花とみつばち(漫画)のネタバレ解説・考察まとめ

『花とみつばち』とは2000年から2003年に講談社の『週刊ヤングマガジン』で連載された安野モヨコによる青年コメディー漫画である。コミックスは全7巻。高校生の小松正男(こまつ まさお)は、モテたいが地味でファッションにも容姿にも自信がない。格差社会で構成されるスクールカーストの底辺にいる小松が、モテる男になるために悪戦苦闘する。風変わりなメンズエステに通いそこで出会った「オニ姉妹」に指導されながら、小松が成長していく青春コメディー作品だ。

長沢裕美(ながさわ ひろみ)

小松のクラスメイト。見た目は地味だが中身は小悪魔という恐ろしい女の子。「長沢チャンスマイル」という必殺技を持っている。長沢は女子のなかでも中堅クラスに分類される。長沢の価値基準は「普通でモテない男」がOKで、「チャラくてモテそう、またはモテようとしている男」はNOなのだった。
小松に目をつけた長沢は、廊下からいきなり顔を出し、必殺技の「長沢チャンスマイル!!(ハート付き)」を小松に仕掛ける。それはなんの脈絡もなく突然繰り出されるので大抵の男子はビックリするが、小松のような免疫のない者の多くは一瞬で恋に落ちるスペシャルな技だった。小松は長沢が自分に好意をもってくれたと思い込み、髪を上げてピアスを開けた。だが、「モテよう」とした小松に対して冷めた長沢である。ダサい小松をいじって笑い者にするのが長沢の魂胆なのである。その話を女子トイレで友人としていると、太田に怒られる。これにより、スクールカースト頂点の太田に目をつけてもらっている小松が実は狙いものなのではないかと思い、長沢は小松をデートに誘う。だが小松は小松で女のことで自棄になっていたので、毅然とした態度で長沢に接した。
2人は「猫ちゃんワールド」でデートをする。長沢は他の男なら一発で落とすことができる「猫がかわいい」と言いながらぶりっ子を仕掛けるが、小松は愛想笑いである。長沢は自分の予定通りに小松が落ちないことでムキになっていた。小松はこれで長沢と付き合えると思い、ラブホテルに誘う。だが緊張した小松は勃起せず、それを見た長沢は小松を振ったのであった。
小松と別れてしばらくしてから、長沢はラブホテルで小松とセックスをしたと皆にメールで言いふらす。長沢は小松を振ったにもかかわらず、オシャレに努めようとする小松のことを彼氏にしようを目論んだのである。どこまでも都合のいい長沢だ。だが長沢の計算された計画に気づかない小松は、長沢が謝ってきたので付き合うことを承諾。もともと長沢のことが可愛いと思っていた小松だ。長沢がうるんだ目で謝ればイチコロである。長沢は小松からコンテストの話を聞き、一緒に服を選ぶことにした。一緒に渋谷で服を選ぶも、長沢は飽きてきて「外見よりも中身」と言う。それを信じた小松はコンテストの二次面接で落ちてしまった。結局、コンテストに優勝出来なかった小松に用のない長沢は、小松をシカトし別れた。

太田の元カレ

よーじ

太田が当初付き合っていた男。わがままで短気。暴力的で、女相手でも手を出す。
よーじは太田に1万円もする指輪をプレゼントしている。だが、よーじは浮気をしていてそれに怒った太田はその指輪を校舎の屋上から投げ捨てた。その話をたまたま聞いていた小松は、偶然にも校舎裏で指輪を見つける。太田に指輪を渡し、わがままで強引なよーじと別れるように言うが太田はよーじに逆らえないでいた。だが、結局のところ太田はよーじと別れる。
別れた後も、よーじは太田に無理矢理キスをして復縁を迫っている。これもまた偶然小松が目撃しており、太田は泣きべそをかきながらキスをしていたことを黙っているように口止めした。
太田はよーじと別れ遠藤と付き合うが、よーじはしつこく太田に復縁を迫る。太田が断ると太田とよーじの殴り合いが勃発した。太田に危険が迫っていると思った小松は、野次馬から飛び出して2人の間に入ってよーじにボコボコに殴られた。この一件で、よーじは太田から手を引く。

遠藤(えんどう)

太田がよーじの次に付き合った男。身長が高く顔も整っており、性格も優しい。小松を貶すこともなく男女関係なく話しかける。
太田は遠藤と付き合ってから可愛い笑顔を見せるようになった。太田は、遠藤のことが本気で好きになる。だが交際を続けながらも、太田はよーじと会っていた。会うのはいつもよーじが太田を呼び出すからであるがそれを断れないのも太田の弱い所だった。
遠藤は太田が見た目はギャルだが、中身は普通の女子高生であることを理解していた。だから太田がよーじと浮気していたことも太田が悪いのではなく、「太田に見合う男になれなかった」と遠藤は小松に話している。
小松は太田と付き合い始めるが、太田は遠藤と会っている。太田は小松の至らない点に最初は可愛さを感じていたが、だんだん遠藤に身を任せるようになっていたのだ。太田は小松に悪いことをしていると思いながらも、遠藤と隠れて会っていた。これは太田の浮気だ。小松は遠藤と太田が待ち合わせて仲睦まじい様子で話している所を見て、遠藤に話をする。すると遠藤は、「あいつお前にも言えない悩みあって自分責めてる。もっと大切にしてやれよ」と小松に告げた。
小松は自信を失って、太田と遠藤の前で太田との別れを切り出す。太田は別れを受け入れるが、まだ太田のことが好きな小松は「別れたくない」と叫ぶ。太田の足にまとわりつく小松を、遠藤は一蹴している。
小松と別れた後、遠藤と太田はホテルで会うも、太田の心には小松の思い出がよみがえり遠藤の前で号泣した。それを見た遠藤は太田を無理矢理抱くことなくただそばで見守っているだけであった。

