BUCK-TICKのオリジナルアルバムをレビューしてみた!「HURRY UP MODE」から「No.0」までの魅力を紹介
BUCK-TICKのオリジナルアルバムの魅力をまとめました。インディーズの頃に発表した『HURRY UP MODE』から『No.0』までの収録曲はもちろん、その作品に込められた想いや、発表当時の状況なども紹介しています。気になる楽曲があった方は、ぜひ聴いてみてください。
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『狂った太陽』が初期最高傑作なら、こちらは初期の集大成。
再録ベスト盤ですが、公式には6thオリジナルアルバムとなっています。
『狂った太陽』を経て、「今やったらもっとかっこいいはず!ていうか本当はこうしたかったんだよ!」と過去の曲をアレンジし直して再録。
リアレンジアルバムは大抵オリジナルを超えられないものですが、これに関しては別。特に『HURRY UP MODE』~『TABOO』の曲は断然こっちの方がいいです。ベストじゃなくてオリジナルアルバム、と言い張るのがわかるくらい生まれ変わっています。(『TABOO』までが色んな意味で未熟というのもあるけど……)
ただし『狂った太陽』の曲はアレンジしようがなかったのかどれも微妙。「JUPITER」のグレゴリオ聖歌バージョンは好きですが。
また、エンジニアの比留間整さんと並んでBUCK-TICKサウンドを支えるマニピュレーターの横山和俊さん(横ちゃん)がこのアルバムから参加しているのもポイントです。
時間がない人は、『狂った太陽』と『殺シノ調ベ』を聴いておけば初期はだいたいカバーできるよ!
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93曲入り7枚目。
公式では10曲目までが収録曲、その後は無音とノイズが続き、93曲目に隠しトラック「D・T・D」が入っています。
「暗闇よりももっと昏く」を意味するアルバムタイトル通り、内容はダーク&ヘビー。全体にテンポが遅く、重たいギターリフ曲が中心となっています。16ビートやシャッフルを取り入れた曲も増えていますが、まったく軽快にならずおどろおどろしい悪夢のような仕上がり。(リズム隊が横ノリ苦手だったせいもある)
ヒデさんの美メロとあっちゃんの魔界のプリンスっぷりが炸裂する「ドレス」、屍たちが踊るダブって感じの「キラメキの中で...」、今わの際に脳内再生間違いなしの「die」など、最初はとっつきにくいかもしれませんが、ハマると抜け出せないダーク系名曲が多いアルバムです。中級者向きかな。
また、デビューから『殺シノ調ベ』までの5年を初期とするなら、本作からの約10年、90年代中頃から00年代中頃の『Mona Lisa OVERDRIVE』あたりまでが中期(実験期)と言えるのではないでしょうか。
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16曲入り70分の大作。ご覧の通り曲名が全部怖いです。「限りなく鼠」ってどういうことだよ……。で、輪をかけて中身がもっと怖い。
遺言かな?って思うような語りから始まり、デタラメ英語で「I'm just simple madness man.(わたしはきょうじんです)」と叫び、「君のヴァ〇ナがほしい~!」と踊り、「生まれてきてごめんなさい、ありがとう」と言いながら宇宙に還る……頭4曲でこれです。このテンションで16曲70分。
BUCK-TICK史上最も難解かつカオス、しかし同時にベスト5に入る名盤だと思います。
音楽的には今井さんの実験精神が暴走し、ノイズ、アンビエントがてんこ盛り。そこにあっちゃんの暗黒自己否定死生観(マジでこの頃の歌詞は「この人死んじゃうのでは……」って心配になる)がミックスされて、異形の音楽になっています。これぞBUCK-TICKの真骨頂。
さらに、このアルバムから一気に歌唱力・演奏力が上がっていることもポイント。音の質感も90年代J-ROCK感が薄くなり、かと言って同時代の洋楽っぽくもなく、音像の面でオリジナリティを確立した一枚でもあります。
死ぬほどオススメの一枚ですが、間違いなく上級者向け。でもハマってきたら早いタイミングでぜひ聴いてほしい!
