薔薇はシュラバで生まれる(漫画)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『薔薇はシュラバで生まれる』とは、漫画家笹生那実氏が32年ぶりに描いた漫画。1970年は、少女まんが黄金期と呼ばれ、その頃漫画家のアシをしていた著者は多くの名作と関わりを持っていた。全体の構成を各先生方に送りご承諾をもらい、ネームが出来ると再び先生方にチェックを受け、当時の作品を読み直し、思い出したことを漫画にしていったものである。著者は漫画家のシュラバと呼ぶ過酷な仕事場で、どのように名作が生み出されていくかを見続けた。本書は、その記録である。

76年11月ころ、カンヅメ旅館で三原順先生のアシをした。この時手伝ったのが、『はみだしっ子』シリーズ9作目の『そして門の鍵』。『はみだしっ子』の主人公にあたる4人の少年たちの名前はアンジー、グレアム、サーニン、マックス。4人はそれぞれの家庭に複雑な事情を持ち、親を見限ったり、親に見捨てられたりして親元を飛び出し、4人で共同生活をしている。心に闇を抱えているかれらは、町を転々としながらお互いの絆を頼りに生きている。著者には先生とこの4人の少年の顔がダブって見える。カンヅメ旅館では三原先生がグレアムのように落ち着いて編集者Uさんと話す。先生は「Uさんと似ている方が住んでいます。」とUさんに言う。それを聞いたアシたちは黙ったままプルプル震えている。Uさんが帰った後、大爆笑する。そしてアシたちは「編集者Uさんは近所の犬に似ているの」とゲラゲラ笑いながら著者に教えてくれる。そんなことがあった後からは、漫画に登場するUさんは、髭のついた犬の姿で書かれるようになる。先生とアシたちで特集ページに登場させる4人をどのような姿にするかの意見を交換しているとき、三原先生が着物を描くのを非常に嫌がっていることが判明する。先生はまるでマックスのように嫌がる。また、ちょっとした実験をしようと思い立った先生が楽しそうに「やってみよう」と言う。その顔はサーニンになっている。著者は部屋の隅でストーリーを考える三原先生を後ろから見て、先生の頭の中で4人の少年が活動しているのを感じる。

樹村みのり先生「私はあんなことで私は負けたりしない」

『40-0』は短編としてここに収録されている

樹村みのり先生の作品の 『40-0』は、「女の子がひどい目にあっても尊厳まで傷つく必要はない」という樹村先生の主張を描いたものだ。樹村先生は「私はあんなことで私は負けたりしない」と作品の中で訴えた。

樹村みのり先生「完璧主義でない方がいい、デビュー直後の新人は未熟な作品を描いてそれを読者に読んでもらうことによって学んでいける」

著者は作品を発表しない時期があった。それは自信の無い作品を掲載したくないと言った事に対して、樹村みのり先生は、「完璧主義でない方がいい、デビュー直後の新人は未熟な作品を描いてそれを読者に読んでもらうことによって学んでいける」と著者にアドバイスする。この言葉は漫画から離れた現在も思い出す。更に樹村先生は「地面に並べた自分の欠点ばかりを見つめていないで、前を見てふみだしてごらん 何度転んでもかまわないから 転ぶうちにわかってくるから」と著者を励ました。

山岸涼子先生「描きたくない」

山岸先生は「『天人唐草』を描きたくない」と発言したことがあった。当時の少女漫画は、主人公は10代か20代にするのが常識で、主人公が30歳、髪を金髪にするなど当時では考えられない設定だった。この作品発表後に先生は少女漫画界の改革者と評判になった。79年以降のテレビ番組で山岸涼子先生インタビュー番組で、インタビュアーに「思い出の作品は何か。」と聞かれて、先生は「思い出の作品は『天人唐草』です。」と答えていた。更に山岸先生は「あれを描くことで自分を表現できるようになった。そのきっかけとなった作品だと思っている。」と回答している。この言葉を聞いて、著者は、先生が「この作品を描きたくない。」といった当時の場面を思い出す。そして同時にヘッセの著作「デミアン」に出てくる言葉を思い出す。それは、「鳥は生まれよとするとき、卵のからから出ようと激しくもがき苦しむ。それまでの世界を壊し外へ出るために。」という言葉である。そうして著者は、自分が少女漫画の名作を描く場にいただけではなく、一人の作家が自分の殻を破る瞬間に居合わせたことに気が付く。

霊能師「あなたはかつての人々のための供養として作品を描いている」

白妖の娘

木原としえ先生は、霊能師に「あなたはさる高貴な姫君の生まれ変わりだ。」と言われたり、「嫁いだ夫は若くして死去、その後残された幼子も喪い孤独な生涯を送った。だからあなたは一生結婚できない。」と言われている。別にも「あなたはかつての人々のための供養として作品を描いている」と言われる。周りがそういう事を言うほど木原先生は高貴な雰囲気のある女性である。

著者笹生那実先生「死んでお詫びしたい」

著者は、美内すずえ先生に著者がした昔の大失敗を謝罪したことがあった。著者が「死んでお詫びしたい」と言ったところ、美内先生は、「それは困る、命はいらんけど右腕は欲しい」とにっこりと返答される。著者はこれを聞いて、美内すずえ先生が許してくれていたこと、自分のことを「右腕」と言ってくれたことに感謝した。

『薔薇はシュラバで生まれる』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

笹生那実先生『薔薇はシュラバで生まれる』の続編

スマホも携帯もない時代の恋事情を書いた作品である

『薔薇はシュラバで生まれる』には続編があり、そのタイトルは『すこし昔の恋のお話』で、2022年2月発売である。32年ぶりに描いた『薔薇はシュラバで生まれる』を出版後、著者はテレビ、ラジオ、ウェブマガジン、雑誌、ネットニュースなど各方面から取材を受けた。その際インタビュアーからよく聞かれたのが、「次回作は?」である。また同業者が著者の作品を紹介してくれることもあるが、30年近く前の新人の作品を読んでいる人は少ないはず。著者の昔の作品と当時の著者の恋模様を描いたエッセイ漫画を出版する企画となった。この本には著者が23才の時に再デビューした時の作品『テレパシー・ラブ』と描きおろしエッセイ漫画が収録されている。描きおろしエッセイは、著者がシュラバにいた頃どんな恋をしていたかを描いている。著者はマンガ家新田たつお氏と結婚している。

別マまんがスクール開催

別マまんがスクールは月一回投稿作品を添削して、賞と賞金を授与する。
賞は、金賞、銀賞、デビュー賞、期待賞、チャレンジ賞、キラリ賞、Jr.ベスト賞に分かれそれぞれ賞金も用意されている。

美内すずえ先生 たんたんたぬき

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