ワンダー 君は太陽(Wonder)のネタバレ解説・考察まとめ

『ワンダー 君は太陽』(原題:Wonder)とは2017年のアメリカ合衆国のドラマ映画。原作は、2012年に発表された新人作家R・J・パラシオの処女作『ワンダー』である。
外見からわかる先天性の障害がある少年が様々な困難に立ち向かい、周囲の考え方を変え、周りと共に成長していく。少年の視点だけでなく、複数の登場人物の視点が導入されている。「見た目ではなく中身を見る」という事の大切さを伝えている物語。

『ワンダー 君は太陽』の概要

『ワンダー 君は太陽』とは、2017年に公開されたスティーブン・チョボスキー監督によるアメリカ合衆国のドラマ映画。R・J・パラシオが2012年に出した小説『ワンダー』を原作としている。ニューヨーク・タイムズのベストセラーリスト第1位を獲得し、世界各国でも翻訳され、800万部突破を成し遂げた。日本でも大ヒットとなったディズニーの実写版『美女と野獣』の制作スタッフと、映画『ウォールフラワー』で思春期の青年の揺れ動く心情を描いたスティーブン・チョボスキーがタッグを組んで完成させた。また、本作は特殊メイクが評価され、アカデミー賞の中の一つでもあるアカデミーメイクアップ&ヘアスタイリング賞にノミネートされた。日本でも話題性のある映画となり約6億円の興行収入を得た。

生まれつき顔に障害があり、他の人と違うためずっと自宅学習をしてきた少年オギーが、初めての学校で周りから変な目で見られ避けられながらも、家族の愛の支えで乗り越えて行く。オギーの中身を知っていくうちに周囲の人間が自然と少しづつ寄ってくるようになり、真の友情を育んで行く。だれもが共感できる孤独を描き出し、オギーと彼の家族や友達の気持ちを通して、人との絆の大切さを教えていく。また、人と違った個性を「受け入れてもらう側」「受け入れる側」の両者の心の葛藤と変化を感じられる感動作である。

オギーを優しく見守り育てた両親を演じるのは、ジュリア・ロバーツとオーウェン・ウィルソン。映画『ルーム』で一躍天才子役として知られたジェイコブ・トレンブレイが特殊メイクをして遺伝子疾患を持つ10歳のオギーを演じている。

『ワンダー 君は太陽』のあらすじ・ストーリー

オギー・プルマンの物語

宇宙飛行士のヘルメットを被った少年・オギー。見た目は普通ではないが、普通の子のように宇宙飛行士に憧れ、アイスクリームを好み、ゲームをする。オギーは生まれつき、顔に障害を負っており、27回もの手術を経験してきていた。それでも頬骨や顎の骨が未発達のままで目は垂れ下がり、普通とは程遠い。外出するときは宇宙飛行士のヘルメットを被りコンプレックスでもある顔を隠している。学校には通わず、母親イザベルからの家庭学習で勉強を行なってきた。
だが、息子の将来の為を考えた母親イザベルはオギーを小学校に入学させたいと父親ネートに相談する。ネートは学校で子供達が容赦なくオギーの顔の事を悪く言い、傷つけるのではないかと心配し、あまり賛同しない。オギーもその話を聞き、不安でいっぱいだった。

学校の見学会

オギーはイザベルに連れられて学校転入前の見学会に行く。トゥシュマン校長に歓迎され、休日の学校をジャック、ジュリアン、シャーロットの3人の生徒に案内してもらう事をトゥシュマン校長がオギーに話すが、オギーは子供達に変な目で見られる事を怖がる。オギーは仕方なく見学会に向かう事を決意し、そのまま休日の学校をジャック、ジュリアン、シャーロットの3人の生徒に案内してもらう。ジャック、シャーロットはオギ―にやさしく接するが、ジュリアンは案内中にオギーから言葉の使い方の間違いを訂正され、終始意地悪な態度をとり続ける。
無事学校見学も終わり、オギーとイザベルは家に帰る。家に着き、家族全員で夕飯を準備している最中にイザベルはオギーに案内をしてくれた3人組がどうだったのか聞く。オギーはあまり良い返事を返さなかった。そんなオギーに対し、イザベルは「悪気があって嫌な態度を取っているのではないのよ」と話すが、父親ネートは小声で「嫌な態度を取る奴は最低だ」と少し冗談交じりに伝えた。不安げなオギーを見てイザベルは「入学が嫌なら辞めても良いのよ」と話すが、オギーは「理科が面白そうだから行きたい」と言う。その言葉を聞いていたネートはびっくりし、イザベルと姉のヴィアは喜ぶ。

