セトウツミ(漫画・映画・ドラマ)のネタバレ解説・考察まとめ
『セトウツミ』とは『別冊少年チャンピオン』にて2013年から2017年まで連載された此元和津也(このもと かづや)による漫画作品とそれを原作とした映画、ドラマ作品。大阪のとある河原で男子高校生内海(うつみ)と瀬戸(せと)が他愛もないおしゃべりをする姿を描くコメディー漫画。漫才のような二人の会話が人気だが、最後に大きなどんでん返しがあることでも有名。2016年に池松壮亮と菅田将暉のダブル主演で映画化され、翌2017年には高杉真宙と葉山奨之のダブル主演でドラマ化もされた。
『セトウツミ』の概要
『セトウツミ』とは秋田書店の雑誌『別冊少年チャンピオン』に2013年から2017年まで連載されていた此元和津也(このもとかづや)による日常系のコメディ漫画。コミックスは2017年12月8日発売の8巻で完結となっている。
元々は此元による読み切り『マジ雲は必ず雨』が『月刊少年チャンピオン』に掲載され、好評だったことから掲載紙を『別冊少年チャンピオン』に変え、『セトウツミ』と改題して連載が始まった。
物語は大阪のとある河原で2人の男子高生、内海想(うつみそう)と瀬戸小吉(せとしょうきち)が暇つぶしのために会話をする姿を中心に描かれる。キャッチコピーは「この川で暇をつぶすだけのそんな青春があってもええんちゃうか」。
高校へ入学した内海は部活にも入らず、学校が終わり塾へ行くまでの時間を川べりの石段に座って暇をつぶすことを思いつく。そこへいきなり瀬戸が現れ、隣でいろいろと話しかけてくるのだが、天然か計算かわからないその予想外の会話を内海も楽しむようになる。
瀬戸が思いを寄せるが内海のことが好きな樫村一期(かしむらいちご)や瀬戸のことが好きなハツ美(はつみ)もときおり現れ、次第に内海の周りもにぎやかになっていく。
しかし内海は自分を虐待してきた家族を失火に見せかけた放火により殺害する計画を立てており、河原で過ごす時間もアリバイ工作の一環であった。内海は姉の誕生日の2月19日に計画を実行しようとするが瀬戸たちがそれを未然に防ぎ、内海の家族との関係もやや改善されたところで物語は終わる。
2016年には内海役の池松壮亮、瀬戸役の菅田将暉のダブル主演で映画化された。監督は『まほろ駅前多田便利軒』や『日々是好日』などを手掛けた大森立嗣が務め、中条あやみや岡山天音が共演している。
また2017年には内海役を高杉真宙、瀬戸役を葉山奨之、こちらもダブル主演でドラマ化されている。こちらは清原果耶や森永悠希が脇を固めている。
劇中の会話はすべて関西弁で行われるが、菅田や中条、清原といった大阪出身の俳優たちが伸び伸びと演じている。
『セトウツミ』のあらすじ・ストーリー
瀬戸と内海の出会い
高校に入学した内海想(うつみそう)は高校生活に何の意味も見いだせず、大学に行くまでの3年間の暇つぶしだと受け止めていた。そして高校の授業が終わる15時30分から塾が始まる17時までの1時間30分の暇つぶしにうってつけの河原を見つける。道路から河原に降りる階段に腰掛け、音楽を聴きながら本を読み、時間を過ごすことに決める。
クラスメイトや幼馴染の女子、樫村一期(かしむらいちご)からは「部活でもやったら?」と勧められるが、「走り回って汗かかなあかんのか?なんかクリエイティブなことせなあかんのか?この川で暇をつぶすだけのそんな青春があってもええんちゃうんか」と聞く耳を持たない。
一方入学早々サッカー部に入部した瀬戸小吉(せとしょうきち)は厳しい練習に耐えていたが、練習試合で先輩を差し置いてフリーキックを勝手に蹴ったことで2年生の鳴山(なるやま)にサッカー部を辞めさせられてしまう。サッカー部を辞めて暇を持て余した瀬戸は河原にいる内海を見つけ、自分の部屋にコバエが大量発生したことを相談する。「食虫植物置いたら?」という内海の言葉に「天才かお前、早速今日買うわ!」と瀬戸は感謝する。
翌日河原で瀬戸は内海に部屋からコバエがいなくなったことを報告する。しかし今度は食虫植物の方が気になってきて、食虫植物のためにアリを集めているのだと話す。内海は「食虫植物って虫がエサなんちゃうで?水だけでも生きられんで?」と説明するが、瀬戸は「お前かて米だけ食べてといたら生きられるけど、デミグラスソースのハンバーグとか食べるやろ」と独特の理論で言い返す。
内海は「アホやこいつ」と言いながらも瀬戸のことを認め、2人で時間をつぶすようになる。
