ヴァイオレット・エヴァーガーデン(Violet Evergarden)のネタバレ解説・考察まとめ

『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』とは、暁佳奈によるライトノベル作品。京都アニメーションによりアニメ化された。京都アニメーションが開催している「京都アニメーション大賞」で初めて大賞を受賞した。心を持たない少女・ヴァイオレット・エヴァーガーデンは、大切な人に残された言葉を理解するため、「自動手記人形」と呼ばれる代筆屋の仕事に就く。ヴァイオレットは依頼人との出会いから少しずつ人間らしい心を育み、敬愛する上官「ギルベルト」が残した「愛してる」の意味を知る。

『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』の概要

『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』とは、暁佳奈によるライトノベル作品。
2015年にKAエスマ文庫(京都アニメーション)から本編上下巻と外伝が発売。
京都アニメーションが主催する「第5回京都アニメーション大賞」にて初めて大賞を受賞した。
京都アニメーション大賞は過去4回開催されていたが、大賞はそれまで出ていなかった。
2018年に京都アニメーション製作でアニメ化。
アニメ放送終了後に続編製作の発表があり、2020年1月に劇場版が世界同時上映される事が発表された。

幼い頃から戦場に出て、「道具」「武器」と呼ばれた少女「ヴァイオレット」。
ヴァイオレットは敬愛する上官「ギルベルト・ブーゲンビリア」と共に戦場へ行くが、そこで腕を失くし、目が覚めると病院のベッドの上に居た。
そこへ訪れた元軍人の「クラウディア・ホッジンズ」にヴァイオレットの後継人「エヴァーガーデン」家に連れて行かれ、ヴァイオレットは「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」という名前になった。
ヴァイオレットは一緒に戦場に居たギルベルトの安否を気にしていたが、ホッジンズは心身ともに負傷しているヴァイオレットにギルベルトの死を告げられずに誤魔化す。
ヴァイオレットはギルベルトが自分に言った「愛している」という言葉がどういう意味か分からず、その言葉を理解するために依頼人の心を理解して手紙を代筆する「自動手記人形」としての仕事を始めることになった。

本作は一話一話が映画のような美しい映像と深い演出がされる事で大きな話題になり、数々のクオリティが高いアニメを生み出してきた「京都アニメーション」のノウハウを最大限に発揮した作品となった。

『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』のあらすじ・ストーリー

戦闘人形と自動筆記人形

失った両腕の代わりとなる義手を見つめるヴァイオレット

ライデンシャフトリヒ陸軍の女子少年兵であるヴァイオレット・エヴァーガーデンは、孤児ゆえに人の心を知らず、ただ敵を殺す術にだけ長けた「戦闘人形」だった。しかし部下として自分に目をかけてくれた青年将校ギルベルト・ブーゲンビリアにだけは懐き、依存し、「いつまでも少佐の側に居たい」とまで願うようになっていた。ギルベルトもまた一心に自分に尽くすヴァイオレットを信頼し、大切で特別な存在だと認識していくが、同時に「年端もいかない子供を殺戮の道具として利用している」自分と軍に絶望し、ヴァイオレットに真っ当な道を歩ませるにはどうすればいいかを真剣に考え始める。
大陸全土を巻き込む戦乱の中、ヴァイオレットはギルベルトと共に行動している中で敵の攻撃を受け、両腕を喪失する大怪我を負う。自身も半死半生の状態だったギルベルトは、敵の追撃からヴァイオレットを庇い、「愛してる」の言葉を彼女に告げて瓦礫の中に消える。友軍が駆け付けた時、そこには瀕死のヴァイオレットだけが残され、ギルベルトの姿はどこにもなかった。

ヴァイオレットの傷が癒え、失った両腕の代わりに義手を与えられた頃、戦乱も終結。ギルベルトの友人で自身の後見人となってくれたクラウディア・ホッジンズの勧めで、ヴァイオレットは「自動手記人形(オート・メモリーズ・ドール)」という手紙の代筆業を始めることとなる。
ギルベルト以外の者には心を閉ざしたままのヴァイオレットだったが、ギルベルトが最後に自分に言い残した「愛してる」という言葉の意味を知りたいと考え、「他人の想いを文字にして誰かに伝えていく」自動筆記人形の仕事に次第に興味を覚えていく。

