空挺ドラゴンズ(漫画・ラノベ・アニメ)のネタバレ解説・考察まとめ

『空挺ドラゴンズ』とは2016年より桑原太矩が『good!アフタヌーン』で連載を開始した漫画、およびそれを原作としたアニメ作品である。主人公のタキタとミカを中心に、龍と呼ばれる生物を狩猟する飛行船「捕龍船」の乗組員たちと彼らを取り巻く人々の群像劇を描いている。ハイ・ファンタジーな世界観の中における登場人物たちの人間ドラマが中心だが、龍という架空生物の肉を用いた料理を描き、レシピ解説も加える「ダンジョン飯」のようなグルメ要素も色濃い作品である。

『空挺ドラゴンズ』の概要

『空挺ドラゴンズ』とは2016年より桑原太矩が『good!アフタヌーン』で連載を開始した漫画、およびそれを原作としたアニメ作品である。2017年『マンガ大賞』、2018年『このマンガを読め!』、2018年『このマンガがすごい!』を受賞。また第13回全国書店員が選んだおすすめコミック、第23回文化庁メディア芸術祭マンガ部門審査委員会推薦作品に選出されている。また、2019年6月に橘ももによる『ダ・ヴィンチ』での小説版連載がスタートした。2020年にはポリゴン・ピクチュアズによりアニメ化された。2021年3月における累計発行部数は電子版も含め120万部を超える人気作品である。
主人公のタキタとミカを中心に、龍と呼ばれる生物を狩猟する飛行船『捕龍船』の乗組員たちと彼らを取り巻く人々の群像劇を描いている。ハイ・ファンタジーな世界観の中における登場人物たちの人間ドラマが中心だが、龍という架空生物の肉を用いた料理を描き、レシピ解説も加える『ダンジョン飯』のようなグルメ要素も色濃い作品である。また捕龍に用いる武器やメカニックの設定なども練りこまれており、世界観を深く楽しむことができる。

『空挺ドラゴンズ』のあらすじ・ストーリー

捕龍船新人乗組員タキタと食欲旺盛な龍捕りミカ

天空を泳ぐ「龍」という生物がいる世界。資源価値のある龍の肉、油、臓腑、骨、または懸けられた賞金を求めて空を目指してからおよそ半世紀、数を減らしつつある現役の「捕龍船」クィン・ザザ号。その乗組員で、龍を狩猟する「龍捕り」である主人公ミカと新米のタキタを中心に物語が始まる。
一匹の龍を捕らえたクィン・ザザの一行は、近くの市に寄港。セリは盛況に終わったが、一般的に評判の悪い龍捕りに対し、市は宿が用意できないという。
一行が宿を諦めかけたそのとき、隣市の上に龍が出たと連絡が入った。隣市の龍を無事退治したことで、一行は宿に泊まり、居酒屋でごちそうにありつくことができた。
隣市に出た龍は、今朝捕った龍の母親だった。「ちょっとかわいそう」というタキタに、「殺す覚悟の無いヤツは死ぬぞ」と龍捕りの厳しさを伝えるミカ。
捕龍船の乗組員達は、それぞれに事情を抱え、帰る港もなく龍の影を追って旅を続けるのだった。

別の日、飛行中のクィン・ザザ号に普通の鳥と同じくらいの大きさの超小型龍がもぐりこむのを、タキタは目撃する。ほかの船員は仕事にくたびれ取り合ってくれない。
タキタは一人で小型龍の捕獲を目論むが、そうしているうちに甲板長のギブスが小型龍に不意を突かれて襲われてしまう。
これ以上被害者を増やさないよう、ミカ、タキタ、ジローの三人で船内を探索。果たして小型龍は船倉で仕留められた。
ミカはヨシにカツレツにするよう頼むが、卵が無いため叶うことはなかった。小型龍はヨシの手により鶏肉同様の丸焼きとなり、ミカ、タキタ、ギブスに振る舞われた。その頃、付近を航行する別の船で、王室献上を予定していた20億円の価値のある超小型の龍が逃げ出したことで大騒ぎになっていたが、クィン・ザザ号はそれを知ることはないのだった。

