マイ・スパイ（映画）のネタバレ解説・考察まとめ

『マイ・スパイ』の概要

『マイ・スパイ』とは、2020年に公開されたアメリカのスパイアクション・コメディ映画。2017年には既に、デイヴ・バウティスタ主演でコメディ映画を撮影することが決まっていた。その後2018年に映画監督であり、また映画プロデューサー、脚本家、俳優としても活躍し、『50回目のファースト・キス』や『ゲット スマート』、『リベンジ・マッチ』などのコメディ映画で成功を収めていることで知られるピーター・シーガルが監督として起用された。
本作は元々2018年に全米で公開される予定だったのだが、延期され、最終的にはアメリカでは劇場公開されずAmazon Prime Videoのみでの配信となった。
デイヴ・バウティスタ演じるJJは、CIAの優秀なエージェントであるが、ミッション遂行中に派手に暴れ、常軌を逸してしまったことが問題となり、重要任務から外されてしまう。その結果、現場未経験の同僚ボビー・オルトと地味な監視の任務にまわされることになった。監視対象はテロリストのヴィクター・マルケスの弟デイビット・マルケスの家族の妻ケイト・ニュートンと娘ソフィー・ニュートンだった。
JJとボビーはケイトとソフィーが二人で暮らすシカゴのアパートに隠しカメラを仕掛け、張り込み部屋でそのカメラを監視するだけという退屈な日々に初日からうんざりしていた。ある日、賢いソフィーにカメラを見つけられ、おまけにJJとボビーの身分まで暴かれてしまう。ソフィーに秘密を守ってもらうため、JJは、スパイになるためのレッスンや学校のイベントへの参加を虐げられる。はじめは全く気が乗らないJJであったが、ソフィーと一緒に過ごすうちにJJはソフィーとケイトに心を開くようになり、そしてソフィーの母ケイトへの愛情が芽生えてくる。しかし、捜査対象者に必要以上に関わったことが上司にバレて解雇を言い渡され、張り込みの撤収をするJJとボビー。しかし張り込み部屋撤収作業中に、マルケスがケイトの元へやって来て、そこにいたJJと乱闘となる。マルケスはデイビットの隠した核兵器の設計図が入ったUSBを見つけて奪回し、ソフィーを連れ去ってしまう。JJとケイト、ボビーは連携プレーで無事ソフィーを保護し、USBも回収することに成功した。ミッションは大成功を収め、JJとボビーの解雇は撤回されてハッピーエンドで終わる。

本作に対する批評は可もなし不可もなしと言う意見が多く、映画批評集積サイト「Rotten Tomatoes」では支持率54％で平均点は10点満点の5.14点となっている。
2020年の世界での興行収入ランキングでは1020万ドルで50位にランクインしており、続編『マイ・スパイ2』製作の話も出ている。続編ではシーガル監督が続投し、JJ役のバウティスタ、ソフィ役のクロエ・コールマンが再び共演するという。

『マイ・スパイ』のあらすじ・ストーリー

スパイJJ

ウクライナの閉鎖されたチェルノブイリ第三原子力発電所で、ロシアンマフィアとウクライナの軍人が闇取引をしようと集まっていた。
取引にはウクライナ軍がプルトニウムのピットと呼ばれる核兵器のコアを用意し、ロシアンマフィアはダイアを用意していた。
ロシアンマフィアのJJは中央情報局・CIAのエージェントで、潜入捜査官として組織に潜り込んでいた。

ウクライナ軍が核兵器を確認していると、JJは隣りのロシアンマフィアに、「核兵器の制作者は見つかったのか」と質問した。その質問を不審に思ったロシアンマフィアは、取引最中にもかからわずJJに銃を向けて政府の回し者だと騒ぎ出した。
一部始終を監視カメラで見ていたCIAのデヴィッド・キム局長と本部の職員たちは、JJが上手く立ち回るように祈った。キムはあきらめ顔だったが、ボビーだけは大丈夫とJJを信じていた。

JJはその場であっさり潜入捜査を認め、拳銃を乱射して手榴弾で発電所を爆破させた。
ロシアンマフィアとウクライナ軍は大打撃を受け、JJはプルトニウムのコアが入ったアタッシュケースを回収した。
ロシアンマフィアとウクライナ軍の攻撃から逃走し、無事CIA本部に戻ってきた。

CIA本部では同僚たちが興奮気味にJJを迎えた。そのうちの1人がテクニカルサポートのボビーだった。
ボビーは「JJの関わった事件は、隅から隅まで知っている」と興奮していた。