ヴァイオレットの成長

自動筆記人形として働く中で、「人の心」のなんたるかを知らないヴァイオレットは、たびたび珍妙な事件を起こしていく。言われた言葉をストレートに要約して文字にしてしまい、「誰がこんなことを伝えろと頼んだ」と不要なトラブルを招くことも珍しくなかった。
当初はなぜ自分が失敗したのか分からなかったヴァイオレットだったが、仕事を重ねる中で次第に依頼人が言葉に込めた「本当に伝えたいこと」を理解し、それに配慮した文章が書けるようになっていく。

同僚が両親や故郷の人々と軋轢があることを知り、「直接言いにくいことなら、手紙で伝えるのはどうか」と提案する。
歌姫の恋文の代筆を行った際は、ふさわしい手紙を書くべく様々な文学を学ぶと同時に、依頼人の本当の目的を察してそれに応える。
自分が嫁ぐ予定の隣国の王子に送る手紙に悩む姫君から依頼を受けた時は、彼女が「王子に何を伝えたいのか」を見抜いて自分から内容について提案する。
酒浸りの天才戯曲家からの仕事では、彼が今は亡き妻子を想って戯曲を作り、それゆえに筆を進められなくなったことを知って娘との思い出に触れさせる。

自動筆記人形として以前に、人として大きく成長していくヴァイオレット。そんな中、彼女は「戦争で自分が殺した人々の中にも、誰かに伝えたかった多くの言葉や想いがあったのではないか」と気づき、戦争中に己がやってきたことに恐怖を感じるようになっていく。

ギルベルトの行方

戦争中に爆発からヴァイオレットを庇って以来、ギルベルトは行方不明になっていた。戦闘の混乱で死体を確認することすらできず、ホッジンズたち彼の周囲の人々は「ギルベルトは死んだ」と考えていたが、今もなお一心にギルベルトを慕い続けるヴァイオレットにそれをどう伝えればいいのか分からずにいた。
「ヴァイオレットも新しい道を踏み出すべきだ」と考えたギルベルトの母親は、彼女をブーゲンビリアの屋敷へと招き、ギルベルトの墓へと案内する。ギルベルトの死を信じたくないヴァイオレットは、「死体が見つかっていないなら生きている可能性もある」とあてもなく彼を探し続けるが、ホッジンズによって連れ戻される。

ギルベルトの死を受け入れられず、また「大切な人の死がこれほどつらいのなら、私が殺してしまった人々の大切な誰かはどれくらい苦しんでいるのか」との罪悪感に潰され、ヴァイオレットは働けなくなってしまう。しかし今まで彼女が成長していく様を見届けてきた同僚たちからの激励の手紙を受け取ったヴァイオレットは、「自分を待ってくれている人たちがいる」と気づいて職場に復帰する。
それでも罪悪感からは逃れることができなかったヴァイオレットは、「自分は生きていてもいいのだろうか」とホッジンズに尋ねる。ホッジンズは「人を殺した罪は消えないが、君が自動筆記人形としてやってきたことも決して消えない」と言ってヴァイオレットを励まし、兵器として生きることを強要されてきた彼女に新しい人生を歩むよう伝えるのだった。

伝えられない気持ち

ライデンシャフトリヒとガルダリク帝国が和平を結び、戦争は本当の意味で終結する。この条文の執筆が「戦後の女性の人気職業」である自動筆記人形に依頼されることとなり、ヴァイオレットは同僚たちと共に和平会議の現場へと向かう。
しかし、この時和平反対派が爆弾テロを起こして和平会議を潰そうと画策していた。これに気づいたヴァイオレットは、たまたま居合わせたギルベルトの兄であるディートフリート・ブーゲンビリアと共に爆弾テロの阻止に奔走する。

誰1人殺めることなく、ディートフリートを守り抜き、義手を犠牲にしながらも爆弾の爆破を食い止めるヴァイオレット。和平会議も無事に成功し、大陸に真の平和が訪れる。
それを見届け、新たな義手を装着したヴァイオレットは、初めて「自分からギルベルトへの手紙」を書き始める。その手紙は、「少佐が最後に言った“愛してる”という言葉がなんなのか、少し分かった」という言葉で結ばれていた。

