万引き家族 / Shoplifters

『万引き家族』とは、是枝裕和監督による2018年公開のヒューマンドラマ映画作品。公開1週間で10億円の興行収入を記録したヒット作品。第42回日本アカデミー賞では最優秀作品賞、最優秀監督賞など、8つの部門で優秀賞を獲得。海外でも、第71回カンヌ国際映画祭で最高賞のパルムドールを受賞、第91回アカデミー賞で外国語映画賞にノミネートされるなど、高い評価を得ている。
東京下町の狭い平屋を舞台に、祖母の年金と万引きによって生計を立てるという経済的に社会の底辺に位置する一家を中心とした“家族を超える絆”を描いた物語。家族のあり方や、日の目を見ない日本社会の隅にある課題を考えさせられる作品と話題になる一方で、犯罪を助長するなどと批判も受ける。是枝監督は、本作について実際に起きた家族に関する事件を参考に制作していると語っている。俳優陣はリリー・フランキー、安藤サクラ、松岡茉優、樹木希林らが参加。子役の城桧吏、佐々木みゆの演技も話題となった。

万引き家族 / Shopliftersのレビュー・評価・感想

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万引き家族 / Shoplifters
7

いい人ってわけでもない。

是枝監督の作品はいつも何かしらあると思っていましたが、本作もすごく胸にきました。
万引きをして生活なんて、なんで奴らだって感じですが、そうせざるを得ない何かはたしかにありました。でも、それが本当にその道しかなかったかと言われると、そうともいえないところがあって、そこがリアルです。もっと、父頑張れよだし、生活保護とかもあるだろだし、いろいろ思うところがあります。こういう、悪い人じゃないけどいい人でもない人を描くのがすごくうまい監督さんだなと思います。子どもたちも病んでるところがあり、見ていて切なかったです。それでも、兄に懐くところとか、兄が両親を求めるところとかは子どもらしい表情でそこがまた悲しかったです。思った以上にびっくりの展開もあって、ずっと見入ってしまいました。祖母、父、母の役者さんが、全員素晴らしかったです。3人とも雰囲気があって、代わりがいない役者さんです。特に、安藤さくらさんはほんとすてきで、なんともいえないアンニュイ感、どうしようもないところもあるけど、娘の顔を包み込むように手を添える時の優しげな表情とか、もう母の顔でした。
あの家族はいつかは壊れる家族だったし、あの生活を続けられるはずはなかったからあの展開で正解だったとは思います。でも、なんとも悲しい話でした。

万引き家族 / Shoplifters
6

とある家族を描いたヒューマンストーリー

万引き家族は、万引きという犯罪を続けながら生きていく家族を描いたストーリーです。リリー・フランキーや安藤サクラ、樹木希林が出演しています。特に、樹木希林は、この映画の撮影にあたり、あえて入れ歯をしないなど、白熱の演技をしています。この万引き家族は東京の下町にて暮らしています。父親の柴田治と、母の信代、祖母の初枝、息子の祥太、娘の亜紀の五人家族でした。柴田治は、いつものように万引きをした後、その帰り道、通りかかったアパートから喧嘩している声が聞こえ、ベランダを見るとゆりという小さな女の子を見つけます。どうやらゆりは、親から追い出されたらしいのです。その夜は、ゆりを家に連れて帰ります。翌日ゆりを送り届けようとしますが、ゆりは両親から虐待を受けている事実を語ります。その日から、6人での生活が始まります。
ある日、治は仕事現場で骨折してしまいます。治は労災をあてにしていましたが、労災は降りず家族の生活費は、妻の年金のみとなりました。ある日、治と祥太は凛を連れて釣りやで万引きします。釣竿は高値取引されるので、当面の生活は大丈夫だと治は語ります。その一方、信代は不況の煽りをうけて、職を失います。初枝はパチンコ屋で他人の玉を盗んだり亜紀の両親からお金をもらって生活していました。
ある日、初枝は眠ったまま息を引き取ります。初枝は建前上一人暮らしをしていることになっていることと、死んだことがバレると年金が受け取れないため、初枝の遺体は床下に隠されてしまいます。数日後事件が起こります。祥太が凛を連れて万引きしようとした際、見張り役であった凛が店員に見つかりそうになり、祥太はとっさに商品をひっくり返し、みかんを盗んで逃げ出すことで凛を守ります。捕まりそうになった祥太は崖に飛び降り骨折して病院送りとなります。すべてが警察にバレてしまうと思った治は、夜逃げしようとするのですが、張り込んでいた刑事に捕まります。警察による事情聴取が進む中で、実は祥太も治とは血がつながっていないことがわかるのです。それと同時に、初枝を埋めたことも警察にバレてしまいます。それで、家族はバラバラになってしまうのです。
その後、治は祥太に「おまえをパチンコ屋で拾った」と打ち明けます。また、本当の親が見つかるかもしれないことも打ち明けます。その夜、祥太は治の家に宿泊するのですが、祥太は「父ではなく、おじさんのところに戻るよ」と打ち明けます。この映画のポイントは、子ども達がひとり持ちがつながっていないのにもかかわらず、親子の間の愛情が深いところが見どころです。

