HELLO WORLD(アニメ映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『HELLO WORLD』とは2019年公開の伊藤智彦監督によるアニメ映画。2027年の京都市に住む堅書直実が、10年後から来たという自分自身から間もなく出会う交際相手を救ってほしいと頼まれて奮闘する姿を描く。
「この物語(セカイ)は、ラスト1秒でひっくり返る」 というキャッチコピーが示す通り、終盤ですべてが「ひっくり返る」どんでん返しが魅力となっている。

『HELLO WORLD』の概要

『HELLO WORLD』とは2019年9月20日公開の伊藤智彦監督によるアニメ映画である。
2027年の京都市に住む高校生の堅書直実が、10年後から来たという自分自身から、自分の住む世界がシミュレーター内に再現された過去の世界であると聞かされ、まもなく出会うことになる交際相手を死の運命から救ってほしいと懇願されるストーリー。序盤の物語の構図にはミスリードや布石が多分に含まれていて、終盤で「ひっくり返る」痛快な内容となっている。
キャッチコピーは「この物語(セカイ)は、ラスト1秒でひっくり返る」。このキャッチコピーにも作品を最後まで観る前と後で印象が変わるような含みが持たされている。

舞台となる京都市の景観として伏見稲荷大社、出町柳の鴨川デルタ、上賀茂神社などの京都を代表する史跡や名所が登場する。劇中に登場する舞台のモデルを巡る聖地巡礼イベントや、クライマックスの舞台となっている京都駅・京都タワー周辺に隣接する東本願寺でイベントなどがプロモーションの一環として行われ、多くの観光客を呼び込んだ。

『HELLO WORLD』のあらすじ・ストーリー

未来の自分と遭遇

直実(左)は10年後の世界から来た自分(右)と出会う

自分自身の決断に自信が持てず、主体性がないことがコンプレックスの堅書直実(かたがぎ なおみ)は、2027年の京都に住む凡庸な高校生。
ある日、不思議な三本足のカラスを追いかけた先で、2027年の10年後である2037年から来た未来の自分自身だと名乗る青年、「先生」(カタガキナオミ)と遭遇する。
「先生」の語るところによれば、いま直実が認識している世界は現実ではなく、歴史の保存を目的として“アルタラ”と呼ばれるシミュレーターの中に仮想世界として再現された過去の京都であり、このままシミュレーションが史実通りに進行した場合、直実は3か月後の夏にそれまであまり面識のなかった同級生の一行瑠璃と恋人同士になるものの、初デートの最中だった2027年7月3日、天災によって彼女と死別する運命を辿るという。「『先生』は、彼女と恋人らしい思い出を十分に作れなかった悔恨から、現実ではない仮想世界のシミュレーションであっても、死の運命を回避した瑠璃が幸せになれる歴史を見たいのだと言い、シミュレーターの中に再現された過去の直実に運命を変える助力を願う」が、すぐには信じきれない直実に対して「先生」は目の前で現実ではありえない現象を直実に見せたところ少しだけ信用するようになる。

歴史の改ざんと修復システム

自身の運命を変えることを決めた直実に「先生」からこれから起こる出来事が書かれたノートと共に仮想世界のみで使うことのできる神の手(魔法のような力)を授かり、初デートであり運命の日である7月3日に向けて、授かった力の特訓(貴金属を生成したり、小型の太陽を掌に生成する特訓)を積む傍らでは、近寄りがたい印象を持っていた瑠璃と急速に親密になるためにノートに書かれている出来事を基に行動していく。その行動の中で直実自身も瑠璃の人柄に惹かれていき、本来では、「無残な失敗に終わるはずだったチャリティー古本市のイベント」を成功の導き(ノートには書かれていない行動)、直実自身がとっていき、瑠璃と思想相愛になるが、そうした直実と「先生」の行動は“保存された歴史”の改ざんとなり、次第と“アルタラ”の自動修復システムから監視されるようになっていく。