メンズエステ「美男ワールド」

桜井ハルミ(さくらい はるみ)

メンズエステ「美男ワールド」の店長。もともとは兄が「美男ワールド」を経営していたが、海外に移住しその後の経営を任された。プライドは高く、美意識も高い。大きな瞳と柔らかい髪で見た目はかなりハイレベルである。
小松の存在は美男ワールド内で引き継がれており、ハルミが初めて小松を見た時は小松を馬鹿にしたところから始まった。ハルミからすると、今まで散々いい男と付き合ってきたので、ルックスの良さも自信も備わっていない小松は、いじりがいのある客である。妹の清子と共に、小松が自分にとって都合のいいい男、すなわちモテ男になるために指導する。小松には無料でモテ術を指南している。
エステティシャンとしての腕は確かなものであり、多くの客が来店している。小松のクラスメイトの山田もそのうちの一人だ。山田はニキビが多く、肌のエステを依頼した。ハルミの腕にかかれば山田のフェイシャルエステはお安い御用だった。山田は肌がきれいになり美男ワールドを気に入った。
ハルミは小松の悩みや愚痴を、エステ施術をしながら聞くことが多い。だから小松が泣いても文句を言っても聞く耳を持たず、他のお客の施術に集中する。だから「話がつまらない」と小松の話し方を一蹴することもあった。だからハルミは清子と共に、小松が女の子と話すときの心構えを教えた。「女の子に希望言われたら必ず『YES』。ウソでもいいからとにかく『ウン』って言うの」や、女の話には相槌を打ち、その話に対しての質問を投げかけるように指導した。
オニ姉妹は2人とも、男女関係なく性欲を抱く。だから山田の彼女である美和の可愛さと健気なキャラクターに性欲が湧き、清子と一緒に美和をホテルまで連行したことがある。結局は美和が「山田の元に帰さないと舌を噛む」と言ったので美和を山田の元へ帰した。ハルミは美和のどこまでも山田一筋なところに参ったのである。
ハルミの好みは、自信があり切れ目な男である。顔面整形をした山田の顔は、ハルミのタイプの男性であった。「21世紀の小林旭を探せ!!」のコンテストに出場するために、山田が美男ワールドに来店した。山田はコンテストまでの2週間の間に、短足で寸胴な体を引き締めるように要求する。清子は冷静に考えて、今の山田がそんなにすぐに引き締まることは難しいと考えたが、ハルミは山田の甘いマスクにうっとりしていた。だが小松と違ってオニ姉妹の言う通りにしない山田に退屈さを感じ、コンテストが終わると山田の専属アドバイザーから手を引いた。
ハルミは幼い頃からモテていたので、モテはその人に元々備わっているものだと小松に言った。このことにショックを受けた小松は、よろけてオニ姉妹宅にある壺を割ってしまう。これにより小松は、壺を弁償するために、土建工事のアルバイトをする羽目になった。だが結局、その壺がニセモノだと判明した。ハルミたちはニセモノだったが小松がおとなしく働いているから黙っていたのである。
小松が太田との恋愛が始まった頃から、ハルミたちの登場回数は少なくなっている。そして、競争の激しい都内のエステ業界の波についていけず、オニ姉妹は美男ワールドを閉店した。閉店した後、ハルミと清子は街を優美な格好をして渡り歩いている。そして、小松が太田と別れて泣き崩れている所に遭遇するが、まるでハチのように去っていったのである。

桜井キヨコ(さくらい きよこ)