ある日、タキタはジローによる天測の記録役になっていた。
ジローは父親が龍捕りで、父親がかつて見たという「光る龍」の存在を信じていた。周りの船員はからかい半分で、本人もただの言い伝えと割り切るが、ミカはその話を信じてくれていた。
その日、クィン・ザザに嵐が近づくなか、ジローとミカが見張りに着いた。懸命に雲を抜けるクィン・ザザ号だが、巨大な雷雲に囲まれてしまった。雲の中は気流の渦であり、入ればバラバラになってしまう。雲の中を抜けるしかない非常に困難な局面に立たされた時、ジローとミカは光る龍を見つけた。ジローの父親が光る龍を見たのも、嵐の中だった。嵐の中、光る龍に先導され嵐を抜けたという父親の話を信じ、ジローはブリッジに操舵を支持する。クィン・ザザ号は光る龍を追って無事に嵐を抜けたが、光る龍を捕ることはできなかった。
同じ日、クィン・ザザ号は海賊の罠にはめられて襲われてしまった。海賊の銃撃に巻き込まれ、タキタは右目の上をケガしてしまう。
ミカは捕龍の要領で海賊船に単身乗り込んでしまう。銃を構えた複数人の海賊に対し、大立ち回りのミカ。結果、海賊を無力化し、海賊船を単身で制圧。光る龍を捕り損ね空腹だったミカは、海賊にから龍肉を含む食料を強奪。どっちが海賊かわからない、と仲間からも呆れられるのだった。

クオーン市の事件

捕まえた龍の解体と船の修理のためにクオーン市に立ち寄る、クィン・ザザ号の一行。巨大なクレーターの中に築かれたクオーン市は、捕龍基地として栄えた有数の港町だ。
クオーン市で、タキタは初めて龍の解体に参加する。初めての龍の解体作業が終え、他の船員たちが市街へ繰り出す中、気が抜けたタキタはクィン・ザザ号の近くで横になっていた。「こういう時に新人はぽんと船を降りちゃうもの」というヴァナベルの助言を受けて、ミカはタキタに龍肉の串焼きを分け与え、市街地へと誘う。
ミカの行き先は、千剖士のテントだった。千剖士は古くから龍を解体・加工していた一族で、その族長であるウラ爺に、ミカは会いに来たのだった。千剖士は解体した龍の革を縫い付けてタペストリーにする習わしがあり、テントの壁一面に張られたタペストリー1つ1つが全て異なる龍のものと知らされ、驚くタキタ。ミカは一族の出ではないが、ウラ爺が認めて名を迎え入れていた。タペストリーにはミカが初めて捕った龍の革もあるという。ミカは今でも自分が捕った龍の革をウラ爺に届けていたのだ。
自分が初めて解体した龍の革もタペストリーに食わてもらえると知り喜ぶタキタ。若い女性の千剖士ナナミとも仲良くなり、タキタはタペストリー縫い付け作業を夢中で手伝っていた。その姿を見て、ミカはもう心配要らないと感じるのだった。

一方その頃、市には大きな龍を丸ごと牽引した、巨大な捕龍船が到着していた。クィン・ザザ号の龍捕り達は、その巨大船の龍捕り達と市の売春酒場で揉め事を起こしてしまう。まだ新人で客を取らないカーチャを無理やり相手にしようとした巨大船の船員を、真面目なジローは見過ごすことができず、なし崩し的に酒場丸ごとのケンカになってしまったのだ。ケンカの最中、ジローとカーチャは酒場を抜け出し、二人の時間を過ごす。別れ際、明後日予定されている祭りに一緒に行こうと約束した。
ところがその夜、巨大船の牽引してきた大型龍が解剖渠で目覚めてしまう。巨大船は毒を用いて捕龍していたが、龍の息の根を止められていなかったのだ。手負いの龍は市に被害を与え始め、クィン・ザザ号も市から退避しようとするが、カーチャを見捨てられないジローは承服できない。ミカとヴァナベルもこの龍を捕ることに賛同し、クィン・ザザ号の一行は巨大船の龍捕りとともにこの龍を仕留めることにした。
手負いの龍は熱線を発して激しく抵抗したが、ジローをはじめとするクィン・ザザ号の龍捕りたちによる攻撃と、クィン・ザザ号の体当たり攻撃によって仕留められた。大型龍は、千剖士達と龍捕りの手により解体されていく。市民たちも市の再建に励み、再建作業の炊き出しにはクィン・ザザ号のコックであるヨシも参加していた。休憩に、ジローはカーチャと炊き出しで昼食をとる。市は祭りどころではなくなってしまったが、この光景もまるで祭りのようだと感じる二人だった。明朝、ジローは巨大船が謝礼金代わりにくれたオートジャイロでの飛行にカーチャを誘い、早朝の飛行を楽しんだ。
別れに、タキタはナナミからお守りと塗り薬を受け取り、ジローはカーチャに髪を切ってもらった。カーチャはジローの髪の束ねた先を大切に持ちつつ、飛び去るクィン・ザザ号を見送る。カーチャの見送る先では、短髪になったジローがミカと競うように見張りに着くのだった。