『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』の登場人物・キャラクター

主要人物

ヴァイオレット・エヴァーガーデン

CV:石川由依

本作の主人公。
容姿端麗で、両手が義手の少女。
元ライデンシャフトリヒ陸軍の軍人で、ギルベルトの部下。
元々はディートフリートの部下であったが、ディートフリートがヴァイオレットを持て余したためギルベルトに預けられた。
孤児で子供の頃から戦場に出ており、言葉を知らない野生児のような状態で、ヴァイオレットのことを知るものは「道具」「武器」と形容している。
ギルベルトに「ヴァイオレット」という名前をつけてもらい、初めて優しくしてくれたギルベルトに好意を持ち、ギルベルトの命令には何でも従う。
一人で一個分隊に匹敵する程の高い戦闘能力を持っている。
人間らしい感情を持っておらず、人を殺す事に躊躇いがなかったり自分の感情が分からないでいたが、ギルベルトと過ごすことで少しずつ人間らしさを見せるようになる。
しかし大戦でギルベルトと共に重傷を負い、ヴァイオレットは両腕を失くし、ギルベルトは爆発からヴァイオレットを庇って未帰還兵となる。
ヴァイオレットはギルベルトの死を知らないままギルベルトの親戚であるエヴァーガーデン家に託されるがそれを良しとせず、ホッジンズの会社「C.H郵便社」で働くこととなる。
そこで自動手記人形という代筆の職業につき、ギルベルトから言われた「愛してる」の意味を探すことになる。
しかし人間らしい感情が欠けているヴァイオレットは依頼人の心を汲み取れず、自動手記人形育成学校へ通い、技術と心得を身につけた。
徐々に代筆が上手くなり、人の感情や心を理解するようになって行く。
依頼人や同僚たちと接するうちに人間らしい感情を芽生えさせていき、順調に自動手記人形の道を歩む。
だがひょんなことからギルベルトの死を知らされてしまい、最愛の人を失ったことや戦争で自分がしてきたことに苛まれた。
エリカとアイリスの手紙や、ローランドの配達の手伝い、スペンサーからの依頼などで立ち直り、また自動手記人形として生きる道を選ぶ。
これまでギルベルトに対してどのような手紙を書けばいいのか、自分の気持ちが分からないでいたが、最終話ではギルベルトに自分の現在の状況と気持ちをしたためた手紙を書いた。
現在もギルベルトは何処かで生きてると信じている。

クラウディア・ホッジンズ

CV:子安武人

ライデンシャフトリヒ国陸軍の少佐(アニメでは中佐)。
今では軍人を辞め、「C.H郵便社」という会社を設立している。
ギルベルトとは士官学校時代からの親友で、ヴァイオレットのことを託されており、療養しているヴァイオレットをエヴァーガーデン家に連れて行った。
その際、ヴァイオレットからギルベルトの安否について訪ねられたが、ヴァイオレットがまだギルベルトの死を受け入れられないと考え言葉を濁した。
エヴァーガーデン家での暮らしを拒否したヴァイオレットを自身の会社で働かせる。
ギルベルトに変わってヴァイオレットが人間らしい心を芽生えさせ成長して行くのを見守った。
人好きの穏やかな性格で、女性関係も幅広いが、特定の恋人を持たない。
カトレアと一線を越えた仲である事がほのめかされている。
最終話では子供を授かった描写があるが、母親が誰であるかは明かされていない。

ギルベルト・ブーゲンビリア

CV:浪川大輔

ヴァイオレットの上官。
「ライデンシャフトリヒ陸軍特別攻撃部隊」の隊長で、階級は少佐。
ディートフリートから押し付けられる形でヴァイオレットを引き取るが、子供のヴァイオレットを人形としては扱えず、教育を施しながら見守る。
一緒に居るうちに愛情が芽生え、ヴァイオレットに徐々に人間らしい心が芽生えているのに気づく。
ヴァイオレットを思うのなら側に置いておくべきではないと考えながらも、戦闘力の高いヴァイオレットは兵士として戦場へ連れて行かなければならない事に複雑な感情を持つ。
大戦が終わったらヴァイオレットを戦いのない場所に置きたいと考え、ホッジンズにヴァイオレットの事を頼んでいた。
しかしその大戦の終局となる戦でヴァイオレット共に重傷を負う。
腕を失くしながらも自身を連れて帰ろうとするヴァイオレットに置いていくように言い、「生きるんだ…ヴァイオレット。君は…生きて…自由になりなさい。心から…愛してる。」と伝えた。
その直後に爆発からヴァイオレットを庇い、遺体は見つからず未帰還兵となる。
生存は絶望的であったため死亡者として扱われ、お墓が建てられた。
ヴァイオレットの名付け親でも有り、ヴァイオレットには「君は道具ではなく、その名が似合う人になるんだ」と言った。

原作では生存が明かされており、外伝では再会したヴァイオレットとのその後が描かれた。
テレビアニメ版では未帰還兵扱いのまま放送終了し、続編の劇場版の公開が告げられた。

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