燃えよドラゴン(Enter the Dragon)のネタバレ解説・考察まとめ
『燃えよドラゴン』とは、1973年に香港とアメリカの合作により製作されたカンフーアクション映画。 世界各国で大ヒットとなり、カンフー映画ブームをまき起こした。主演は香港の俳優で、武術家でもあるブルース・リー。彼は本作の完成直後に急死し、今作が遺作となった。香港の沖に浮かぶ要塞島で、武術の達人を集めたトーナメントが開かれた。英国政府の要請で秘密諜報員として大会に参加した中国人青年リーは、島で行われている麻薬密売の証拠をつかみ、少林寺拳法を武器に強大な悪と対決する。
『燃えよドラゴン』の概要
『燃えよドラゴン』とは、1973年に香港とアメリカとの合作により制作され、世界各国で大ヒットとなったカンフー・アクション映画。香港の要塞島で行われる武術の達人を集めたトーナメント大会に参加した中国人青年リーは、英国の要請で秘密諜報員として、島で行われている麻薬密売の証拠をつかみ、少林寺拳法を武器に強大な悪と対決するというストーリー。
主演はカンフー映画ブームをまき起こし、本作の完成直後に惜しまれながらこの世を去った、香港の俳優で武術家でもあるブルース・リー。製作は香港の映画会社であるゴールデン・ハーベスト傘下でブルース・リーが主宰するコンコルド・プロダクションと、アメリカのワーナー・ブラザースの合作。ゴールデン・ハーベストの配給で1973年7月26日から香港で公開され、次いで同年8月17日からワーナー・ブラザースの配給でアメリカ、12月22日から日本で公開された。
監督はスチール・カメラマン出身で『SF最後の巨人』『バトルクリーク・ブロー』のロバート・クローズが担当。音楽は『ブリット』『ダーティハリー』やTVの『スパイ大作戦』の作曲家としても有名なラロ・シフリンで、オリエンタルなアレンジを施したテーマ曲が、当時のヒットチャート1位を獲得するなど大ヒットとなった。
香港では絶大なる人気を誇る大スター、ブルース・リーの出世作であると同時に遺作ともなった本作だが、地元香港での興行成績は、彼の主演作である前作『ドラゴンへの道』(1972年/当時の最高興行記録)や『ドラゴン怒りの鉄拳』(1972年/当時の最高動員記録)を凌ぐまでには至らなかった。プロデューサーらは「香港や中国の観客は、リーのような細身の田舎者が、日本人や屈強な白人を痛快に叩きのめすような内容の作風を望んでいたから」とその理由を分析している。だが、日本を含め世界的には大ヒットを記録した結果、ブルース・リーのアクションスターとしての知名度が上昇し、『ドラゴン危機一発』(1971年)を始めとする過去の主演作が次々と世界中に配給されることになった。
後の2004年には、本作がアメリカ国立フィルム登録簿に永久保存登録された。
『燃えよドラゴン』のあらすじ・ストーリー
香港で少林寺の高弟である武道の達人・青年リーは、かつて修道僧長が共に少林寺を学んだ同志でハンという男から、3年に1度開催する武術トーナメントへの招待を受けた。ある日、国際情報局のブレイスウェイトがリーを訪ね、ぜひ武術トーナメントへ参加して欲しいという。それは主催者のハンに麻薬が絡んだ犯罪の疑いがあり、会場でもあるハン所有の香港の離島を内偵するという依頼だった。ブレイスウェイトはすでにメイ・リンという女性を送り込んでいて、何か掴んでいるかもしれないとリーに写真を見せた。
実家に戻り、父に参加を報告すると、リーは父の口から思い掛けない事実を知らされた。それは3年前の大会の時、リーの姉、スー・リンが街に来ていたハンの手下であるオハラという男とその子分たちに絡まれ、追い込まれたところで彼女は自ら命を絶ったのだという。リーは姉の墓参りに行き、ハンへの復讐を強く誓うのだった。
リーは香港の港で島への直行便の船に向かう。船には続々と外国人の招待客が乗り込んでいた。その中には借金を重ねマフィアに追われているローパーや、職務質問してきた警官を暴行し半ば逃亡状態のウィリアムス、さらには暴力的なパーソンズという男もいた。やがて島へ到着すると、ハンの手下で金髪の美人・タニアと筋骨隆々の男・ボロが招待客を出迎えた。島はまるで要塞のようであり、広大なコートでは大勢の男達が武術の訓練を行っていた。
トーナメントの前夜には、城の中で至れり尽くせりの派手な祝宴が行われた。女をはべらかして上機嫌のローパーや、食べ物が口に合わず不機嫌なウィリアムスとは対照的に、リーは一人黙々と周りの様子に目を光らせていた。そこへハンが現れると、人の動きが止まり一瞬にして静まり返った。ハンは終始笑顔で挨拶をするものの、誰とも話をせずに引き上げて行く。リーはいかにも独裁者というハンの態度に不信感を募らせるのだった。
