ヴァイオレット・エヴァーガーデン(Violet Evergarden)のネタバレ解説・考察まとめ

『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』とは、暁佳奈によるライトノベル作品。京都アニメーションによりアニメ化された。京都アニメーションが開催している「京都アニメーション大賞」で初めて大賞を受賞した。心を持たない少女・ヴァイオレット・エヴァーガーデンは、大切な人に残された言葉を理解するため、「自動手記人形」と呼ばれる代筆屋の仕事に就く。ヴァイオレットは依頼人との出会いから少しずつ人間らしい心を育み、敬愛する上官「ギルベルト」が残した「愛してる」の意味を知る。

ヴァイオレットに初めて優しくしてくれたのがギルベルトであった。

ギルベルトからプレゼントされたペンダント。ヴァイオレットの宝物となった。

ヴァイオレットは元々ディートフリートの元に居たが、ディートフリートは野生児のようなヴァイオレットを持て余し、ヴァイオレットをギルベルトに預けた。
ヴァイオレットの名前はギルベルトがつけたもので、「道具ではなく花の名前が似合う人間になるように」と願いつけた名前であった。
この頃のヴァイオレットは髪の毛もボサボサで、言葉も話せず、人に噛み付いたり暴れたり、まるで野良猫のようであった。
しかしギルベルトはヴァイオレットに愛想を尽かさず愛情を与え、ヴァイオレットにとって初めて優しく接してくれたのがギルベルトであった。
ヴァイオレットは人間らしい感情や感覚が乏しく、命の尊さや愛などが分からないでいた。
だがそれは本当に分からないのではなく、ヴァイオレットの中にはちゃんと心が存在していたが、本人がそれを自覚したり言葉に表現したりすることが出来ないだけであった。
それはつまり、ヴァイオレットは人間らしい心を育むような人生を送ってこられなかったという意味であり、そんなヴァイオレットを見てギルベルトは心を痛める。
街中でギルベルトはヴァイオレットに何か欲しいものは無いかと尋ねると、ヴァイオレットはギルベルトの瞳の色と同じ色をしたブローチを気に入っているようであった。
ヴァイオレットは美しいという言葉を知らなかったため、これまで一度も言ったとはないが、そのブローチの色が「美しい」ものであると感じると言う。
この時のヴァイオレット本人は気づいていないが、それはギルベルトの瞳と同じ色だからであり、美しいと感じるのはギルベルトへの好意の表れでもあった。
ギルベルトは軍人としてヴァイオレットが必要であり、ギルベルト個人としてもヴァイオレットを側に置いておきたいと考えているが、本当にヴァイオレットを思うのなら戦いとは関係ない所に行かせるべきだと感じ悩んでいた。
そしてギルベルトとヴァイオレットにとって最後になる戦で、ギルベルトは敵に撃たれて重傷を負ってしまう。
ヴァイオレットは逆上し周りに居る敵へ抵抗を続けたが、銃を受けて両腕を失ってしまう。
ギルベルトは自分の死期を察し、ヴァイオレットにこれからは自由に生きるように言い、「愛してる」と告げ、ヴァイオレットを爆発から庇って未帰還兵となった。
ヴァイオレットは病院のベッドで目を覚まし、そのままギルベルトが死んでしまったことを知らないまま、ギルベルトの告げた「愛してる」の意味を探すために自動手記人形になる道を選ぶのであった。

ヴァイオレットが自動手記人形になるまで

自動手記人形育成学校でローダンセに認められ修了した証のブローチ。

ヴァイオレットは自動手記人形になる事を選ぶが、軍人であったその境遇から他人の気持ちを理解する事が最大の難関であった。
恋文を渡したいが軽い女だと思われたくないツンデレな依頼人女性の言葉をそのまま手紙に書いてしまったり、報告書のような淡々とした直接的な言葉を連ねた事務的な手紙しか書けなかった。
そこでヴァイオレットは自動手記人形育成学校へ行く事を決意し、そこで教師のローダンセや、同級生のルクリアなどに出会う。
ローダンセはヴァイオレットのタイピングの速さは評価したが、手紙の内容はただの報告書だと評価し、ヴァイオレットの修了を認めなかった。
しかしルクリアがヴァイオレットに手紙の執筆を依頼し、ヴァイオレットはルクリアの兄への気持ちを聞き、ルクリアが伝えたい事をは何かを考えて手紙を書いた。
その手紙はシンプルなものであったが兄・スペンサーの心に届き、兄妹は元の関係に戻ることが出来た。
この手紙をルクリアがローダンセに渡した事でローダンセはヴァイオレットの修了を認め、ヴァイオレットは一流の自動手記人形の証であるブローチを受け取った。

