花は咲くか(漫画・映画)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『花は咲くか』とは、日高ショーコによるボーイズラブ漫画作品。ルチル(幻冬舎コミックス)に掲載された(2006年8月~2015年1月)。広告代理店のクリエイティブディレクター、桜井和明(さくらいかずあき)は、通勤途中に美大生、水川蓉一(みながわよういち)と出会う。桜井は下宿を営む自宅が気に入って頻繁に訪ねるようになり、やがて蓉一に惹かれるようになる。桜井と蓉一の恋愛と、ふたりを取り巻く蓉一の家の下宿人や友人たちの人間ドラマが描かれる。

『花は咲くか』の概要

『花は咲くか』とは、日高ショーコによるボーイズラブ漫画作品。2006年8月から2015年1月にルチル(幻冬舎コミックス)に掲載された。単行本は全5巻。累計発行部数35万部を超えるベストセラー漫画。「このBLがやばい!2016年度版」(宙出版)で第4位を獲得。繊細で美しい絵柄や細やかな心理描写、それにリアリティのあるストーリーで、熱狂的な人気を集めた。2011年、2013年には音声ドラマCDが発売され、2018年2月には実写映画化された。アニメ化ではなく、実写映画化されたことは、ファンの間では賛否両論あった。2015年あたりから、ボーイズラブ作品が次々に実写化され、作品によっては男性の鑑賞者も増え、ボーイズラブ作品の幅広い読者層を獲得したことが背景にあると思われる。
広告代理店のクリエイティブディレクターで、ワーカホリック気味なサラリーマン、桜井和明(さくらいかずあき)は、通勤途中の些細なトラブルをきっかけに美大生の水川蓉一(みながわよういち)に出会い、蓉一が下宿を営んでいる自宅を頻繁に訪ねるようになる。桜井は、次第に蓉一に惹かれるようになり、やがて蓉一の家に下宿する。住む世界も年齢もかけ離れた桜井と蓉一は、少しずつ理解し合い、関係性を深めていく。蓉一は幼い頃に両親を事故で亡くしており、そのことが心に重く残っている。美大に通う大学生である蓉一は、画家だった父親に似て絵の才能はあるが、感情を表に出すことが少なく、人付き合いが上手ではない。自宅に下宿している蓉一の親戚の若者たちは、そんな蓉一を支えながら暮らしている。ストーリーの中心になっているのは、桜井と蓉一の恋愛だが、蓉一が両親の死について抱いていた疑念を払拭し、父親の影からの自立する課程や、他人に関心を持てなかった桜井が蓉一との出会いから変わっていく課程も描かれている。

『花は咲くか』のあらすじ・ストーリー

桜井と蓉一の出会いから、桜井が蓉一に対する気持ちを自覚するまで

桜井和明(さくらいかずあき)は、会社帰りの深夜の駅で大学生にぶつかり、彼が持っていた飲み物で仕事の資料である雑誌を台なしにされた。その大学生、水川蓉一(みながわよういち)は、同じ雑誌を持っているので自分のと交換すると言い、自宅に案内する。そこは庭の広い古い日本家屋だった。蓉一は下宿をやっているという。桜井は下宿人である水川菖太(みながわしょうた)とも顔を合わせる。翌日の会社帰りに、桜井は過労から体調が悪くなり、駅で倒れそうになる。その際、桜井は偶然、蓉一の下宿人である水川菖太や、同じく下宿人の岩崎竹生(いわさきたけお)と出くわした。菖太は、桜井が蓉一の友人だと考えて、蓉一の家に運ぶ。その夜、桜井は蓉一の家に泊まった。それ以来、桜井は蓉一の家に出入りするようになった。その後、桜井は、一緒に仕事をすることになっている広告業界の有名ディレクター、柏木雅史(かしわぎまさふみ)が、地元の駅で蓉一と話をしているところを見かける。その後、柏木との仕事では、撮影場所として柏木が提案した、水川蓉一の自宅である水川邸が使われた。桜井は、蓉一の死んだ父親が柏木の友人だったと柏木から聞く。当初、桜井は、無愛想で態度が大きい蓉一を苦手だと思っていたが、次第に惹かれていくのを自覚する。蓉一のほうも、普段は他人に興味を持てないのに、桜井には感情を露わにしてしまう。そんなとき、蓉一と同じ大学に通う美大生、藤本浩輝(ふじもとこうき)が、蓉一に興味を持ち始め、仲良くなりたいから下宿させて欲しいと蓉一に言う。蓉一に積極的な態度を示す藤本を見た桜井は、管理人の吉富(よしとみ)の勧めもあり、自分も蓉一の家に週末限定で下宿することを決める。