万引き家族 / Shoplifters
10

一度は見るべき現代社会を風刺したストーリー

ーあらすじー
万引きで生計を立てる柴田治、妻の信代、息子の祥太、信代の妹亜紀、治の母初枝による5人家族のストーリー。
ある冬の夜治と祥太は近所の団地のベランダでひとり震える女の子を見つけ、匿うように家に連れて帰った。数時間後、ゆりと名乗るその女の子を家に返そうともう一度団地へ行くと、若い夫婦のけんかの声を耳にすることとなる。虐待の事実を察した家族はゆりと暮らしていくことを決める。
小学校に通っていない祥太は日中外に出てゆりと二人で行動し、休みの日には家族で出かける。次第に家族の仲は深まっていった。
そんなある日テレビをつけると、ゆりが誘拐されているとの報道が流れていた。誘拐、万引き、家族のしたことは次第に様々な形で発覚することとなる。
本当の家族とは何かを改めて考えさせられる映画。

この映画はとにかくストーリー構成がしっかりとしていて、一瞬足りとも飽きのこない作りになっていました。
役者は一人として違和感の感じないはまり具合です。適役とはまさにこのことと感じました。
そのうえ、一人一人の演技力が秀逸であるため作品に対する引っ掛かりがありません。セットや衣装に対するリアリティも強く、なすべきことを確実にこなした作品といえると思います。
他の方のレビューを見ると賛否両論といった印象がありますが、上映当時日本が抱えていた社会の裏にある問題に対して真摯に取り組んだかなり質の高い作品であると私は感じました。

万引き家族 / Shoplifters
10

選んだ家族の絆

万引き家族というタイトルからとても興味をそそられて映画をみました。
タイトルにもあるように、父と子どもの連携プレイによりスーパーで万引きをするシーンでこの映画は始まりました。万引きをしながら生活している貧乏な家族のお話なのかなと最初は思っていましたが、物語が進む中で同じ家で生活をともにしているその家族は、誰一人として血の繫がっていない、偽者の家族だということが分かってきます。
子どもは親を選ぶことができない。子も親を選ぶことができない。それが現実ですが、この家族はそれぞれが自分で選んだ家族でした。
生活を共にするにつれて本物の兄妹や親子のようになっていく場面には、絆の深さを感じ思わずジーンとしてしまいました。
拾われてきたりんと安藤サクラさん演じる母親・信代が、お互いのやけどの傷跡をお風呂でなであって、「同じだね」というシーンなんて本当に心に残っています。
それなりに仲良く暮らしている偽の家族でしたが、結局最後はみんな離ればなれになってしまいます。刑事から「こどもたちはあなたのことを何と呼んでいたの?」と聞かれて、「何だろうね…」と消えそうな声で呟きながら、髪を掻き毟り泣くシーンは本当に印象的でした。一言では言い表せない、いろいろな感情が混ざり合った涙なんだろうなと思いました。
心に残る良い作品でした。

万引き家族 / Shoplifters
10

たくさん泣きました

血がつながっていれば家族なのか。血のつながりがなければ家族になれないのか。と考えさせられました。虐待のニュースをテレビで見ます。子供は親を選ぶことができません。そのとき、子供はそこから逃げ出すことができません。血のつながりがないところに引き取られたほうが幸せになれる可能性がたくさんあります。そう考えさせられました。
安藤サクラさんの取り調べの場面はすごい演技だと思いました。泣けました。安藤サクラの演技力と細野晴臣の音楽は見ていて圧巻でした。
父親が追いかけるバスの中で、息子は声に出さずにつぶやきました。子供たちの演技がすごいです。この場面もたくさん泣きました。
演出はさすがと思わせるところがあります。「見せずに感じさせる」シーンが随所にあって、上手いです。常識や正義だけで人は、はかることができません。そんな一顧を与える、ささやかなメッセージがあります。
家族の意味、人と人とのつながりの意味について深く考えさせられる良作です。
社会的にはいけない行動ばかりですが、家族を幸せにできる力があるのだなと思いました。今ある家族というのはとてもかけがえのないものなのだと感じました。この作品をもっとたくさんの人に知ってもらい、虐待がなくなってほしいです。

