偽りなき者(Jagten、The Hunt)のネタバレ解説・考察まとめ

『偽りなき者』とは、トマス・ヴィンターベア監督によるヒューマンドラマ映画。
舞台はデンマークの小さな村。少女が何気なくついた嘘で、変態の烙印を押され村で孤立してしまった男が、自身の尊厳を守るため集団ヒステリーと戦う様を描く。2012年のデンマーク映画。日本公開は2013年3月。

アグネス(演:アンヌ・ルイーセ・ハシング)

テオの妻で、クララの母親。
テオの親友であるルーカスとは親しい間柄であるが、ルーカスの娘に対する性的虐待疑惑を知って以降、ルーカスに対して憎悪の感情を持つ。気が強く非常に頑なな性格で、ルーカスの性的虐待疑惑が起こってすぐに、クララがルーカスは自分に何もしてないと打ち明けるが信じなかった。スーパーで殴られてボロボロに傷ついたルーカスが歩いているのを一家で偶然目撃し、見かねたテオが声を掛けようとするのを止めてしまう。最後に真実をクララから打ち明けられたテオが、ルーカスに会いに行くのも止めようとする。

ブルーン(演:ラース・ランゼ)

ルーカスの親友で狩猟仲間。マルクスの名づけ親。
常に冷静で、村の人々が揃ってルーカスから冷たく離れていく中、唯一ルーカスの無実を信じている。ルーカスの児童虐待疑惑の騒動後、ルーカスやマルクスのことを心配して気にかけており、ルーカスが逮捕された時にはルーカスの元妻に連絡を入れ、行き場のないマルクスを家に泊めたり、自分の親族に協力を依頼してルーカスを救おうと動く。

ナディヤ(演:アレクサンドラ・ラパポート)

ルーカスの幼稚園の同僚。ルーカスと恋仲になる。
詳しくは述べられていないが、デンマーク人ではなく他国からの移民で、高学歴の持ち主らしい。
恋愛に関しては大胆で、ルーカスに対する恋心を隠さずストレートにぶつけ、単なる職場の同僚の関係から男女の仲になるまで強引に持っていく。最初にルーカスの幼児への性的虐待疑惑の話を聞いた時は、まるで信じず笑い飛ばしているが、グレテに幼稚園に呼び出され、その場に集まっていた同僚や保護者たちの話を聞いて心が揺らぐ。そのため、ルーカスの家に戻った後ルーカスに対して疑いの目を向けたことにより、激怒したルーカスから家を追い出される。

『偽りなき者』の名言・名セリフ/名シーン・名場面

ラストシーンに見える人間の闇深さ

出典: ameblo.jp

映画のラストでルーカスが狙撃されるシーンは、観ている者に強烈な印象を残す。
冤罪で苦しみぬいたルーカスがようやく皆の誤解が解け、仲間達と和やかな雰囲気でパーティーを過ごし、観客も長いルーカスの戦いが遂に報われたと安心していたところにこのラストシーンである。そして、狙撃手がいったい誰なのかが分からない。狙撃手は、これで終わったと思うなよという警告の意味でわざと弾を外しているようにも見え、それができる猟銃の腕を考えるとおそらく狩猟仲間の誰かである可能性が高いが、しかし、はっきりとは分からない。これまでは村中の人間がルーカスに憎悪の目を向けていたが、映画のラストでは狩猟仲間達は皆笑顔でルーカスと会話を交わしている。だから余計に怖い。やはり一度燃え上がった疑惑と憎悪の火を、完全に消し去ることはできないのだろうか。このラストシーンがあることで、この映画はより一層考え深いものになっている。

『偽りなき者』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

デンマークにある「子どもと酔っぱらいは嘘をつかない」ということわざの影響

デンマークには「子どもと酔っぱらいは嘘をつかない」ということわざがあるらしい。村の人々は、ルーカスによる性的虐待の嘘をついたクララの発言を、まるで疑わずに信じている。もちろん、グレテら幼稚園側が事実であると断定したことも影響しているだろうが、皆が躊躇なくルーカスを迫害する集団ヒステリー状態に至ったのは、この前述のことわざが全員の心に根付いていたことが背景としてあるようだ。

マッツ・ミケルソンのキャスティングにより脚本を変更した

監督のトマス・ヴィンターベアによると、マッツミケルソンのキャスティング決定により、主人公のキャラクターを変えたとのこと。
当初はタフで一匹狼で、労働者階級のヒーローのようなキャラクターであったものを、ソフトで子供たちと同じ目線の幼稚園の先生、という真逆のようなキャラクターに変えている。そのキャラクターの変更により、温厚で我慢強い人物が、終盤で他人に暴力を振るうまでに変化していく様を描くことができ、その変化はドラマの要素として必要であったとトマス・ヴィンターベアは語っている。

『偽りなき者』の関連動画

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