BUCK-TICKのオリジナルアルバムをレビューしてみた!「HURRY UP MODE」から「No.0」までの魅力を紹介

BUCK-TICKのオリジナルアルバムの魅力をまとめました。インディーズの頃に発表した『HURRY UP MODE』から『No.0』までの収録曲はもちろん、その作品に込められた想いや、発表当時の状況なども紹介しています。気になる楽曲があった方は、ぜひ聴いてみてください。

出典: www.amazon.co.jp

殺シノ調ベ This is NOT Greatest Hits

1992.3.21(6th)

01. ICONOCLASM
02. 悪の華
03. DO THE “I LOVE YOU”
04. VICTIMS OF LOVE
05. M・A・D
06. ORIENTAL LOVE STORY
07. スピード
08. LOVE ME
09. JUPITER
10. ...IN HEAVEN...
11. MOON LIGHT
12. JUST ONE MORE KISS
13. TABOO
14. HYPER LOVE

『狂った太陽』が初期最高傑作なら、こちらは初期の集大成。
再録ベスト盤ですが、公式には6thオリジナルアルバムとなっています。

『狂った太陽』を経て、「今やったらもっとかっこいいはず!ていうか本当はこうしたかったんだよ!」と過去の曲をアレンジし直して再録。
リアレンジアルバムは大抵オリジナルを超えられないものですが、これに関しては別。特に『HURRY UP MODE』~『TABOO』の曲は断然こっちの方がいいです。ベストじゃなくてオリジナルアルバム、と言い張るのがわかるくらい生まれ変わっています。(『TABOO』までが色んな意味で未熟というのもあるけど……)
ただし『狂った太陽』の曲はアレンジしようがなかったのかどれも微妙。「JUPITER」のグレゴリオ聖歌バージョンは好きですが。

また、エンジニアの比留間整さんと並んでBUCK-TICKサウンドを支えるマニピュレーターの横山和俊さん(横ちゃん)がこのアルバムから参加しているのもポイントです。

時間がない人は、『狂った太陽』と『殺シノ調ベ』を聴いておけば初期はだいたいカバーできるよ!

Buck-Tick ~ ORIENTAL LOVE STORY ~ Sub Español

『殺シノ調ベ』からは「ORIENTAL LOVE STORY」を。
原曲は2nd『SEVENTH HEAVEN』収録。『SEVENTH HEAVEN』からは「VICTIMS OF LOVE」「ORIENTAL LOVE STORY」「...IN HEAVEN...」がリアレンジされていますが、どれもアルバムのハイライトと言える出色の出来。

ライブは2008年頃の映像です。

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darker than darkness -style93-

1993.6.23(7th)

01. キラメキの中で...
02. Deep Slow
03. 誘惑
04. 青の世界
05. 神風
06. ZERO
07. ドレス
08. LION
09. Madman Blues -ミナシ児ノ憂鬱-
10. die
93. D・T・D

93曲入り7枚目。
公式では10曲目までが収録曲、その後は無音とノイズが続き、93曲目に隠しトラック「D・T・D」が入っています。

「暗闇よりももっと昏く」を意味するアルバムタイトル通り、内容はダーク&ヘビー。全体にテンポが遅く、重たいギターリフ曲が中心となっています。16ビートやシャッフルを取り入れた曲も増えていますが、まったく軽快にならずおどろおどろしい悪夢のような仕上がり。(リズム隊が横ノリ苦手だったせいもある)
ヒデさんの美メロとあっちゃんの魔界のプリンスっぷりが炸裂する「ドレス」、屍たちが踊るダブって感じの「キラメキの中で...」、今わの際に脳内再生間違いなしの「die」など、最初はとっつきにくいかもしれませんが、ハマると抜け出せないダーク系名曲が多いアルバムです。中級者向きかな。

また、デビューから『殺シノ調ベ』までの5年を初期とするなら、本作からの約10年、90年代中頃から00年代中頃の『Mona Lisa OVERDRIVE』あたりまでが中期(実験期)と言えるのではないでしょうか。