河原で出会った仲間たち
瀬戸の誕生日を祝おうとした内海はいつも河原でバルーンアートの練習をしている大道芸人に協力を仰ぐ。ベラルーシから来たバルーンさん手製のバルーンハットとハッピーバースデーメガネをかけさせられた瀬戸だったがその表情は暗かった。
瀬戸の家で飼っていた猫のミーニャンがその日の朝死んでしまっていたのだ。「ミーニャンはきっと幸せやで」と内海は慰めるが、誕生日プレゼントとして渡した三毛貝シリーズのガチャガチャがハズレだったことでバルーンさんに引きの弱さを指摘され、瀬戸にも三毛貝のスマホケースとガチャガチャ4回の両方をねだられる。さらに瀬戸から「俺のええとこ10個言って」と要求された内海は「ペットが死んだら願ってこんなに叶うん?」とバルーンさんに訴えるが「誕生日も重なってるから」とバルーンさんは瀬戸の肩を持つ。
そこへやや小太りのノラ猫が近寄ってくる。「ミーニャンがお別れを言いに来たんちゃう?」と内海がいい、瀬戸はノラ猫を抱き上げ「ごめんな、ミーニャンあの時ひどいことゆうて」と謝るが猫は瀬戸の膝の上で便意を催す。
その後もそのノラ猫は河原にしばしば現れ、ミーニャンに似ていることから瀬戸はニダイメと名付けかわいがる。猫が苦手な内海はなかなかニダイメに慣れないが、瀬戸と変わりばんこに河原にエサを持っていくようになる。
また瀬戸は内海とのバドミントン勝負に審判として同級生の田中真二(たなかしんじ)を連れてくる。連れてきた理由はセンター分けのヘアスタイルと名前の田中真二が左右対称ということから公平なジャッジをするに違いないという理由であった。
その後田中君は二人の対決にことあるごとに審判として呼ばれ、学校内では目立たない自分の存在意義を認めてくれた瀬戸と内海に感謝するようになる。
またある日瀬戸は連れてきたガっちゃんこと蒲生(がもう)君を審判に、靴飛ばしチキンレース合戦を提案する。川に向かって靴を飛ばし、より川に近い方が勝ちというゲームだが、見本を見せたガっちゃんは見事に川の中に靴を飛ばしてしまう。「靴なんか片方なくても一緒じゃ」と嘯くガっちゃんだが、勝負そっちのけでいつものように下らない会話を続ける2人にいら立ちを見せる。勝負は僅差で瀬戸が勝利したが、突然降りだした雨に笑いながら瀬戸の家に避難する3人を木陰から疎外感を抱きながら田中君が見つめていた。
また内海とのババ抜き対決中に瀬戸はふと野球部の馬場(ばば)のことを思い出す。馬場の顔がどうしても思い出せない瀬戸は内海に「ババってどんな顔?」と尋ね、混乱した内海はババ抜きに敗北する。練習熱心な馬場は2人がいる河原で素振り練習をしていた時に手を滑らせ、バットを瀬戸にぶつけてしまう。
イチハツミと車いすの少女
瀬戸は入学当初から同じクラスのお寺の娘、樫村一期(かしむらいちご)に想いを寄せている。しかし樫村さんのお寺の檀家で、昔から彼女のことを知る内海はその魅力がわからない。瀬戸によると生まれながらの小悪魔的魅力とお寺の娘ならではの侘びさび感が魅力だという。
実は樫村さんは内海のことが好きで、いつも気にかけているが、興味のない内海は瀬戸の話をしたりしてごまかしていた。
2年生になり寡黙で勉強もできイケメンの内海は下級生から手紙を受け取る。瀬戸はそれを難しいフランス映画を観たあとのような顔で見つめるが、走ってきた別の女子生徒が瀬戸の顔にメモ用紙を突き付ける。そのメモには「私は瀬戸が好き!!」と書いてあった。
その女子生徒は「私の名前はハツ美、瀬戸のことが好きやねん」というが、瀬戸の前では大きな声を出すことが出来ず、内海が耳元で話してもらい、それを瀬戸に伝えるという形をとる。瀬戸のことが好きという割には瀬戸のことは呼び捨てで、瀬戸のボケに対しては内海と一緒に容赦なくいじる。
瀬戸の前ではもじもじして話すことが出来ないハツ美だが、実際は分析力に優れた毒舌家で饒舌な女の子である。樫村さんに対しても「あざとい、本当は異性受けを狙っているのに同性の目も気にしているから中途半端」など容赦ない言葉を投げかけたりもしている。
ある時から内海が家族を殺害する計画を立てていることに気付き、審判の田中君を探偵として雇い、その計画を阻止しようとする。結果的に内海を救うことになり、瀬戸からも感謝される。