遭難したタキタと龍の幼体

航行を続けるクィン・ザザ号は、「渡り」の最中の小型龍の大群に出くわす。ヴァナベルが二番銛を撃ち込もうとした際、龍の反撃に巻き込まれたタキタは、手負いの龍と一緒に上空から谷底へと転落してしまう。
転落時、龍にしがみついていたタキタは左足の負傷だけで一命を取り留めていた。クオーン市でナナミからもらった塗り薬で応急処置を施すタキタ。一緒に落ちてきた龍にタキタは止めを刺し、唱え言葉で弔う。すると、その龍の子と思われる龍の幼体が現れた。 タキタは谷を狩り場とする猟師のアスケラに出くわし、龍の幼体とともにアスケラの住む近くの集落まで連れて行ってもらう。集落で左足を処置してもらい、食事を振る舞われるタキタ。龍の幼体もタキタに懐いているものの、地上では生きられないのか次第に弱っていってしまう。龍の子を群れに返すことを決めたタキタは、アスケラとともに集落からほど近いキン山へと向かう。「キン山が煙を吹くと龍が通る」と言われており、そこで群れに返すチャンスがあると考えたのだ。
タイミングを同じくして、タキタの捜索を続けるクィン・ザザ号も、小型龍の「渡り」の終着点と思しきキン山へと捜索範囲を移そうとしていた。タキタはキン山で小型龍の群れを見つけ、龍の子を返そうとする。同時にクィン・ザザ号はタキタを発見。無事にクィン・ザザ号に飛び移ったタキタはアスケラに別れを告げる。タキタはクィン・ザザ号から龍の子を群れに返そうとするが、小型龍の群れを捕食する目的で中型龍が集まってきてしまう。大量の中型龍たちは「龍の回廊」を形成し、さらには「三色錦王」という名のついた伝説の超巨大龍まで現れて、小型龍の群れに襲い掛かる。
小型龍の群れは小さな群れを分裂させ、他の龍たちが大きな群れに夢中になっている間に分離していく。タキタはこれが最後のチャンスと考え、分離していく小さな群れに飛び込む。龍の幼体は無事に群れの長と思しき龍に迎え入れられた。ナナミからもらったお守りを龍の子に託し、タキタは龍の子と別れる。無事に群れを見送るタキタはゴーグルの中を涙で満たし、龍の子を抱いていた感触をその手に確かめるのだった。