桜井と蓉一それぞれが自分の気持ちを自覚してから

蓉一は、自分が桜井を見る目が他の人に対するものと違うと藤本から言われ、桜井に惹かれていることに気づく。藤本からは、好きだと告白されるが、それに対して返事はしない。いっぽう桜井は、深夜に蓉一の家に帰宅したとき、蓉一に抱きつかれてとっさにキスをする。その後、桜井は、蓉一との年齢差や立場の違いを考え、自分が蓉一の将来を奪うのではないかと思い悩む。蓉一に対する態度を決めかねていたところ、上司から、出世コースである関西支社への移動を打診され、申し出を受けた。悩んだ後、桜井は蓉一に自分の思いを伝え、蓉一も桜井に好きだと告白する。桜井は蓉一に、部屋にいつ来てもいいように合鍵を渡すが、多忙で帰宅が遅いため、なかなか会えず、関西支社への移動で大阪に転勤することをなかなか伝えられない。ところが蓉一は、自宅に来た柏木が、桜井のことを話しているのを耳にして、桜井の大阪転勤を知る。転勤のことを知って衝撃を受けた蓉一が、はっきりしない桜井の態度をなじって、ふたりは言い争いになり、桜井はしばらく時間を置こうと蓉一に告げる。
桜井は、会社を退社して独立するという柏木から、関西支社での3年間の後に、自分の会社に来ないかと引き抜きの話を持ちかけられる。いっぽう蓉一は、大学で藤本や同級生たちとの共同制作で、教授から絵にあった父親の影が消えたと言われ、絵を描く意欲を新たにする。共同制作で一緒に過ごす時間が増えた藤本からは、桜井より自分のほうが蓉一を思っていると強く迫られるが、蓉一ははっきりと断った。そして、桜井と蓉一は、改めて互いの気持ちを確かめ合い、身体の関係を持つ。その後、蓉一は桜井に、両親の死が心中だったのではないかという幼い頃からの疑惑を打ち明ける。

桜井の大阪転勤が決まった後

蓉一は、父親がアトリエにしていた、自宅の敷地内にある蔵を、自分のアトリエとして使うようになる。桜井は、蓉一の両親のことについて誰かに聞いて事情を知りたいと考え、そのことについて柏木に訊ねる。いっぽう蓉一は、維持費の高い水川邸を取り壊してマンションを建てる話があることを知る。建前だけではなく、友人たちを下宿させることで家を維持しようと考え、家のことを自分に任せて欲しいと、水川家本家の伯父の菖一に言う。桜井は蓉一の側にいるために、マンションを会社の後輩に貸し、完全に蓉一のいる水川邸に引っ越す。大阪転勤後も、休みで帰った際はそこに帰ると蓉一に言う。また、蓉一の両親の死は、事故死であり、直前に遺言書を書いていたことは偶然だと蓉一に言い、蓉一も納得する。

思いが通じ合った後のふたり

桜井の大阪転勤後、水川邸の管理人をしていた吉富は実家の不動産業に専念することになり、蓉一が管理人をすることになった。菖太は高校卒業して大学進学と同時に実家に戻った。藤本はそのまま下宿し、蓉一は大学の友人を下宿人に加える。桜井と蓉一は、時間をつくって行き来して会っている。桜井は、柏木や吉富が、蓉一の母親の話を避けることが気に掛かっていた。蓉一自身も、幼い頃、自分に背を向けてばかりだった母親、アヤコのことを知りたいと考えていた。桜井は柏木に、アヤコのことについて訊ねる。アヤコの精神の病は重く、息子の蓉一のことも認識しなくなりかけていた。そのことで蓉介は悩み、睡眠不足だったことが事故に繋がったという。桜井はそのことを蓉一に伝える。蓉一はアヤコと花の種を蒔いたことを思いだし、アヤコは自分のことをきっと認識していたと考える。

『花は咲くか』の登場人物・キャラクター

主要人物

桜井和明(さくらいかずあき)

演:天野浩成、CV:森川智之
広告代理店のクリエイティブディレクター。37歳。ワーカホリック気味で仕事三昧。毎日寝不足で、恋愛には冷めていた。仕事面では有能だが、近年は以前と違って仕事に熱が感じられないと部下たちには思われていた。恋人と住むつもりでマンションを買ったものの、その後、恋人とは別れたため一人暮らし。マンションが駅から遠いため、通勤に苦労している。早くに両親を亡くしているというところは蓉一と同じ。他人にあまり関心を示さないところも似ている。男性で、年齢差もある蓉一に恋心を抱いたのは、初めてのことだった。

水川蓉一(みながわよういち)

演:渡邉剣、CV:近藤隆
画家だった父親を持つ美大生。19歳。父親と母親は、蓉一が幼い頃に交通事故で死んだが、精神を病んだ妻を道連れに父親が心中をはかったのではないかと疑う者もいた。両親の死がトラウマを残しているのか、蓉一は自分の感情をあまり表に出さず、他人に興味を示さない。両親の死後、高校に入るまでは水川家本家で暮らしていたが、高校入学後、父親の蓉介(ようすけ)の家に移り住んだ。出会った当初から好意があったということか、唯一、桜井だけには感情を露わにする。父親と同じようになることを期待されているという思い込みがあり、高校も大学も父親と同じところを選んだ。桜井との出会いで、周囲と人間との付き合い方が変わり、父親の影を追うのも止める。

藤本浩輝(ふじもとこうき)

演:塩野瑛久、CV:鈴木達央
蓉一と同じ大学の美大生。画を書くことよりも、モデルの仕事など服飾関係に興味がある。広く浅く、多くの友達付き合いがある。蓉一に好意を持ち、親しくなるために下宿人となる。

水川菖太(みながわしょうた)

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