ドラゴン危機一発(映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『ドラゴン危機一発』とは、1971年制作の香港映画。アメリカから香港に凱旋したブルース・リーがゴールデン・ハーベスト社と契約して主演した一連のカンフー映画の第1作目。香港では当時の映画興行記録を更新する大ヒットとなった。日本では大ヒット映画『燃えよドラゴン』の人気を受けて1974年に劇場公開された。 町の製氷工場で働く事になった田舎の青年が、その工場に麻薬犯罪がからんでいる事を知り、工場一味に戦いを挑む。

『ドラゴン危機一発』の概要

『ドラゴン危機一発』とは、1971年制作の香港映画。原題は唐山大兄、英題は『The Big Boss』。アメリカから香港に凱旋したブルース・リーがゴールデン・ハーベスト社と契約して主演した一連のカンフー映画の第1作目。香港では当時の映画興行記録を更新する大ヒットとなった。

町の製氷工場で働く事になった田舎の青年が、その工場に麻薬犯罪がからんでいる事を知り工場一味に戦いを挑む。
ブルース・リーが正義感に燃える主人公に扮し、快調なカンフーアクションを展開させていく。香港では ゴールデン・ハーベストの配給で1971年10月31日に公開されたが、日本では、ブルース・リーの名を全世界に知らしめた大ヒット映画『燃えよドラゴン』の人気を受けて、1974年4月13日に東宝東和の配給で劇場公開された。
プロデューサーは、ゴールデン・ハーベスト設立者のレイモンド・チョウ。監督・脚本は、本作をきっかけに、後にジミー・ウォングやジャッキー・チェンの主演映画を撮る香港の実力派監督ロー・ウェイ。撮影はチェン・チンチュー、音楽はジョセフ・クーがそれぞれ担当。オリジナル主題歌として、配給元の東宝東和が製作したマイク・レメディオスが歌う「鋼鉄の男」が日本公開時に編入されていたが、現在は権利切れに伴いこの曲が入ったバージョンの放送やソフト発売はない。

ブルース・リーの大ファンである香港のスター、ドニー・イェンが本作へのオマージュとして1997年に制作・監督・主演した映画『ドラゴン危機一発'97 』と1998年の『新・ドラゴン危機一発』は、「ドニー・イェンによる新バージョン」と紹介されているがストーリーは本作とは無関係である。

『ドラゴン危機一発』のあらすじ・ストーリー

中国の青年チェン・チャオアンは、大雨で農作物に被害を受けた田舎町から、従兄弟のシュウ・シェンの一家を頼ってタイに出稼ぎにやって来た。タイに着いたチェンは、シュウの妹のチャオ・メイや出稼ぎに来た青年が集まって一緒に暮らしている家に居候する。翌日、チェンはシュウや青年たちが働く町の製氷工場で工場長に紹介してもらい、そこで働くことになった。

ある日、まだ仕事に慣れていないチェンが氷のブロックをラインに乗せて押し出す作業をした時、力が入り過ぎて氷をラインから落としてしまう。するとその割れた氷の中から白い袋状の物(後に麻薬と判明)が現れ、働く2人の青年がそれを見てしまった。その日の仕事終わりにその青年たちは工場長に呼び出され、工場を経営するマイ社長の手下であるヤクザたちに殺されてしまう。帰宅しない青年たちを心配したシュウは翌日、工場長に2人の居所を尋ねると、社長の家に呼ばれたという。不信に思ったシュウは仲間1人を連れてマイ社長の屋敷を訪ねた。マイ社長が何かを隠していると感じたシュウは、彼に対し「警察に依頼する」と言い残して引き上げようとするが、マイ社長の息子とヤクザたちに囲まれ、シュウは仲間の青年共々なぶり殺しにされてしまうのだった。

シュウたちまで帰って来ないことで、青年たちのまとめ役であるクオンはチェンや残った仲間たちで町を手分けをして探すが埒が明かない。全員で工場長に聞きに行くが、彼は知らないの一点張りで要領を得ない。クオンはシュウたちが帰ってくるまで仕事をストライキすることに決めた。だが、そこで工場の現場監督たちとトラブルになり、社長の手下のヤクザたちも入り乱れての殴り合いが始まった。チェンは故郷を旅立つ前に母から翡翠のペンダントを贈られ「絶対に喧嘩をしないように」と誓いを立てさせられていたので喧嘩を黙って見ていた。そこへ向かってきた相手にペンダントを引き千切られるとチェンは怒りが爆発。母との誓いを破って暴れまくるのだった。その現場を見ていた工場長はチェンの強さに驚き、その状況をマイ社長に報告。チェンを手下に取り込むという企みで、工場長は彼を新しい現場監督に任命する。