オボロカスカ号船長ブルノとの出会い

タキタの帰還を喜ぶクィン・ザザ号の面々だったが、喜びも束の間、大型船と接触してしまい、航行不能に陥ってしまう。さらに修理費用を払うアテの無いクィン・ザザ号は、廃業の危機に陥ってしまった。
破損したクィン・ザザ号を曳航できる船を探しにオートジャイロで近くの市に向かうジローとヴァナベルは、当て逃げしていった大型船オボロカスカ号を見つける。船の曳航の交渉のため。ヴァナベルは大型船に乗り込む。オボロカスカ号の船長ブルノ・マッシンガは、龍捕りを下品で野蛮な連中と相手にしなかったが、ヴァナベルの駆け引きの結果、ルザ市までの曳航を引き受けた。自らを「龍に心奪われた男」と称するブルノは自他ともに認める好事家であり、オボロカスカ号は彼の率いる私設飛行探査船だったのだ。ブルノは曳航の対価として龍の回廊にまつわる経緯を聞き、さらに龍捕りガガが描きためた絵を譲り受ける代わりに船の修理を買って出た。
ルザ市に到着後、クロッコ、カペラ、ギブスはブルノからこれまでの航海の聞き取りを受けた。そこへ、龍に襲われた飛行船が運び込まれてきた。通常、龍は人間の船を積極的に襲うことは稀であり、そんな船を襲う行動をとる龍は「船喰い」と呼ばれる。ルザ市近郊で船喰いが出没しており、ブルノの父親が総裁を務める「東ノアチス社」が1億円の賞金をかけて討伐指定状を発行していた。資源ではなく賞金目当てで討伐された無残な龍の姿を思い起こし、ブルノは船喰いを見つけ出し、解決しようと決心する。
ヴァナベルを始めとしたクィン・ザザ号の龍捕り達もオボロカスカ号に乗船。出没地点に到着すると、出くわした船喰いはオボロカスカ号を襲い始めた。ブルノは、船喰いの異常行動は航路が開かれた影響でつがいの相手を失ったことによるものと突き止める。しかし写真撮影の時間稼ぎのため龍に取り付いたヴァナベルが、そのまま龍に丸飲みにされてしまう。飛び去ろうとする龍を足止めするため、ブルノは龍涎香を焚くことで龍につがい相手を想起させ、龍の注意を引くことに成功。その隙に龍捕りたちは龍を仕留め、ヴァナベルを龍の体内から救い出した。
ルザ市に戻り、一行は総裁の子息にあたるブルノから討伐指定状に報告書・写真・署名を入れたものを受け取る。ヴァナベルは龍の体内で軽い酸欠を起こし、胃液により顔に火傷痕ができてしまったが、一命を取り留めていた。「捕った龍はちゃんと食う」龍捕り流の弔い方に倣い、ブルノとオボロカスカ号の船員たちも、目を覚ましたヴァナベルを含むクィン・ザザの一行と龍のモツ鍋を囲む。当初は龍捕りを賊と同じと考えていたブルノは考えを改め、龍研究の拠点となる大博物館を作る夢をヴァナベルに明かし、その夢が叶ったら博物館に訪れるよう、約束を交わすのだった。

ハーレ市 クジョーとミカの再会と別れ

クィン・ザザ号は、船喰い討伐の賞金を受け取るため、大港湾都市ハーレ市に到着した。乗組員たちはささやかな特別手当を支給され、思い思いに大都市の観光を楽しむ。
ミカ、タキタ、ジロー、ヨシの4名はヴァナベルの顔の火傷痕を治す薬を購入した後、地元のうまい店を探し一軒の料理屋に入る。そこで名物料理を楽しんでいると、一人の酔っ払いが店と揉め始めた。実はその酔っ払いはミカの昔馴染みであり、クィン・ザザ号に乗る前のミカはこの酔っ払いことクジョー・ランダウと二人で龍を捕っていたのだ。
クジョーとミカは以前別の捕龍船に乗っていたが、捕龍船の方針が最新武器と毒を用いた保留にシフトしたことで自分の思う龍捕りができなくなり、クジョーは船を降りた。その際、毒を用いて捕った龍は食せないと聞いた新米船員のミカもクジョーに着いていったのだ。その後、クジョーとミカは退職金代わりに受け取った突撃艇を「ノラゴス号」と名付け、この船1つで龍を捕っていた。ミカの「捕って、解体して、食う」ことが龍捕り、という考え方はこの頃クジョーから受け継いだもので、クオーン市の千剖士との繋がりも、この時できたものだった。ある時、二人は超巨大龍「クラーケン」の巣である超局地的低気圧に飲み込まれてしまった。ミカの機転と奮闘でクラーケンから辛くも逃げのびるも、クジョー討ちはミカが自分よりも龍に近い男であると感じ、それを認められずミカに怖れを感じた。近くの島の浜に着いた二人は、言い合いから殴り合いに発展。疲れて眠り込んだクジョーが目を覚ました時には、浜にミカの姿はなくなっていたのだった。
一人になったクジョーは、それまでのように龍が捕れなくなり、娘の住むハーレ市でカタギの職を転々としていた。ある時市の港に龍が近づいてしまい、船を襲い始めた龍にクジョーは一人で立ち向かった。龍を追い払うことができたが、クジョーは右足を失い、銛を撃ち込んだ龍を仕留め損ねてしまった。その後、街灯の点灯夫となったクジョーは、しかし「銛付き」へのリベンジを諦めておらず、決着の時に向けて密かにノラゴス号を整備していたのだ。
「銛付き」が再びハーレ市付近に回遊してくる時期にミカと再会したチャンスに、クジョーは娘ノラの制止を振り切りミカを誘って銛付きに挑む。銛付きはハーレ市港湾司局巡視船を標的とし、それを妨害したジロー、ノラの乗るオートジャイロに襲い掛かるも、クジョーの姿を認めると狙いをクジョーに移し、一人と一匹の一騎打ちが始まった。クジョーは銛付きに飛びつき、そのまま銛付きごと雲の中に消える。しばらくして雲の中から討ち取られた銛付きが姿を表し、クジョーもまた背に取り付いていた。クジョーは一命を取り留め、決着を果たしていたものの血を流しすぎており予断を許さない状況であった。
クジョーはそのまま病院で眠っていたが、ミカが見まいに届けた龍肉の臭いに目を覚ました。クジョーはハーレ市を発つミカを見送る。その際クジョーは「お前は俺よりも龍に近い男だ」と告げ、二人は完全に和解した。それから3か月後、クジョーはその操船技術を買われ、港湾司局の新人の教育係となる。彼はこれからも空で生きていくのであった。

