異世界居酒屋「のぶ」(蝉川夏哉)のネタバレ解説・考察まとめ

『異世界居酒屋「のぶ」』は、蝉川夏哉によるライトノベルを原作とし、コミカライズ・スピンアウト・アニメ・ドラマと多岐にわたるメディアミックス化をしている。異世界転移というジャンルではあるが、経営している居酒屋の入口が異世界に通じ現代日本の料理と酒で異世界の人々を癒すという異世界転移にグルメジャンルを取り入れた異色のストーリーだ。帝国の古都アイテーリアにある居酒屋「のぶ」。そこはアイテーリアの人々が見たこともないようなお酒や料理を出し訪れた客を暖かく癒やしてくれる不思議な居酒屋だった。

居酒屋のぶも大将の名前から。常連客からはタイショーと呼ばれている。

CV:杉田智和
演:大谷亮平

居酒屋のぶの店主兼料理人。お店の常連客からはタイショーと呼ばれることが多い。
元は京都の老舗料亭ゆきつなで働く板前だった。料亭でリストラの空気が漂い始めたため自分から辞め、たまたま駅のホームで再会したシノブと共に居酒屋のぶを始めた。
普段は寡黙で料理に対して真摯にむき合っている真面目な性格。修行で得た料理と、異世界で客にだす料理の間で迷っていたが、様々な人のアドバイスで乗り越えた。常に料理の腕を磨いている。
異世界であることもあり日本語で書かれたお品書きが読めない客から「何が出来るんだ」という言葉に対して、「何でも言ってみてください。大抵のものはつくれると思いますよ」と答えられるほどに自分の腕に自信がある態度をとった。そして期待以上の料理を提供する。それがタイショー。
客が何かに悩んでいたりすると自然と諭す行動や発言をする。お節介になりすぎず、自分の経験や料理からの発言はとても重く説得力がある。
従業員である他の人物が客に絡まれた際はすぐに助けに入ったり等、とても頼り甲斐のある店主だ。
そんな頼れるタイショーではあるが、一つの食材を大量に買ってしまったり、戸締りをうっかり忘れてしまったり、店では使わないであろう調理器具を購入したり、様々なやらかしをしてシノブに怒られてもいる。
刑事モノのドラマを観ることが好きで訳ありそうな客へ、とても説得力があるように聞こえる推理を披露しているが大抵合っていない。
そんなお茶目なところも彼が皆から愛される理由であろう。
そして彼が作った料理はアイテーリアでも受け入れられ、真似する店が増えているため、知らず知らずアイテーリアの流行を作っていることになる。
しかしそれは何度も伝えているように、彼が真摯に料理と異世界の客である彼らの舌に合うものを探求しているからであって本人は自分の功績だとはあまり思っていないようだ。

千家しのぶ

居酒屋のぶの看板娘。可愛い笑顔ときめ細かい接客をする。

CV:三森すずこ
演:武田玲奈

居酒屋のぶの看板娘。お店の常連客からはシノブちゃんやシノブさんと呼ばれている。
元は料亭ゆきつなのお嬢様だったが、経営状態が悪化したため立て直すために銀行の副頭取の息子とのお見合い結婚をさせられそうになり、実家を飛び出したところでタイショーと出会い一緒に居酒屋のぶを開店した。
細かな気遣いの出来る接客とその笑顔で、居酒屋のぶの常連客からは愛され頼りにされる存在。接客にくわえて居酒屋のぶにやってきた客のこともよく観察しているため、奇譚拾遺使であるジャンの変装も一発で見抜いている。横柄な態度にでる者には入店拒否を伝えることもあり、ヘルミーナに絡んでくる客から彼女を守ったりと、自分の信念に則った大胆な行動をとることも。困っている人は放っておけない性格で、エーファを雇うことをすぐに決めるなどやはり大胆で豪傑。ただしタイショーもだが、彼女もある意味おおらかな性格で物事をあまり深く考えていないので、アイテーリアの通貨を日本の古物商で換金している。
神の舌と呼ばれるほど鋭敏な味覚の持ち主で、料亭ゆきつなでは「しのぶお嬢さんの食べ残し」がとても恐れられており、彼女が食べ残しをした時は必死で原因を探すというのが当たり前だった。
居酒屋のぶで様々な人々と過ごす内に、飛び出した実家にも連絡をとるようになる。
まかないや簡単なスイーツを作ったりしており、それが居酒屋のぶの危機を何度も救っているのだが本人は気付いていない。

