着たい服がある(漫画)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『着たい服がある』とは、常喜寝太郎(つねき ねたろう)によるロリータファッションを題材にした日本の漫画。『Dモーニング』で2018年から連載された。
主人公の小林マミはクールな顔立ちに高身長というモデル体型だ。周囲から「かっこいい」「クールな女性」と評価され、それを求められるがマミの好きな服はロリータファッションだった。本当の自分と周囲からの期待の差に悩んでいる時、派手で奇抜なファッションを堂々としている小澤と出会う。小澤に憧れ、周りとぶつかりながらマミが「本当の自分」を見つけていく物語。

『着たい服がある』の概要

『着たい服がある』とは、常喜寝太郎による社会派ロリータファッション漫画。モーニングの公式WEBサイト『Dモーニング』で2018年39号から2019年32号まで連載された。
自分らしく生きる姿や、個性的なファッションが話題を呼び『文化庁メディア芸術祭の審査員推薦作品』にも選出された。また、ロリータやパンクを扱っているファッションマガジン『KERA』が全面監修したことでも話題になった。

主人公の小林 マミ(こばやし まみ)は宝塚の男役のような顔立ちをしている。クールな顔立ちに高身長で、周囲からは「かっこいい服が似合う」と評価されている。しかし、マミが好きなファッションは可愛らしいロリータファッションだった。そのことを誰にも言えず、本当の自分と周囲からの評価の差に悩んでいた。
そんな時、アルバイト先で小澤(おざわ)と出会う。小澤はイケメンではあるが、ファッションがあまりにも奇抜で、周りからは「顔はいいのにもったいない」と言われている。しかし小澤は「自分が着たい服を着る」を信念にしており、周囲からどれだけ冷たい目で見られようとも堂々としていた。その姿に惹かれ、「自分もこうなりたい」と強い憧れを抱くマミ。
本当の自分と、社会からの目、周囲との関係を通しながら自分自身を探していくマミの物語。

『着たい服がある』のあらすじ・ストーリー

マミと小澤の出会い

マミはクールな顔立ち、高身長というモデル体型の女性だ。小さい頃から可愛いものよりかっこいいものが似合うと周囲から言われ続け、友人の前で花柄のスカートを履けば「マミはスリムなジーンズが似合うよ!」と言われるほどである。
しかしマミ自身は可愛いロリータファッションを愛しており、友人にも家族にもこのことは言えず、ロリータ服もマミのクローゼットの中でひっそりと眠っているだけだった。時折、家族がいないタイミングを見計らい、部屋でこっそりとロリータを楽しむマミ。本当は外にも着て行きたいが友人に会ったり、周りから「似合わない」と笑われることに恐怖を感じていた。

ある時、マミのアルバイト先のカフェに、姉妹店からヘルプとしてアルバイトの小澤が入ってくる。
小澤はイケメンと呼ばれる部類の顔立ちをしており、他のアルバイトの女性も「小澤くんって彼女いるのかな?」と早々に話題になっていた。しかし、シフトを終えて小澤が私服に着替えると周囲の人間は驚きで固まった。
なぜなら小澤の私服は、派手で奇抜そのものであり大方の人は引いてしまうようなファッションだったからである。
それでも小澤は堂々と誇らしげに「お疲れ様でした」とバイト先を出ていく。他のアルバイトの女性や、店長は「何あのファッション…」「イケメンなのに勿体無い」と嘆いている中、マミだけは「自分が着たいものを着ていてかっこいい」と感じていた。

翌日も小澤は派手な服を着てバイト先へ出勤してきた。店長が「せっかくイケメンなのにそんな服勿体無いよ」と小澤に言うと、小澤は「自分が着たいものを着てる時が1番気持ちいい」と言い返す。
それを聞いたマミは「私もロリータを着て、お姫様のようにカフェでレモンティーを飲んでみたい」と思うようになる。
意を決してマミはネットカフェでロリータに着替え、外に出ようとする。しかし、部屋から出た途端、周りからの冷ややかな目を感じた。さらには「よくあんな格好するよな」「私は着れないわ」という声も聞こえてくる。心が折れそうな時、偶然小澤と出会う。そして小澤が「いいっすね」と褒めてくれたことにより、マミは「着てよかった」と思えた。

ネットカフェでの一件があり、マミはもっとロリータを着て外に出たいという欲が強まっていた。
ある日、星空公園(ほしぞらこうえん)でロリータが集まる「お茶会」が開かれることを知る。参加したいと思うマミだったが、「家族にすらロリータのことを話せていない私なんかが、ロリータを着ていいのか」「可愛い人たちしかいない空間へ行っていいのか」と悩んだ末に参加を見送る。
しかし、そのことを相談した小澤に「ロリータを着ている小林さんは可愛いです」と言われたことにより、バイトを抜け出してお茶会に向かう。残念ながらマミが着く頃にはお茶会が終わっており、がっかりするマミ。
そんなマミの姿を写真で撮る人物がいた。それがロリータファッション雑誌『KERA』編集長・近藤 義朗(こんどう よしろう)だった。近藤は「今度もし原宿で会ったら、ゆっくりストリートスナップを撮らせてね」とマミに声をかけてきたのだった。

