明日に向かって撃て!(映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『明日に向かって撃て!』とは、1969年にアメリカで制作・公開された西部劇映画である。19世紀に実在した銀行強盗のブッチ・キャシディとサンダンス・キッドの逃避行を題材に制作された。アメリカンニューシネマの代表作として知られ、監督はジョージ・ロイ・ヒル、主演の二人はポール・ニューマンとロバート・レッドフォードが演じている。1969年の米国アカデミー賞にノミネート。B・J・トーマスが歌う「雨にぬれても」はアカデミー主題歌賞を受賞し、世界中で大ヒットした。

『明日に向かって撃て!』の概要

『明日に向かって撃て!』とはアメリカで1969年に公開された西部劇映画である。主演は『ハスラー』や『動く標的』などで人気絶頂だったポール・ニューマンと当時はまだ無名であったロバート・レッドフォードが演じ、二人と行動を共にするヒロインは1967年の公開の映画『卒業』で一躍有名となったキャサリン・ロスが演じた。
監督はジョージ・ロイ・ヒル、脚本はウィリアム・ゴールドマンが担当している。
音楽はカーペンターズの「遥かなる影(They Long to Be) Close to You」の作曲者としても有名なメロディーメーカー、バート・バカラックが担当した。B・J・トーマスが歌った「雨にぬれても(Raindrops Keep Fallin' on My Head)」は世界中で大ヒットし、同じく第42回アカデミー賞主題歌賞を受賞している。

原題は『Butch Cassidy and the Sundance Kid』で、アメリカ開拓時代の末期に実在したアウトロー、ブッチ・キャシディとサンダンス・キッドの半生を描いている。
強盗団を率いて銀行強盗や列車強盗を繰り返していた二人は、鉄道会社の社長に雇われた凄腕の追跡者たちに追われる身となってしまう。なんとか逃げ切った二人は、サンダンス・キッドの恋人であるエッタ・プレイスを連れ、南米ボリビアに渡った。まっとうな職に就こうとするがうまくいかず、結局銀行強盗を繰り返してしまう。悪事に手を染め続けた二人は、警官隊や軍隊に囲まれ、壮絶な最期を遂げるのだった。

『明日に向かって撃て!』がヒットした後、ジョージ・ロイ・ヒル監督、ボール・ニューマン、ロバート・レッドフォードの三人は1973年に同じメンバーで映画『スティング』を製作した。こちらも大ヒットし、第48回アカデミー賞作品賞を受賞している。

『明日に向かって撃て!』のあらすじ・ストーリー

「壁の穴」強盗団

1898年、アメリカ西部ワイオミング州では「壁の穴」強盗団が西部を支配していた。彼らは銀行強盗や列車強盗を繰り返し、その名を知らない者はいないほどの悪党集団であった。
強盗団のボスを務めるのはブッチ・キャシディ。頭の回転が速く計画を立てるのが得意な頭脳派で、口も達者なユーモアを交えながら話す男である。
ブッチの相棒は、早撃ちで有名なガンマンのサンダンス・キッド。ブッチとは対照に寡黙な男だった。

二人が銀行強盗の下見のためにアジトを留守にしている間に、ボスの座を狙うハーヴェイ・ローガンは残りの手下を自分の味方につけていた。アジトに戻ったブッチに決闘を申し込むが、ブッチのおしゃべりに油断したところ、股間を蹴り上げられてその場にうずくまってしまう。ハーヴェイを一発でKOしたブッチは仲間のニュース・カーヴァーから、ハーヴェイが銀行ではなく列車強盗を計画していたことを聞く。それは列車の虚を突いて、銀行からの帰りの列車だけではなく銀行へ向かう列車も襲うという大胆なものだった。「それは名案だな」と感心したブッチは、早速列車強盗を実行に移すのだった。

ブッチら強盗団は往路の列車を停車させ、金庫がある車両の扉を開けるように命令する。しかし車両の中にいる鉄道会社社員のウッドコックは「私は社長から信頼されてこの仕事を任されているので、それを裏切ることはできない」とブッチの命令を拒否する。
しびれを切らしたブッチはダイナマイトで車両を爆破させる。過激な行動をしたものの、なるべく人を傷つけたくないブッチは、ウッドコックのそばへ駆けつけて彼を介抱をする。大怪我はしたものの命拾いをしたウッドコックに、ブッチは胸をなでおろすのだった。
銀行に向かう往路の列車には大した金額は積まれていなかったが、ブッチはメンバーに「上出来だ」と告げ、その場を立ち去る。