メンズエステ「美男ワールド」のスタッフ。店長は姉のハルミであるが、姉妹ということもあり2人の関係性は対等である。ハルミと同じく小松のモテなさぶりを馬鹿にし、面白がっている。小松が「モテたい」と必死になっているので、「これからあたし達の言うことに絶対逆らわない!!わかった?」と清子は条件を出し、小松を無料でモテ指導する。見た目はストレートロングで美しく、スタイルもいい。
小松のモテない所は女を怖がっている節があると指摘したり、女の話を聞く時はとにかく聞き手に回ることを伝授する。さらに、小松のクラスメイトの山田のデートでの傲慢な態度を見て、「本当に愛されるのは打算のないやさしさのみ…。そーじゃない人の場合はむしろゴーマンな態度の方がモテる」と、山田の自信たっぷりの歩き方に感心している。男はどっしり構えている方が求められるという持論をもっている。
ハルミと同じく、女にも性欲を感じる清子は、山田の彼女である美和(みわ)の可愛さに惹かれる。そして山田とデート中の美和をホテルまで連行した。美和が「山田の元へ返さないと舌を嚙む」と言ったので、渋々山田の元へ帰した。
清子自身が好きになるのは、ハルミとは対照的なダメな雰囲気の男である。特段顔が整っていることは清子にとっては重要ではない。だから顔面整形を施した山田が美男ワールドにやってきて、メンズコンテストの為に無理な要求をしてきても、決して顔に騙されず「これを言っているのはあのブサイクな山田である」と清子は冷静に対応していた。そして、顔が出来上がっている山田の体を完成させる方が、小松を指導するより美男ワールドにとって有益だと判断。よって、小松からコンテストまで指導するようにお願いされていたが、清子はハルミと共にコンテストまで山田の専属アドバイザーになった。だが、自分の言う通りにせず、筋の通ったことばかり言う山田は面白くなく、コンテストの二次面接が通過すると、オニ姉妹は山田の専属アドバイザーは辞めた。そして元と同じように小松をいじるのであった。
小松が太田のことを意識し始めた頃、「どうすれば太田を振り向かせられるか」と小松が教えて欲しいと言ってきた。だが、清子もハルミと同じくモテはその人が生まれ持ったものだという考えがある。これを聞いた小松がショックを受けてよろけた弾みで、オニ姉妹宅の壺を割る。壺の弁償するために、小松は土建工事のアルバイトを始めた。
小松が土建工事のアルバイト先で働いているところに、オニ姉妹は偵察しにやってきた。そこで清子が出会ったのが中年男性の小橋(こばし)である。清子は、さえない見た目にもかかわらず、離婚を3回経験しさらに今も25歳のかすみに結婚をせがまれている小橋に惹かれた。清子は「絶対に落とす!!」と意気込んで、何度も小橋に会いに行く。胸元を露出したセクシーな服装で小橋の前に現れるも、小橋は動じない。軽く会釈するだけであった。小橋は清子の人間性の本質を見抜いていたのである。小橋は、清子の根は強いので優しくするとその分キツくなるという分析をした。これにまんまと乗った清子はさらに小橋に夢中になる。だが、何度会っても小橋はかすみの話ばかりするので、清子は小橋のことを諦めた。
美男ワールドがエステ業界で生き残ることが出来ず、閉店した後は、ハルミと共に優美な服に身を包み街を渡り歩いていた。清子は太田に振られた小松を見て、「成長したじゃん」と言うがそのままハルミと共に去っていった。

その他のキャラクター

小橋(こばし)

小松が土建工事のアルバイトで出会った中年男性。メガネに無精ひげのごく平凡に見える男である。
だが離婚を3回経験し、慰謝料を払うために現場のアルバイトをしていた。しかも現在は、土建工事現場の食堂で働くかすみに結婚をせがまれている。小松は小橋の見た目からは想像できないモテ男ぶりに感服し、小橋にモテ術を教えてくれるように懇願した。
小橋自身、自分がモテているという自覚はないが女の取り扱いには慣れている。女は花だと比喩し、優しく接することを大事にしている。用事をしてあげて、困った時は助けてあげていくうちに女の人にとって「なくてはならない存在」になる。これを小橋は自然と実行しているのだ。かすみは可愛いが現場で働く男たちには厳しく接する。だから男たちと衝突することがあった。だが間に入り、かすみを守ったのが小橋である。
小松の働きぶりを偵察にきたオニ姉妹だが、清子が小橋に惹かれる。清子は、バツ3で今も若いかすみと付き合っている小橋を魅力的に感じたのである。清子は絶対に小橋を落とそうと露出の多い服装で小橋に会いに行ったり、ドライブに誘ったりするが不発だ。小橋によると、清子とかすみはどちらも「強い」という点が似ている。だが、かすみは根が弱いから優しくすべきで、清子は根が強いので優しくするとその分キツくなるという分析をした。かすみには優しさを見せて安心させておき、清子には冷たい態度で接することで清子の気持ちをさらに燃えあがらせる手法である。小橋は興味のない顔をしてきっちり相手のポイントは攻撃している。さらに、思ったことは素直に言葉にするところも小橋の長所である。小松がアルバイトを辞める時、小橋は「そうか、寂しくなるな。ボク…小松君好きだったから」と小松に告げた。小松は不覚にも嬉しいような恥ずかしいような恋に似た気持ちを抱いた。
結局、清子は何度も小橋に会いに行くが、小橋の本命はかすみであり、清子の前でかすみの話ばかりするので清子は小橋から手を引いた。

北村紀子(きたむら のりこ)

読者モデルをしている女子高校生。太田の友人である。
小松と太田が代官山でデートをしている所に、偶然現れた。太田と小松のデートであるにもかかわらず、紀子は2人についてきた。顔が可愛い紀子に、小松はデレデレしていた。また、紀子もあざといので小松にぶりっ子をする。そんな小松を見てふてくされた太田である。これは太田のヤキモチであり、紀子はそんな太田を見て面白がっていた。可愛いがあざとい紀子は、性格が良いとは言い難いキャラクターである。

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