それから数日後、友人のみなよからメッセージが届く。
みなよとはロリータファッション仲間で、以前みなよのロリータファッションを馬鹿にし、盗撮しようとした男性からマミが守ったことからメッセージのやり取りをするようになった。
そのみなよから「原宿でKERAがストリートスナップの撮影をしていて撮ってもらいました。マミさんも来ませんか?」というような内容のメッセージを受け取ったマミは、勇気を出してロリータを着て原宿へ向かう。
原宿を歩いていると、着なれていないせいかスカートのフリルが子供に当たってしまう。マミが「すみません」と謝ると、子供の父が「そんな服を着るな」と言わんばかりの視線をマミに投げかけながら去っていく。マミは落ち込んだままみなよと合流すると、そこには近藤もいた。近藤はマミの顔を見るなり「表情が固いですね。まだ周りからの目が怖いですか」と言われる。そこでマミの脳内によぎったのは、小澤からの言葉だった。小澤から「ロリータを着ている小林さんは可愛いです」と言われたことを思い出すと、少しずつマミは笑うことが出来た。
写真を撮られながらマミは「ロリータを着て外を歩くことが出来て嬉しい」と感じていた。

教育実習先での出会い

マミは小学校の教員を目指しており、母校で1ヶ月間教育実習を行うことになった。
マミを指導する須藤(すどう)と、教頭の小日村(こひむら)と出会う。小日村は先日、マミがストリートスナップを撮られに原宿へ行った際に、スカートのフリルをぶつけてしまった子供の父親だった。初日で小日村から「ロリータを着ていただろ」と言われなかったことから、マミは小日村が自分のことを覚えていないと思っていた。

マミは須藤と共に1つのクラスを担当することになる。そこで武下 装太(たけした そうた)という大人しい男子児童と出会う。
武下はとにかく協調性がなく、意欲的でもない。挨拶も返さず、夢を書く作文も「普通に中学へ行って高校へ行って大人になります」と2行ほどで終わらせていた。それを見たマミは「まだ夢がないなら中学でやりたいこととか書いてみたら?」とアドバイスするが武下は無視。また須藤にも「親御さんが作文を楽しみにしてるんだから、無理矢理にでも夢を書かせないと駄目よ」と注意される。それでもマミはそれが武下の個性だと思い「大きな声で挨拶できなくても、夢がないのも武下くんの個性だと思うんです」と反論する。須藤は「そんな人いないでしょ。引きこもりとか?」と言ったことから、マミは「ロリータ…とか」と言ってしまう。
するとその会話を聞いていた小日村から「それは君自身のことだろ。ロリータなんか周りに迷惑をかける服を着て恥ずかしい」と、言われるマミ。そして小日村から「ダメな自分を武下と重ねるな」と言われてしまうのだった。

翌日、朝早く教室へ行くと武下がいた。武下はお花の水やりをしていた。マミはそこでロリータの服を着ている自分を見せて「先生もお花好きなんだよ。頭のところにお花つけてるでしょ」とロリータファッションを説明した。武下は「ふーん」と言っていたが、秘密を共有したことで少しだけ武下の「花が好き」という心が見えた気がして嬉しくなるマミ。
しかし、その後の卒業制作の時間に事件は起こる。
クラスの中で生徒たちが分かれ、自分の顔を彫刻で彫ったり折り紙の輪っかを作る時間になった。他の男子児童が「武下、お前やる気ないなら折り紙やってろよ」と言われたことで、武下は折り紙を始める。マミも武下のそばで折り紙を折っていると、須藤が「武下くんもみんなと彫刻したいよね」と無理やり武下をクラスの輪に入れようとした。
そのことで武下は怒り「みんなで仲良くなんて気持ち悪いんだよ!勝手にやる気ないって決めつけるな!」と暴れて彫刻を壊した。

放課後、武下の母親が謝罪に来た。そこで須藤は「子供がしたことなので気にしないでください。でも、武下くんはちょっと自尊心が高いみたいですね」と言って、武下の母親は謝り続けていた。
須藤がいなくなった後、マミは武下と母親に「武下くんは毎日花に水やりをしていました。それに折り紙も文句も言わず作っていました。自尊心が強くたって悪くないし、そのままでいて欲しいです」と力説した。それは個性を潰されそうなマミだからこその言葉だった。それを聞いた母親は涙し、マミへお礼を言った。

マミが教育実習を終えて学校を去る日、児童たちから寄せ書きをもらった。寄せ書きの半分を埋めるほど武下からマミへの感謝が綴られており、マミはロリータ以外にも宝物が出来たと喜んでいた。

マミの家族、そして小澤との別れ

ある時、マミはバーでカヤという女性に出会う。
カヤもロリータを着ており、他の男性客から「こんな服でバーに来てんじゃねぇよ」と悪態をつかれていた。しかしカヤは「私が着たい服着て行きたいところ行くんだよ」と反論。その姿を見ていたマミは「服をバカにされたら自分自身を馬鹿にされたみたいで嫌ですよね」と声をかけるが、カヤは「服は服、自分は自分。ロリータに着られてるんじゃなくて、あんたがロリータを着るんだよ」と言われてしまう。
その言葉にハッとさせられ、カヤの堂々とした姿に感銘を受けるマミ。そして、この出会いから2人は友人となる。

ある時、マミがロリータファッションをしていることを知ったマミの母が、ショックから家出してしまう。
妹のクミと町中探したが見つからず、数日後に家に戻ると母が帰宅した形跡があった。数時間後には母も帰宅し「急に家を出て行ってごめんなさい。それからロリータファッションにも理解ができないなんて言ってごめんなさい」と謝ってきた。その後、クミの提案でマミは母とロリータファッションの店へ行くことになった。
次の休日、母とマミはロリータファッションのお店に来ていた。マミを理解したい気持ちから母はロリータを着てみるが、何一つ可愛さが分からないことに涙する。そんな母の葛藤を知ったマミは「理解できないままでいいから、こんな私をこれからも愛してくれる?」と聞くと、母は「もちろんよ」と言って2人は和解した。
こうして母はロリータのことは分からないまま、それでもロリータが好きなマミの母親で居続けることを約束した。