BUCK-TICK ドレス 2013

BUCK-TICKもう一人のコンポーザー、星野英彦(ヒデ)。毎回アルバムに3曲程度ヒデ曲が入るのですが、今井曲に比べ王道の美メロバラードが多く、これもまたバンドの大きな魅力となっています。
「ドレス」はその中でも特に人気の一曲。

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Six/Nine

1995.5.15(8th ※再発1995.9.21)

01. Loop
02. love letter
03. 君のヴァニラ
04. 鼓動
05. 限りなく鼠
06. 楽園(祈り 希い)
07. 細い線
08. Somewhere Nowhere
09. 相変わらずの「アレ」のカタマリがのさばる反吐の底の吹き溜まり
10. デタラメ野郎
11. 密室
12. Kick(大地を蹴る男)
13. 愛しのロック・スター
14. 唄
15. 見えない物を見ようとする誤解 全て誤解だ
16. Loop MARK II

16曲入り70分の大作。ご覧の通り曲名が全部怖いです。「限りなく鼠」ってどういうことだよ……。で、輪をかけて中身がもっと怖い。

遺言かな?って思うような語りから始まり、デタラメ英語で「I'm just simple madness man.(わたしはきょうじんです)」と叫び、「君のヴァ〇ナがほしい~!」と踊り、「生まれてきてごめんなさい、ありがとう」と言いながら宇宙に還る……頭4曲でこれです。このテンションで16曲70分。
BUCK-TICK史上最も難解かつカオス、しかし同時にベスト5に入る名盤だと思います。

音楽的には今井さんの実験精神が暴走し、ノイズ、アンビエントがてんこ盛り。そこにあっちゃんの暗黒自己否定死生観(マジでこの頃の歌詞は「この人死んじゃうのでは……」って心配になる)がミックスされて、異形の音楽になっています。これぞBUCK-TICKの真骨頂。
さらに、このアルバムから一気に歌唱力・演奏力が上がっていることもポイント。音の質感も90年代J-ROCK感が薄くなり、かと言って同時代の洋楽っぽくもなく、音像の面でオリジナリティを確立した一枚でもあります。

死ぬほどオススメの一枚ですが、間違いなく上級者向け。でもハマってきたら早いタイミングでぜひ聴いてほしい!

ちなみに発売直後に回収→再発してますが、理由はイスラームのコーランをサンプリングしたからです。色々やばい。

BUCK-TICK / 唄【Victor Years】

先行シングル「唄」のPV。
さまざまなスターのコスプレをしてるんですけど画が妙に怖い。アルバムの怖さの一端をこれで感じていただければ。

それから、PVが公式でアップされてるの嬉しいんですけど、どれも1分程度の短さなのどうにかしてください……。BUCK-TICK、サビになかなかいかないから曲によってはAメロしか聴けないという……せめて2分半くらい……。

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COSMOS

1996.6.21(9th)

01. Maria
02. キャンディ
03. チョコレート
04. SANE
05. Tight Rope
06. idol
07. Living on the Net
08. Foolish
09. IN
10. Ash-ra
11. COSMOS

前作と打って変わって曲名が可愛い9枚目。
白・黒・オレンジでまとめられたジャケもこれまでにない感じ。

ここ数作の反動かポップで聴きやすい曲が多く、久々にちゃんとサビで盛り上がる曲や8ビートでノレる曲が入っています。歌詞もソフトになり、使っている単語はおどろおどろしいものの、内容はラブソングが多いです。
とは言え、デビュー時のへなちょこビートロックとは別物。歌唱力・演奏力も上がり、これまでに獲得したダークマターをスパイスに使っているので(実はアルバム通して後ろでずーーーっとノイズが鳴ってたり)、ポップさの中にしっかり毒が入った聴き飽きない1枚になっています。個人的には90年代では『狂った太陽』『Six/Nine』と並んで好き。

