ作品である。1980年代の大阪を舞台に漫画家を目指す大学生、焔燃(ほのおもゆる)が若者特有の様々な誘惑や葛藤の中、プロの漫画家としてデビューし活躍する姿を描く。また1980年代当時の漫画やアニメが実名で登場している。2014年には柳楽優弥主演でドラマ化された。

『アオイホノオ』の概要

『アオイホノオ』とは漫画家の島本和彦(しまもとかずひこ)による自伝的漫画であり、青春コメディ漫画である。小学館の漫画雑誌『週刊ヤングサンデー』に2007年~2008年の間不定期連載されていたが、『週刊ヤングサンデー』の休刊後、小学館の漫画雑誌『ゲッサン』にて2009年から連載が開始された。またコミックスも発売されている。
2014年に第18回文化庁メディア芸術祭マンガ部門の優秀賞を受賞し、2015年には第60回小学館漫画賞一般向け部門を受賞している。

また2014年にはテレビ東京系列でドラマ化され、監督・脚本は『勇者ヨシヒコシリーズ』や『今日から俺は!』を手掛けた福田雄一(ふくだゆういち)が担当した。主役の焔燃(ほのおもゆる)をコメディ初挑戦の柳楽優弥(やぎらゆうや)が熱演し、安田顕(やすだけん)やムロツヨシらが個性的なキャラクターを演じている。またドラマには原作者の島本や原作に登場する岡田斗司夫(おかだとしお)らが出演したことも話題となった。

物語は大阪にある架空の大学「大作家芸術大学(おおさっかげいじゅつだいがく)」に通う主人公、焔燃(ほのおもゆる)が庵野秀明(あんのひであき)や赤井孝美(あかいたかみ)といった実力のあるクラスメイトとの確執、ホノオに好意を寄せる女性たちとの不器用な恋、そして自身の夢である漫画家を目指す姿が描かれている。

また1980年代に大きな社会現象を巻き起こした漫画やアニメといった、ポップカルチャー文化の空気を現代に伝える作品としても評価が高い。当時人気だった漫画家のあだち充(あだちみつる)や高橋留美子(たかはしるみこ)、車田正美(くるまだまさみ)や、アニメーターの宮崎駿(みやざきはやお)や富野由悠季(とみのよしゆき)らの作品をホノオが分析し語るシーンは読みごたえがある。

主人公の名前は焔燃だが原作漫画の中では読みやすいようにホノオモユルと表記されているため、記事中でもホノオと表記する。

『アオイホノオ』のあらすじ・ストーリー

雌伏の時期

漫画やアニメ界に新たなムーブメントが起きようとしていた1980年代初頭、大阪のはずれにある大作家芸術大学(おおさっかげいじゅつだいがく)に通う大学生ホノオモユルは、いつの日かひとかどの漫画家かアニメーターになってやろうと考えていた。当時漫画業界では高橋留美子の『うる星やつら』やあだち充の『ナイン』など絵が下手な新人漫画家の連載が多く始まり、ホノオは「漫画界全体が甘くなってきている」「今ならばいつでも俺もプロになれる」と根拠のない自信を持ちつつも、その自信があだとなり何も行動を起こさない毎日を送っていた。
ホノオの憧れのバトミントン部のトンコ先輩やしょっちゅう下宿に遊びに来る津田さんを相手に、あだち充の漫画や機動戦士ガンダムのアニメのどこがすごくてなぜ売れているのか自分なりの分析を解説することで、自分もやる気になればすぐにでもプロとして通用する作品が描けると豪語していたのだ。

ある日大学でパラパラ漫画を作るという課題が出され、ホノオも自信満々で作品を提出する。しかし同じクラスの庵野秀明(あんのひであき)の作品を見て、そのレベルの違いに衝撃を受ける。
ホノオのはあくまでもパラパラ漫画だったのだが、庵野の作品はパラパラ漫画でありながらすでにアニメーションだったのだ。
またグループで映像作品を作るという課題でも庵野たちの作品に打ちのめされたホノオは、アニメーターではなく漫画家になるべく自分の漫画を書き始める。

書き上げた作品を東京の小学館とSA社に持ち込んだホノオだったが、編集者からは特に何も言われず名刺だけもらって全く手ごたえのないまま大阪に帰ることとなる。
初めての漫画の持ち込みに挫折したホノオはアニメーション制作にチャレンジしようとするが1人では難しく、またやはりそこでも庵野たちの作品に打ちのめされてしまう。
自分にはやっぱり漫画だと思いなおしたホノオはあだち充の『ナイン』に影響を受け、次回作には学園漫画を描くことを決意する。次に自分が描き始めれば必ずプロになれると信じて、自分の魂がやる気になるのを待つのだった。