数日後、マミはカヤとロリータを着てショッピングを楽しんでいた。そこでカヤがバーのマスターを好きなこと、そしてマスターがロリータファッション好きではないことからカヤは「いつかロリータをやめる」とマミに話して別れた。
カヤがロリータをいつかやめることにショックを受けていると、偶然小澤と出会う。
小澤は来月から就職する予定の店に訪れており、それだけではなく小澤は「海外へ行って服のバイヤーをする」という大きな夢を持っていた。ファッションにも詳しく、大きな夢がある小澤に圧倒され「自分には何もない」と落ち込むマミ。また小澤が「服に集中したいから恋人はいらない」と言ったことから、告白する前から彼女になれる可能性が途絶え、マミは絶望した。

気持ちが落ち込んだまま、老人ホーム・つくしの苑(つくしのえん)の介護体験に訪れるマミ。
そこで入居している老人たちから「小林」という名前ではなく「若い子」と呼ばれたことから、より「自分には何もない」ことを痛感するマミ。しかしそれはマミも同じで、入居者を全て「利用者さん」と呼んでしまっていた。そのことに気づいたマミは、利用者一人一人と会話をし名前や好きなもの、個性を覚えて接していく。その結果、利用者からも「小林さん」と呼ばれるようになってやりがいを感じていた。
そんな中でも利用者の1人である田中(たなか)という女性が気になっていた。田中は部屋に篭りっぱなしで、施設のイベントにもあまり顔を出さない。そして、田中には若い頃婚約者を亡くした過去があり、それもあって部屋に篭りがちなのだとマミは知る。
介護体験の最終日、出し物としてマミはロリータを着てファッションショーを行う。利用者から「可愛いよ小林さん」と褒められ、マミの出し物は大盛況に終わった。
そして今までのマミのひたむきさや、その姿を見た田中は「あなたから刺激をもらったわ」とマミに感謝して、部屋の外へ出る決意をした。

小澤が服の買い付けのために海外へ行くことを知ったマミは、空港まで小澤を見送りに行く。
そこでマミは「小澤さんには大きな夢があって、私には何もないと思っていたけど、色んな人との出会いで自分と他人を比べるものじゃないと知った。私は今の自分に満足している」と小澤に今までのお礼と、今の自分の気持ちを伝えた。小澤は「なんか勇気もらいました。ありがとうございます」と言って、マミとまた会う約束をし別れた。

マミのモデルデビューと小澤の過去

老人ホームで行ったロリータファッションショーが利用者の家族に動画を撮られており、それがSNS上で拡散されマミは話題の存在になっていた。
動画に対して「感動した」「ロリータ着てる子可愛い」などの肯定的な声もあれば、「ロリータ着慣れてなくてダサい」「話題集め」というような否定的な声もあった。マミの耳にもそれは入っており、「どんなことを言われているんだろう」と眠れない日々を送っていた。
そんな中、近藤から「スフレソングのモデルを務めてほしい」と電話がかかってくる。スフレソングとは、『KERA』が日本進出を手伝っている中国のロリータファッションブランドだ。
近藤はありのままで生きるマミこそ、スフレソングのモデルにふさわしいと思って声をかけたのだった。マミは「身の丈に合っていないから」とその誘いを断る。
そして冬休みの間、高校で指導のボランティアを行うことにした。それでも近藤からの誘いを忘れられず、マミはモデルの依頼を引き受ける。

モデルの撮影の他に、テレビ番組のインタビューまで受けることになったマミ。
緊張しながらもありのままの自分を曝け出し、そしてロリータへの愛を語り、自分らしさを表現していく。忙しい合間を縫って高校のボランティアにも顔を出し、バスケ部の指導もしていた。
そんな中、バスケ部の部員・本堂 翔太(ほんどう しょうた)と出会う。本堂は「今バスケを頑張っても未来に活かせるわけじゃないし」と悟り切った男子高校生だ。マミは本堂にも「本気でバスケやっていこう!」と励ますが、本堂は「一生懸命やって何になんだよ」と諦めている。本堂はマミのSNS上でバズったロリータファッションショーにも「俺この人の指導受けてるけど、ボランティアのくせに熱血すぎてうざいよ」と悪口を書いていた。
ある日、本堂はテレビでマミのロリータインタビューを目にする。そこでマミは「昔は何も取り柄がなくて、自分を普通とか特別というあやふやな物差しで測っていた。だけどロリータが好きという個性を見つけて、これからの子供たちにも自分の気持ちを大切にして欲しい」と語った。その姿を見た本堂は「綺麗事だ」と思いながらも心につっかえていた。
本堂も参加するバスケ部の練習試合、本堂は「そこそこでいい。バスケなんか一生懸命やってなんになる。俺は普通なんだから」と思っていた。試合も押され、本堂達のチームが負ける流れになっている。しかし、敵チームの1人から「もう諦めろよ」と言われたことで本堂の気持ちが溢れる。
本堂は「普通の俺でも足掻いてやる!」と初めて懸命にプレーをした。結果は負けだったが、マミからも励ましを受けて「なんの取り柄がない普通の俺でも一生懸命に頑張れた」と前向きに思い始めていた。

一方、小澤は海外から日本に戻ってきていたが、自分が選んで買ってきた服を客に馬鹿にされたことから自信を無くしていた。
そんな小澤と再会したマミは「小澤さんから勇気をもらったから、私も小澤さんを支えたいです」と小澤を励まそうとするが、小澤は「俺は昔いじめられていて、変わった服を着れば強くなれた気がしていた。それだけのことで、小林さんに勇気を与えたつもりはない」とマミを突き放す。
マミは泣いて帰宅。翌日バイト先に行くと、小澤の上司であるボスが店に来た。そこでボスから「自分が納得できる服を買えなかっただけ。小澤とこれからも仲良くしてくれ」と頼まれる。マミは「今まで小澤さんが仕入れた服で、幸せになった人がいるはず」と思い、ボスに「小澤の仕入れた服を買って、喜んで着ている人たちの写真を集めよう」と提案する。

