雨に唄えば(映画)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『雨に唄えば(映画)』とは1952年にアメリカで制作されたミュージカル映画である。サイレント映画からトーキー映画へと移行し始めたハリウッドを舞台に、人気スターのドンと新進女優のキャシーの恋模様をコミカルに描いている。監督はジーン・ケリーとスタンリー・ドーネン。ケリーは監督だけでなく、ドナルド・オコナーやデビー・レイノルズと共に作品にも出演している。「ミュージカル映画の傑作」とも言われる映画で、ケリーが傘を片手に歌う「雨に唄えば」のシーンは、この映画を象徴するシーンとしても有名である。

『雨に唄えば(映画)』の概要

『雨に唄えば(映画)』とは1952年にアメリカで制作されたミュージカル映画である。原題は『Singin' in the rain』で、1929年に発表された同名楽曲を原案としている。監督はダンサーでもあり、映画の主人公ドン役も演じているジーン・ケリーと数多くのミュージカル映画を手掛けたスタンリー・ドーネンが務めている。ドンの親友コズモ役にはコメディアンでもあるドナルド・オコーナー、ドンと恋仲になるキャシー役には本作をきっかけにスターとなったデビー・レイノルズが務めている。

サイレント映画の全盛からトーキー映画へと移行していったハリウッド。人気スターのドン・ロックウッドとリナ・ラモントは大スターのカップルとしてもてはやされていた。しかし、実際はリナが一方的にドンに惚れていただけで、ドンは愛想を尽かしていた。そんな中、ドンは新進気鋭の女優キャシー・セルダと恋仲になっていく。サイレント映画で人気だったドンとリナもトーキー映画に出演することになるが、リナの悪声によって、試写会の結果は散々となってしまう。そこでドンとその親友のコズモ・ブラウン、キャシーは3人でミュージカル映画に挑戦しようと考える。しかしリナの声が問題となり、コズモの考えでキャシーがリナの吹き替えをすることとした。それに怒るリナは、キャシーが表舞台に出れないよう画策する。そこでドンたちの機転でキャシーは観客の前で「雨に唄えば」を披露することができ、スターの座を手に入れ、ドンとも結ばれることとなった。

本作は、批評家から「ミュージカル映画史上最高の作品」と言われるほど高い評価を受けている。1989年にはアメリカ国立フィルム登録簿に登録され、アメリカ映画協会が発表したミュージカル映画ベスト1位、アメリカ映画主題歌ベスト100の第3位、アメリカ映画ベスト100の第10位、情熱的な映画ベスト100の第16位に選出されるなど高い評価を受けている。

