ヴァイオレット・エヴァーガーデン(Violet Evergarden)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』とは、暁佳奈によるライトノベル作品。京都アニメーションによりアニメ化された。京都アニメーションが開催している「京都アニメーション大賞」で初めて大賞を受賞した。心を持たない少女・ヴァイオレット・エヴァーガーデンは、大切な人に残された言葉を理解するため、「自動手記人形」と呼ばれる代筆屋の仕事に就く。ヴァイオレットは依頼人との出会いから少しずつ人間らしい心を育み、敬愛する上官「ギルベルト」が残した「愛してる」の意味を知る。

ヴァイオレット「“愛してる”を、知りたいのです」

心を持たないヴァイオレットは、愛とは何なのか知らずに育った。
正確にはヴァイオレットは既に愛を知っているが、それがどういうものか体感として理解できずにいた。
ヴァイオレットがギルベルトに抱く思いこそが愛であるのだと、周りの人々は早々に気づくが、ヴァイオレット自身はそれが分からない。
同僚のエリカやアイリスからは他人の気持ちを理解できない人形だと思われていたが、二人はヴァイオレットが愛を知りたいと真っ直ぐに思う気持ちに心を打たれる。
愛を知りたがる時点でヴァイオレットは感情の無い人形ではないのである。
ヴァイオレットは依頼人や周りの人々と関わる事で、家族愛や恋愛などの様々な愛の形を知る事になる。

ギルベルト「君は道具ではなく、その名が似合う人になるんだ」

拾われてきたヴァイオレットに「ヴァイオレット」という名前をつけたのは、ギルベルトであった。
当時のヴァイオレットは身なりもボロボロで、あまり言葉を話せず、噛み付いたりなどの暴力的な野生児の雰囲気があった。
身体能力はとても高く、人間兵器として戦場で使われるためにディートフリートが連れて来たのであった。
しかしギルベルトはヴァイオレットに、戦うのではなくその花の名前が似合う人間になるように言う。
その時のヴァイオレットにその意味が理解できたかどうかは定かでは無いが、ヴァイオレットは初めて優しくしてくれたギルベルトに好意を抱く。
だが結局ヴァイオレットはギルベルトと共に戦場で戦うようになり、ギルベルトは年端も行かない女の子を戦わせる事に罪の意識を覚え、戦争が終わったらヴァイオレットに普通の女の子としての人生を歩ませたいと考えていた。
「君は道具ではなく、その名が似合う人になるんだ」というセリフからは、ギルベルトの軍人でありながら冷徹になりきれない優しい性格が読み取れる。
ヴァイオレットはギルベルトのためならば道具で良いと考えていたため、ギルベルトの抱く複雑な気持ちが理解できずに居た。
ギルベルトの死を知らされたあと、ヴァイオレットは自動手記人形としての人生を改めて歩み、その花の名が似合う女性へと成長していくのであった。

ホッジンズ「君は自分がしてきたことで、どんどん体に火がついて、燃え上がっていることをまだ知らない」

ホッジンズがヴァイオレットに言ったセリフ。
ヴァイオレットはそのセリフの意味が分からず、「自分は燃えていない」と答えたが、ホッジンズは「燃えている」と否定した。
「自分がしてきた事」とは、戦争中ヴァイオレットが沢山の人を殺した事であり、「燃えている」のはそれに対する罪の意識や心の傷のことである。
ヴァイオレットは自動手記人形として沢山の人と関わり、他人の気持ちを少しずつ理解するようになり、愛とは何なのか少しずつその答えに近づいていく。
しかし、それと同時に自分は誰かの「いつかきっと」を奪っていたのだと気づく。
人を殺すということは他人の未来や愛を奪う行為である。
戦って人の命を奪い自らの腕を失ったヴァイオレットは、人を殺めたその手で人と人を結ぶ手紙を綴っていたのである。
戦争であるためヴァイオレット一人に責任があるわけではないが、当時のヴァイオレットは人を殺すことをどうとも思っておらず、今になって自分を怖ろしく思う。
ホッジンズの言った「燃え上がっている事をまだ知らない」とは、ヴァイオレットが自覚していないだけで、確実にヴァイオレットを焦がす罪があるのだと示唆していたのである。
そして自分が燃え上がっている事を知ったヴァイオレットは罪の意識に苛まれてしまう。
しかし燃え上がっているのはヴァイオレットだけではなく、戦争を体験したこの国の人々全てなのであった。

ローランド「届かなくて良い手紙なんて無いんだ」

ギルベルトの死を知り、そして自分の罪に苛まれ、部屋に引き篭もってしまうヴァイオレット。
そこへローランドが手紙を届けに現れ、ヴァイオレットはまだ配達が残っているというローランドを手伝う事にする。
ローランドは「届かなくて良い手紙などない」と優しく言い、この言葉はヴァイオレットの心に深く刻まれた。
このことをきっかけに仕事に復帰する決意をしたヴァイオレットは、ホッジンズに人を殺めた自分はこのまま生きていてもいいのかと問う。
ホッジンズはヴァイオレットの罪は消えないが、これまでヴァイオレットが自動手記人形としてしてきた事も消えないのだと答え涙した。
ヴァイオレットは人を殺めもしたが、他人の気持ちを聞いて手紙を書きそれを届けた。
ヴァイオレットが居なかったら届かなかった手紙もあったかもしれず、ヴァイオレットが居なかったら笑顔になれなかった人もいたかもしれない。
その事実も決して消えないのである。

ヴァイオレット「もう、命令は要りません」

ギルベルトの命令無しでは生きられなかったヴァイオレット。
しかし自動手記人形として沢山の人と接するうちに、人間的な成長をしていく。
ディートフリートはヴァイオレットが成長しているのを知らず、ヴァイオレットが心を痛めたり涙を流す事を知らないで居た。
ディートフリートの中でのヴァイオレットは拾ってきた時の野生児のイメージや、戦う人形のイメージのままだったのである。
元々ディートフリートはヴァイオレットの事を良く思っておらず、戦争で沢山の人を殺めた存在が他人の想いを伝える手紙を書くなど愚かしいとさえ感じていた。
しかしギルベルトを守りたかったと悲しみを吐露し、ギルベルトの母との会話で涙したヴァイオレットを認め、ギルベルトに代わって生きるようにヴァイオレットに命令する。
この先もギルベルトの居ない世界で生きなければいけないヴァイオレットを思っての命令であった。
だがヴァイオレットは「もう、命令は要りません」と応えた。
これは誰かに命令されなくても自分の意思で生きられるという意味であり、ディートフリートの知る意思のない人形のようなヴァイオレットはもう居なかった。

ヴァイオレット「お客様がお望みなら、どこでも駆け付けます。自動手記人形サービス、ヴァイオレット・エヴァーガーデンです」

ヴァイオレットが依頼人に会った時に言うセリフ。
CMでもこのセリフのシーンが使われ、本作を代表する名台詞の一つ。
美しい容姿のヴァイオレットがこのセリフを言って挨拶するシーンは、ヴァイオレットの人形的な雰囲気をより増幅させるのか、依頼人の中にはヴァイオレットを人形だと勘違いする人もいた。

『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』の主題歌・挿入歌

OP(オープニング):TRUE「Sincerely」

作詞:唐沢美帆
作曲:堀江晶太
編曲:堀江晶太、Evan Call
歌:TRUE

ED(エンディング):茅原実里「みちしるべ」

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