そんな中、小澤は偶然街中で昔のいじめっ子に遭遇する。しかしいじめっ子たちは「小澤をいじめたこと」をすっかり忘れており、悔しさで小澤は「服を着れば強くなれると思っていたのに、俺は今まで何と戦ってたんだ」と今まで愛していた服たちを捨てていた。それを知ったマミは、小澤が捨てた服を回収し「私の中にはこんな素敵な服を着た小澤さんがいるんです!」と服を見せて力説した。
小澤は「他人を信用できないのに、またいじめにあった時のように、自分の周りから人が離れていくのが怖い」と心の寂しさをマミに吐露する。マミは「私はどこにも行きません」と小澤に宣言すると、小澤は泣き崩れた。

次の日、小澤はボスへ謝りに店へ訪れていた。そこで世界的に有名なアーティストであるリリー・マディソンと遭遇する。リリーは派手なファッションでも知られており、小澤が買い付けた服を気に入って買っていた。
そしてボスから「お前の服を買って喜んでいる奴がいる」と、小澤が仕入れた服を買って幸せそうに着ている人たちの写真を見せた。ボスは「受け取り手がいて服は100%になる。お前は自分が孤独だっていうが、服っていう繋がりがあるんだぞ」と言葉をかけた。

小澤はマミの卒業式に訪れ、今までのお礼として髪飾りをプレゼントした。そして「あなたのために着たい服があります」と告白。それを受け入れ、マミは今まで出会った友人たちと門出を祝った。

その後のマミと小澤

春になり、マミは小学校教員になっていた。
ある時、髪を茶髪に染めてきた男子児童がいた。「校則にも書いてないし、なんで茶髪がダメなんだよ」と怒る男子児童に「どうして茶髪がダメなのか」と、その理由を分かりやすく、そして個性を潰してしまわないように話すマミ。自分もロリータを着ていること、ロリータを着ていると周りから「異常だ」と思われること。だからこそ「私は私だ」と、周りの大切な人には包み隠さず接してきたこと。
それを話すと、男子児童は「俺も小林先生から信用されるように頑張るよ」と納得しているようだった。

カヤとマスターは結婚した。小澤は相変わらず海外で服の買い付けを行っており、定期的に日本へ帰ってきてはマミと会っていた。
物語の最後、マミはロリータを着て「着たい服が着られて幸せ」と言わんばかりの笑顔で、カヤとみなよに駆け寄っている。

『着たい服がある』の登場人物・キャラクター

主要人物

小林 マミ(こばやし マミ)

高身長でかっこいい顔立ちのマミ。

音羽大学(おとわだいがく)に通う4年生。かっこいい顔立ちに高身長というモデル体型をしており、小さい頃から周りからの評価は「クールな女の子」だった。
小学生の時、スカートを履いていったところ男子児童に揶揄われたことから、人前で可愛い服装することに恐怖心がある。
しかし、実際は大のロリータファッション好き。高校卒業と同時に貯めてきたアルバイト代でロリータを買い、部屋でこっそり着ては楽しんでいる。

周囲から「かっこいい」「宝塚の男役みたい」とクールさを求められ、本当の自分を曝け出せないことに窮屈さを感じていた。
そんな時、アルバイト先のカフェに姉妹店からのヘルプとして小澤が入ってくる。小澤はイケメンと称される顔立ちをしており、他の女性スタッフも「小澤さんって彼女いるのかな?」と早速気になっている様子だった。しかし、小澤の私服はあまりにも奇抜で、常人には理解し難いファッションだった。そのことから周囲の人間は「小澤さんって顔がかっこいいのに残念」と言っていたが、マミは「好きな服を好きなように着ていてかっこいい」と憧れを抱いた。

その後も小澤が「自分の着たい服を着ている時が1番気持ちいい」と言ったことから、マミも「私もロリータを着て出かけたい」と思うようになる。
そしてマミはロリータを着て、雑誌『KERA』で特集されていた、ロリータ達がレモンティーを飲んでいたCAFE FLOWERへ行こうと決める。ネットカフェでロリータに着替えて外に出ようとするものの、周囲からの冷ややかな視線や「何あれ…」という声に心が折れそうになる。そしてロリータを着慣れていないせいで、ネットカフェの棚にある雑誌を落としてしまう。自分の失態に恥ずかしくなり、「やっぱり出かけなきゃよかった」と涙が溢れる。
しかし、そこで偶然小澤に出会う。小澤はマミのロリータに引くことなく、「いいっすね」と褒めてくれた。それだけで自信がついたマミは、そのまま外に出る勇気は出なかったもののネットカフェでレモンティーを飲み「今の私にはこのくらいがちょうどいい」と一歩前進出来たことを誇らしく思っていた。

ある時、駅を歩いていると前の方にロリータを着ている女性が見えた。マミは「あの人もロリータ好きなんだ」と嬉しく女性を見ていると、見知らぬ男達が「あれ見ろよ、やばいファッションしてるよな。写真撮ってやろうぜ」と女性を盗撮しようとした。
マミは咄嗟に女性を庇い、男性達に「あなた達みたいなのがいるから、こっちは消極的になるのよ」と睨んだ。
男性達が去った後、女性はマミにお礼を述べた。そして女性は「こんなの着てるからああやって馬鹿にされるんですよね」と落ち込んでいた。そこでマミは自分もロリータ好きだと、ロリータを着た自分の写真を見せて「そんなことないです。好きな服を楽しめてる人が1番すごいんです」とロリータ好きを明かして励ました。
そこから女性と連絡先を交換し、初めてロリータ友達が出来る。これがみなよとの出会いだった。