デビューに向かって

そのころ知らず知らずのうちにホノオを打ちのめしていた庵野たちは、大阪で開かれる全国SF大会の実行委員である岡田斗司夫(おかだとしお)らからオープニング用のアニメを制作してくれないかと誘いを受ける。セルのカラーアニメには膨大な時間と人手と予算が必要なため、気の弱い赤井は最後まで反対していた。しかし周囲から「本当にどうかしている男」と呼ばれる岡田はその財力にものを言わせ予算と人手も場所も用意して依頼してきたため、庵野たちは参加することにする。
長さ4分ほどのアニメーションだったが、製作にはおよそ4ヶ月を要した。8月に行われたDAICON3で公開された庵野たちのアニメーションは大喝采を受ける。多くのアニメ関係者からも絶賛され、あの手塚治虫もわざわざ控室を訪ねてきて感想を述べたという話にまたもホノオは打ちのめされる。

しかしホノオのもとには以前持ち込みをしたSA社の担当MADホーリィから電話が入り、また新作が描けたら送ってくれないかと催促を受ける。
俄然奮起したホノオは学園ギャグマンガを書き上げSA社に送るが、熱血をギャグでごまかすようなホノオの作品に、MADホーリィは「車田正美先生のベタを見習え」とアドバイスする。MADホーリィのアドバイスは、当時『リングにかけろ』で人気絶頂であった車田正美のベタベタな演出熱血展開を見習えというものだった。しかし「ベタ=黒塗り」と勘違いしたホノオは「黒く塗ればいいってことなのか?」「俺ってバカにされてる?「意味が分からない」とSA社から離れ、小学館の新人コミック賞に応募してしまう。
小学館でもホノオの作品はいったんはボツにされるが、新人編集者の三上(みかみ)の手により救い出される。そして最終選考まで残った末、佳作に選ばれる。
ついにプロデビューを果たしたホノオに、庵野はホノオの漫画が掲載された雑誌にサインを求めるのだった。

プロの漫画家へ

夢のプロデビューを果たしたホノオに初めての連載の仕事が訪れる。初めての連載は硬派で知られる漫画原作者、雁屋哲(かりやてつ)が原作を手掛ける『風の戦士ダン』だった。
代表作『男組』で知られる雁屋の原作は、現代の忍者であるダンが時の政府の要請を受け、敵忍者組織と戦うというハードアクション漫画であった。毎回送られてくる雁屋の重厚な原作をどうやって漫画にするか悩むホノオ。しかし「原作通りに描かなくてもいい」という先輩漫画家のアドバイスもあり、「原作をベースにパロディを描く」というスタンスで何とか描き上げるも、最後まで雁屋に怒られるのではとおびえながらの連載であった。

それまではプロの漫画家になってはいたものの、ホノオはまだ大学生であり大阪で作家活動をしていたのだが、担当編集者三上の勧めもあり大学を中退し上京することになった。
東京で生活し始めたホノオは、三上の勧めで新谷かおる(しんたにかおる)や細野不二彦(ほそのふじひこ)、石渡治(いしわたおさむ)ら先輩漫画家のアシスタントに入る。その中で彼ら仕事ぶりを見習ったり、技術を盗むなど漫画家としてのスキルを磨いていく。また原作付きの『風の戦士ダン』を描き上げたことで、苦手だったストーリーの組み立ても以前より上手くなっていた。
そして佳作を取ったデビュー作『必殺の転校生』をもとに、自身の代表作『炎の転校生』の連載を始める。

『アオイホノオ』の登場人物・キャラクター

大作家芸術大学

焔燃(ほのおもゆる/演:柳楽優弥)

本作の主人公。登場時は18歳の大学1年生で漫画家かアニメーターを目指す若者であった。バドミントン部のトンコ先輩や同級生の津田洋美(つだひろみ)に好意を持たれるなど大学生活を謳歌していたが、同級生の庵野秀明たちに刺激を受け、漫画家を目指すようになる。紆余曲折の上描き上げた漫画が小学館の新人コミック大賞で佳作入選し、プロの漫画家としてデビューする。
漫画やアニメの分析をオリジナリティあふれる視点で語ることが多い。そういった作品にしばしば打ちのめされるが、はたから見ると意味不明な自信を持ち、己の路をまい進する不屈の男でもある。

高橋(たかはし/演: 足立理)

ホノオの同級生。学内では常にオリジナルヒーロー(決して仮面ライダーではない)のマスクをかぶっている。ホノオの周りではいち早くビデオデッキを購入し、見せびらかすために大学にも持ってくる。
ピンクレディーのミイちゃん似の彼女がいる。

岸本(きしもと/演:大水洋介/ラバーガール)

ホノオのクラスメイト。愛称のきっちゃんと呼ばれることが多い。常にマントを着用している。ホノオと同じく漫画家を目指しており、一緒に東京へ持ち込みに行く。

ジョウ

ホノオのクラスメイト。本人も漫画家を目指しており、ホノオのことをライバル視していた。

タムタム

momomo6275
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@momomo6275

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