エーファ

居酒屋のぶのマスコット的な存在。

CV:久野美咲
演:新谷ゆづみ

居酒屋のぶの前を通りかかった時、たまたま見えた「水が出る鉄の塊」である蛇口が欲しくてつい勝手に店内に入ってしまったところをシノブに見つかる。
「盗みという疾しい行為をしたから償いをしたい」とシノブ言い、「実際にはまだ何も盗んでは…」と言い淀むシノブに対し、しっかりと「盗もうと思った時にもう罪は犯していると思います。罰を受けます」と告げる。その後起きてきたタイショーに対して咄嗟に「新しく雇う皿洗いのバイト」と言い放ち、雇うことを決める。
皿洗いの仕事を主に担当しているが、客が混んでくると給仕も担う。エドヴィンから読み書きに計算と学んでいるためどんどん頼りになる存在へと成長中。
貧しい家に生まれていたが、居酒屋のぶでのバイト代やタイショーから貰う賄いのおかげで居酒屋のぶに勝手に盗みに入った時よりも豊かに暮らせている。
初めの頃はオドオドとした態度だったが、下に弟と妹がいることもありお姉さんらしくビシッと客同士の諍いを止めたこともあった。
とにかく美味しそうに賄いを食べる姿が可愛らしく、タイショーやシノブはもちろん他の従業員や客からも可愛がられている。

ヘルミーナ

儚げで可憐な外見とは裏腹に漁師の娘らしく逞しい。

CV:内田真礼
演:堀田茜

ベルトホルトの遠縁であるイカ漁師の娘であり、儚げで可憐な容姿の女性。ベルトホルトの妻。
結婚した当時、手違いで日中新居に入れない状態になり、困ったベルトホルトが新居が開くまでの間、居酒屋のぶの手伝いとして置いてもらえないか?とお願いした。
その時居酒屋のぶではうなぎブームが来ており、まさに猫の手も借りたい状態。快く居酒屋のぶに迎え入れられる。そしてタイショーの料理の腕や居酒屋のぶの暖かさに触れた彼女は新居に入れるようになっても居酒屋のぶで働きたいとベルトホルトにお願いし給仕として正式に働くことになった。
従順で愛らしい容姿に見えるが、さすが漁師の娘。アイテーリアの人々にとっては未知の生物であるタコを手掴みで壺に戻したり、夫であるベルトホルトやニコラウス達が店内で騒げばベルトホルトの耳元でそっと囁き鬼の中隊長である彼を黙らせる。ニコラウスとハンスはヘルミーナを怒らせないことを誓った。
ベルトホルトを心から愛しているのが言葉や態度の端々から伝わる。ベルトホルトの戦友が生牡蠣を食べ過ぎて中って死んだという話を聞き、泣きながら彼が生牡蠣を食べるのを止めた。
居酒屋のぶでの給仕の仕事は子供が出来てからは休業中だが、度々ベルトホルトと共に居酒屋のぶに遊びに来ている。

ハンス

これからの料理人としての活躍にも期待なハンス。

CV:阿部敦
演:小林豊

アイテーリアの衛兵の男性。しかし居酒屋のぶの料理や笑顔の客に触れ、人を喜ばせる仕事をしたい、という想いが溢れる。現在料理人になるため居酒屋のぶにて修行中。
最初は同僚のニコラウスに誘われて居酒屋のぶに訪れた。硝子職人のマイスターを父に持つが故、硝子戸やジョッキがあまりにも高い技術で作成されていることに気付く。しかし初めて飲んだトリアエズナマ(ビール)の美味さに感動。おでんに感動。シノブの笑顔に一目惚れをする。店の備品(ジョッキやお猪口や器)の高い技術や料理と酒の美味さに似合わない良心的な値段にも驚き、それ以降常連客として通うことに。
衛兵を辞め料理人になると告げた際、父親と喧嘩をしたが今は和解。上司であったベルトホルトも料理人の才能がなかったらまた衛兵として雇いたいと言うぐらいにハンスのことを大事に思っている。
それはハンスが真っ直ぐで努力を怠らない人間であり、客に対して努力の押し付けをしない性格なのが好かれるのだろう。ニコラウスからは素直なところをしょっちゅうからかわれている。
同じ頃に居酒屋のぶにて働き始めたリオンティーヌと自分を比べてしまい焦りを覚えていたが、タイショーの話を聞きそんな凄い人でも悩んでいたんだとわかり自分なんてまだまだで当たり前だと気持ちの整理をつけ、昨日より今日、今日より明日、更に美味しい料理を作るために頑張ると笑顔で言う。
タイショーから居酒屋のぶに出す新しい品書きを考えるという課題を出された際も真剣に取り組み、朝になるまで新しい料理を作っていた。集中すると他が気にならなくなるタイプなのである。