初めての学校

オギ―は家族に連れられ、宇宙飛行士のヘルメットを被り学校に向かう。学校の前に着くと、オギーはヴィアに何か小声で話しかけられる。ネートは門の前までオギーを連れて行き2人きりになり「お前はひとりじゃないよ」とオギーが被っていたヘルメットを脱がせて伝える。不安げな息子の後ろ姿を見守りながら、イザベルは「神様、あの子を守って」と祈る。
しかし、イザベルの不安は的中してしまう。全校生徒はオギーの顔に驚き、オギーを変な物を見るような目で見てしまう。教室に入ると、そこには学校を案内してくれたジャック、シャーロット、そして意地悪ジュリアンもいた。オギーは孤立してしまい、周りの生徒からは顔をちらちら見られ、ランチタイムは1人で過ごす事になった。説明会で一緒だったジュリアンに初めての授業の最中に「お前ってスター・ウォーズのシスの暗黒卿に似てるな」と言われてしまう。そんな姿をジャックは見るものの、何もしない。
失意のうちにオギーの初登校の日は終わり、迎えに来てくれたイザベルの元へ走り寄り、すぐに宇宙飛行士のヘルメットを被り顔を隠す。何も言わずに家に帰るオギ―。親友だったはずのミランダによそよそしくされてしまい疲れた表情のヴィアだったが、オギーを心配する。オギーは夕飯の時も頑なにヘルメットをとろうとしない。ネートが雰囲気を盛り上げようとするも、オギ―には届かない。イザベルが「今日どうだった?」と聞いても俯いたまま「良かった」としか答えないオギー。しつこく聞くイザベルに嫌気がさし、オギーは自分の部屋に行ってしまう。それを聞いていたヴィアは「私にも今日どうだったのか聞いてほしい」と誰にも聞こえない小声で漏らす。オギーの部屋に向かったイザベルはオギ―と話をする。オギーは涙を流しながら「どうして僕は醜いの?」と尋ねる。そんなオギ―にイザベルは「あなたは醜くない」と慰める。

ヴィアの物語

ヴィアにとってオギーは家族の中の太陽であり、自分とイザベルとネートはその周りの惑星だと思っている。家では親に迷惑をかけないよう、自分の気持ちは抑え、家族の関心の中心にいるのは弟のオギーだと理解している。だが、一度でいいから自分を見てほしいと思っている。それでもオギーの事は大好きだ。
オギーが初登校の日、ヴィアはオギーに「見られても気にしないの。目立つから仕方ないよ」とアドバイスをして見守った。
しかし、ヴィアにはヴィアの悩みがあった。 それは幼稚園からの親友のミランダのことだった。学校に行くと、親友だったはずのミランダの見た目が別人のように派手になってしまい、違うグループとつるむようになってしまった。ミランダはヴィアによそよそしい態度で接してくるようになり、ヴィアは1人ぼっちになってしまう。ミランダの様変わりの原因もわからず、戸惑うヴィアに演劇クラスの男の子ジャスティンが話しかけに来る。ヴィアはそこでジャスティンに演劇クラスに誘われる。演劇サークルにはミランダも入部していて気まずいが、ジャスティンのお陰で孤独ではなくなり、ヴィアはジャスティンに惹かれてゆく。

オギーの初めての友達

ジャック(右)はオギー(左)のはじめての友達になる。

ある日、抜き打ちの科学テストが行われ、理科は誰よりも得意なオギーの横でジャックは頭を抱えていた。そんなジャックにこっそり解答を見せてあげるオギー。このことをきっかけにジャックとオギーは仲良くなる。ランチタイムもジャックと楽しく過ごすようになる。校門でいつも不安そうにオギーを出迎えるイザベルだったが、友達と一緒に笑い合いながら学校を出てくるオギーを見て涙が出そうなほど驚いた。ジャックを家に連れて来てもいいか尋ねるオギー。イザベルもオギーの初めての友達を嬉しく迎える。
オギーとジャックはいつも一緒に行動するようになる。ふざけあったりして、オギーは学校に行くのが楽しくなっていった。

ハロウィンの日

オギーにとってハロウィンは仮装をして堂々と顔をあげて歩き回れる日。誰が誰なのか分からないから大好きな日でもある。早速スクリームの仮装をして教室に繰り出すオギーだが、教室に入るときにジュリアンとジャックの会話を耳にしてしまう。ジュリアンがジャックに「どうしてつるむんだ?」と聞くとジャックは「校長先生につるむよう頼まれたからだ。オギーの顔に生まれたら自殺しているよ」と答えた。それを耳にしてしまったオギーはたまらず教室を飛び出す。ジャックの言葉はジュリアンに合わせた本意ではないものだったがその場の雰囲気で言ってしまう。その日からオギーとジャックの間には大きな溝ができてしまう。家でイザベルにミランダの事で悩んでいる事を打ち明けていたヴィアだったが、学校からオギーが体調不良という事でイザベルの元に電話が掛かり呼び出されてしまう。ヴィアは家でまた1人になり、孤独を感じる。家に帰って「誰も信じられない。学校なんて大嫌いだ」と泣いているオギーに、ヴィアは「大丈夫、私達は親友でしょ。誰にだって辛い1日はある。私もミランダに避けられてるのよ。人は変わっちゃうの。さあ、ハロウィーンパーティーに行って楽しみましょう」と慰める。
その後、オギーは学校でジャックを徹底的に避け始める。ジャックはどうして避けられているのか分からない。学校でオギーはまた一人のランチタイムになってしまうが、そんなオギーにサマーという少女が声をかける。周りの人からの「オギーにさわるとペストが移る」との言葉を気にもせずにオギーと親しくなるサマー。そんな二人をジャックはどこか羨ましげな目で見ていた。

