フェイス/オフ(Face/Off)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

「男たちの挽歌」などで香港ノワールの一時代を築き、ハリウッドに渡ったジョン・ウー監督による想像を絶するアイディアのアクション大作。1997年製作のアメリカ映画。FBI捜査官アーチャー(ジョン・トラボルタ)は逮捕した凶悪テロリスト、トロイ(ニコラス・ケイジ)の顔を移植。組織壊滅を狙いおとり捜査に乗り出すが、今度はトロイがアーチャーの顔を移植して逃走。お互いの顔を入れ替えた2人の壮絶な戦いが展開する。

『フェイス/オフ』の概要

映画『フェイス/オフ』は1997年にアメリカで制作され、凶悪犯とFBI捜査官がお互いの顔を入れ替えて戦うという異色のアクション大作。ニコラス・ケイジとジョン・トラヴォルタというハリウッド2大スターの秀逸な一人二役の演技が話題になったことで大成功を収めた。
監督は、「男たちの挽歌」などの香港ノワール系アクション映画で脚光を浴び、暴力的かつ華麗なる独特の映像美から「バイオレンスの詩人」とも呼ばれているジョン・ウー。本作と同じくジョン・トラヴォルタが主演の「ブロークン・アロー」に続くハリウッド作品となる。
製作総指揮には、俳優マイケル・ダグラスと、彼と共にダグラス-ルーサー・プロを設立したスティーヴン・ルーサー、そしてジョナサン・D・クレーンが共同で担当。
撮影は「ダイ・ハード2」「陽の当たる教室」のオリヴァー・ウッド。特殊メイクは「スリーピー・ホロウ」「変身パワーズ」のケヴィン・イェイガー。音楽は当時TVシリーズで活躍し本作が映画出世作となるジョン・パウエル。主題歌をオーストラリアのロックバンド、INXS(インエクセス)が演奏している。

本作の元々の脚本は、ある映画学校の生徒が書いたもので、監督のジョン・ウーは、脚本を読んだ当初は「200年後のアメリカを舞台にしたSF映画」だったことに興味を示さず、一度オファーを断りもしたのだが、時代を戻して登場人物の内面に人間性を与え、さらに家族の絆をめぐる感動的なドラマを付け加えることで脚本を大幅に書き直し、制作に漕ぎ着けたそうである。彼は後に「善と悪が入れ替わるという設定には興味があった。これは私の持論だが、100%良い人や100%悪い人間はいない。人は必ず両方の面を持っているはずで、この脚本にはそういう私のテーマが描かれていたんだ」と語っている。

ジョン・ウーが、ハリウッド進出3作目にして初めて「自分の好きな様に撮れた」と誇る作品であり、ハリウッド進出の出世作ともなった。

『フェイス/オフ』のあらすじ・ストーリー

ある日の遊園地でのこと。FBI捜査官ショーン・アーチャーは、幼い息子マイケルと遊んでいるところを凶悪なテロリスト、キャスター・トロイに狙撃され、自分の身代わりにマイケルが殺されてしまう。

6年後、復讐に燃えるアーチャーのもとへ、キャスターの弟、ポラックス・トロイが空港でチャーター機の支払いをしたという連絡が入る。間違いなくそこへキャスターが現れると踏んだアーチャーは空港に急行し、FBIとキャスター一味との壮絶な大捕物の末、ポラックスと共についにキャスターを逮捕することに成功したのだった。
アーチャーは早速自宅に帰り、妻・イヴに逮捕の報告をする。彼は6年の間、キャスターを捕まえることだけを考え家族と向き合わなかったために、高校生で反抗期の娘のジェイミーには相手にされなかったが、イヴには6年間の償いをすると約束するのだった。
だがその頃、ポラックスの持っていたフロッピーディスクから、キャスターがロサンゼルスを壊滅させるほどの威力を持つ時限式細菌兵器爆弾を何処かに仕掛けていた事が発覚する。ポラックスは兄以外の人間は信用せず爆弾の在りかを聞き出すことができない。肝心のキャスターも逮捕時に頭を打って昏睡状態に陥っていた。
そんな折、焦るアーチャーに特殊班から極秘指令が下る。それはアーチャーの顔の皮膚を剥がし、キャスターの顔の皮膚を完全移植してキャスターに成りすまし、刑務所に入っているポラックスに接近し情報を聞き出せというのだ。有り得ない命令に最初は取り合わなかったアーチャーだったが、家族にも明かせない極秘の任務である事に悩んだ末、大都市に起こるかもしれない危険を阻止する使命を優先した彼は、止む無く任務遂行を決意する。

