宇宙刑事シャイダー(特撮テレビ)のネタバレ解説・考察まとめ

宇宙刑事シャイダーとは、1984年に放映された東映製作の特撮ヒーロー番組で、宇宙刑事ギャバンより続く「宇宙刑事シリーズ」の第3作目にして最終作である。訓練学校を卒業したばかりの新米宇宙刑事・シャイダーこと沢村大と相棒のアニーが、シリーズ最強最悪の宇宙犯罪組織・フーマに挑む姿を描く。「不思議」をテーマとした奇抜な悪役や完成度の高いストーリーで、シリーズ中でも独自の輝きを持った作品といえる。

不思議ソング集~不思議ソングは鳴り止まない~

「不気味」ではなく、「不思議」。そうとしか言いようのない独特過ぎる曲。

劇中に度々登場する、不思議界フーマのテーマソングともいえる奇怪な歌。単なるBGMではなく、劇中歌として実際に作中で歌われており、不思議獣の作戦ではこの曲を人や動物に聞かせて凶暴化させるなど、ある種の魔力を持つ歌として使われた。
この手の挿入歌としては異例の扱いで、第20話ではサブタイトルにもなったように作中での扱いは大きい。1、2話や20話で使用された不思議ソングPartIIや、第6話の不思議レストランで流れたエレキピアノバージョン、第39話で流れた聖歌隊バージョン等、非常に多彩なバリエーションを誇り、本作主題歌以上の存在感を発揮している。なお、ポータトーンバージョンと呼ばれるデモ用テストバージョンは、作曲者である渡辺宙明自身が歌っている。

当初は従来通り、1話限りの挿入歌として作曲されたが、本作のパイロット版監督を務めた澤井信一郎がこれを気に入り、強烈に強調することによって軍団のテーマソングにまで昇華させたという。

大帝王クビライ(声:飯塚昭三)

全暗黒銀河の支配者たることを望む、不思議界フーマの大帝王。1万2千年前に戦士シャイダーの活躍で滅亡したムー帝国の元支配者でもあり、100万年も生きていると言われる超生命体。構成員たちからは全知全能の神のごとく崇められている存在で、不思議宮殿の広間の壁面から円形の巨大な顔だけを覗かせている。その体内には不思議獣の卵を多数宿しており、作戦に応じて必要な卵を口から生み出し、左右の目から放つ怪光線を卵に浴びせることで不思議獣を誕生させる特殊能力を持つ。激昂すると口から煙を立ち昇らせる。
1万2千年前の戦士シャイダーとの戦いで首と胴は切り離されてしまっており、胴体部分は戦士シャイダーによって封印されていたが、第47話において蘇生してシャイダーに攻撃を仕掛け、終始圧倒するも最後には倒されている。最終話では両手が触手となった機械の胴体を取り付けたサイボーグとなり、シャイダーに戦いを挑む。終始シャイダーを圧倒する強さを見せるも、唯一の弱点である額の目をレーザーブレードで貫かれ、直後にシャイダーブルーフラッシュを受けて敗れた。
前2作の首領以上に怪物然とした姿であるが、戦士シャイダーとの戦いではわが子の危機に自ら駆け付け、胴体を失う重傷を負いつつも孫のポーを守り抜く家族愛を見せたり、宇宙インフルエンザに罹患して周囲を困惑させたりと、どこか人間臭い一面もある。

神官ポー(演:吉田淳)

神秘さと不気味さを併せ持つ「不思議」な神官。

クビライの側近を務める神官。侵略作戦の立案や不思議獣の誕生の儀式(実際に生み出すのはクビライその人)および不思議時空の発生を担当する。
地球を「宇宙のオパール」と呼び、地球を傷付けることなく美しい状態のままで手に入れることを望んでおり、武力による制圧よりも人の心の弱味に付け込むことで征服をもくろむ。前線に出ることはまれだが、単体でシャイダーを圧倒するだけの底知れぬ戦闘力を持っている。いかなる場においても常に沈着冷静な態度を崩さず、言葉遣いも礼儀正しい。大帝王クビライに対してはもちろん、自分の部下たちや敵対するシャイダーに対しても丁寧な敬語を使っている。
年齢1万2000歳にして眉目秀麗な顔立ちであるが、500年に一度美少女のエキスを摂取する「禊」を行う必要があり、素顔は醜悪な鬼女である。
実はクビライの孫娘で、本人も知らなかったが、祖父のクビライからエネルギーを供給されていたことが後で明らかになっている。最終話でクビライがシャイダーに敗れた後、彼女自身はクビライからエネルギーをもらうことができなくなり美しさを維持できなくなったとして、シャイダーとアニーに別れを告げ、珍獣たちと共にいずこへともなく姿を消した(その直後に不思議宮殿も爆発・消滅した)。
設定としては女性であるのだが、演者の吉田は男性である。こうした異例のキャストから、本作のテーマである「不思議」を体現するキャラクターと言える。

へスラー指揮官(演:久保和彦)

幹部の座に誇りと強い執着心を持つ戦闘指揮官。冷酷にして非情。

フーマの行動隊長で、戦闘員ミラクラーや不思議獣らを引き連れての戦闘の指揮を執る。戦闘開始時には「征伐!」の掛け声で攻撃を開始する。
好戦的かつ直情的な性格の男で、第28話で登場した弟・ヒムリーに対しては、その力が自らの地位を脅かすものと判断したことから保身のために自ら手にかける等、情け容赦のない面を見せた。当初はポーと対照的に武力による征服にこだわっていたが、番組後期には自ら変装して不思議獣の作戦を推進するなど、策士としての一面も見せるようになった。
フーマの戦闘指揮官としての地位に誇りと満足を抱いており、それ以上の野心を見せることは一度もなかった。身分的にはポーよりも下であったが、ポーにはタメ口で話している。
第45話において、イースター島(及びそこから派生した不思議界)で敗れる。