ロリータを着て一度外に出られたことから、マミは「もっとロリータを着て外に出たい。人と交流したい」と思うようになっていた。そんな時、星空公園で行われるロリータ初心者達のお茶会イベントが目に止まる。
マミは思い切って行ってみようと一度は申し込むものの、当日が近づくにつれ「家族にもロリータのことを隠している私が行っていいのか。ロリータが似合っていないんじゃないか」という不安から、イベントをキャンセルしてアルバイトのシフトを入れる。そのことを知った小澤は「ロリータを着ている小林さんは可愛いです。シフトはなんとかするので、イベントに行ってください」と背中を押し、マミはバイトを抜け出し星空公園に向かう。
しかし、すでにお茶会は終わっていたため、そこに人はいなかった。がっかりするマミの姿を「本来の自分を見つけようと、もがいている白鳥のようだ」と表現し写真に撮る男性がいた。その男性こそ、雑誌『KERA』の編集長である近藤だった。近藤はマミに名刺を渡し、「今度はゆっくりストリートスナップを撮らせてください」と言って去っていった。

数日後、みなよから「原宿でストリートスナップを撮ってもらっています」というメッセージが届く。マミも「私も撮ってもらいたい」と勇気を出して、原宿へ向かいネットカフェでロリータに着替えた。
その道中、スカートのフリルが通りすがりの子供に当たってしまう。怪我はなかったものの、子供の父親は「気をつけなさい」とマミに対してもロリータにも嫌悪感を剥き出しで注意してきた。マミは謝るが、このことで再び周りからの目を気にしてしまう。
みなよと近藤と合流し、近藤に写真を撮ってもらう。先ほどのことから表情はこわばっていたが、小澤からの「ロリータを着ている小林さんは可愛いので自信を持ってください」という言葉を思い出すと、徐々に顔が綻んでいった。

マミは教育実習生として、母校である小学校で1ヶ月間お世話になることになった。
マミのことを指導するのは須藤。そして偶然にも先日、原宿で子供の顔にフリルをぶつけてしまった時の父親で、教頭の小日村と再会する。小日村はマミを見た瞬間、何も言わなかったためマミは「ロリータを着ていた自分だと気づいていない」と思っていた。
教育実習が始まり、須藤と共に1つのクラスを担当することになる。そのクラスで気になる男子児童がいた。武下である。
武下は挨拶も返さない大人しい子供で、クラスメイトとも交流がない消極的なタイプだった。将来の夢を書く作文でも「普通に中学へ行って高校へ行って大人になります」という趣旨の内容を2行だけ書いて済ませていた。マミはそれを見て「まだ夢がないなら中学へ行った時にやりたい部活のこととか書いてみたらどうかな?」と話しかける。それに対しても武下は無視。
授業後、須藤から「ああいう時は無理矢理にでも夢を書かせなきゃ。親御さんだってあの作文を楽しみにしてるのよ」と怒られるマミ。しかしマミは、武下が挨拶を返さないのも、夢がないのも「個性」だと思っていたため、「作文が書けない、そういうタイプの子もいると思うんです」と須藤に反論する。
須藤は「そんな人いる?」と受け入れていない様子だったため、マミは「例えば、ロリータ…とか」と自分の個性でもあるロリータを引き合いに出した。すると須藤との会話を聞いていた小日村が「それは君のことだろう」と会話に割り込んできた。小日村はマミのことをしっかり覚えていたのである。
そして小日村は「ロリータなんか着て恥ずかしい。君の恥ずかしい個性と武下を一緒にするな」と言われてしまうのだった。

小日村の発言により、ロリータ好きだと全教員の前で知られてしまったマミ。他の教員からも「ロリータの人ってお菓子が主食なんでしょ?」と揶揄われ、居心地の悪さから職員室を離れて教室へ向かった。
早朝の教室にいたのは武下だった。武下はクラス全員で育てている花に水やりをしており、マミに見られたことで少し動揺しているようだった。マミは「みんなお花のことなんか忘れてすぐ枯らしちゃうのに、武下くんが水やりをしてくれていたんだね。お花好きなの?」と話しかける。武下は「別に」と答えるだけだったが、マミはロリータを着ている自分の写真を見せて「私もこういう服が好きで、お花も好きなの」とロリータのヘッドドレスに付けられた造花を見せる。武下はマミがロリータを着ていることに驚きながら「ふーん」と返事をした。
武下のことが少し知れた気がして、マミは「このまま仲良くなれたら」と思っていた。
しかし、この後に事件が起こる。
卒業制作の一環として、自分の顔の彫刻と折り紙で飾りを作る時間が設けられた。武下は他の男子生徒から「やる気ないなら折り紙やれよ」と言われたことから、武下は折り紙を黙々と折り始める。マミも武下の隣で作っていると、須藤は「武下がみんなの輪に入りたいのに入れない」と思ったからか、「みんな!武下くんも輪に入れてあげて!」と半ば強引に武下をクラスの輪に入れようとした。武下はそれに怒り「みんなで仲良くなんて気持ち悪いんだよ!やる気ないって決めつけるな!」と彫刻を壊した。武下のことを知れたと思っていたマミだったが、まだまだだったと痛感し落ち込んでいた。