しかしキム局長だけは、JJの行き過ぎた戦闘に怒り心頭だった。
実は今回の最大任務であるプルトニウムの回収でJJは、2つのうち1つを行方不明にしていた。また証言を引き出そうにも、逃走した1人以外は全員殺害するという失態を犯していた。
JJは元特殊部隊で、その経歴を買われてCIAのエージェントになっていた。キムに家に帰るよう命令されたJJは、ペットの「ブルーベリー」が待つ一人暮らしの家へ帰った。

一方イリノイ州シカゴのウィッカーパークでは、フランスから引っ越してきたソフィー・ニュートンが学校に行く準備をしていた。
ソフィーと母のケイト・ニュートンは、大物武器商人であるビクター・マルケスの弟デイビットの妻と娘だった。
ソフィーとケイトはCIAの監視対象だった。学校に行くソフィーだったが、同級生に馴染めず軽いいじめを受けていた。

CIAの作戦

JJが失敗したロシアでの核兵器取引の裏には、フランスの元軍人の違法武器商人がいることが判明した。
ヴィクター・マルケスは20年以上もこの世界で、弟のデイビットと共に商売を続けていた。しかしデイビットは核兵器の設計図を隠し、それに怒ったヴィクターに殺害されてしまった。

ヴィクターが設計図を入手する前に捕まえようと、CIAのチームは立ち寄り先を監視することにした。
1人はベルリンにいるアザル・アハマディで、ロシアの闇取引では彼が核兵器を持ち去っていた。もう1人はパリにいる、ヴィクターの弁護士であるクリストファー・コールだった。
そしてデイビットの残された家族である看護婦のケイトと、9歳のソフィーを監視することにした。

JJが得意とする危険な香りがする仕事は同僚のクリスティーナに取られ、JJはデイビットの家族の張り込みと監視という地味な仕事になった。
JJは女子力ゼロでIT専門のボビーとシカゴへ飛んだ。

任務に不満な様子のJJに対し、ボビーは憧れのJJとペアになったので浮かれていた。
彼らはケイトたちが住むアパートの一室に機材を持ち込み、ミッションを開始した。

監視失敗

JJはケイトが出かけたのを見計らって彼女の家に侵入し、ビデオカメラを設置しようとした。設置が終わる前に、ケイトが財布を忘れて家に戻ってきた。
モニターで監視していたボビーが知らせるが、間に合わずJJは寝室に隠れた。ペット犬の
オジーがJJの匂いを嗅ぎつけ、吠えながら近寄ってJJの顔をなめまくった。オジーがあまりに吠えるので寝室までケイトが見に来たが、間一髪でオジーを抱えて家具の裏に隠れてその場をしのいだ。

ケイトはソフィーをスケートに連れて行く約束をしていたが、病院のシフトが変わってしまい行けなくなってしまった。
代わりに近所に住むゲイカップルのトッドとカルロスに頼もうとしたが、断られてしまった。

翌朝ケイトは出勤し、ソフィーは1人で朝ご飯を用意して食べていた。ペットのオジーはボールに隠していたカメラに気づいて、そのボールを咥えてソフィーの前に放置した。
賢いソフィーはボールから隠しカメラを取り出し、機種を調べて電波の発信元を探し当てた。そして自分の部屋の上にあるJJたちの隠れ家を突き止めた。

部屋にこっそり入ったソフィーは、ボビーの財布を見つけ彼らがCIAだと知った。少し考えてスマートフォンでJJたちの撮影を始め、自分の家が監視されていることも知ってしまった。
撮影されていることに気づいたJJとボビーはやめさせようとするが、ボタン1つでクラウドに送信できると脅されてしまった。
「ケイトに録画を見せるか、自分の言うこと聞くか」と迫られたJJは、ソフィーの言うことを聞くことにして翌日スケートに連れて行くのだった。

ソフィーをスケート場に連れて行くと、彼女に乗せられて自分もスケートをすることになった。スケート未経験のJJは派手に転び、ソフィーの同級生の男の子にバカにされた。
一方ソフィーは同級生の輪に入れずいじめられていた。
JJはソフィーをいじめていた男子生徒に足をひっかけ倒した。それを係員に見つかりスケート場から追い出されてしまった。

家に戻るとケイトがソフィーがいないと、トッドとカルロスに焦った様子で話していた。JJを不審者だと思ったケイトは、警察に通報すると大騒ぎした。
焦ったソフィーはJJが近所に引っ越してきて、いじめられているところを助けてくれたと説明した。

ソフィーの作戦

翌朝JJがジョギングから戻ると悲鳴が聞こえた。驚いて悲鳴の聞こえた方に行くと、ケイトが水道管から噴射する水を止めようとしていた。
JJが修理してあげると、ソフィーがお礼に夕食を一緒にしようと誘ってきた。実は水漏れはソフィーが仕組んだもので、彼女はケイトとJJを仲良くさせようとしていた。
JJはすぐ断ろうとしたが、ソフィーがスマートフォンをちらつかせたため合意するしかなかった。

