明日に向かって撃て!(映画)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『明日に向かって撃て!』とは、1969年にアメリカで制作・公開された西部劇映画である。19世紀に実在した銀行強盗のブッチ・キャシディとサンダンス・キッドの逃避行を題材に制作された。アメリカンニューシネマの代表作として知られ、監督はジョージ・ロイ・ヒル、主演の二人はポール・ニューマンとロバート・レッドフォードが演じている。1969年の米国アカデミー賞にノミネート。B・J・トーマスが歌う「雨にぬれても」はアカデミー主題歌賞を受賞し、世界中で大ヒットした。

「壁の穴」強盗団

1890年代のアメリカ西部、ワイオミング州にある「壁の穴」と呼ばれる地で結成された強盗団。
リーダーはブッチ・キャシディで、サンダンス・キッド、ハーヴェイ・ローガン、ニュースカーヴァー、鼻ぺちゃカーリーなどがメンバーであった。
銀行強盗や列車強盗をしばしば行い、新聞にも取り上げられるほど有名な強盗団であった。

ボリビア

南アメリカ中央に位置する国。ブッチ曰く金、銀、錫の鉱山がたくさんあり、強盗をするにはうってつけの国。

『明日に向かって撃て!』の名言・名ゼリフ/名シーン・名場面

サンダンス・キッド「いてくれと言ったら出てってやるぜ」

ギャンブル相手が銃を抜こうとしているが動じないサンダンス・キッド

ギャンブルの相手に「金だけおいて出ていけ」と言われたサンダンスが答えるセリフ。
「いてくれって言うなら出てってやるぜ(If you invites us to stick around,we'll go)」

西部の男として出て行けと言われて出ていくのはプライドが許さないのだ。また自分の銃の腕に自信のあるサンダンスらしい、相手を挑発するようなセリフでもある。
早撃ちのサンダンス・キッドだと気づいたギャンブル相手が「すまなかった、忘れてくれ」と謝っても、「いてくれ」と言われるまでは腰を上げようとしないサンダンス。
相手がしぶしぶ「いてくれ」と言った後は「悪いな、行かなきゃならないんだ」と無表情でその場を立ち去る。

ブッチとエッタの自転車のシーン

草原を楽しそうに歩くブッチ(右)とエッタ(左)

この映画で最も有名なシーンの1つ。
ブッチとエッタがお互いに好意を抱いているのが画面越しからも伝わってくる、この映画の中で唯一穏やかなシーン。バックで流れる主題歌「雨にぬれても(Raindrops Keep Fallin' on my Head)」の明るいメロディに合わせて、のどかで平和な時間が描かれる。
エッタはブッチにも恋をしていることを隠さず、ブッチはサンダンスの恋人だとわかったうえでエッタに優しい愛の言葉をかける。それを見たサンダンスもブッチとエッタの関係を壊そうとはしない。3人の信頼関係や抱いている好意がわかる素敵なシーンである。

ブレッドソー保安官「お前たちの時代は終わったんだ」

ブッチ(左)にきつい言葉を投げかけるブレッドソー保安官(右)

ブッチとサンダンスが追跡者から逃れるため、軍隊に推挙してもらおうと旧知のブレッドソー保安官を訪ねる。
しかしブレッドソーは自分たちが犯してきた罪に全く無頓着な二人にあきれ返り、「お前たちの時代はもう終わったんだ、あとは血まみれになって死ぬだけなんだよ。お前たちができるのは死に場所を選ぶことぐらいしかないんだ(Your time is over and you're gonna die bloody, and all you can do is choose where.)」と辛らつな言葉を浴びせる。
ブレッドソーからも見放され、ブッチもこれ以上の作戦を立てることが出来ず、ひたすら追跡者から逃げるしかなくなった二人だった。

西部劇のヒーローらしからぬ二人

追跡者を振り切るため、崖から川に飛び込もうと促すブッチに対してサンダンスが半ばキレながら答えたセリフ。
「俺は泳げないんだ!( I can't swim.)」
ブッチとサンダンスの二人が無敵のヒーローではなく、弱みも持った普通の男たちだと強調するようなセリフ。
劇後半では二人が山賊に囲まれたときに、ブッチが「実は今まで人を撃ったことがない( I never shot anybody before.)」と告白する場面もある。

古典的な西部劇では、ストーリーは勧善懲悪ものであり、主人公は悪者を倒す正義のヒーローとして描かれている。しかしブッチとサンダンスの二人は追跡者に怯え逃げ回る、ヒーローらしからぬ主人公として描かれている。

映画史に残るラストシーン

銃弾の中に飛び出すブッチ(左)とサンダンス(右)
画面が次第にセピア色になっていく。

二人が飛び出したこのシーンで、映画はストップモーションになり何百という銃声だけが響き渡る。どれだけ銃弾を受けようとも、飛び出した二人の姿は倒れることはない。ここを切り抜けてオーストラリアへ行くという希望を胸に、飛び出した姿のまま止まっているのだ。そして少しずつ画面の色が色褪せていき、セピア色の画面になって映画が終わる。
このストップモーションとカラーからモノクロ、セピア色になる演出は、映画史に残るラストシーンとして有名である。

『明日に向かって撃て!』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

実話をもとにしたストーリー

前列左端がサンダンス・キッド、右端がブッチ・キャシディ

映画の冒頭で「実話に基づく物語である」とクレジットされる通り、主な登場人物、事件はほぼ史実の通りである。
ブッチ・キャシディ(本名:ロバート・ルロイ・パーカー、 1866年~1908年)とサンダンス・キッド(本名:ハリー・ロングボー、1867年~1908年)は西部で銀行強盗や列車強盗を繰り返し、南米ボリビアに移住するも1911年に警官隊により射殺されたという。

「壁の穴」強盗団の名前の由来

7rkenta114
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@7rkenta114

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