放課後、武下の母と武下、そして須藤とマミが話し合うことになる。
武下が暴れたことに関して、母親は「申し訳ございません」と謝っていた。須藤は「子供のしたことなので気にしないでください。小学校6年生なんて反抗期なところありますし…でも武下くんはちょっと自尊心が高いかな?」と周りと馴染めないことを指摘した。それに対しても謝る母親。マミは何も言えず、そのまま解散となった。
母親と武下が帰宅しようとしたところへ、どうしても武下自身のことを伝えたいマミは追いかける。そしてクラスで育てている花も折り紙も持っていった。マミは母親に「武下くんは、みんなが忘れて枯らしてしまうお花にも水やりをしていました。折り紙だって文句を言わずに折っていました。自尊心が高いなんて、そんなことありません。それにもし高くてもそれでいいと思います。私は武下くん自身そのものを尊いと思って欲しいです」と力説した。母親はこの言葉に涙し、武下もマミのことを信じ始めていた。
マミの教育実習が終わり、クラスの全員から寄せ書きをもらった。その寄せ書きの半分ほどを武下が埋めており「いつも僕に話しかけてくれてありがとう。お母さんも小林先生はいい先生だと言っていました。僕もそう思います。今やりたいことは花を育てること」と書いてあった。
マミはロリータ以外にも宝物が出来たと、寄せ書きを抱きしめて喜んでいた。

ある日の朝、妹のクミが原宿でのストリートスナップを発見し、マミの母に伝えたことから家族にロリータ好きのことがバレてしまう。
マミの母は「あんな服が好きなの?あんた全然似合ってない」とマミに言い放つ。マミは「でも、ロリータを着ている時だけ本当の私になれるの」と反論。母は「じゃあ今まで私たちと接してきたマミは嘘ってこと?」と聞かれ、マミは意地になっていたこともあり「そうだよ」と言ってしまう。
気まずいままバイトへ向かったマミは、バイト終わりに後輩からバーに誘われる。そこでロリータを着たカヤと出会う。カヤは他の酔った男性客に「そんな服着てバーに来るなよ」と言われても、「どこに何着ていくかは自分が決める」と強く言い返していた。マミは「服を馬鹿にされたら自分自身も馬鹿にされたように感じますよね」とカヤにフォローを入れたつもりだったが、カヤは「服は服、自分は自分だろ。あんたはロリータ脱いだら何もないの?」と言われたことから、ロリータを着ていない自分とは何かを意識し始めるマミ。
そしてカヤの言葉にハッとさせられたマミは、カヤと友人になる。
家に帰宅すると、母はお金を残し「数日出かけます」と置き手紙を残していた。落ち込んでいるクミと共に、翌日から母を探し始める。町中探したが見つからず、1日経ってマミたちも家に帰宅した。すると家事が済ませた状態だったので、クミと「母が帰ってきた」と喜んだ。母が戻ってくる前に、マミは小さい頃の自分をことをもっと知りたいと、離婚以来会っていない父へ連絡を取る。
夕方、新宿のカフェで父と落ち合った。マミは自分の高校のアルバムや、教育実習でのことを話した。父は喜んで聞いてくれ、さらにマミが小さい頃、父からもらったウサギのぬいぐるみを差し出すと喜んだ。父は「まだこれを持ってくれていたんだね。横須賀へ行ったときにマミが欲しいってねだるから買ったんだよ」と思い出を語った。父は「マミは小さい頃からビーズやフリルがついた服が好きで、マミが喜んでくれるからって似たような服を何着も買っちゃったな」と笑った。マミは「この出来事から私は可愛いものが好きになったんだ」と自分のルーツを知る。
カフェを出たところで、大雨が降っていた。マミはタクシーで一旦父と別れたが、再びロリータを着て父を追いかける。そして「私に可愛いものを教えてくれてありがとう」とロリータ好きの原点を作ってくれたことに感謝した。父は「マミは変わってないなぁ」と家族と過ごした時間を思い出し、涙をこぼした。
家に帰宅すると、母が帰ってきていた。そして「ロリータが似合わないなんて言ってごめんなさい」と謝罪。マミも「私もひどいこと言ってごめん」と謝った。
母はこの数日で「なんとかマミのことを理解したい」と思ったのか、無理にロリータを褒めたり認めようとしていた。クミの提案で一緒にロリータファッション店へ行き、母もロリータを着てみるが全く可愛さが分からず泣いてしまう。マミは「理解しようと思ってくれてありがとう。でも無理はして欲しくない。今までロリータのことを知らないまま20年間も私を愛してくれた。これからも同じように愛してくれる?」と母に聞くと、母は「もちろんよ」と答えてマミを抱きしめた。

ある時、カヤはマスターのことが好きで、マスターがロリータ嫌いであることから「いつかはロリータをやめる」とカヤはマミに宣言する。そのことを寂しく思っている時に、小澤にも「海外で服の買い付けをしたいから、恋人も友人もいらない」と大きな夢を語られ、小澤のことが好きだと自覚した瞬間に失恋してしまうマミ。また「小澤さんは大きな夢を持っているのに…」と自分には何もないことを感じてしまっていた。
マミは落ち込みながらも、介護体験の一環として老人ホームでの実習に入る。老人ホームでは利用者から「若い子」と呼ばれるのみで、より「自分がないから利用者さんからも覚えてもらえないんだ」と感じていた。一方でマミも利用者全員のことを「利用者」としか捉えていなかったことに気づく。
マミは改めて利用者一人一人と話すことで、それぞれの名前や個性、性格を掴んでいく。すると利用者たちも次第に「若い子」ではなく「小林さん」と呼ぶようになった。

