グリーンブック(Green Book)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『グリーンブック』とは、ユニバーサル・ピクチャーズ配給、ピーター・ファレリー監督による長編伝記コメディ映画。黒人差別が強い時期に、単独でディープサウスへの演奏旅行へ挑む天才黒人ピアニストと腕っぷしが強いイタリア系アメリカ人運転手が、ツアーの道程でさまざまな嫌がらせに遭遇し、当初はいがみ合いながらも一つ一つトラブルを切り抜け、最終公演までツアーを敢行する。その後2013年まで生涯続くことになる、厚い友情と信頼関係を築きあげるまでを描いた。8週間の実録ロードムービー。2018年制作・アメリカ作品。

ドンの事務所の使用人。ツアー運転手の面談などの事務を担当。

ジョニー・ヴェネス(演:セバスティアン・マニスカルコ )

ドロレスの親戚の1人。トニー家に居ることが多い。

ボビー・ライデル(演:ファン・ルイス)

ペンシルバニア州出身のアメリカの歌手。
1958年にデビューし、3枚目のシングル「キッシン・タイム」が全米11位のヒットとなり、アイドル的存在として一躍注目され、1965年までに33曲がチャート入りする人気歌手となった。その後はビートルズをはじめとするブリティッシュ・インベイジョン(イギリスの若いロックバンドが多数デビューし、ヒット曲を全米のチャートにランクインさせ、爆発的な活躍を始めた現象)の始まりとともに、人気は凋落。チャート入りヒットが出せなくなった。

プロデューサー(演:P・J・バーン)

ドンが所属するレコード会社の担当プロデューサー。ツアーに出るドンのために、運転手のトニーに、グリーンブックを手配し渡した。

『グリーンブック』の用語

グリーンブック

グリーンブックとは黒人でも泊まれる宿のガイドブックだった。

ニューヨーク出身のアフリカ系アメリカ人、ヴィクター・H・グリーンにより、1936年から1966年まで、毎年作成・出版されていた、黒人旅行者を対象としたガイドブック。黒人が利用できる宿や店、黒人の日没後の外出を禁止する、いわゆる「サンダウン・タウン」などの情報がまとめてあり、彼らの差別や暴力による逮捕を避け、車で移動するために欠かせないガイドブックのこと。ジム・クロウ法(主に黒人の、一般公共施設の利用を制限した法律の総称)の適用が、州や郡によって異なるアメリカ南部で、特に重宝された。

ジム・クロウ法

主に黒人の、一般公共施設の利用を禁止制限した法律の総称。しかし、この対象となる人種は「アフリカ系黒人」だけでなく、「黒人の血が混じっているものはすべて黒人とみなす」という人種差別法の「一滴規定(ワンドロップ・ルール)」に基づいており、黒人との混血者に対してだけでなく、インディアン、ブラック・インディアン(インディアンと黒人の混血)、黄色人種などの、白人以外の「有色人種」(Colored)をも含んでいる。
厳格で有名だったのはアラバマ州、ジョージア州など。ミュージシャンのレイ・チャールズは、ジョージア州が施行していたジム・クロウ法による人種差別を批判したため、70年代後半までジョージア州でライヴ演奏を禁じられていた。本映画の舞台である1962年の南部では「昔からの習慣」という名目で幾多の「条文に無い」差別行為も容認されていたと思われる。

サンダウン・タウン

アフリカ系アメリカ人(黒人)は、日没後までに、該当する街から立ち去らなければならない、という規定を定められた町の総称。サンセット・タウンや、グレイ・タウンの別称もある。代表的なのはアラバマ州や、ジョージア州で、少なくとも1960年代初期までは、黒人の旅行者には、門戸を閉ざしていた。

『グリーンブック』の名言・名セリフ/名シーン・名場面

ツアーが進む毎に進展していく、ドンとトニーの友情

ツアーを一箇所終える度に、お互いの信頼関係を強めていくドンとトニー。

ストーリーを追っていくと、ツアー先へ向かう車中での、ドンとトニーの会話と、ツアー先でのトラブルなどの出来事が、セットになり、2人の関係性が徐々に変化していく様子が、見事に描かれている。ツアーに出る前、トニーは黒人に対する差別意識が明らかにあった。具体的には、自宅で黒人のキッチン修理工が使ったコップをドロレスに無断でゴミ箱に捨てたり、ツアーに出発する直前、機材運搬用のバンにドンの楽器などの大荷物をわざと自分で運ばず、ドンの黒人秘書に積ませたりしていた。しかしツアー後は、クリスマスホームパーティーに訪れたドンを、ニガーと親戚が呼び捨てるのを率先して注意するなど、彼が明らかに改心したことが描写されている。

トニーの手紙が深めたドンとドロレスの信頼

最初は何の気無しにトニーの手紙を読み飛ばしていたドロレス。

ツアー開始直後から、トニーが妻のドロレスに宛てて、送る手紙の文面が変化していく。最初は、ドン曰く、「子供の手紙か?」ぐらいの内容だったが、ツアー先で、トニーがトラブルを回避して、ドンからの信頼を獲得するにつれて、ドンが手紙を添削するようになり、次第に読み手のドロレスも、その変化に気づき、親戚に読み聞かせたりするようになる。ツアー終了後に、トニーが帰宅し、ドンをクリスマスパーティーに招いた時、手紙の文言を洗練された内容に添削したのは、トニーではなく、ドンその人だったことに、ドロレスは確信を持ち、感謝の意を表して、彼をもてなした。

実質的なツアー最終公演で、ドンは本領を発揮した。

ツアー最終公演をキャンセルしてトニーと入ったブルースバーで、即興の演奏を披露するドン。

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