ヴァイオレットの依頼人達

同級生「ルクリア」と、兄「スペンサー」。二人とも別々に依頼人となった。

ドロッセル王国の王女「シャルロッテ」とドロッセル王国の王子「ダミアン」。ヴァイオレットがシャルロッテの恋文を書き、二人は結ばれた。

劇作家の「オスカー」。ヴァイオレットが執筆の手伝いをし、新しい作品が生まれた。

ユースティーティア天文台シャヘルにいた「リオン」。ヴァイオレットの生き方に影響され、旅に出た。

依頼人「クラーラ」の娘「アン」。寿命が近いことを察した母から娘へ50年分の手紙を執筆し、アンはそれを糧に大人になっていく。

兵士「エイダン」の最期の言葉を恋人「マリア」に届けた。マリアとエイダンの両親はヴァイオレットに感謝した。

初めはシンプルな手紙や、拙いが気持ちの伝わる手紙を書いていたヴァイオレット。
しかし依頼回数を重ねるにつれその技量は上がって行き、兄弟愛・恋愛・親子愛・家族愛などさまざまな気持ちを感じ取って手紙を執筆していく。
依頼人へ対するヴァイオレットの対応も段々と柔らかくなっていき、ヴァイオレットは依頼人たちと接する事で人間らしくなっていくのであった。
そしてずっと探し続けている「愛してる」とは何かの答えに段々と辿り付いて行く。

ギルベルトの死を知るヴァイオレット

ホッジンズはヴァイオレットがまだ受け止めきれないと思い、ギルベルトの死を隠していた。
しかし事情を知らなかったエヴァーガーデン夫人との会話の中で、ヴァイオレットはギルベルトが既に亡くなっていることを知ってしまう。
ギルベルトは爆発からヴァイオレットを庇ったためか、遺体が発見されてない未帰還兵扱いになっているという。
信じられなかったヴァイオレットはギルベルトに会うため軍に行き、そこでディートフリートにギルベルトはもういないと言われるも、信じずにギルベルトの家へ向かった。
使用人にギルベルトはいるかと尋ねると、ギルベルトのお墓に案内された。
墓石にはギルベルトの名前が刻まれていた。
ヴァイオレットはギルベルトと共に最後に闘った場所に行き、そこにホッジンズがヴァイオレットを迎えにやってきた。
ヴァイオレットは引きずられる形でホッジンズに連れられ会社に戻るが、その後部屋に引き篭もってしまう。
ギルベルトの死を突きつけられたことや、これまで戦争で自分がしてきた事の罪の意識に苛まれ、自ら命を絶とうとするが、それも出来ないでいた。
しかしアイリスとエリカから手紙を貰った事や、ローランドの配達を手伝った事、スペンサーから手紙の依頼をされた事、そしてこれまでの依頼人の活躍を見て、ギルベルトからヴァイオレットという名の似合う人間になるように言われた事を思い出す。
ヴァイオレットはC.H郵便社に行き、ホッジンズに自分は生きていても良いのかと問うと、ホッジンズは「してきた事は消せない。でも、君が自動手記人形としてやってきた事も消えないんだよ」と答えた。
ヴァイオレットは悲しみを乗り越え、自動手記人形として新たな一歩を踏み出す事になった。

ヴァイオレットの人間としての成長

第一話の登場時、人形のように無表情であったヴァイオレット。

命の尊さや愛を学び、人間らしい感情を見せるようになっていく。

ヴァイオレットはギルベルトというかけがえのない存在を失った事で、命の尊さや重み、会えない事の寂しさや苦しみを知る。
人形のようであったヴァイオレットは少しずつ表情が豊かになっていき、言動にも柔らかさが見えるようになっていく。
同時に死に対して敏感に反応するようになり、一人一人が誰かの大切な存在であるのだと感情移入する。
そしてもう誰も死なせたくないと思うようになった。
物語の最後にヴァイオレットはギルベルトへ自分の気持ちを綴った手紙を書いた。
ヴァイオレットはギルベルトがまだどこかで生きていると信じており、もしもう一度会うことができたら今はギルベルトが言った「愛してる」を少し理解できるようになったと伝えたいと思っていた。

ギルベルト「ヴァイオレット、君は生きて…自由になりなさい。心から…愛してる」

ギルベルトとヴァイオレットは戦争の終結となりえる戦いへ身を投じ、そこで勝利を収めるが、生き残っていた敵兵によってギルベルトが撃たれてしまう。
ヴァイオレットは敵を倒してギルベルトを救おうとするが、敵の銃弾によって両手を失ってしまう。
そして敵兵の放った爆弾が爆発する寸前、ギルベルトはヴァイオレットに自由に生きるように言い、最期に愛してると告げ、ヴァイオレットを爆発から庇った。
生き残ったヴァイオレットは最期にギルベルトから言われた「愛してる」の意味が分からず、その意味を知るために自動手記人形になる道を選んだ。
ヴァイオレットが自動手記人形になり愛を知るためのきっかけになる、物語の核となるセリフである。

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