マユーロ市と天山迷路の伝説

クィン・ザザ号は、建造にあたり融資を受けたスバマラ商会への最後の返済のため、マユーロ市に到着。クィン・ザザ号は過去一度龍に落とされており、乗組員だったクロッコが建造主であるスバマラ商会会長のマダム・リーリャに再建を頼み込んだのだ。また、会計士リーはマダム・リーリャの子息にあたり、当時博打が原因でヤクザと揉め事を起こし逃げ回っていたリーを会計士として引き取ることを条件に、マダム・リーリャは今のクィン・ザザ号を再建したのだった。
綱渡りの会計ながら最後の返済を終え、クィン・ザザ号は正真正銘クロッコたちのものになった。
時を同じくして、マユーロ市の酒場で酒を飲んでいたミカ達は「天山迷路の伝説の龍でのみ作れる幻の龍肉料理」の存在を知る。天山とはマユーロ市にほど近い渓谷で、飛行船の上昇限界に近い高度かつ複雑な地形をしているため入っていった船が帰ってこれないとされている場所。そこの伝説の龍でのみ作れる料理が存在し、またその龍肉は稀少性も合わさって一財を築くには十分の価値があるとされていた。借金返済直後で実質無一文の一行は、伝説の龍を捕るために天山迷路に挑むこととした。

クィン・ザザ号は複雑な天山迷路の地形をギリギリで通過。ほどなく一頭の龍を見つける。しかしそこに居合わせた屠龍船プラナ・グラーヴァ号に一番銛を奪われてしまう。プラナ・グラーヴァ号はマユーロ市から正式に依頼を受け、天山迷路の伝説の龍を狩りに来たのだ。龍肉目当てではないプラナ・グラーヴァ号は龍を殺した証拠写真だけ撮影し、迷路を後にする。クィン・ザザ号も引き返そうとするが、捨て置かれた龍をそのままにできなかったミカとタキタはその場に残ることとした。その夜、ミカとタキタは、その龍が伝説の龍ではないことに気づく。プラナ・グラーヴァ号が殺した龍の骸をくわえ、夜の迷路の奥へ消えていく一頭の龍を二人は目の当たりにしたのだった。翌日、ミカとタキタは、迎えに来たクィン・ザザ号のメンバーにこれを伝え、一行はさらに迷路の奥へと進む。ひときわ険しい地形を抜けた先は開けた草原になっていた。そこはさながら龍の墓場であった。永くそこで暮らす伝説の龍は、近くを通る回遊性の龍を捕らえ食し、その骸を苗床に草が茂っていた。その草原で一行は伝説の龍と対峙する。
同じくマユーロ市から「龍違い」であったと指摘を受け、再度迷路の奥へと踏み込んだたプラナ・グラーヴァ号と居合わせるも、クィン・ザザ号は伝説の龍に一番銛を打ち込むことに成功する。龍捕りの掟を気にする素振りの無いプラナ・グラーヴァ号に妨害され負傷しながらも、ミカは伝説の龍の頭部に取り付くことに成功する。ミカの突き立てた剣の柄を、ニコが船から狙撃し頭部深くまで剣を突き立てることで龍に止めを刺すことができた。
しかし、喜びも束の間。急変する空から現れたもう一頭の龍が放つ雷撃に、クィン・ザザ号は大きく破損させられてしまう。その龍は「震天王 テュポーン」と呼ばれる伝説の船喰いであり、過去に初代クィン・ザザ号を沈めた龍そのものだった。
一行は応急修理で辛くもマユーロ市に引き返すも、無一文状態で船も大破、廃業の危機にさらされてしまう。リーの機転で天山迷路の伝説の龍の肉は、マユーロ市がかけていた懸賞金と合わせて5億の値が付いたことでひとまずの修理代はめどが立ったのの、それでもギリギリであることに変わりはない。クィン・ザザ号の一行は、自分たちの船の修理に協力してくれそうな唯一の存在、ブルノ・マッシンガとリリオペ・ララージュに連絡を取るのだった。