祝宴が終わったその夜、タニアが夜を過ごす相手として大勢の女性を引き連れて、ローパー、ウィリアムス、リーの部屋を訪ね回る。リーは祝宴会場で見かけていたメイ・リンを指名。部屋にやって来た彼女は、リーがブレイスウェイトからの依頼だと判ると、彼に監視が厳しく何も掴めてはいないが、ハンに呼び出された女性が次々と姿を消すという事実を伝え、今度は自分の番が来るかもしれないと話す。
翌朝、朝礼と称して朝の練習が始まり、そこへ現れたハンが号令を掛けると、早速トーナメントが開始された。ウィリアムスはパーソンズと対戦し、ローパーは中国系の青年と対戦。ウィリアムスもローパーもそれぞれ圧倒的な強さで勝利する。
その夜、リーは内偵の行動に出る。夜は外出禁止令が出され、警備も一段と厳しくなっているのだが、そんな中、リーは花壇の下に地下への入り口があるのを発見する。ロープで地下へ降りようとするが、警備員に見つかってしまう。リーは捕えようとする警備員たちを殴り倒し、ひとまず逃げる。だが、そこを偶然外に散歩に出ていたウィリアムスに目撃されてしまった。
翌日の朝礼ではハンが、地下に侵入者があった事を全員に報告する。ハンはその事件を誰が起こしたのかを問題にせず、警備の人間が任務を全うしなかったことが問題なのだと言い放つ。そして手下のボロに命令し、事件に関わった警備員たちを全員の見ている前で次々と血祭に上げるのだった。あまりの悲惨な光景に静まり返る中、トーナメントが再開された。リーの出番になるが、その相手は姉の敵であるオハラだった。リーにとっては願ってもない対戦だった。リーは一方的にオハラを圧倒する。逆上したオハラは近くにあったビール瓶を割ってリーに攻撃を仕掛ける。だが逆にオハラは打ち倒され、審判が倒れたオハラの安否を確かめると彼は既に事切れていた。
その後、ウィリアムスがハンに呼び出され、前夜に散歩していた姿を警備員に目撃されていた事から昨晩の事件の容疑者にされ追及された。ウィリアムスは否定するが、聞く耳持たないハンは金属の義手を武器にウィリアムスに襲い掛かり、なぶり殺しにしてしまう。次にハンはローパーを呼び出すと、地下工場でのアヘンの精製や、麻薬中毒患者の女性たちの姿を見せた。それは、ローバーに「我々と手を組んでアメリカを任せたい」と言うハンの策略であり、今回のトーナメントの目的でもあったのだ。そして目の前で鎖に繋がれたウィリアムスの死体を見せつけられ、ローパーは断ることができなかった。
その夜も内偵を続け地下に潜り込んだリーは、麻薬工場などの様々な犯罪の証拠を発見する。そこで無線室に入り込み、ブレイスウェイトの待つ情報局に向けて信号を送り、事実を報告する事に成功。だが非常ベルが鳴り、次々と追って来るハンの手下達と激しい攻防戦を展開する。しかし最後には密室に閉じ込められ、ハンに捕まってしまうのだった。
翌日の朝礼でローパーを待っていたのは、囚われの身となったリーであった。ハンはローパーに対し、スパイ行為をしたリーへの見せしめとして彼と闘う事を命じる。リーの眼をじっと見つめたローパーは、「俺はあんたの様に非情にはなれない」と断ると、ハンは手下のボロと闘う事を命じた。だが、一番の強敵に見えた彼もまたローパーの敵ではなく、激闘の末ローパーに叩きのめされた。ついに堪忍袋の緒が切れたハンは、全ての手下達に、リーとローパーを殺すよう命じる。一斉に襲い掛かる手下達を次々と倒していくリーとローパー。やがて形勢不利と感じその場から逃げようとするハンを、リーは見逃さなかった。
その頃、リーからの無線を受けた国際情報局が動き出し、島に向けて援軍を送り出していた。
城の中へ逃げ込むハンと、彼を追うリー。ハンは義手を金属の爪に替えるとリーを迎え撃つ。そして二人の一騎打ちとなり激しい攻防が続いた。そして形勢が不利と見たハンは、すかさず鏡が張り巡らされた部屋へと逃げ込んだ。そこは自分の姿が鏡によって何重にも見え、相手との位置関係が判りずらかった。そこで、苦悩するリーの脳裏に、かつて修道僧長から教えを受けた「敵は見せかけの”像”の姿で現れる。”像”を打て!敵は倒れる」という言葉が浮かんだ。リーは手当たり次第に鏡にひびを入れると、ハンの実像を見ることに成功する。そして襲ってきたハンを渾身の力で蹴り上げると、ハンは自分が投げて扉に刺さっていた槍の刃に胸を貫かれ死亡する。
全てが終わり、戦い終えたリーとローパーはお互い勝利の合図を交わした。その上空には救援のヘリが飛んで来ていた。