BT流ギターポップ「キャンディ」、BT流8ビートロック「Ash-ra」、BT流ドリームポップ「COSMOS」は必聴。BT初心者にも安心しておすすめできるアルバムです。

また、本作リリース後にレコード会社をビクターからマーキュリーへ移籍。ビクター作品の『HURRY UP MODE』から『COSMOS』までと、ビクター復帰作20thアルバム『アトム 未来派 No.9』はApple Musicのストリーミングで聴くことができます。
「とりあえずBUCK-TICK聴いてみたい」という方は、そちらからもぜひ~。

Candy [Devil & Freud Live]

2004年の「悪魔とフロイト -Devil and Freud- Climax Together」ライブから「キャンディ」。
ノイズ塗りたくってます。

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SEXY STREAM LINER

1997.12.10(10th)

01. タナトス
02. SEXY STREAM LINER
03. ヒロイン-angel dust mix-
04. 無知の涙
05. リザードスキンの少女
06. 螺旋 虫
07. 蝶蝶
08. 囁き
09. 迦陵頻伽 Kalavinka
10. MY FUCKIN' VALENTINE
11. Schiz・o幻想
12. キミガシン..ダラ

ビクターからマーキュリーに移籍してリリースした10枚目。

BUCK-TICKの音楽的核のひとつである「シーケンス(テクノ的な打ち込みのリズムや音色・シンセサイザーのループフレーズ、SE的なサウンドなど)」を取り入れる実験と挑戦が、ここから本格的に始まります。
打ち込みをバンドサウンドと融合させること自体は『狂った太陽』の頃からやっているのですが、ここまで打ち込み要素を前面に押し出したのは本作から。当時の海外テクノシーンで流行していたドラムンベースを取り入れた意欲作です。
しかし、「MY FUCKIN’ VALENTINE」などそれにより生まれた名曲もあるものの、正直まだ実験途中のアルバムという印象は拭えません。また、サウンド面での実験が先立ち、メロディーや歌詞が弱く感じる部分も。

ちなみに、マーキュリーとは上手くいかなかったのか、この後アルバムカットで『囁き』、新曲で『月世界』『BRAN-NEW LOVER』『ミウ』のシングルを出した後、オリジナルアルバムは本作以外リリースすることなく、BMG JAPAN(後のアリオラ・ジャパン)に再移籍します。
サウンド的にも、バンドの状況的にも過渡期作と言えるでしょう。

BUCK-TICK My Fuckin' Valentine Live

98年の「SEXY STREAM LINER」アルバムツアーから。
サウンド、状況とも過渡期と書きましたが、ライブパフォーマンスに関してはこの時期から安定感がグッと増した印象。
「MY FUCKIN' VALENTINE」は櫻井×今井の掛け合い曲のなかでも鉄板の一曲!

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ONE LIFE, ONE DEATH

2000.9.20(11th)

01. Baby, I want you.
02. CHECK UP
03. GLAMOROUS -FLUXUS-
04. 細胞具ドリー:ソラミミ:PHANTOM
05. カイン
06. Death wish
07. 女神
08. サファイア
09. RHAPSODY
10. FLAME

前述したマーキュリー→BMGへの再移籍もあり、前作から3年弱の期間を経てリリースされた11枚目。
今のところ最も長く間隔が空いてますが、30年やっててこの時以外ほぼリリースペースを保っているの、改めて考えると恐ろしい……。

さて、サウンド面では前作の実験が結実!打ち込みとバンドサウンドが絶妙に融合し、「シーケンス」という大きな武器を完全にモノにした感じがあります。
加えて、メロディーはよりポップになり、歌詞も幻想とメッセージ性を同居させた世界観が確立していきます。中期の代表作と呼ぶのにふさわしい一枚です。

惜しいのは、移籍や制作時期の関係で99年に出たシングル『BRAN-NEW LOVER』『ミウ』が入らなかった点。前作『SSL』~99年のシングル曲~本作『OLOD』でテクノ実験期が完成するという流れからも、単純に2曲とも名曲ということからも入ってほしかった……!
もしその2曲が入っていたら、『狂った太陽』に匹敵する名盤だったと思います。