ギャル軍団

右からギャル1、ギャル2、ギャル3、ギャル4、ギャル5。恐るべきフーマの実戦行動部隊。

フーマの実戦行動部隊。全員が変装の名人で、様々な姿でスパイ活動を行なったり、フーマの作戦遂行のために、社会の陰で暗躍している。第4話までは「くノ一・五人衆」と呼称。各メンバーの数字は日本語読みする。共通の装備として相手を捕縛するのに使うロープとナイフを持つ。 基本的には冷酷非情の悪役だが、劇中で見せるバリエーションに富んだ変装が物語に華を添えている。また、へスラーの弟・ヒムリーに憧れるミーハーぶりを見せたりと愛嬌のある面をのぞかせることもあった。

ギャル1 はギャル軍団のリーダー格で、軍団の中では誰よりもシャイダーやアニーに対し敵意を持っていた。へスラーとの共同行動も多い。第44話では自ら強化改造を志願し殺人マシーン・戦士ギャル1となった。シャイダーとの戦いで一度敗北するが、怨霊(夜叉ギャル1)となってバビロス号に潜入し、バビロス号を内部から破壊しようとするが、大に阻止された。不思議時空でのシャイダーとの戦いでシャイダーブルーフラッシュを受けた後、強化改造の中枢パーツをビデオビームガンで破壊されて完全に滅びた。

ギャル2はギャル軍団屈指の怪力の持ち主で、金属バットをへし折るデモンストレーションを見せたことがある。ギャル4との同時攻撃も得意としている。口から炎を吹いたこともある。

ギャル3は第45話にてヘスラー指揮官とともにシャイダーに対し一騎討ちを挑み、右手を蛇に変化させた時限爆弾で相打ちに持ち込もうとしたが、あと一歩のところで脱出され爆死するが、ヘスラー指揮官に「見事な最期だった」と讃えられた。

ギャル4はギャル軍団の中で最も切れのあるアクションを展開し、アニーと度々熾烈な戦いを繰り広げた。

ギャル5は軍団の中でもどちらかといえば妹分的な存在であった。最終話の決戦でギャル2、4とともに蝶に姿を変え、自らクビライのエネルギー源となって吸収された。

フーマの珍獣たち

画面上、左から「珍獣ヤーダ」、「珍獣ノッソリ」、「歌うたいのシンギン」。画面下、左から「腹ペコのガーキ」、「上半身のモンク」、「一つ目アイーダ」。

不思議宮殿にいる正体不明の生物。神官ポーの子飼いと推測され、主に彼女のそばで歌ったり踊ったりしているだけだが、幹部たちと共に不思議獣の作戦に参加することもあり、突如として現れては消えたり、変身したりといった捉えどころのない動きで人間たちやシャイダーを翻弄する。
最後は神官ポーとともにいずことも知れない世界へ消えていった。

珍獣ヤーダはその名の通り「ヤーダ、ヤーダ」と声を発する。言葉を発し、子供に変身する能力を持っており、珍獣の中では最も登場回数が多い。

珍獣ノッソリは一見鈍重そうだが不思議ソングで軽快に踊る姿を見せる。第9話では青ガキ隊のギター・ヤッくんに成りすました。

歌うたいのシンギンはその名の通り「シンギン」と歌うように鳴く珍獣である。体を縮小したり、幻影を操る能力を持つ。

腹ペコのガーキはいつも空腹の珍獣で、餓鬼のように腹が大きい。第9話では青ガキ隊のベース・タッくんに成りすました。

上半身のモンクは不思議宮殿の壁から上半身だけが生えている珍獣で、他の珍獣が外出しても基本留守番役である。名前に反し、文句を言っている場面は特にない。

一つ目アイーダは「メヒヒンメヒヒン」と鳴く一つ目の珍獣。第2話ではチンドン屋に化けていた。

不思議獣

写真は不思議獣バリバリ。南国のお祭りに混じっていてもおかしくない派手なデザインだ。

侵略の尖兵として送られる怪物。名称は例外なくカタカナ2文字の繰り返し。(例:バリバリ、ぺトペト等)大帝王クビライの口から吐き出される卵から儀式を経て、神官ポーの「海よ、母なる不思議の海よ、不思議獣の生をはぐくみたまえ」の言葉と共に孵化・誕生する。ほとんどが言葉を話さないが、何体か人間に変身可能で、ムジムジやツタツタのように人語を話せる者もいる。不思議時空では4倍のパワーを発揮することが出来、不思議時空においては巨大化したり、ヒューマノイド体形の分身体に分かれたりする他、槍などのポールウェポンを用いてシャイダーと戦う。
明確なモチーフを持たないものが多いが、原色を多用した派手な色使いや南方系の仮面や神像などがしばしばデザインに取り入れられている点が特徴的である。

戦闘員ミラクラー

フーマの戦闘兵士で、斧とマシンガン、バズーカが武器。言葉は一切話さず、「ショワショワ」という奇声を発する。作戦によっては人間に変身する場合もあり、人間に変身した際には人語を話す。 不思議獣と同様、南洋の祭で使われる面がモチーフである。

名作エピソード

第2話「踊れぺトペト!」

nae201403
nae201403
@nae201403

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