その夜、シュウたちの居所を再度問い詰めようと工場長の元へ出かけたチェンは、酒の席に連れて行かれ、売春婦たちを交えて慣れない酒をしこたま飲まされ酔いつぶれてしまう。そして翌朝目覚めると、チェンはウー・マンという売春婦とベッドを共にしていたのだった。急いで売春宿を出たチェンだったが、その場で運悪くチャオ・メイと遭遇してしまう。彼女はチェンが出てきた場所が何処だか分かるとショックを受けた。そのことが仲間たちにも知れ、以来チェンはクオンや仲間たちから冷たい視線を受けてしまうのだった。

チェンは仲間たちへの誤解を解くために、再度工場長からマイ社長に会わせてほしいと頼み込み、1人で社長の屋敷へ向かう。待ち受けていたマイ社長は、息子と一芝居を打ち、シュウたちの行方を必死に探しているように見せ掛けてチェンを納得させようとする。だが、チェンはマイ社長の態度に不信感を抱いた。その夜、チェンは手掛かりを探しに売春宿のウーを尋ねた。ウーは元々マイ社長の女中をしており、彼女からマイの会社は製氷された氷の中に麻薬を埋め込んで売っていると言う事実を聞いた。驚いたチェンはすぐに売春宿を飛び出すが、チェンの後をマイ社長の息子が尾行しており、彼は事実を漏らしたウーを殺してしまうのだった。

チェンは売春宿から出た足ですぐさま製氷工場に向かった。冷凍庫の中に保管された氷のブロックを調べてみると、やはり麻薬の白い包みが出てきた。そして、シュウたち行方不明になった仲間の死体も氷詰めされていたのだ。するとそこへチェンを尾行していたマイ社長の息子とヤクザたちが現れた。「謎は解けた」というチェンに、マイ社長の息子は「お前も氷詰めにしてやる」とチェン1人に大勢で襲い掛かった。だがチェンは圧倒的な強さでヤクザたちを次々に倒し、最後に残ったマイ社長の息子との一騎打ちとなった。激しい戦いの末、チェンの強烈な拳がマイ社長の息子の腹に炸裂し死に至らしめた。

シュウたちが殺されていた事実を仲間に伝えようとフラフラになりながら家に戻ったチェンだったが、彼を待っていたのはクオンたち仲間の惨殺された死体の数々だった。彼らはマイ社長の手下たちに殺され、チャオ・メイはマイ社長の屋敷に連れ去られていたのだ。翌日、チェンは流れる川を眺めながら考えた。「自分の身に何かあれば年老いた母は独りぼっちになる。だが殺された仲間たちのためにもこのまま帰るわけには行かない。」そう決断したチェンは、1人マイ社長の屋敷に乗り込むのだった。

マイ社長の屋敷では、残った数人のヤクザが向かってきたが、彼らはチェンの相手にならずあっけなく倒された。そしてついにチェンとマイ社長との一騎打ちとなった。壮絶な死闘が繰り広げられる最中、社長から虐待を受けていた女中の1人が、監禁されていたチャオ・メイを屋敷からこっそり逃がしていた。そして延々と続いたチェンとマイ社長との一騎打ちの結末は、マイが投げて来たナイフをチェンが足で蹴り返し、ナイフがマイの腹に突き刺さった。チェンは追い討ちを掛けるように彼の肋骨の間に両手を貫通させると、絶命したマイの死体に馬乗りになって何度も何度も殴り続けたのだった。やがて、チャオ・メイの通報で警官隊が駆け付けて来た。抵抗しようとするチェンに、チャオ・メイは「抵抗しちゃだめ!」と言い聞かせ、彼女はチェンの胸に飛び込んだ。そしてチェンは「大丈夫だ」と彼女に言い残し、警官隊に連行されて行くのだった。

『ドラゴン危機一発』の主な登場人物・キャラクター

チェン・チャオアン(演:ブルース・リー)

本作の主人公。
大雨で農作物に被害を受けた中国の田舎町から、従兄弟のシュウの一家を頼ってタイに出稼ぎにやって来た青年。
シュウの兄妹や出稼ぎに来た青年が集まって一緒に暮らしている家に居候し、シュウや青年たちが働く製氷工場で働くことになる。
カンフーの達人であり喧嘩っ早いことから、故郷を旅立つ前に母から「絶対に喧嘩をしないように」と誓いを立てさせられ贈られた翡翠のペンダントを首に掛けている。工場内でのいざこざで暴れまくった際、その強さに驚いた工場長から新しい現場監督に任命され、社長の手下に取り込まれようとされた。

チャオ・メイ(演:マリア・イー)

本作のヒロイン。
シュウの妹で幼い弟と3人兄妹の長女。
兄弟と数人の従兄弟たちと一緒に住み、全員の食事や洗濯など家事全般の面倒を見ているマドンナ的存在の少女。
チェンとの初対面からお互いに意識し始めるが、マイ社長の息子からも一方的に求愛されて困惑する。