ボビーはケイトの家でくつろいでいるJJをモニターで見て驚いた。慌ててJJに電話をし、この任務から撤退するように忠告した。
しかしJJはそのまま一緒に食事をしていた。特殊部隊上がりのJJは、一般人との食事が久しぶりだった。アフガニスタンでの非日常を話して、家族の会話に適していないと気づき黙ってしまった。
気まずい雰囲気だったがソフィーがJJに、忙しいケイトの代わりに授業参観に来て欲しいと頼んだ。断ろうとしたJJだったが「JJは無職で、いつもモニターばかり見ているから大丈夫」と、ソフィーに脅され仕方なく承諾した。

授業参観の日になり、JJは全く気が乗らなかったが学校へ行った。その日は保護者の職業を子供たちに聞かせるという授業だった。どの保護者も立派な職業についていて、子供たちは尊敬の眼差しを向けていた。
最後にソフィーが当たりJJが仕方なく前に出た。JJが「選択肢を考え中」と言うと保護者から無職という声が上がり、子供たちが失笑した。続けて「前職は世界中のごみ処理」と話すと、子供たちが馬鹿にし始めた。

ソフィーが恥ずかしがって下を向いてしまったのを見たJJは、意を決して本当のことを話した。前職のゴミ処理というのは人間のクズのことで、軍のレンジャー部隊に所属していたと話した。そして今は諜報機関で秘密工作部隊にいることも話した。
すると子供たちはJJの話に夢中になり、彼は一躍ヒーローとなった。

こうしてJJのおかげで、ソフィーは同級生と仲良くなることができた。嬉しそうに帰ってきたソフィーを見てケイトも安堵していた。

ヴィクター動く

JJがジョギングをしていると、ソフィーがベンチに座ってJJが通るのを待っていた。仕方なくベンチに座ったJJと話しているうちに、ソフィーは「自分もスパイになりたい」と言い出した。言葉巧みなソフィーに乗せられてJJは、スパイの手ほどきをすることになった。
ソフィーはYouTubeで学べるような簡単な訓練ではなく、スパイらしいことを学びたかった。例えば爆発する現場からかっこよく立ち去ったり、敵を仕留めた時の決め台詞を教えて欲しかった。

JJたちが平和に過ごしている時、パリでは弁護士のコールにヴィクターが接近していた。
コールを隠し撮りしていたヴィクターは、CIAのクリスティーナの存在に気づいてしまった。
ヴィクターはデイビットと繋がりがあったコールなら、設計図の在りかを知っていると思った。しかしコールは何も知らず、ヴィクターはナイフでコールを殺害してしまった。

ある日学校にいるソフィーからJJに、至急学校に来て欲しいと連絡が入った。慌てて学校に行ったが、彼女は「ケイトと仲よくして欲しい」と言いたかっただけだった。
その後ソフィーの目論み通り、ケイトとJJはデートをした。

ケイトは過去にパリで暮らしていて、犯罪に関わった夫が殺された。警察に財産を差し押さえられてしまい、アメリカに移住してきたと打ち明けた。
デートは上手くいき、それからソフィーとJJはますます仲が良くなっていった。勉強したり料理を作ったりと一緒に過ごす時間が増えていき、ケイトの中でもJJの存在は大きくなっていった。

核兵器の設計図を探してベルリンに移動したヴィクターは、CIAが自分の周りを張り込んでいることに気がついていた。
そのため建物を爆破して自分の死亡を偽装した。偽装は成功しCIAは捜査を終了することにした。

本部に戻ったJJとボビーは、張り込みを中止するよう通達を受けた。張り込み部屋の撤収と、本部の自席も撤収するようにキムに言われた。
キムは本部からボビーがアップロードしていたハードディスクにアクセスして、ソフィーたちと親密になり過ぎた様子をチェックしていたのだった。

JJとボビーは捜査対象と親しくなりすぎ、与えられた任務を遂行していないとして解雇となった。

張り込み部屋に荷物の撤収に向かったJJは、ケイトに真実を伝えに部屋へ行った。
いいニュースと悪いニュースがあると言い、いいニュースとして自分がケイトのことを好きだと話した。ケイトも同じ思いだと答えてくれた。

その後悪いニュースを伝えるため、上の階の張り込み部屋へケイトを連れて行った。自分の部屋が監視されていたことを知り、JJがCIAのエージェントだと打ち明けられたケイトは怒りが収まらなかった。
自宅に戻り隠しカメラをJJに投げつけた。そこに戻ったソフィーは深刻な事態になっていることを悟り、部屋に閉じこもってしまった。