BUCK TICK Baby I want you LIVE DIQ

『ONE LIFE, ONE DEATH』はオススメ曲が多いので迷ったんですが、やっぱ「Baby, I want you.」で。「GLAMOROUS」「ドリー」「RHAPSODY」「FLAME」もオススメですよ!
……でも30周年ファン投票で「サファイア」が1位になったのだけはよくわからんです。

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極東 I LOVE YOU

2002.3.6(12th)

01. 疾風のブレードランナー
02. 21st Cherry Boy
03. WARP DAY
04. 謝肉祭 -カーニバル-
05. TRIGGER
06. Long Distance Call
07. 極東より愛を込めて
08. GHOST
09. Brilliant
10. 王国 Kingdom come -moon rise-
11. Continue

おおっと、どうした!?と思うタイトルの12枚目。
このあたりからアルバムタイトルが良く言えばシュールかつ文学的、悪く言えばダサい方向へ振り切れていきます。

前年に起きたニューヨーク同時多発テロを受け、櫻井敦司の死生観・反戦への思いが色濃く出たアルバム。戦争について率直に歌う「極東より愛を込めて」や、自身の母の死と、母を想いながら戦場で死んでいく兵士をテーマとした「Long Distance Call」など、かなり踏み込んでいます。
そうした詞世界を尊重したのかサウンド面はおとなしめで、シングル曲を除いてはメロディアスなバラードが多め。元々、次作『Mona Lisa OVERDRIVE』と二枚組という構想だったらしく、激しめの曲はそちらに回されているという事情もあります。

「BUCK-TICKと言えば実験、毎回アルバムで新機軸!」と思って聴いてきた人にとっては若干肩透かし感もあり、評価の難しいアルバム。次作と合わせて聴いて、初めて完結という感じではないでしょうか。

BUCK-TICK 【13 極東より愛を込めて】

「愛を込め歌おう アジアの果てで 汝の敵を愛することが君にできるか」

ここまではっきりメッセージを打ち出した曲はBUCK-TICKではおそらく初めて。
こうした反戦に関する想いは、2018年作『No.0』へもつながっていきます。

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Mona Lisa OVERDRIVE

2003.2.13(13th)

01. ナカユビ
02. BUSTER
03. 残骸 -Shape2-
04. LIMBO
05. Mona Lisa
06. GIRL -Shape2-
07. Sid Vicious ON THE BEACH
08. BLACK CHERRY
09. 原罪
10. MONSTER
11. 愛ノ歌
12. Continuous

前作と対になった13枚目。

前作が戦争や世界情勢への悲しみを歌ったアルバムなら、こちらは怒りを歌ったアルバム。前作のメッセージ性を引継ぎつつ、1曲目のタイトル通り「ナカユビを突き立てる」内容の歌詞が多くなっています。
サウンドもそれに呼応して攻撃的で尖ったものになっており、これでもかとシーケンスを乗せてリズムを疾走させています。激しめでピコピコしたBUCK-TICKが好きな人にはたまらないのでは。

ただ、個人的には『極東~』と『Mona Lisa~』は2枚に分けたことで散漫になっているように感じること、これまでに比べ実験性が薄いことから、少し停滞期の印象も受けます。
事実、このアルバムツアーの後に各メンバーが1年間ソロ活動や他バンド活動を行ってもいますし、新たな刺激が必要な時期だったのではないでしょうか。

Sid Vicious ON THE BEACH BUCK-TICK@天使のリボルバー

『Mona Lisa OVERDRIVE』からは、あえての「Sid Vicious ON THE BEACH」をご紹介。
今井さんがメインボーカルを務めた曲。ご機嫌なロックナンバー(音源版はもっとピコピコしてます)ながら、「コバルト60 打ち上げ花火」と原爆実験を思わせる歌詞がでてきたり、メッセージ性は一貫しています。
めずらしくMCしている今井さんが可愛い!

harebarem7
harebarem7
@harebarem7

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