またある日内海が一人で河原にいると車いすに乗った少女が近づいてきた。少女は長い入院に疲れ何も面白いと思えなくなってしまい、内海も同じ種類の人間なのかと話しかけてきたのだ。しかし内海は「自分に酔ってる感があって鼻につくんやけど」とあしらうも、帰ろうとする少女を「もうすぐスーパースターが来るから」と引き留める。内海は瀬戸との会話を彼女に聞かせて笑わせようとしたのだ。そこに現れた瀬戸はいつもよりギアが一つ上がった会話を要求してくる内海に戸惑いながらも、心臓の手術をするという彼女に「心臓には痛覚ないらしいで、すでに俺に心臓(ハート)を掴まれてることに気付いてないんやったらそうなんちゃう?」と言い、笑顔を引き出す。お礼を言って病院に帰ろうとする彼女の車いすを内海はそっと押してやるのだった。その後も内海は彼女のお見舞いのため病院を訪れているようである。
内海の計画
瀬戸と内海の会話の中で内海は時折自分の家庭環境について言及することがあった。
お小遣いは1日1000円でそのお金で昼食と夕食を賄うことや勉強することが親から愛される条件だったこと、昨夜の夕食といって見せた写真がキュウリと白米だけだったり、瀬戸も「お前んちから漂うネグレクト臭なんやねん」と言っていたが、内海は本当に家庭内で虐待を受けていたのだ。
小学校の頃から優等生だった内海は親からも期待され、成績も良く、絵画や音楽といったいろいろな習い事も上達し天才児(ギフテッド)と呼ばれていた。しかしどれ一つとして興味を持つことがなかった内海は家族から病気とみなされてしまう。成績がよくないと両親に愛されなくなると恐れ、パニックになった内海は中学受験に失敗してしまった。
内海のことを両親は落ちこぼれととみなし、父親は殴り、母親は内海の存在を無視するようになった。何とか生き延びられてきたのは同居している姉の優(ゆう)が食事や必要なものは用意してくれていたからだった。
そして内海は両親を殺害する計画を立てる。自分以外の家族が必ず家で過ごす姉の誕生日に、家に放火することを計画したのだ。犯行時間は15時半から17時の間、河原にいる時間は内海にとってアリバイ作りであった。
そして姉の誕生日2月19日を迎える。河原で震えながらその時を待つ内海の前に、火事で死ぬはずだった父親が現れる。誕生日の主役の姉が「友人に祝ってもらうから」と出て行ったことのうっ憤を晴らすように内海に暴力をふるう父。高校もやめさせようとする父に、混乱しながらも「おれはここにまだいたい」と内海は訴える。
そこにいきなりバルーンさんの衣装とメイクをした瀬戸が「バルーン2世やで」と現れる。内海の父に「想君の友達はこっちで選ぶから」と言われるが「いえお姉さんの友達の瀬戸です」と自己紹介する。姉の優が祝ってもらうと言った友達が瀬戸や樫村さん、ハツ美、バルーンさんであった。そして内海は瀬戸に背中を押され、初めて父に歯向かい「絶対に俺はこの高校を卒業するから」と宣言する。
スーパースター瀬戸
内海はなぜ自分の計画が失敗したのか考えていた。河原で過ごす時間にこれまで一度も感じたことのなかった楽しいという感情を抱いてしまったことが命取りになったのだ。瀬戸が計画に気付いていたとは思えないが、瀬戸が無自覚で無意識に偶然に人を救えるすごい人間だということを内海は認めていた。
しかし内海はポケットに入っていた瀬戸に返しそびれていた樫村さんへのラブレターの下書きメモを見つける。その1文字目を縦読みすると「2月19日この川で俺がお前をたすけに行く」と読むことが出来た。内海はあらためて「いや偶然じゃなかった、こいつは紛れもなくスーパースター」だと瀬戸のことを見つめる。
瀬戸はサッカー部に戻り、内海は一人でニダイメにエサを上げに河原にやってくる。樫村さんがやってきて「一緒の大学に行こう」と誘うが内海は家を出るために東京の大学に行くと答える、立ち上がろうとする内海に樫村さんは軽くキスをする。その間も内海と瀬戸はLINEで会話を続けている。
河原には次々と部活帰りの瀬戸やハツ美、サッカー部の後輩の時田(ときた)が現れるが、それぞれ長居することはない。バルーンさんが来た時にちょうど瀬戸の祖父が「うあ~」と言いながら徘徊してくる。バルーンさんは立ち上がり「お師匠さん、私です、8年前ベラルーシから来た」と声をかけると、祖父は一瞬だけ「頑張ってるな、よう頑張ってる」と笑顔で声をかける。涙ぐみながら頭を下げるバルーンさんを後にまた「うあ~」と言いながら祖父は徘徊を始める。