リオンティーヌ

酒のことなら彼女に聞けばピッタリの一品をお勧めしてくれる。

CV:小松未可子
演:早霧せいな

オイリア出身の女傭兵。サッパリとした男前な性格の女性だが、恋をしたら一途にその男性を想い続ける健気なところもある。
代々伝わるイカの飾りの入った兜を被って戦う。そして代々伝わる掟に従いイカ料理を殆ど食べずに過ごしてきた。理由はイカが家紋なため、そのイカを食べるなんて縁起が悪いというものだ。しかしとある戦場で出されたイカ料理を運試しと評して食べたことにより彼女の運命の出会いをもたらす。その戦場では敵陣営にベルトホルトがおり、物凄い殺気と強さで襲いかかってきた。確実に仕留められる攻撃だったが、リオンティーヌは一瞬の隙を見せたベルトホルトになんとか一撃を返す。そのまま動けないでいると、ベルトホルトはリオンティーヌを見逃し、自分が女だから手加減をした?と思った彼女はベルトホルトの圧倒的な強さと優しさに恋に落ちてしまう。
その後身につけていた出会いの護符のおかげか、アイテーリアで門にいた衛兵・ニコラウスに居酒屋のぶを紹介してもらい、そのままベルトホルトと再会を果たす。だがその時にはすでにベルトホルトはヘルミーナと結婚しており彼女は失恋をした。
一度はオイリアへと戻るが、アイテーリアで開かれた大市にて枢機卿の護衛として再度居酒屋のぶを訪れた際自分が手放したはずの護符が居酒屋のぶの神棚にあるのを見かけ、「自分のこれから」について考え居酒屋のぶで働くことを決める。
元傭兵ということもあり高い集中力と機敏な動きで接客をし、自分の売っているものの味を知らないなんて怖いという理由で閉店後酒の味見をしているせいか、いつの間にか料理にあう酒についてシノブに進言出来るほどに詳しくなった。その酒ききはタイショーも認めるほどだ。
ハンスの新作料理作りに付き合うほど面倒見の良い性格で、ベルトホルトに対してもヘルミーナを気遣うような発言をしたりと、大変頼もしい存在だ。

居酒屋のぶの客

ニコラウス

古参の常連客。彼が多くの人々に居酒屋のぶを紹介している。

CV:森久保祥太郎
演:白洲迅

アイテーリアの衛兵。ハンスの1つ年上の同僚であり親友。年老いてまで自分が衛兵として働くことに疑問を感じており、自分の道を料理人になることと決めたハンスを見てついに除隊。後に自身の情報通なことを生かし水運ギルド『鳥娘の舟唄』へと転職する。水運ギルド『鳥娘の舟唄』のギルドマスター、エレオノーラとは良い雰囲気である。
居酒屋のぶに一番早くに通っていた古参の常連客の1人。元々気さくな性格で大門の番についた時に美味しい店を尋ねられた際には居酒屋のぶを勧めるぐらいにタイショーの料理や酒を気に入っている。
何かとハンスを茶化したり、付き合っている女性の多さを匂わせたり、軽薄なイメージを漂わせているが、上司であるベルトホルトと唐揚げの味付けで本気で討論をしたり、酔った勢いでエレオノーラに秋刀魚の美味しい食べ方をお勧めしたりとノリが良い。
バッケスホーフ事件の時は裏で別れた彼女に頭を下げてなんとかしようとしたり、蛇口を盗もうとしたエーファを庇うシノブ達に洒落のきいた返しをし、魔女狩り事件の時もいつものように店にやってきた3人(残りはゲーアノートとローレンツ)の内の1人だったりと、実は真面目で優しい性格をしている。そんなところは照れ臭いので隠しているが。
鳥料理を好んで食べている。しかし、元々好きではなかった魚も煮物でも生でも食べれるようになり、すっかり通な常連客である。

ベルトホルト

レモンは唐揚げにかけるものだと知らずデザートだと思って食べようとしているベルトホルト。

CV:小西克幸
演:阿部進之介

アイテーリアを守る衛兵隊の中隊長。ハンスとニコラウスの上司であり、ヘルミーナの夫。
鶏肉料理が好物で、ハンスに無理矢理案内させて訪れたのぶにてから揚げとトリアエズナマを食べたことによる両者の出会いから常連客となる。
対してイカには恐怖にも似た苦手意識があるが、イカ漁師の娘(ヘルミーナ)と見合いをするためイカを食べれるようにして欲しい、とのぶの面々に頼んだ。ベルトホルトのイカに対するトラウマは、彼の曽祖父から聞いた巨大なイカの話や自身の左腕に傷をつけた相手(リオンティーヌ)もイカの兜飾りをつけていたためイカは恐ろしいという認識のためだった。しかしタイショーからイカのサイズが自分よりも随分小さいことを知り曽祖父にからかわれていたと認識した途端食べれるようになる。のぶの面々は知らなかったが、実際ヘルミーナの父親が漁をしていたイカはクラーケンと呼ばれるベルトホルトの曽祖父が話した通りの巨大サイズだった。
自身の傭兵としての強さには覚えがあり、周囲からは「鬼」と呼ばれている。そして衛兵の中隊長になっても鬼のようなシゴキを部下にしていて鬼の中隊長と呼ばれている。
山生まれで秋になると南瓜をよく食べさせられていたり、傭兵時代に港町で牡蠣をよく食べていたり、曽祖母が梅干しをつけていたり、実家では大晦日にチーズフォンデュをする風習があったりと割と食に関する情報を多く持っており、だからこそ居酒屋のぶでの異国情緒溢れる料理を受け入れ愛しているのだろう。
ヘルミーナをとても深く愛しており彼女のためなら一晩中アイテーリアを走り回れるほど。勿論、部下に厳しいしごきをするのももし戦に行く事になったように1人でも多くの部下が生きて帰って来れるようにであり、とても愛情深い人である。

omiyasan77
omiyasan77
@omiyasan77

目次 - Contents