『雨に唄えば(映画)』のあらすじ・ストーリー

サイレント映画からトーキー映画への移行

サイレント映画の全盛のハリウッド。人気スターのドン・ロックウッドとリナ・ラモントが主演を務める「宮廷の風雲児」という映画のプレミア上映が行われ、観客はスターの姿を一目見ようと、多くの観客が集まった。女優のゼルダ・ザンダース、そしてドンの親友でもあるコズモ・ブラウン等続々とスターが登場する中、ひときわ大きな歓声があがる。ドンとリナの到着であった。二人は数々の作品で何度も共演しており、世間から大スター同士のカップルとしてもてはやされていた。劇場前にいる女性にインタビューを受けるドンとリナ。ドンは自身の成功話について聞かれ、コズモとの出会いや幼い頃の話、そこからどのようにハリウッドスターになっていったのかを華々しく語った。しかしその成功話とは裏腹に、実際は売れないミュージシャンとしてハリウッドに赴き、モニュメンタル社に入ったところから彼のキャリアは始まった。そこでスタントマンとして泥臭く活動していた中、社長のシンプソンがドンの活躍を見て、すでに有名女優であったリナの相手役にとドンを抜擢したのだった。インタビューを終え、ドンたちは上映会へと向かったのだった。上映会が終わりドンとリナは観客の前で挨拶をする。リナが話そうとするがそれを遮るようにドンが挨拶の言葉を述べる。実はリナはその美しい姿とは裏腹に悪声の持ち主であった。ドンたちはそれをわかっていたため、彼女にスピーチをさせないようにしていたのだった。そのことにリナは腹を立て、ドンに「婚約者が嫌がらせを受けているわ」と訴えてくる。リナは一方的にドンに惚れており、自分の婚約者だと思いこんでいるようだ。しかし、ドンはリナに対してすでに愛想を尽かしており、「リナ、僕たちの間には何もないよ」と優しく伝える。一方のリナはドンの冗談だと思い、彼の思いに全く気付いていないようだった。
「宮廷の風雲児」の舞台挨拶が無事に終わり、ドンとコズモはパーティー会場へ移動しようとしていた。しかし、コズモが運転していた車がパンクしてしまい、ドンは別の手段で会場へ向かおうとする。するとそこにドンの姿を見てファンが大勢駆けつけてきた。ドンは逃げるためにキャシー・セルダンという女性が運転する車に飛び乗る。突然のことに驚くキャシーだったが、ドンであることに気づき冷静になる。ドンは自分の家まで送ってもらえないかとキャシーに伝え、キャシーも快諾する。その車の中で二人はお互いの映画論について話していた。キャシーは「ドンの演技は演技ではなく、ただ黙って動いているだけ」と酷評する。ドンはそんなキャシーに職業を尋ねると、キャシーは「舞台女優だ」と答える。特に有名でないキャシーに対して、ドンも皮肉たっぷりで馬鹿にする。お互い言い合いになり、ドンは車を降りる。
シンプソン宅で行われていたパーティーにドンも到着する。ワーナーが「ジャズ・シンガー」というトーキー映画を撮っているため、シンプソンはトーキー映画のサンプルを放映し、パーティー会場にいた人々の反応を見ようとしていた。しかし、誰もトーキー映画には関心がない様子だった。そこに先ほど会ったキャシーが複数名の女性と共に派手な格好で登場し、歌い踊りだした。彼女らはサプライズのダンサーたちだった。ドンはそれを見てキャシーに対してさらに皮肉を伝える。怒ったキャシーは近くにあったケーキをドンに投げつけるが、ドンと一緒にいたリナにそのケーキが当たってしまう。キャシーはあわてて逃げ、ドンもその後を追うがそこにキャシーの姿はなかった。
3週間後、ドンはスタジオに訪れていた。スタジオにいたコズモによると、トーキー映画の新作「ジャズ・シンガー」は大盛況のよう。そんなニュースを無視し、ドンは落ち込んでいる様子だった。どうやらキャシーがリナにケーキを投げつけたことによってダンス隊をクビになったようだった。少なからず自分のせいであると落ち込むドンにコズモは元気づけようとする。
撮影が始まる前、ドンとリナはパーティーの夜の話をしていた。リナはドンがキャシーを探しに行っていたことを知っていたのため、嫉妬心からキャシーをクビにするよう仕向けたのだった。それを聞いたドンは、リナを問い詰めようとするも撮影が始まってしまう。そこに、シンプソンが慌てた様子で現れる。なんと「ジャズ・シンガー」の人気によってトーキー映画の製作が必要と言い始めたのだ。そして現在ドンやリナが撮影中の映画もトーキー映画にするとシンプソンが指示する。しかし、リナの声を聞いた瞬間、その場にいたシンプソン、ドン、映画監督はリナの声の悪さに固まってしまった。世間ではトーキー映画が大盛況になり、特にミュージカル映画が席巻していた。そんな中、とあるスタジオではミュージカル風のCMを撮影しており、シンプソンやドン、ゼルダがその撮影を見守っていた。そして、キャストの一人にキャシーの姿があった。そのためコズモは急いでドンを呼びに行く。キャシーの演技を見ていたシンプソンはそのスター性に目をつけ、ゼルダの妹役として次回作に抜擢することを考えていた。シンプソンは駆けつけたドンと共にその旨をキャシーに提案するが、ドンにまだ怒っているキャシーは断ろうとする。しかし、ドンはなんとか引き留めシンプソンに彼女を採用させる。キャシーとドンは歩きながら話をしていた。冷静になった二人は仲直りし、お互いがお互いのことを気になってたことを打ち明ける。そして、ドンはキャシーにその恋心を打ち明ける。

ミュージカル映画を作ろう!