ヴァニーの過去と故郷アレーナ市

大破したクィン・ザザ号の修理のため、一行はララージュ社のドックのあるメロエ市に移動した。
メロエ市で最近頻発している降龍事故の原因をブルノと協力して突き止めた一行は、新生オボロカスカ号の解纜式に同席する。その解纜式のさなか、クィン・ザザ号の龍捕りの一人であるヴァニーが忽然と姿を消してしまった。ヴァニーの足取りから、彼女が故郷であるアレーナ市に向かったことを突き止めた一行は、ヴァ二―を連れ戻すために選抜隊を組んでアレーナ市に向かうこととした。

アレーナ市では、国王軍と議会軍による内乱が4年も続いていた。さらにヴァニーは国王が愛人との間に設けた落とし後であり、すでに国王・女王が亡命してしまったアレーナにおいては唯一の王位継承者だったのだ。ヴァニーは親友ツィータの助けで内乱のさなか脱出し、流れ流れてクィン・ザザ号で龍捕りになるに至ったのだった。
アレーナ市は現在、内乱中に急遽あらわれた龍が落とした鱗から発生する霧による幻覚が国王軍・議会軍の両軍を蝕み、戦況は拮抗かつ打開策の見えない泥沼の様相を呈していた。実質、この「霧の龍」を対峙し事態を打開した陣営が今後のアレーナの実権を握ると言える状況において、国王軍は王位継承者であるヴァニーが龍捕りになっていることに目を付けた。国王軍は、ヴァニーをアレーナに連れ戻し、救国のシンボルとして再び国をまとめることを狙ったのだった。アレーナに連れ戻されたヴァニーは、霧の幻覚により眠り続ける親友ツィータの姿を見て、霧の龍討伐を決意する。

一方で、ヴァニー奪還の選抜隊となったミカ・タキタ・ジロー・ギブス・オーケン・メインの6名は、アレーナの議会軍と接触していた。議会軍から事態を聞いたクィン・ザザ号選抜隊の一行も、すでにもぬけの殻となった王宮に巣くう霧の龍の討伐に向かう。

霧の龍を討伐し、アレーナの窮状を救う孤独な闘いを決意していたヴァニー。小型龍5頭を一人で同時に倒すものの、相当なダメージを負ってしまう。霧の龍に一人で立ち向かおうとする彼女に、クイン・ザザ号選抜隊が追い付いた。ヴァニー、クイン・ザザ号選抜隊、そして議会軍の協力により、無事霧の龍を討伐することに成功した。

龍を倒し霧が晴れたことをきっかけに、疲弊していた両軍の和平交渉が進む。両軍ともに、名実ともに救国のシンボルとなったヴァニーを女王とすることで新体制の樹立について合意に至った。だが、それはヴァニーにクィン・ザザ号に戻り龍捕りを続けるという選択肢を奪うものだった。ヴァニー自身もアレーナに戻った時点でそれは覚悟していた。だが、ツィータとジローの説得と、霧の幻覚により「自分の望み」を見せられたことにより、「やっぱり空で生きたい」と自分の望みを見据えることになる。彼女の望みを受け、国王軍と議会軍はヴァニーの王位継承権をアレーナ全市民に譲渡、王位を永大空位とする形で新体制の樹立をおさめた。クィン・ザザ号に戻る決意をしたヴァニーは、仲間たちとともにアレーナ市を後にするのだった。