万引き家族 / Shoplifters
7

ニュースと被って泣きそうになりました…。

是枝裕和監督が長い間構想を温めていただけのことはあって、凄まじい衝撃に襲われる作品でした。
彼が一躍メジャーになった「誰も知らない」から13年。
その連作なのではないかと思わせるほどのデジャヴに、見終わった時にはくらくらしてしまうほど、パワーを吸い取られた作品です。
映画館に行く前に、ネットで予告編や解禁された様々なシーンを見ていましたが、そこで目にしていたよりも数倍、数十倍、闇の深い物語でした。
都会のエアポケットのような小さな家に肩を寄せ合うようにして暮らしていた大人たち、そして子供たち。
最後に家族として加わった”りん”は、実の親に、真冬だというのに表に放り出されていた被虐待児でした。
それを連れてきて、温かい食べ物を与えたのは間違っていたのでしょうか。
血はつながらないけれど、愛情をもって接していた大人たちと、産みはしたけれど、その子の前で「産みたくなかった」と言い放ち、傷を作り邪険に扱う親。
その対比は観る者の思考を揺さぶり、価値観を根底から覆すほど濃密な問いかけをしてきます。
万引きは悪いことです。
しかし、彼らがそこで暮らしていた日々のすべては駆逐されなければならないほどの悪だったのか。
一人一人が抱えてきた事情の重さもあいまって、鋭利な刃物のように様々な問いかけが見る側に投げかけられる、そんな映画でした。

見終わって、その日報じられていた、虐待されて亡くなった小さな女の子のニュースとかぶり、涙が溢れました。
あの子がもし誰か、他の大人に発見され、きちんと保護されていたらきっと今も生きていたはず。
でも、映画の中の彼女の未来は一体どうなるのか。

今この映画が公開されたのは本当に偶然なのでしょうが。
それだけとは思えない不思議な力を感じた映画でした。

万引き家族 / Shoplifters
7

血の繋がりはない、だけど強い絆で繋がっている。家族とは何か?

映画のタイトル通り、この家族は血の繋がりがありません。ある事情があって、みんなこの家を拠り所に集まってきた人たちです。
両親から虐待をうけていたりんちゃん、夫のDVに耐えられず治と駆け落ちした信代、家族に邪険にされて飛び出した亜紀。万引きして生計をたて、常識で考えれば犯罪に手を染めている家族。
一方で、この家族の絆の深さも描かれています。虐待を受けていたりんちゃんの傷をみて、心から涙を流し抱きしめてくれる信代。本当の親子のように、亜紀は治に恋愛の相談をしていたり。結末は、万引き家族が生活していた家がばれてしまい、それぞれ元の家族のところへ返されます。元の家族へ帰っていったあと、それぞれの子が「本当にこれで良かったのかな」と視聴者へ問いかけるような結末になります。ここに映画が伝えたいメッセージが込められています。
日本の法律にしたがい、世間体で言えば「普通の家族」になった。だけれど、どこかみんな「万引き家族に戻りたい」と心のどこかで思っている。
みんな誰かの子供として生まれ、育てられ、大人になる。その過程で、思春期や反抗期の頃に「なんでこの家族に生まれてきちゃったんだろう」と思う時があると思います。その疑問は亜紀にもあったように、家族ってなんだろうという疑問を抱くことはすごく普通なことなのです。「家族って、絆って何か」そういう疑問に対しての答え、言葉だけでは伝わらない答えがこの映画にありました。大切な人をもっと大事にしたくなる、そんな映画でした。

万引き家族 / Shoplifters
5

是枝監督らしい作品。

観て良かったか、良くなかったかと言われれば、絶対に観て良かったです。
映画ファンはこれとスリービルボードは観ておかなくてはいけない作品だと思います。ただ、これは大作家さんの名言・『死にたくなったら読書100冊うち太宰2冊、ただ太宰は続けて読むなよ。』と同じアドバイスが出来ると思います。なにかツライ時、苦しい時、ひたすら100本くらい映画観てみたら?ただ是枝作品は続けて観ちゃダメだよと。
是枝監督はとても底辺の暮らしぶり、社会から外れた人間というものに興味があるのだと思います。それをうまく映画化して、嫌悪感や、疑問を増幅していく。その結果のパルムドールだと思います。
正直、あの家族の日常は絶対に続けてはいけない日常です。ですが、その家族を越える幸せをこれからの人生であの家族が得られるのか。あの海の思い出が、ずっと幸せだったら、それからの人生がずっと辛かったら、そう思うと涙が出ます。あの刑事さんたちが言う常識が凄く善だし、万引き家族は悪です。でも悪でも愛があったら、でも悪の愛が一番悪であるなとも思って、とても辛いです。人生って辛くなくてもいいのに。楽しくてもいいのに。せめて映画は夢を見たいのに。凄く凄く辛い映画体験でした。