未来では瑠璃が死ぬ運命である7月3日、現実の記録では直実と瑠璃は初デートに花火大会に2人で出かけるのであったが、2027年の世界では「死ぬ運命」を回避するために直実は瑠璃を花火大会に誘わなかった。しかし、歴史の辻褄合わせの為に自動修復システムが瑠璃を殺害しようと、自宅でくつろいでいる瑠璃のもとへと向かう自動修復システムを直実が攻撃・「先生」が指示をするという共闘をしていたが、自動修復システムが強制的に直実と瑠璃を花火大会の会場へ移動させ2037年の世界でのルリが脳死した場所で自動修復システムが瑠璃を殺そうとする。しかし、「先生」の「これが最後だ。周りへの影響を気にするな」との指示で直実は今までの集大成とも言えるようなブラックホール(のようなもの)を生成し、自動修復システムを撃退して運命を変えた。
だが、「先生」は本当の目的を直実に隠して接していた。本当の目的は現実世界である2037年の世界では脳死状態である未来の瑠璃を蘇生させることであり、そのために初デートの日に自動修復システムに殺害されていない瑠璃を2027年の世界から2037年へ連れ去る必要があった。そして、その直後に自動修復システムの暴走により崩壊していく2027年の世界に直実は取り残されるのであった。

直実と瑠璃

2037年の世界で瑠璃の蘇生させることに成功した「先生」は脳死状態であった瑠璃に「10年間の昏睡状態から奇跡的に回復した」という嘘に違和感を感じている瑠璃を言いくるめるが、瑠璃を追ってきた自動修復システムが2037年の世界へと溢れ出すのを見た「先生」は、この世界もまた未来にある“アルタラ”によって作り出された仮想世界であったことを悟る。そして自動修復システムに襲われ絶対絶命となるが、2027年の世界から現れた直実によって窮地を救われる。そこで2037年の京都市を巻き込んで暴走をしている自動修復システムを相手に直実と「先生」が共闘し苦難の末に瑠璃を無事に2027年の世界に送り返す。
しかし、自動修復システムを強制停止し意図的に“アルタラ”を暴走させた2027年の世界は歴史保存という役割から解放され、所謂「パラレルワールド」として独立することになったが、同じ世界に直実と「先生」が存在している事が歴史の改ざんとなる為、どちらかが死ぬ(データから消える)しかないので2027年で瑠璃が待っている直実でなく「先生」が犠牲となった。

しかし、犠牲となった「先生」が目を覚ますと、2037年の仮想世界をシュミュレートしていた2047年の「現実世界」だった。
20年前、つまり2027年に脳死状態になっていたのは一行瑠璃ではなく堅書直実であり、直実の援助をしていたカラスは“アルタラ”を使って脳死状態から蘇生しようとしていた一行瑠璃であった。

『HELLO WORLD』の登場人物・キャラクター

メインキャラクター

堅書 直実(かたがき なおみ)

声:北村匠海

2027年の京都(アルタラの中に再現された過去の世界)に住む高校1年生の男子。臆病で優柔不断で主体性がない性格だが、そんな自分を変えたいと思っている。読書が好きでいつも本を読んでいる。そのせいで入学早々に図書委員に任命されるが、自分で決めたわけではないことに不満を感じていた。好きな小説のジャンルはSFで、未来の自分自身だと名乗る先生(ナオミ)から突拍子もない世界の真実を聞かされたときにはあっさりと受け入れていた。

一行 瑠璃(いちぎょう るり)

声:浜辺美波

直実の同級生で、同じく読書好きで図書委員を務める少女。長い黒髪と左目の下の泣きぼくろが特徴で、「やってやりましょう」が口癖。
真面目で意志が強く、直実が怖じ気づいて敬遠する同級生や上級生に対しても物怖じしない。その一方でデジタル機器の扱いが苦手で高所恐怖症。特に高所恐怖症については、80センチの高さで失神するなど普段のクールな印象からは想像できない姿を見せる。先生(ナオミ)からは「可愛い系」だと評されている。

カタガキ ナオミ / 先生(せんせい)

声:松坂桃李、北村匠海(『ANOTHER WORLD』高校生時代)、松岡禎丞(『ANOTHER WORLD』大学生時代)
2037年の未来(アルタラを創造した「現実世界」)から来た堅書直実を名乗る青年。
立体映像のような存在であり触れることはできず、直実以外には姿が見えない。
2037年では死亡している一行瑠璃が生存する歴史を作るために直実と接触する。

カラス

声:釘宮理恵
先生(ナオミ)から直実へと授けられたツール。仮想世界であるアルタラのデータに干渉し、ごく限定的ながらも触れた物質の性質や働いている物理法則を変化させることができる権限を直実に付与することができる。普段は太った八咫烏の姿をしているが、直実が能力を行使する際にはグッドデザインと呼ばれる手袋の形態へ変化する。
直実のみが使いこなすことができる。

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