しばしの休息

今回の列車強盗ではそれほどの稼ぎにはならなかったが、ブッチとサンダンスはその金で町の娼館でくつろいでいた。町の広場では壁の穴強盗団を逮捕するために自警団を組織しようと保安官が演説をしているが、誰もそれに加わろうとしない。そんな様子を二人は娼館の2階から眺めていた。
いつの間にか保安官の演説が終わり、当時珍しかった自転車のセールストークが始まった。ブッチは女性と寝室に行き、サンダンスは恋人に会いに出かける。
恋人のエッタ・プレイスの家に忍び込んだサンダンスはエッタを銃で脅しからかうが、しばらく姿を見せなかったことを逆にエッタに叱られる。

翌朝サンダンスの隣で寝ていたエッタは、窓の外から自分を呼ぶ歌声で目を覚ます。歌っていたのは自転車に乗ったブッチだった。急いで家の外に出たエッタを自転車に乗せ、ブッチは走り出す。

楽しそうに笑うエッタの姿を目にしたブッチは、調子に乗って牧場の柵を壊してしまい、牛に追いかけられる。ブッチとエッタは笑いながら逃げ出すのだった。

日も高くなる頃エッタの家に帰ってきた二人。ちょうど寝起きのサンダンスは二人の姿を見てあきれたように首を振った。

追跡者

「壁の穴」強盗団は復路の列車強盗を実行する。ブッチは列車の扉を開けろと命令するが、乗っていたのは往路の列車と同じくウッドコックだった。旧友にあったかのように笑顔を見せるブッチに、社長の信頼を裏切ることはできないと相変わらず頑なにウッドコックは拒む。なんとか宥めすかしてドアを開けさせたブッチは、前回よりも頑丈になっている金庫を目にし、驚く。仕方なく前回よりも爆薬の量を増やし爆破したが、爆薬が多すぎ金庫まで吹っ飛ばしてしまう。舞い上がる紙幣を拾い集める仲間たちを見て、ブッチとサンダンスは楽しそうに笑う。

そこへもう一台列車がやってくる。最新式の機関車に貨車が1台という不気味な列車が近くまで来て止まると、貨車の中から馬に乗った6人の男たちが飛び出してきた。慌てて逃げだす強盗団だったが、6人は他のメンバーにはわき目もふらずブッチとサンダンスだけを追いかけてくる。二人は山岳地帯や砂漠を1日中走ったが、追跡者たちはあきらめる様子はない。

そこでブッチとサンダンスは一旦町に戻り、いつもの娼館に身を潜める。一度はやり過ごしたかに見えたが、戻ってきた追跡者たちに脅された見張りの男は二人の居場所を教えてしまう。

再び逃げ出した二人は夜の荒野を走り回るが、追跡者たちを振り切ることがどうしてもできない。ブッチの馬にサンダンスが飛び乗り二手に分かれたように見せかけたが、一旦は二手に分かれた追跡者たちもすぐ仕掛けに気付き、一団となって追跡してきた。

追い詰められた二人は再度町へ戻り、旧知の間柄のブレッドソー保安官に、足を洗うので軍隊に入れてもらえないかと頼む。しかしブレッドソーは二人が根っからの悪人ではないことは認めつつも、これまでの犯罪に目をつぶることはできないとブッチの頼みを断る。そして二人と通じていると思われないように、ブッチらに自分を縛り上げるように命令する。

夜が明け、再び荒野を逃げ回るブッチとサンダンスにもさすがに疲れや焦りが見え始めていた。
二人は追跡者たちの中にオクラホマの追跡の名人ボルチモア卿と、白いカンカン帽が特徴のワイオミングの凄腕保安官、レフォーズがいることを確信する。一流の追跡者が相手だと知った二人は怯えを見せるのだった。

