君の名前で僕を呼んで(映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『君の名前で僕を呼んで(Call Me by Your Name)』とは、2017年に公開されたルカ・グァダニーノ監督による青春・ラブロマンス映画。17歳エリオは大学教授の父が招いた24歳の大学院生オリヴァーとひと夏を共に過ごす。そんなエリオの初めての、そして生涯忘れられない恋の痛みと喜びを描いている。本作はアンドレ・アシマンが2007年に出した小説『Call Me by Your Name』を原作としている。今作では原作の物語の途中までしか描かれておらず、続編の構想が明かされている。

「大事なことは何も知らないんだ」

オリヴァーとサイクリングに行った際に、恋心を伝えようとしつつも、どう話したらいいのか、自分の気持ちは正解なのか、何も分からないエリオ。それでもオリヴァーに伝えたいという気持ちが溢れ出たセリフ。こんな曖昧で切なくて美しい表現がこの映画には多くちりばめられている。

「君の名前で僕を呼んで。僕の名前で君を呼ぶ」

2人がついに関係を持ち、恋しさのあまりエリオがオリヴァーに言った言葉。本作のタイトルにもなっているセリフであり、エリオはオリヴァーを「エリオ」と呼び、オリヴァーはエリオを「オリヴァー」と呼ぶ。名前を交換して相手とひとつになることが2人の愛情表現であるというロマンチックなセリフだ。

「お前が感じた喜びをその痛みとともに葬ってはいけない」

オリヴァーと離れ失望感に浸っていたエリオに、父親がかけた言葉。一言もエリオとオリヴァーの関係について気づいていても問いただす事はせず、「お前たちが羨ましいよ」と微笑む。自分もはるか昔にそうした感情を持つ寸前まで行ったのに思いとどまり後悔をした経験があるからこそ、息子には自分の気持ちに正直でいて欲しいと語りかける。

「何ひとつ忘れない」

ポスターにも起用されたセリフ。オリヴァーが電話でエリオに最後に伝えた言葉であり、2人の恋の切実さが伝わってくる。別々の道を歩む事になったが、互いの人生を形作る大切な宝物のような時間を過ごせたのだと感じるセリフ。

『君の名前で僕を呼んで』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

恥ずかしいダンスシーン

オリヴァー役を務めたアーミー・ハマーが「人生で最悪のシーンだ」と語っているシーンがある。それは、劇中でオリヴァーとエリオとエリオの数人の男女の友達で夜にダンスパーティーに行き、オリヴァーが80年代の音楽に合わせてダンスをするシーンだ。楽しそうに踊っているが、どこかぎこちないオリヴァーがネットでも話題になった。
この事についてアーミー・ハマーは「撮影中は音楽がかかっていない状態だったから、リズムを取りながら一晩中踊るのは大変だったよ。だからあのシーンはあまり好きではないんだ」とコメントしている。
海外のファンからは「動きがユニーク過ぎ」「なんだか不思議に可愛い」「なぜかハマる」と密かな人気を誇る名場面でもある。

ハエによって表現されるエリオの成熟

美しい映像にたまに写り込んでくるハエが印象的な映画でもある。ラストシーンにおいて暖炉の前でオリヴァーとの別れに泣いているエリオの周りでもハエが1匹飛び回っていた。これは、エリオの成熟を示すものだとされている。ハエは香りを放つものに寄ってくる。熟していない果実には寄らず、熟して香りをまき散らすようになった果実にはハエが寄ってくる。つまり、エリオの恋も熟し、果実のように成長したからハエが寄ってきていたのではないかと言われている。

続編の可能性

実は本作は原作の途中までしか描かれていない。監督自身も続編への意欲があり、続きがあるとすれば、2人の十数年後を描く予定だとされている。今作では80年代に流行ったとされるエイズ問題について一切触れられていないため、次回作ではエイズ問題について描く予定であると監督はインタビューで答えている。

『君の名前で僕を呼んで』の主題歌・挿入歌

オープニング主題歌:Sufjan Stevens『Mystery of Love』

エンディング主題歌:Sufjan Stevens『Visions of Gideon』

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