FBI特殊班の研究所で移植手術が行われ、手術は大成功、アーチャーは声までもが完璧にキャスターとなった。キャスターの手下であるディートリッヒの自白により判明した爆破日まであと8日と迫っており、すぐに刑務所に送り込まれたアーチャーだったが、そこでは極秘のため事情を知らない所員から当然ながら凶悪犯キャスターとしての扱いを受けることになる。囚人たちとのいざこざに巻き込まれ、屈辱に耐えながらも何とかキャスターを演じたアーチャーは、ポラックスから爆弾の設置場所を聞き出すことに成功する。
その頃、手術が行われた研究所では昏睡状態だったキャスターが奇跡的に意識を回復。彼は手下に連絡を取り、医師を拉致すると、保存状態であるアーチャーの顔の皮膚を自分に移植させ、手術後に医師をはじめ秘密の任務を知るアーチャーの上司までもを皆殺しにしたのだ。
アーチャーに成りすましたキャスターは、早速刑務所に出向き、アーチャーと面会する。もはや自分をアーチャーだと知る者がいなくなり刑務所を出られなくなったことに愕然とするアーチャー。キャスターはそんなアーチャーを尻目に今度は彼の家に行き、彼の妻のイヴに会う。夫の態度や言動の変化にとまどうイヴだったが疑うこともなく仕事に出掛けてしまう。部屋にいた娘のジェイミーは父親の豹変ぶりに目を丸くするのであった。
キャスターは当然のようにFBIに戻ると、ポラックスを刑務所から釈放して爆弾の在り処を自白させる芝居をし、自ら爆弾の時限装置を解除、一躍世間のヒーローとなるのだった。
刑務所のニュースで事態を知り、哀しみと怒りで気も狂わんばかりのアーチャーは覚悟を決め、所内で暴動を起こし、そのどさくさで刑務所を脱獄する。

脱獄したアーチャーは、その足でキャスターのアジトであるディートリッヒの家を訪れる。誰もが死んだと思っていたキャスターの出現に驚く手下たちだったが嬉しさに熱い歓迎をする。そこにはディートリッヒの妹でキャスターの恋人でもあるサーシャと幼い息子のアダムもいた。アダムの姿に死んだマイケルを重ね合わせアダムを力いっぱい抱き寄せるアーチャー。と、そこへキャスター率いるFBIが急襲したのだ。キャスターはあらかじめアーチャーがこのアジトへ来ることを予想してポラックスに見張らせていたのだった。激しい銃撃戦となり、ディートリッヒはキャスターの銃弾に倒れ、アーチャーはサーシャとアダムを逃がす。お互いの顔をまとったキャスターとアーチャーは鏡をはさんで銃を構えて対峙する。激しい撃ち合いの末、逃げようとして屋上に上がったアーチャーを見つけたポラックスは、彼を捕らえようとするが振り払われ、その反動でポラックスは屋上から落下し即死する。そして、アーチャーはそのまま逃走するのだった。