利用者の一人に田中 こずえ(たなか こずえ)という年配の女性がいた。田中は落ち着いた女性で、コミュニケーションは人並みだが施設のイベントごとには顔をあまり出さないタイプで、いつも部屋に引きこもっていた。マミはその姿を心配し、何度か「外に出てみよう」と提案するが田中は「そうね」と言うだけで部屋から出ない。
また、カヤもこの老人ホームで日勤として働いており、カヤから「田中さんは昔に婚約者を亡くしている」と聞く。その出来事から、周囲との関わりに消極的であることを知るマミ。
マミは介護体験実習の最終日の出し物として、カヤに協力してもらいロリータファッションショーを開催する。それは大好きな利用者たちにありのままの自分を見て欲しいという気持ちからだった。利用者達は「小林さんに可愛い一面があるの分かってたよ」「お姫様みたいだ」と喜び、ファッションショーは大成功。
そしてマミのひたむきな寄り添いに心が動いた田中も家から出て、マミのファッションショーを見にきていた。田中は「小林さんから情熱と愛情を感じたわ、私も外に出てみるわね」と外に出る約束をマミとした。
後日、田中はマミのロリータを借りて亡き婚約者の墓参りに来ていた。マミとカヤも付き添い、田中の婚約者の墓を掃除して挨拶を済ませる。田中が外に出て婚約者と会えたことに安心しているマミに、カヤは「みんなあんたがいなくなって寂しがってるよ」と声をかけた。そして「大好きなあんたがロリータを着たからみんな喜んだんだよ」と、自分自身を好きになってもらえたことで、ロリータも受け入れてくれたことにマミは喜んだ。

マミは実習を終えて、アルバイト先のカフェに来ていた。小澤は海外での買い付けがあるため、アルバイトを既に辞めていた。するとバイト先に小澤の忘れ物があり、最後に小沢を一目見たいマミは忘れ物を持って空港に向かう。
小澤と再会し、マミは忘れ物を渡そうとするが、海外に行く今渡しても邪魔になるとマミが預かることになる。そしてマミは小澤と出会ってから「自分は自分、人と比べるものではない。そして自分らしさを見つけた今、とても幸せです」とロリータを着られている今を作ってくれた小澤に感謝を述べた。
小澤は「俺もなんか勇気もらいました。ありがとうございます」と返事をし、飛行機へと向かっていった。マミは見送った後で告白出来なかったことを思い出すが、忘れ物を渡すという名目でまた会えることを喜んでいた。

マミが家に帰ると、マミが老人ホームで行ったロリータファッションショーが利用者の家族によって撮影され、勝手にSNSに上げられていたことから拡散されていた。家族や友人は「可愛かった」と褒めてくれるものの、SNS上では賛否両論だった。
また、そのタイミングで近藤から電話がかかってくる。そしてスフレソングという中国発祥のロリータファッションブランドのモデルをして欲しいという依頼だった。マミは「身の丈に合わないから」と断り、高校でバスケ部のコーチのボランティアを始める。それでも近藤の言葉が忘れられず、「やっぱりモデルをさせてください」と改めて近藤に連絡をとった。

マミと近藤、スフレソングの社長・ヨウとスフレソングの撮影の打ち合わせが始まる。
ヨウは「どうしてこんな一般の女の子にモデルをやらせるのかしら」と当初は近藤がマミを推薦した意味を分かっていなかった。しかし、マミがスフレソングのモデル撮影や、テレビでのインタビューに対し素直に、そしてロリータの愛を語ったことで少しずつヨウもマミを認めていく、
マミがスフレソングのロリータを着て、原宿で撮影している時だった。マミは小澤のことを思い出し、愛おしさから涙を流してしまう。その姿が過去のヨウと重なった。ヨウも日本に来てロリータを追いかけているうちに、婚約者に振られ原宿で泣いたことがあった。
ロリータを着ていても生身の女の子。どんな女の子の涙にも笑顔にもロリータは寄り添っている。それを感じたヨウをマミを抱きしめ、「あなたのことが少し分かった気がするわ」とマミをモデルとして認めた。
スフレソングの撮影を行いながら、マミはボランティアで訪れているバスケ部の本堂のことが気になっていた。本堂は「勉強が最優先で、部活は程々でいい。どうせ普通の俺はプロのバスケ選手になれるわけないし」と悟ったような男子高校生だった。マミは「本気でバスケに向き合ってみようよ」と本堂に働きかけるが、本堂は「熱くなっても意味はない」と乗り気ではなかった。
しかし、本堂はマミがスフレソングというロリータを着て、テレビのインタビューを受けているところを目にする。そこでマミが「普通や特別なんかで自分を括らないで、個性を大切にして欲しい」と語っていた。それを見た本堂は本気でバスケの試合に向かうが、試合結果は負け。落ち込む本堂にマミは「試合中、本堂くんは本物のプレイヤーだったよ」と励ました。
スフレソングのモデルを終えた後、マミは近藤から「あなたの姿は人の心を動かす。本気でモデルを目指しませんか?」と誘われたが「教師になって個性を大切にすることを伝えたい」と感謝を伝えた上で断った。

小澤が海外から帰ってきたことを知ったマミは、小澤に会いにいく。しかし小澤は、自分が買い付けた奇抜な服を客に笑われたことから、バイヤーとしての自信を無くしていた。マミと再会し、マミが小澤を励まそうとするも「俺は今まで小林さんを助けた覚えもないし、勇気を与えたつもりもない」とマミを突き放す。
小澤はマミにいじめられていた過去を明かし、ただ強くなりたいから奇抜な服を着ていただけだったことも明かす。そして服と向き合えなくなった小澤は服を捨てるが、マミはそれを回収して「私に勇気をくれた小澤さんはこんな素敵な服を着てたんです!」と力説。それが小澤の部屋の前であったため、近所迷惑にならないよう2人は街へ繰り出す。
そこで小澤は「過去のいじめから人に心を開くのが怖い。心を開いてまた誰かが離れていったら…」と言った。マミは靴を脱いで「私はどこにも行きません」と強い意志を見せた。その言葉で泣き崩れる小澤。
またマミは「今まで小澤さんが買い付けてきた服で幸せになっている人がいるはず」と思い、小澤の上司であるボスに「小澤さんが買い付けた服で幸せになっているお客さんの写真を集めましょう」と提案する。実際にボスが、小澤へ買い付けた服を着て幸せになっている客達の写真を見せて、小澤はバイヤーとしての道を再び目指すようになった。