トーキー映画の製作に向け、リナやドンは発声の指導を受けていた。ドンの発声練習は調子が良かったが、リナはいっこうによくならずドンたちは頭を抱えていた。また慣れないトーキー映画の製作に監督たちも試行錯誤しつつ、なんとか完成した映画「闘う騎士」の試写会を行う。しかし、試写会では観客に笑われ、評価は最悪なものだった。
どうにかしなければと悩むドン。キャシーとコズモはドンを元気づけようとする。コズモはいつも通り歌いながら踊りだす。それをみたドンは「映画でやればウケるかな」と言い出す。キャシーはそれに飛びつきミュージカル映画をやってみることを提案する。ドンもそれに可能性を見出し、「闘う騎士」をミュージカル映画にしようと意気込む。三人は、映画の成功の可能性が出てきたことに対して喜ぶのだった。しかし、歌を終えるとドンはリナが歌もできず、ダンスも踊れないために、ミュージカル映画は制作できないと嘆く。そこでコズモはキャシーがリナの声を吹き替えるよう思いつく。ドンは「キャシーのキャリアが台無しになる」と提案を否定するが、キャシーは「この一本だけよ」と心配は無用なことを伝える。ドンは朝にシンプソンに案を伝えることを約束するのだった。
キャシーをタクシーで家まで送ったドン。外は雨にも関わらず、ドンはタクシーを帰るよう促す。ドンは傘を閉じ、雨に打たれながらも、歩いて家へと帰る。映画の成功への可能性やキャシーとの恋がうまくいっていることに、ドンは喜びを感じていたのだった。翌日ドンはシンプソンにその案を伝え、シンプソンも快諾する。リナがそれを承諾するか心配していたが、ドンは「リナには内緒にする」と伝える。シンプソンは「闘う騎士」というタイトルを、コズモが考えた「踊る騎士」に変更し、コズモを脚本家として抜擢した。実際にキャシーの吹き替えした映像を見たシンプソンは、キャシーの実力を褒め彼女を今後売り出そうとドン達に話す。ドンとコズモはシンプソンの反応に喜びつつ、もう一曲撮影するシーンがあると言い、ドンはシンプソンにその構成を伝える。ドンもコズモも最高の映画になると意気込んでいたのだった。
ドンはリナの吹き替えを録音しているキャシーに「本当のことを言おう」と言うが、キャシーは「ファンが残念がる」と否定的になる。しかしドンは「僕の大切なファンは君一人だけ」とキャシーに伝える。しかし、そこにリナが現れる。なんとゼルダがキャシーがリナの吹き替えをしていることをどこかから聞きつけ、リナを呼び出していたのだ。リナはそれに怒り、キャシーを追い出すようドンに言う。ドンがキャシーを愛していることをリナに言うも、リナはドンがキャシーに騙されていると思い込んでいる。「シンプソンに報告する」と意気込むリナだったが、コズモが現れ「君を破滅から救ってくれたのがキャシーだよ」と説得する。ドンは「キャシーの名前もクレジットに出すし、彼女の宣伝準備もできている」とリナに言うと、リナは怒り心頭でその場を去っていく。

キャシーのデビュー

その後、新聞には「リナは歌って踊れるスターである」と出されていた。キャシーを売り出そうとしていた宣伝部はシンプソンに詰め寄るが、シンプソンもどうしてこの記事が出たのかわからないようだった。そこにリナが現れ、自分の仕業であることを伝える。リナは個人で弁護士と契約書を確認し、リナの名誉を傷つけるようなことがあれば、会社を告訴できることをシンプソンに言う。シンプソンはリナの交渉に負け、キャシーの名前を出さないようリナに約束する。さらにリナは、キャシーが大抜擢され、ゼルダと共演する予定の次回作のことを知っていた。それにあたり、キャシーを吹き替え専門にさせるよう話す。シンプソンはそれに対し怒るが、リナは契約を盾に聞く耳を持たない。
「踊る騎士」のプレミア上映当日、映画は観客に絶賛された。挨拶をするドンとリナ。舞台袖にはキャシーとコズモ、シンプソンの姿もあった。リナはキャシー達に、今後のリナの吹き替えをキャシーがやっていくことを伝える。ドンはそれに対して怒るが、シンプソンは契約を盾に何も言えなくなっている。コズモやドンはシンプソンに対して「このままでは自分たちは会社を辞める」と伝える。そんな時スピーチの時間がやってきてしまった。リナは「これまでよくも私にスピーチさせなかったわね」と意気込んで観客前に出ていく。そんなリナを止めようとするスタッフだが、ドンはそのスタッフを制す。ドンはリナにあえてスピーチさせて本性を観客の前で晒させようとしたのだ。それを察したシンプソンも、ドンにうなずき、リナのスピーチを見守る。リナの映画とは異なる声に、観客たちは驚き不満を現にする。「歌え」と言われたリナは困ってしまいシンプソン達に助けを求める。シンプソンは「いい考えがある」と言い、映画のようにキャシーに裏で歌わせようとする。キャシーは吹き替えの人生になってしまうことを危惧し、拒否するがドンは「やるんだ」と言う。その態度にキャシーは「やるけれど、二度とあなたとは口をきかない」と舞台裏へと走っていく。キャシーに怒られたにも関わらず、ドンたちはなぜか笑顔のままである。リナは舞台へと戻り、舞台幕の裏にいるキャシーの指示で「Singin' in the rain」を歌う。舞台袖にいたドン達は、幕を引き、裏でキャシーが歌っていることを観客に見せつける。ドン達はこの作戦を思いついていたため、キャシーに裏で歌うよう指示したのだった。リナが吹き替えで歌っていることに大笑いする観客。キャシーは動揺しているが、そこにコズモも現れ一緒に歌を歌う。リナは事実が晒されたことに気づき舞台から逃げ出してしまう。突然の事態にキャシーも舞台を降り逃げようとするが、ドンがそれを呼び止める。ドンはキャシーが実際に歌っていた声の主であることを観客に伝え、観客もそれに対し拍手をする。ドンはキャシーに、自分の大切な人であるという気持ちを伝えるのだった。その後二人は「Singin' in the rain」という映画で主演を演じ、幸せなスターカップルとして過ごしていくのだった。