翌日FBIの本部に戻ったキャスターは、そこで老齢の管理職上司ラザロから昨日の無謀な行動について小言を言われる。弟を殺され怒り心頭のキャスターは衝動的にラザロを撲殺し心臓発作と偽るのだった。一方、アーチャーはかつてのわが家へ忍び込む。キャスターの顔をした彼の姿に怯えるイヴだったが、彼はふたりだけが知る想い出を語り、まだ半信半疑の彼女にキャスターの血液型はABだと教える。女医でもあるイヴは、その夜眠りについたキャスターからこっそりと血液を採取し鑑定してみるとAB型であり、ようやくアーチャーの言葉を信用する。そして後日キャスターに殺されたラザロの葬儀が海辺の教会で行われ、イヴはそこへキャスターと共に出席するという。そして、アーチャーとキャスターの最後の戦いは教会でその火蓋が切られるのだった。

葬儀が終わり、誰もいなくなった教会で、一人祈るアーチャー。と、そこへキャスターが現れる。彼は手下を使ってイヴとジェイミーを人質に取り、アーチャーとひとまとめに殺す算段だった。一方、アーチャーには、兄のディートリッヒを殺されたサーシャと仲間がキャスターへの復讐のため味方についていた。そして教会は一瞬にして修羅場となり、激しい銃撃戦が展開される。妻と娘を必死に守りながらキャスターを狙うアーチャー。そしてサーシャが「アダムを悪の道に入れないで」とアーチャーに託して銃弾に倒れると、双方の仲間も倒れ、ついにアーチャーとキャスターの一騎打ちとなる。戦いは海上での2台のモーターボートの壮絶極まる大追跡となり、やがてボートが岸に激突し大破。浜に放り出された2人は、さらに肉弾戦を展開。死闘の末、アーチャーは落ちていた水中銃でキャスターの胸を撃ち抜いた。イヴの連絡で駆けつけたFBIの仲間によってアーチャーはキャスターの亡骸と共に病院に運ばれた。イブからアーチャーがキャスターに成りきった全ての経緯を聞いたFBIは、最先端の医学を結集して彼の顔を復元する手術を行ったのだった。

アーチャー家に、自分の顔を取り戻した彼が帰って来た。待っていたイヴとジェイミーと熱い抱擁を交わすと、彼は2人にサーシャの息子アダムを紹介する。独りぼっちになったアダムを家族の一員として一緒に暮らそうと言うのであった。

『フェイス/オフ』の主な登場人物・キャラクター

ショーン・アーチャー(演:ジョン・トラヴォルタ)

本作の主人公。FBIの捜査官でテロ対策チームのメンバーである。
妻のイヴ、娘のジェイミーと暮らしているが、幼かった息子のマイケルを自分の身代わりに凶悪犯キャスターに殺されている。
キャスターを捕まえることに心血を注ぎ、善良で正義感が強いが、切羽詰まった状況では粗暴な態度や語気になることも多く、気性が激しい一面もある。

キャスター・トロイ(演:ニコラス・ケイジ)

本作のもう一人の主人公。
ロサンゼルスを壊滅させる強力な時限爆弾を仕掛けるほどの凶悪犯で、FBIの邪魔者アーチャーを殺害しようと狙っている。
弟のポラックスには愛情を掛けているが、老若男女問わず、親友や恋人さえも躊躇なく殺害する極悪人である。

イヴ・アーチャー(演:ジョアン・アレン)

ショーンの妻。病院で医師の仕事をしている。
息子を殺され、キャスターを逮捕するまでの6年間は仕事にかまけて家庭を顧みない夫を訝しんでいた。
夫と入れ替わったキャスターに翻弄されるも、愛情と信頼の強さで夫への愛を取り戻す。

ポラックス・トロイ(演:アレッサンドロ・ニヴォラ)

キャスターの実弟。
ただ一人の肉親であるため兄のキャスターから強い愛情を注がれる。
細菌兵器を作るなど優秀な頭脳を持っていて、兄の犯行計画に加担している。

サーシャ・ハスラー(演:ジーナ・ガーション)

キャスターの内縁の妻。
キャスターとの間に出来た幼い息子アダムと、実兄のディートリッヒの家で暮らしている。

ディートリッヒ・ハスラー(演:ニック・カサヴェテス)

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