二人は最後の馬も捨て岩山に登っていく。しかし逃げようとした先は断崖絶壁で、追い詰められてしまった。銃撃戦を覚悟するサンダンスに、ブッチは崖下に流れる川に飛び降りることを提案した。しかしそれを頑なに拒否するサンダンスと言い合ううちに、サンダンスは「俺は泳げないんだ」と本音を口にする。あっけにとられたあと笑い出したブッチは、しかめつらのサンダンスを連れて崖から川へ飛び込む。
濁流にもまれながら二人は追手から逃れることになんとか成功するのだった。

ボリビアへ

ボロボロになった二人はなんとかエッタの家までたどり着く。新聞でブッチとサンダンスの死亡記事を読んでいたエッタは無事な二人を見て胸をなでおろした。
ブッチは新聞から、追跡者がボルチモア卿とレフォーズ保安官だったことや、ユニオンパシフィック鉄道の社長ハリマンに、ブッチらを殺すまでの契約で雇われていたことを知る。このままではいずれ捕まって殺されてしまうと覚悟した二人は、以前からブッチが言っていたボリビアに行くことを決意する。サンダンスに誘われたエッタは、「二人が死ぬところは絶対に見ない」という条件でついて行くことに同意する。

3人は鉄道に乗ってまずニューヨークを目指す。ニューヨーク観光を十分楽しんだ後、船に乗ってボリビアに到着する。
ボリビアはゴールドラッシュに沸く楽園だとブッチは話していたが、実際は何もない田舎だった。スペイン語が話せるというのもブッチの嘘で、二人はエッタにスペイン語を習い、片言のスペイン語ながら何とか銀行強盗を成功させる。
味を占めた3人はその後も次々と銀行を襲っていく。いつしか指名手配され、ボリビアでも警察に追われる身になっていった。
ある時ブッチはレストランの外に見覚えのある白いカンカン帽をかぶった男を見かける。追ってきたレヒューズ保安官に違いないと思ったブッチは、銀行強盗から手を引くことにするのだった。

ブッチとサンダンスは鉱山のマネージャー、パーシー・ギャリスに会いに行った。サンダンスの銃の腕を見たパーシーは給料運搬の護衛に二人を雇う。銀行から鉱山に戻る途中で、3人は山賊に襲われ、パーシーは最初の一発で絶命してしまった。二人は一度は逃げようとするが、給料袋を取り戻すために山賊たちと戦う覚悟を決める。ブッチは「実はいままで人を撃ったことがないんだ」とサンダンスに打ち明けるが、銃撃戦の中山賊から給料袋を取り返すことに成功する。

犯罪や人殺しから足を洗うつもりだった二人に、エッタは農場や牧場で働くことを勧める。しかし理由をつけて嫌がる二人にエッタも愛想をつかし、一人でアメリカに帰ってしまった。

明日に向かって撃て!

ブッチとサンダンスは山賊の真似事などをして生活していた。しかし、二人が乗る馬が盗まれたものだと気づいた少年が、警察に二人のことを告げたのだ。

食事をしていた二人は警官隊による突然の発砲を受ける。激しい銃撃戦の中で懸命に反撃するが、二人とも負傷してしまった。建物の中に避難するが、警官隊だけではなく軍隊も加わり、100人以上の銃口に取り囲まれてしまう。

建物の中でブッチは「次はもっといいところに行こう」とサンダンスに持ちかける。もうブッチの言葉は信じないとサンダンスは聞こえないふりをするが、次はオーストラリアに行こうとブッチは誘う。英語も通じるし、銀行も女もよりどりみどりなのだそうだ。立ち上がり外に出ようとする前に、ブッチは思い出したかのように「白いカンカン帽の男を見たか?」とサンダンスに聞く。見ていないというサンダンスに「レフォーズじゃないなら敵は大したことないな」とつぶやくブッチ。意を決した二人が外に飛び出し、何百発もの銃声が響き渡る中で、映画は幕を閉じるのだった。

『明日に向かって撃て!』の登場人物・キャラクター

メインキャラクター

ブッチ・キャシディ(演:ポール・ニューマン)

ブッチ・キャシディ

吹き替え:羽佐間道夫
「壁の穴」強盗団のリーダー。30歳後半。頭の回転が早く、口もうまい。交渉事は任されているが、いつも相手をからかうような口調で話す。
夢見がちな男で、いつも新天地のボリビアに一緒に行こうとサンダンスを誘っている。
女性には優しく、売春婦のアグネスからは「男の中の男」と呼ばれていた。サンダンス・キッドの恋人であるエッタもブッチに惹かれており、二人は自転車デートを楽しむ。