『雨に唄えば(映画)』の登場人物・キャラクター

ドン・ロックウッド(演:ジーン・ケリー)

日本語吹き替え:NHK版/愛川欽也、フジテレビ版/井上孝雄、DVD版/堀川りょう
本作の主人公。サイレント映画の全盛であったハリウッドでは、スターとして絶大な人気を誇っていた。幼い頃からコズモとは親友であり、ダンスや音楽を人前で披露していた。しかしその環境は恵まれたものではなく、演劇アカデミーなどにも通えていなかったため、どうにかして人前で披露する機会を得ていた状況だった。映画の音楽担当としてモニュメンタル社で働いていたところ、ある映画の撮影シーンでスタントマンがいなくなってしまったため、ドンが代わりにスタントシーンを演じた。その後スタントマンとして名を上げていき、シンプソン社長にもその成果を認められ、俳優として映画スターとなった。
いくつもの作品で共演していたリナとは世間では恋人ともてはやされていたが、実際はリナの片思いでドンは彼女に対して愛想を尽かしていた。キャシーとは、出会いでは喧嘩をしてしまったが、後ほど仲直りし恋仲となっていく。

コズモ・ブラウン(演:ドナルド・オコナー)

日本語吹き替え:NHK版/八代駿、フジテレビ版/広川太一郎、DVD版/大塚智則
ドンの親友。幼少期からドンとともに過ごし、モニュメンタル社でも映画の音楽担当として働いていた。映画スターになったドンとは別に、俳優として大成せず今でも音楽担当として所属している。しかしドンからの信頼は厚く、いつもドンに寄り添っていた。キャシーが自分のせいでクビになってしまったと落ち込むドンを元気づけるために歌を歌うなど、陽気で明るい心の持ち主である。

キャシー・セルダン(演:デビー・レイノルズ)

日本語吹き替え:NHK版/池田昌子、フジテレビ版/岡本茉莉、DVD版/加納千秋
本作のヒロイン。ドンとの出会いはキャシーが運転していた車に、ドンが飛び乗ってきたことがきっかけである。当初ドンが出演しているサイレント映画に対して批判的な意見を持ち、ドンとは衝突していた。しかし、実際には映画スターへの憧れからくる嫉妬で嫌味を言っていたことをドンに薄情する。キャシーの演技力やスター性は高く、CM撮影に参加していたキャシーの姿をみてシンプソンは女優として売り出そうと考えた。また歌唱力も抜群で、「踊る騎士」でのリナの吹き替えをみたシンプソンは大々的に売り出すことを決めたのだった。

リナ・ラモント(演:ジーン・ヘイゲン)

日本語吹き替え:NHK版/桜京美、フジテレビ版/向井真理子、DVD版/安藤麻吹
ハリウッドスターでドンと数々の作品で共演している。そのため世間からはドンと恋人ともてはやされている。その影響もあってか、リナはドンのことを婚約者であると思い込むぐらいに、ドンに対して盲目的に恋をしていた。意地悪い性格をしており、スタントマンとして活躍していたドンには一切構わなかったにも関わらず、俳優としてシンプソンに抜擢されるや否やすぐにドンにすり寄っていた。また、ドンがキャシーに夢中になっていることを知るとキャシーを所属していたダンス隊からクビにさせるよう仕向けていた。また甲高い特徴的な声を持っており、ドンたちからはスピーチなどさせないよう抑えられていた。

R・F・シンプソン社長(演:ミラード・ミッチェル)

左の男性がシンプソン社長

JewelRook6
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@JewelRook6

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