卒業式の日、小澤はマミの元を訪れていた。そして今までのお礼として、小澤は髪飾りをマミにプレゼントした。そこで小澤から告白し、2人は恋人同士になる。
春になり、マミは小学校の教師として働いていた。
ある時、男子児童の1人が髪を茶髪に染めて来ていた。男子児童は「兄がバントをしていて、髪も染めていてカッコよかったから染めただけなのにどうしてダメなんだ」とマミに問う。マミは「大人が子供を信用していないから。茶髪にすることで、先生たちは子供がこのまま不良になるんじゃないかって可能性を心配してるの。でもそれは先生たちも悪い」と説明する。その上で自身もロリータを着て周りを心配させたことや、ロリータを着ても自分は何も変わらないことを周りに証明し続けたと話す。マミは「茶髪でも黒髪でも中身は変わりない。自分らしさを見つけて個性を楽しんで欲しい」と男子児童に話した。頭ごなしに否定されなかったからか、男子児童も心を開き「俺、小林先生に信用されるよう頑張るよ」と笑顔で家に帰っていった。

マミは仕事を終えた後、海外の買い付けから帰国していた小澤と再会する。2人は恋人同士として、交際が続いていた。
ある日、マミは自分が好きなロリータを着て、カヤとみなよと共に買い物に出掛けていた。好きな服を好きな気持ちで着られることに、マミは喜びを感じていた。

小澤(おざわ)

奇抜で派手な服を着る小澤。

イケメンに分類される顔立ちをしている男性。マミより年上であることは分かっているが、明確に年齢は表記されていない。
派手で奇抜なファッションを常に身につけているが、これは中学時代にいじめられていたことから。中学時代、クラスメイトの男子からいじめられ辛い日々を送っていた。そんな時、奇抜で派手な服と出会う。その服を着ている時だけ、違う自分になれて強くなった気持ちになれた。このことから派手で奇抜な服を好むようになる。
「自分が好きな服を着ている時が1番気持ちいい」と思って、自分が好きな服を好きなだけ着ているだけで、周囲に勇気を与えているつもりはない。そんな堂々とした姿だからこそマミも憧れ、「ロリータを着て外に出たい」と思うようになる。時々マミの背中を押すこともあり、マミがお茶会に行くべきか迷っている時には「ロリータを着ている小林さんは可愛いです」とストレートに誉めて自信をつけさせた。

将来の夢は世界中を飛び回り、服を買い付けるバイヤー。原宿にある奇抜な服を取り扱っているファッション店に就職を予定していた。仕事に集中したいからと恋人も友人も作っていない。
夢を叶えるために小澤は、実際に海外へ行き服を自分で選んで買うものの「なんかあんまり良くない気がする…」と自信を持てずにいた。また、他のバイヤーから「全てを仕事に捧げていたらいいバイヤーになれない」と言われたことから、ますます自分のファッションセンスに自信をなくす。
日本に帰国してからも、学生客に「なんだよこの服、やばすぎ」と買いつけた服を馬鹿にされたことから「自分にはセンスがないのではないか」と思い始める。マミと再会するも気持ちが晴れず、「俺は小林さんに勇気を与えてきたつもりもないし、それを返される理由もない」とマミを突き放す。
その後、街中で偶然昔いじめてきたクラスメイトと再会するが、クラスメイトはいじめたことを覚えていなかった。小澤は「派手な服を着て強くなったつもりだったのに、俺は何と戦っていたんだ」と服に対しての意味を見出せなくなる。今まで買ってきた派手な服たちをゴミ袋に入れて捨てるが、マミに拾われて「私の中にはこんな素敵な服を着た小澤さんがいます!」と力説される。
小澤はマミに本心を話すことにした。いじめられたことで人が信用できなくなったことや、信用してまた裏切られたら辛いこと。そして常に孤独を感じていることを吐露した。マミは「私はどこにも行きません」と小澤を励ます。小澤はマミのひたむきな想いと、自分の弱さに涙した。

ここ数日の出来事で、小澤は就職したボスの店に出勤していなかった。マミに背中を押され、再びバイヤーとして頑張りたいと思った小澤は出勤する。
そこで偶然、世界的有名アーティストのリリーと出会す。リリーは小澤が買い付けた服を気に入り、購入しようとしていた。リリーは「どうしてこの服を買おうと思ったの?」と小澤に買い付けた理由を聞く。
小澤が買い付けた服、それはレザージャケットにフリルがついたものだった。小澤はリリーにマミとの出会いを話し、知らず知らずのうちにマミから勇気をもらっていたことから、そのフリルがついた服を見てロリータを着ているマミを思い出した。小澤にとっての服は自分を守るための鎧だったが、マミにとってのロリータは自由へ羽ばたくための羽根だった。だからこそマミに思い焦がれ、手に取って買ったのかもしれないとリリーに話すと、リリーは「受け取り手がいて服も曲も100%になる。私がこの服を買ってあげるわ」とその服を購入。リリーから「あなたはいいバイヤーになる」と誉められたことで、小澤はバイヤーとしての自覚を持つ。
また、マミが提案しボスに集めさせた「小澤が買い付けた服を着て幸せになった客達の写真」を見たことで、自分が買い付けた服で繋がりができ孤独ではないことを知った小澤。

マミが大学を卒業する日、小澤は今までのお礼として花の髪飾りを用意しマミへ会いに行く。そして「あなたのために着たい服がある」とマミに告白し、晴れて2人は恋人となった。
その後はバイヤーとして世界中を飛び回り、時折日本へ戻ってきてはマミと会っている。

友人

ミカ

マミの友人の一人、ミカ。

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