ジャック・ウィルの物語

ジャックはそもそも新入生であるオギーの学校案内の役目を負うことにあまり乗り気ではなかった。ただ、それからの日々で気づいたことがある。オギーの顔に最初は驚いたものの、それには時間が経てば慣れる。そしてオギーは頭がよく、また一緒にいると誰よりも楽しかった。それを知ればずっとオギーと友達でいたくなった。5年生全員を並べて誰と一緒にいたいかと聞かれたらオギーと答えるほど親友になれたと思っていた。
だが、突然オギ―はジャックを避けるようになってしまった。避けられている理由が分からないジャックはオギーと最近一緒にいるサマーに理由を聞く。サマーは答えづらそうに「ゴーストフェイス。わたしが言える事はそれだけよ」と言う。ジャックは「ゴーストフェイス」について考えていた。ハロウィーンパーティーの日に「あんな顔に生まれたら自殺している」と言ってしまい、その近くにゴーストフェイスの仮装をした者がいた事をふと思い出す。
ある日科学授業の自由研究で二人一組でペアを組むよう言われたジャックは先生に「オギーと組ませてください」と申し出る。授業のあと、ジュリアンはジャックに「あんな気持ち悪いやつとペアを組むのか」と声をかける。ジャックは怒ってジュリアンに殴りかかる。その後殴り合いになりジュリアンは停学処分を受ける。ジャックはオギーに酷い事を言ってしまった事を謝る。オギーも自分のために殴りかかっていったジャックの様子を見ていて、再びジャックに信頼を寄せるようになる。
二人は友達に戻り、科学の自由研究を一緒に作り、見事、最優秀賞を獲得。しかし、その後もジュリアンからの嫌がらせが止むことはなかった。見かねた校長のはジュリアンの両親を呼び出す。「彼の外見は変えようがない、私たちが見方を変えなければならない」と訴えかけるが、両親には届かず、自分の子供が受け入れてもらえない学校に息子を通わせられないと決めつけ、親の勝手な判断でジュリアンは学校を去ることになってしまう。ジュリアンは友人と離れてしまう事を悲しみ後悔し最後に校長先生に「ごめんなさい。」と言い学校を去って行った。

ミランダの物語

ミランダはヴィアと幼稚園の頃からの親友。家族同士で仲が良く、オギーを弟のように接してきた。オギーがいつも被っている宇宙飛行士のヘルメットは元々はミランダがプレゼントしたものだった。親の離婚で自分の居場所が無くなったと感じたミランダはサマーキャンプに参加し、『他の人に成りきるゲーム』でその場でだけヴィアに成りきった。ヴィアに成りきった事で、障害のある弟を抱えながらも明るく過ごすヴィアの素晴らしさに改めて気づいたミランダ。ヴィアの家族の素晴らしさに引き換え、ミランダの家族は寂しく、いい関係とは言えない負い目があり、ミランダはヴィアに今までのように接することができなかったのだ。
しかし、ヴィアに彼氏ができたことを知り、寂しさでオギーに電話するミランダ。オギーが学校に行き楽しんでいる事、ヴィアの楽しんでいる様子をオギーとの電話の中で知り寂しさを感じ、またヴィアと仲が良かった頃に戻りたいと思うようになる。演劇サークルの劇発表会の日、ヴィアの両親が観に来ていることを知った主役の役を貰っていたミランダは仮病をつかい、その日だけは主役の座をヴィアに譲る。このことをきっかけにヴィアとミランダは仲直りをする。その夜は昔のようにヴィアの家族と共に楽しい時間を過ごすのだった。

修学旅行の日

オギーにとっては親元を離れての初めての泊りとなる修学旅行。映画鑑賞のプログラムをこっそり抜け出すオギーとジャックだったが、そこで上級生に遭遇。またもやいじめの対象になるオギーだが、勇気を出して立ち向かうオギーとジャック。しかし、上級生にジャックが押され倒れてしまい、オギーも殴られそうになる。その時、今まで意地悪なジュリアンと一緒にイジメてきた同じクラスの男の子達が助けに来てくれる。上級生を倒し、みんなで湖畔へ行き、いつの間にかたくさんの仲間ができていた事に気づきオギーは涙を流す。喧嘩でボロボロになった服で両親の元へ帰るオギー。驚くイザベルに対し、ネートは息子の成長に密かに嬉しそうにする。

ワンダー(奇跡の子)

5年生の終業式。この学校には1年の終わりに学校に1番貢献した生徒を表彰するイベントがある。イザベルとネートが見守る中、それに選ばれたのはなんとオギーだった。感激で涙が溢れるイザベル。表彰状を受け取りに向かうオギーに『あなたは奇跡の子』と声をかける。オギーは表彰を受けながら、一人一人違っていて、そして誰もが称えられるべきだと感じていた。「世界中のだれもが、一生に一度はスタンディング・オベーションを受けるべきだ」とオギーは1年を通して感じた。皆がオギーを祝福し、頭を下げてお礼をするオギー。

映画は幕を下ろす。

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