張り込み部屋でJJは後悔しながら、お菓子をやけ食いしていた。自分にはペットの魚しかいないと落ち込んでいた。
そこに犬の散歩と嘘を言って出てきたソフィーが心配してやって来た。ソフィーは自分が描いた家族の絵をJJにプレセントした。
JJはソフィーたちのことは一生忘れないと約束して、彼女を家まで送った。ソフィーが家に入ったところで、ケイトの様子がおかしいことにJJが気づいた。

ソフィーと一緒に家に入ると、仲間を連れたヴィクターがいたのだった。

ヴィクターとの対決

ヴィクターはオジーの首輪に隠してあった、設計図のデータが入ったUSBメモリを見つけ出した。
そこに隣りのゲイカップルがやって来た。彼らも雇われて核兵器の設計図を狙っていたのだった。
不意を突かれたヴィクターたちは、トッドとカルロスの打撃を受け倒されてしまった。

その隙にUSBが入った小箱を手に入れたJJだったが、カルロスに銃を向けられ小箱を渡した。

絶体絶命のJJたちの元に、ボビーが応援に駆けつけた。ボビーが持ってきた銃が手から滑り、階段からヴィクターのいるアパートに向かって乱射されてしまった。
アパートはパニックになり、ヴィクターの仲間は頭に銃撃を受けて即死した。隙をついてUBSの小箱を手に入れたヴィクターは、ソフィーを人質にして逃げ出した。
JJはソフィーを取り戻すため、トッドとカルロスをボビーに任せて後を追った。

JJはケイトの運転する車でヴィクターを追った。ヴィクターは空港に待機させていた飛行機で逃走を計画していた。
JJとケイトが空港に到着すると飛行機は滑走路を走っていた。JJはタンクローリーを滑走路の先にぎりぎりに駐車し、向かってくる飛行機をナイフを持って待ち構えた。
離陸寸前で飛行機の下に潜り込んだJJは、車輪をナイフで切り飛行機を走行不能にした。

ヴィクターは飛行機から降りJJと素手で戦った。

一方飛行機に残されたままのソフィーは、シートベルトを外そうと誤って操作レバーを解除してしまった。
飛行機が断崖絶壁に向かって動き出し、落ちる寸前で金網に引っかかって宙ぶらりんになった。
JJはソフィーを救出に向かい間一髪で助けたが、眼の前にヴィクターが銃を構えていた。

ヴィクターは「ソフィーが持っているUSBの小箱を渡せば、ソフィーもJJも殺さない」と言った。
ソフィーはUSBの小箱をヴィクターに投げ渡したが、ヴィクターは約束を反故にしてソフィーを撃とうとした。その寸前でケイトがヴィクターを後ろから殴り倒した。
ヴィクターは金網の恵右に倒れ、飛行機もろとも谷間に落ちていった。

CIA本部に戻ったJJとボビーは、キムから今回の救出とUBSの回収を褒められ解雇が撤回された。
次の勤務地の希望を聞かれボビーは、JJの相棒になりJJと同額の給料を要求した。
JJはシカゴを希望しボビーを相棒と認め、任務を遂行するとこにした。

ひと段落したJJはケイトとソフィーの元に戻り、休日をスケートリンクで楽しく過ごした。
ソフィーは学校にも友達ができて充実している様子だった。
JJは特訓したスケートを披露して幸せな休日を過ごした。

『マイ・スパイ』の登場人物・キャラクター

JJ（演：デイヴ・バウティスタ）

吹き替え：山野井仁
元特殊部隊の兵士で現在はCIAのエージェント。腕っぷしは強いが、張り込み能力は全くない現場第一のエージェント。重要な任務をしくじってしまい、張り込み任務につくが、ターゲットと親密になってしまうというエージェントとしてあってはならない事態に陥る。人間付き合いが苦手で唯一の身内はブルーベリーと名付けたペットの魚だった。しかし張り込み任務先で人間らしい感情が芽生えてきてケイトとの仲は恋に発展する。

ソフィー・ニュートン（演：クロエ・コールマン）

吹き替え：長縄まりあ
ケイトの娘で9歳の小学生。パリからシカゴに引っ越してくるが友達ができず、軽くいじめられている。聡明な頭脳の持ち主で、スパイとしてのセンスは抜群でその能力はJJも驚くほどだった。賢いソフィーは言葉巧みにJJを自分の生活に引き込んでしまう。そして母ケイトとJJの恋がうまくいくことを祈っていてJJによく懐いている。

ボビー・ウルフ（演：クリステン・シャール）