ちなみに発売直後に回収→再発してますが、理由はイスラームのコーランをサンプリングしたからです。色々やばい。
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前作と打って変わって曲名が可愛い9枚目。
白・黒・オレンジでまとめられたジャケもこれまでにない感じ。
ここ数作の反動かポップで聴きやすい曲が多く、久々にちゃんとサビで盛り上がる曲や8ビートでノレる曲が入っています。歌詞もソフトになり、使っている単語はおどろおどろしいものの、内容はラブソングが多いです。
とは言え、デビュー時のへなちょこビートロックとは別物。歌唱力・演奏力も上がり、これまでに獲得したダークマターをスパイスに使っているので(実はアルバム通して後ろでずーーーっとノイズが鳴ってたり)、ポップさの中にしっかり毒が入った聴き飽きない1枚になっています。個人的には90年代では『狂った太陽』『Six/Nine』と並んで好き。
BT流ギターポップ「キャンディ」、BT流8ビートロック「Ash-ra」、BT流ドリームポップ「COSMOS」は必聴。BT初心者にも安心しておすすめできるアルバムです。
また、本作リリース後にレコード会社をビクターからマーキュリーへ移籍。ビクター作品の『HURRY UP MODE』から『COSMOS』までと、ビクター復帰作20thアルバム『アトム 未来派 No.9』はApple Musicのストリーミングで聴くことができます。
「とりあえずBUCK-TICK聴いてみたい」という方は、そちらからもぜひ~。
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ビクターからマーキュリーに移籍してリリースした10枚目。
BUCK-TICKの音楽的核のひとつである「シーケンス(テクノ的な打ち込みのリズムや音色・シンセサイザーのループフレーズ、SE的なサウンドなど)」を取り入れる実験と挑戦が、ここから本格的に始まります。
打ち込みをバンドサウンドと融合させること自体は『狂った太陽』の頃からやっているのですが、ここまで打ち込み要素を前面に押し出したのは本作から。当時の海外テクノシーンで流行していたドラムンベースを取り入れた意欲作です。
しかし、「MY FUCKIN’ VALENTINE」などそれにより生まれた名曲もあるものの、正直まだ実験途中のアルバムという印象は拭えません。また、サウンド面での実験が先立ち、メロディーや歌詞が弱く感じる部分も。
ちなみに、マーキュリーとは上手くいかなかったのか、この後アルバムカットで『囁き』、新曲で『月世界』『BRAN-NEW LOVER』『ミウ』のシングルを出した後、オリジナルアルバムは本作以外リリースすることなく、BMG JAPAN(後のアリオラ・ジャパン)に再移籍します。
サウンド的にも、バンドの状況的にも過渡期作と言えるでしょう。
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前述したマーキュリー→BMGへの再移籍もあり、前作から3年弱の期間を経てリリースされた11枚目。
今のところ最も長く間隔が空いてますが、30年やっててこの時以外ほぼリリースペースを保っているの、改めて考えると恐ろしい……。
さて、サウンド面では前作の実験が結実!打ち込みとバンドサウンドが絶妙に融合し、「シーケンス」という大きな武器を完全にモノにした感じがあります。
加えて、メロディーはよりポップになり、歌詞も幻想とメッセージ性を同居させた世界観が確立していきます。中期の代表作と呼ぶのにふさわしい一枚です。
惜しいのは、移籍や制作時期の関係で99年に出たシングル『BRAN-NEW LOVER』『ミウ』が入らなかった点。前作『SSL』~99年のシングル曲~本作『OLOD』でテクノ実験期が完成するという流れからも、単純に2曲とも名曲ということからも入ってほしかった……!
もしその2曲が入っていたら、『狂った太陽』に匹敵する名盤だったと思います。
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おおっと、どうした!?と思うタイトルの12枚目。
このあたりからアルバムタイトルが良く言えばシュールかつ文学的、悪く言えばダサい方向へ振り切れていきます。
前年に起きたニューヨーク同時多発テロを受け、櫻井敦司の死生観・反戦への思いが色濃く出たアルバム。戦争について率直に歌う「極東より愛を込めて」や、自身の母の死と、母を想いながら戦場で死んでいく兵士をテーマとした「Long Distance Call」など、かなり踏み込んでいます。
そうした詞世界を尊重したのかサウンド面はおとなしめで、シングル曲を除いてはメロディアスなバラードが多め。元々、次作『Mona Lisa OVERDRIVE』と二枚組という構想だったらしく、激しめの曲はそちらに回されているという事情もあります。
「BUCK-TICKと言えば実験、毎回アルバムで新機軸!」と思って聴いてきた人にとっては若干肩透かし感もあり、評価の難しいアルバム。次作と合わせて聴いて、初めて完結という感じではないでしょうか。
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前作と対になった13枚目。
前作が戦争や世界情勢への悲しみを歌ったアルバムなら、こちらは怒りを歌ったアルバム。前作のメッセージ性を引継ぎつつ、1曲目のタイトル通り「ナカユビを突き立てる」内容の歌詞が多くなっています。
サウンドもそれに呼応して攻撃的で尖ったものになっており、これでもかとシーケンスを乗せてリズムを疾走させています。激しめでピコピコしたBUCK-TICKが好きな人にはたまらないのでは。
ただ、個人的には『極東~』と『Mona Lisa~』は2枚に分けたことで散漫になっているように感じること、これまでに比べ実験性が薄いことから、少し停滞期の印象も受けます。
事実、このアルバムツアーの後に各メンバーが1年間ソロ活動や他バンド活動を行ってもいますし、新たな刺激が必要な時期だったのではないでしょうか。
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