シュウ・シェン(演:ジェームズ・ティエン)

チェンの従兄弟で妹のチャオ・メイと幼い弟の3人兄妹の長男。
タイに住居を構え、兄弟と数人の従兄弟たちと一緒に住み、製氷工場で働いている。
正義感が強くカンフーに長けており、チェンと一緒に居るところに絡んできたチンピラたちを一気に倒す強さを見せた。
序盤でマイ社長の屋敷に乗り込んだ際、社長の息子に殺されてしまう。

マイ(演:ハン・インチェ)

タイに豪邸を構え製氷工場を経営している会社の社長。
数人の若い女中を抱えほとんど屋敷の中に居り、息子や手下たちにカンフーを教えながら悠々自適な生活を送っている。
表向きは製氷工場の経営者だが、裏では麻薬の密売を行っており、麻薬を製氷工場で生産する氷の塊に隠して取引している。工場の事は工場長に一任しているが、麻薬の秘密を知った者は、息子や手下のヤクザたちを使って容赦なく殺し、バレないように氷詰めにする極悪人である。

マイの息子(演:トニー・リュウ)

マイ社長の屋敷に住む、社長のドラ息子。
ガタイが良くハンサムボーイではあるが、シュウが屋敷に訪ねて行った際に彼にナイフを投げ付けて殺したり、チェンに秘密を洩らした売春婦のウーをナイフで刺し殺すなど、殺しを何とも思わない極悪非道な男。チャオ・メイを一目見てから熱を上げ、彼女を手下たちにさらわせて屋敷に監禁した。

工場長(演:チェン・チャオ)

lamiaroonishij8
lamiaroonishij8
@lamiaroonishij8

Related Articles関連記事

ドラゴン怒りの鉄拳(Fist of Fury)のネタバレ解説・考察まとめ

ドラゴン怒りの鉄拳(Fist of Fury)のネタバレ解説・考察まとめ

『ドラゴン怒りの鉄拳』とは、1972年制作の香港映画。前作『ドラゴン危機一発』の大ヒットで一躍、香港のトップスターとなったブルース・リー主演の一連のカンフー映画の第2作目。日本公開は1974年。日本帝国主義が横行している1900年代初頭の上海を舞台に、中国武術の道場「精武館」を潰そうと企む日本人武術家一派に恩師を殺された青年が復讐を果たすため、単身で一派に立ち向かう姿を描く。

Read Article

燃えよドラゴン(Enter the Dragon)のネタバレ解説・考察まとめ

燃えよドラゴン(Enter the Dragon)のネタバレ解説・考察まとめ

『燃えよドラゴン』とは、1973年に香港とアメリカの合作により製作されたカンフーアクション映画。 世界各国で大ヒットとなり、カンフー映画ブームをまき起こした。主演は香港の俳優で、武術家でもあるブルース・リー。彼は本作の完成直後に急死し、今作が遺作となった。香港の沖に浮かぶ要塞島で、武術の達人を集めたトーナメントが開かれた。英国政府の要請で秘密諜報員として大会に参加した中国人青年リーは、島で行われている麻薬密売の証拠をつかみ、少林寺拳法を武器に強大な悪と対決する。

Read Article

ドラゴンへの道(ブルース・リー)のネタバレ解説・考察まとめ

ドラゴンへの道(ブルース・リー)のネタバレ解説・考察まとめ

『ドラゴンへの道』とは、イタリア・ローマを舞台に、ギャングの悪行に立ち向かっていくカンフーの達人や中華料理店の従業員姿を描いたカンフー映画である。主演のブルース・リーが初監督を務めた海外ロケ作品であり、前二作『ドラゴン危機一発』『ドラゴン怒りの鉄拳』とは対照的にコミカルな演技が多々見られる。また、クライマックスでのブルース・リーとチャックノリスとのコロッセウムでの対決場面は、現在でも語り草となっており、多くの映画人にも影響を与えた。

Read Article

死亡遊戯(香港映画)のネタバレ解説・考察まとめ

死亡遊戯(香港映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『死亡遊戯』とは、1978年に公開されたロバート・クローズ監督、ブルース・リー主演の香港映画である。 スター俳優のビリー・ローはシンジケート組織からの契約を迫られるが、それを頑なに断る。ある日の撮影中に、ビリーは銃弾を浴びて銃弾を受けて殺害されたと思われたが、実はビリーは死んでおらず、単身でシンジケート組織へ戦いを挑む。 1972年にアクション場面を撮影後、ブルース・リーが急逝。 数年後に代役スタントマンを起用して追加撮影したうえで1978年に制作された。

Read Article

目次 - Contents