列車強盗の被害者である鉄道会社の社長が雇った追手にサンダンスと二人追われる身となってしまい、結局ボリビアに行くことになる。
ボリビアでも銀行強盗をしていたが、追手の存在を感じて、一度は堅気の世界に戻ろうとした。しかし上手くいかず、再び犯罪に手を染める。サンダンスとともに警官隊に取り囲まれ、集中砲火を浴びて死亡した。

サンダンス・キッド(演:ロバート・レッドフォード)

サンダンス・キッド

吹き替え:広川太一郎
ブッチ・キャシディの相棒。30歳前後。無口だが髭の似合うイケメンである。
振り向きざまに相手のガンホルダーを撃ち抜いて銃を弾き飛ばし、そこに5回連続で弾を命中させるほどの早撃ちの名人。
教師をしているエッタ・プレイスという恋人がいる。
「壁の穴」強盗団の一味として列車強盗を行い、ブッチと一緒に追われる身となる。
ブッチとエッタと3人でボリビアに行くが、ここでも銀行強盗として追われる身となり、ブッチとともに悲惨な最期を遂げる。

エッタ・プレイス(演:キャサリン・ロス)

エッタ・プレイス

吹き替え:鈴木弘子
26歳。学校の教師をしていたがサンダンス・キッドと恋仲になる。その後ブッチと出会い、ブッチの優しさにも惹かれている。
二人が追跡者から逃れるためボリビアに行くことになった時は、二人が死ぬところは見ないという約束でついていく。ボリビアでは二人にスペイン語を教え、一緒に銀行強盗にも加わる。
雇い主が殺されてしまい職を失った二人に、農場や牧場の仕事をすすめる。しかし結局アウトローな強盗の道を選ぶ二人に失望し、アメリカに帰国する。

7rkenta114
7rkenta114
@7rkenta114

Related Articles関連記事

アベンジャーズ/エンドゲーム(MCU)のネタバレ解説・考察まとめ

アベンジャーズ/エンドゲーム(MCU)のネタバレ解説・考察まとめ

『アベンジャーズ/エンドゲーム』とは、2019年に公開されたディズニー配給・マーベル製作の『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』の続編である。本作は、宇宙最大のパワーを持つ6つの石”インフィニティ・ストーン”を集めたサノスがアベンジャーズのメンバーを含む、全宇宙の生命の半分を消滅させたところから始まる。人類を守るため、”キャプテン・アメリカ”や”アイアンマン”を筆頭に最強ヒーローたちが再び立ち上がり、史上最凶最悪の敵・サノスに逆襲(アベンジ)する。

Read Article

幸福の条件(映画)のネタバレ解説・考察まとめ

幸福の条件(映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『幸福の条件』とは、1993年にアメリカ合衆国で制作された恋愛映画である。突然の景気後退で経済的窮地に陥った若い夫婦の前に大富豪が現れ、100万ドルと交換に妻と一晩だけ過ごさせて欲しいと究極の選択を迫る。その申し出を受けたことを機に揺れ動いていく夫婦の姿を描いた衝撃的な作品。 『ゴースト/ニューヨークの幻』のデミ・ムーアと『追憶』のロバート・レッドフォードが共演し、『危険な情事』と『運命の女』を手掛けたエイドリアン・ラインが監督を務めた。

Read Article

【MCU】仲良しっぷりが伝わるアベンジャーズキャストの画像まとめ【マーベル・コミックス】

【MCU】仲良しっぷりが伝わるアベンジャーズキャストの画像まとめ【マーベル・コミックス】

世界中にヒーロー映画旋風を巻き起こしてきた『アベンジャーズ』シリーズ。2019年、遂にヒーローたちの物語の終幕となる『アベンジャーズ/エンドゲーム』が公開されました。ここではロバート・ダウニー・Jr.やスカーレット・ヨハンソンをはじめとする、同作品に出演した超豪華キャストの集合写真などを集めました。撮影の舞台裏や貴重なオフショットを紹介していきます。

Read Article

目次 - Contents