瀬戸と内海のLINEでの会話は続いており、「そういえばハツ美ちゃんから送られてきた写真を送るわ」と瀬戸は内海に河原で二人で笑っている写真を送信する。
内海は「ああ撮ってたなそういや」と気のない返事を送る。そして瀬戸からの「今度こそおやすみ」という送信に、内海も「おやすみ」と返信する。
2時間後、瀬戸が送信した「そういえばな」の言葉に即座に「寝ろや笑」と返した内海のアイコンは、先ほど送られてきた笑顔の自分の写真に変更されていた。
『セトウツミ』の登場人物・キャラクター
メインキャラクター
内海想(うつみそう)
映画版キャスト:池松壮亮/ドラマ版キャスト:高杉真宙/オーディオブック版キャスト:水田信二(和牛)
学校が終わり塾が始まるまでの時間を河原でつぶしている高校生。成績優秀で語彙も豊富なため周囲の人間をうっすらバカにしているように見られている。
物事の判断基準は「面白いか面白くないか」であり、瀬戸のことも「あんなアホな奴見たことがない」といいつつ一緒に過ごす時間を楽しんでいる。
優等生の姉と比較され、親からは食事を与えられないなどの虐待を受けている。塾へ行ったり、勉強ばかりするのも親に認めてもらいたいがためであった。
高校2年の2月に家族を殺害する計画を立てており、毎日河原で過ごすのもそのアリバイ作りのためだった。計画を察知した瀬戸やハツ美により計画は失敗するが、河原で出会った仲間の力を借りて父親と対決する決意をする。
瀬戸小吉(せとしょうきち)
映画版キャスト:菅田将暉/ドラマ版キャスト:葉山奨之/オーディオブック版キャスト:川西堅志郎(和牛)
実力のあるサッカー部員であったが、フリーキックを勝手に蹴ったことで先輩の反感を買い退部させられている。暇を持て余していた時河原にいた内海を見つけ、いっしょに時間をつぶすようになる。
「フシがある選手権」や「まるで○○のごとし選手権」などを思いつく発想の持ち主だが、内海の話す難しい言葉がわからないことなどからアホ呼ばわりされている。
実家は祖父の代から続く自転車屋だが、祖父は痴呆が進み街を徘徊し、祖母は長いこと入院している。父はギャンブル依存症で、両親は離婚の危機を迎えているが、そんなことを感じさせないポジティブさと天性の明るさを持っている。
樫村さんのことが好きだが、内海のことが好きな樫村さんには相手にされていない。一方で1学年下のハツ美から好意を寄せられている。
物語後半ではハツ美とともに内海の計画を阻止する。
周囲の人々
樫村一期(かしむらいちご)
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目次 - Contents
- 『セトウツミ』の概要
- 『セトウツミ』のあらすじ・ストーリー
- 瀬戸と内海の出会い
- 河原で出会った仲間たち
- イチハツミと車いすの少女
- 内海の計画
- スーパースター瀬戸
- 『セトウツミ』の登場人物・キャラクター
- メインキャラクター
- 内海想(うつみそう)
- 瀬戸小吉(せとしょうきち)
- 周囲の人々
- 樫村一期(かしむらいちご)
- ハツ美
- 田中真二(たなかしんじ)
- 馬場(ばば)
- 蒲生(がもう)
- 時田(ときた)
- バルーンさん
- 鳴山(なるやま)
- ニダイメ
- 車いすの少女
- 瀬戸の母
- 瀬戸の祖父
- 瀬戸の父
- 河原林五郎(かわらばやしごろう)
- ハラダ親子
- 内海優(うつみゆう)
- 内海の父親
- 『セトウツミ』」の用語
- 三毛貝ちゃん
- アラクノフォビア(クモ恐怖症)
- スタンディングオベーション
- 『セトウツミ』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
- 生物の木崎先生「つまり我々ゴリラは」
- ババ抜き対決
- 瀬戸の恋文
- 『セトウツミ』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
- 漫画の舞台となっているのは大阪の泉陽高校とザビエル公園横の川岸
- 『セトウツミ』のグッズ・LINEスタンプ
- 映画版『セトウツミ』
- ドラマ版『セトウツミ』
- オーディオコミック版『セトウツミ』
- 『セトウツミ』の主題歌・挿入歌
- ドラマ版
- OP(オープニング):SUPER BEAVER 「虹」
- ED(エンディング):Miwa 「We are the light」