クィン・ザザ号の再建

クィン・ザザ号船長代理クロッコは、二度も船を落とされた因縁の船喰いテュポーンを捕ると固く決意していた。予算は少ないが最強の捕龍船にしたいというその希望を、リリオペ・ララージュは社でくすぶっている若手の挑戦の場とする形で受け入れた。成功すれば最強の船が、失敗すれば空にも飛べないものが出来上がる可能性がある、というものである。クロッコはそれを飲み、新生クィン・ザザ号の基本設計はララージュ社の若手ネネッタに託された。

だが、ネネッタの基本設計は難航していた。余計なものは付けず、シンプルに、だが嵐にも雷にも負けない強い飛行船を作る必要があった。ネネッタに密かに思いを寄せる、クィン・ザザ号の若手機関士ヒーロは彼女を懸命にサポートする。
ついに二人は1つの答えにたどり着く。それは、船に「震臓バラスト」を2つ並列に搭載するというものだった。「震臓バラスト」とは龍の臓器である「震臓」の化石をもとに作られており、飛行船はこの「震臓バラスト」を用いることで船の浮力を操作している。ネネッタの基本設計案は「震臓バラスト」を並列に2つ搭載することで、飛行船の左右で浮力差を生じさせ横転運動を可能とし、より機動的に、嵐にも風にも負けない柔軟な動きが可能な最強の飛行船が作れる、というものだった。

しかし修理費がカツカツのクィン・ザザ号一行では、もう1つの震臓バラストを工面できないという問題が立ちはだかった。「震臓バラスト」は龍の震臓の化石からできており、そもそもの稀少性が高い。飛行機械が増える中で震臓の価格は上昇しているのだ。
これを解決する妙案が1つだけ、クロッコは初代クィン・ザザ号のサルベージを提案した。初代クィン・ザザ号がテュポーンに大破させられた際、クロッコは船の墜落前に船長によって強制的に船から降ろされているが、クロッコは船長がクィン・ザザ号を海の藻屑にしてはいないという確信があった。船の不時着地点の候補は絞られており、そのどこかの陸地に不時着しているはずというのである。

かくして一行は常夏の島に初代クィン・ザザ号を探しにやってきた。そこで見つけたのは、ボロボロの状態で今も空を漂う初代クィン・ザザ号の姿だった。一度陸に不時着したクィン・ザザ号は、外板が腐り落ちるにつれ軽くなったことで、残っていた浮遊ガスにより再度浮上、そこに寄生型の龍が取り付いたことで空を漂い続けていたのだった。一行は取り付いていた龍を退治。龍による浮力を失い本格的に漂流する船を何とか陸地に不時着させることに成功した。初代クィン・ザザ号の震臓バラストを取り出そうとしてみると、震臓バラストは雨風から守るための屋根により守られていた。そこには船長の「お前にくれてやる、良き風招せ」というメッセージが添えられていた。燃える船に一人残り船を不時着させた船長は、いつかクロッコが見つけに来ることを信じていたのだ。これをきっかけに、クロッコは自身を船長と名乗るようになる。

そこから半年後、めでたく手に入れた初代クィン・ザザ号の震臓バラストを搭載し、内装も最新式に生まれかわったクィン・ザザ号が完成する。一行は再び空の旅に出発していくのだった。

『空挺ドラゴンズ』の登場人物・キャラクター

クィン・ザザ号乗組員

ミカ

食に関すること以外は口数も少なく掴みどころのない性格だが龍捕りとしての腕前は間違いなく一番

CV:前野智昭
本作品の主人公。無精ひげとボサボサの髪という出で立ちであり見た目やしぐさに全く気を使っておらず、興味があるのは龍を美味しく食べることのみ。
ただしその捕龍の腕はピカイチであり、捕龍の際は我先に龍に取り付いて直接止めを刺す。龍の廃棄部位を少なく、可食部を多く、美味しく捕ってやるためである。
実は幼少期、母と祖母と乗っていた船が龍に衝突、無人島に漂流し遭難の経験がある。その際、偶然島に落ちた龍を食べることで生き延びた過去がある。
それ以来、龍肉を食べることにこだわりを強く持つこととなった彼は、千剖士との交流を経て若い頃からクジョーとともに龍捕りを経験。龍を捕ること、食すことを教えられてきた。

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