『燃えよドラゴン』の主な登場人物・キャラクター
リー(演:ブルース・リー)
本作の主人公
香港に住み、少林寺拳法の修行に励む青年。
少林寺の修道僧の高弟で武道の達人である。
少林寺の師である修道僧長と共に少林寺を学んだ同志の男・ハンが3年に1度開催する武術トーナメントへの招待があった。同時に国際情報局のブレイスウェイトから、ハンには麻薬が絡んだ犯罪の疑いがあることを知らされ、武術トーナメントへ参加してハンの悪行の実態を内偵せよとの依頼を受ける。
そして、3年前の武術トーナメント大会の時、姉のスー・リンが街に来ていたハンの手下であるオハラという男に絡まれ、自ら命を絶ったという事実を父から知らされ、ハンへの復讐を強く誓い、単身トーナメントが行われるハン所有の離島へ乗り込む。
ローパー(演:ジョン・サクソン)
武術トーナメントに参加するアメリカからの招待客。
本国では借金を重ねてマフィアに追われていた。
武術に長けており、女好きの陽気な性格。トーナメント前夜に行われた祝宴では女性をはべらかして上機嫌だった。また、タニアの美貌に目が眩み、夜を過ごす相手として彼女を指名した。ハンに気に入られ、「我々と手を組んでアメリカを任せたい」と言われるが、ウィリアムスの死体を見せられ苦悩する。
ウィリアムス(演:ジム・ケリー)
武術トーナメントに参加するアメリカからの招待客。
本国で空手を修行する武術者であるが、ある時、職務質問してきた警官を暴行しパトカーを奪って逃亡した。
トーナメント前夜の祝宴では、食べ物が口に合わず終始不機嫌だった。
外出禁止令が出ているにもかかわらず、1人で散歩をしているところを警備員に目撃されると、ハンから内偵を疑われ反抗するが、ハンの手で惨殺される。
ハン(演:シー・キエン)
武術トーナメントの開催者。
かつて、リーと同じ少林寺の道場で拳法を学んでいたが破門となり、今は香港沖の離島を所有、3年に一度格闘技トーナメントを開催している。
島では覚せい剤を密造しており、世界各国から拉致した女性をドラッグ漬けにして海外に売り飛ばしている。
銃で殺されかけた過去があり、そのせいか左手が無く、義手を使用している。屋敷の展示室にはギロチンなどの世界の拷問道具と一緒に“鉄のツメ”などの義手も展示されていて、人間の左手の骨もある。
タニア(演:アーナ・カプリ)
ハンの手下で、島に拉致されて来た女性たちの監視役。
トーナメントの招待客の部屋に、女性たちを連れて回って夜のお相手をさせていた。
トーナメント戦では常にハンの傍らにいて、彼の世話をするため女性たちを指示している。
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目次 - Contents
- 『燃えよドラゴン』の概要
- 『燃えよドラゴン』のあらすじ・ストーリー
- 『燃えよドラゴン』の主な登場人物・キャラクター
- リー(演:ブルース・リー)
- ローパー(演:ジョン・サクソン)
- ウィリアムス(演:ジム・ケリー)
- ハン(演:シー・キエン)
- タニア(演:アーナ・カプリ)
- ブレイスウェイト(演:ジェフリー・ウィークス)
- オハラ(演:ボブ・ウォール)
- スー・リン(演:アンジェラ・マオ)
- メイ・リン(演:ベティ・チュン)
- ボロ(演:ヤン・スエ)
- パーソンズ(演:ピーター・アーチャー)
- 『燃えよドラゴン』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
- 「考えるな!感じろ!」"Don’t think. FEEL!”
- 「”像”を打て!敵は倒れる」"Destroy the image and you will break the enemy."
- 悲惨な姉の自殺
- ヌンチャクが炸裂
- 鏡の部屋の壮絶な闘い
- 『燃えよドラゴン』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
- 製作におけるエピソード
- 初期プロットからの変更
- 香港映画界を担う無名時代のスターが大勢出演
- リーを襲った撮影中のアクシデント
- 題名に関する裏話とは
- 日本での大ヒットの影に極真会館あり
- 香港公開版だけのシーンがあった
- リーの家族について
- エキストラがリーに挑戦
- 『燃えよドラゴン』の主題歌・挿入歌
- 主題曲:ラロ・シフリン「Enter The Dragon メインテーマ」
- 『燃えよドラゴン』の関連映像
- オリジナル予告篇(英語版)