ニュースと被って泣きそうになりました…。
是枝裕和監督が長い間構想を温めていただけのことはあって、凄まじい衝撃に襲われる作品でした。
彼が一躍メジャーになった「誰も知らない」から13年。
その連作なのではないかと思わせるほどのデジャヴに、見終わった時にはくらくらしてしまうほど、パワーを吸い取られた作品です。
映画館に行く前に、ネットで予告編や解禁された様々なシーンを見ていましたが、そこで目にしていたよりも数倍、数十倍、闇の深い物語でした。
都会のエアポケットのような小さな家に肩を寄せ合うようにして暮らしていた大人たち、そして子供たち。
最後に家族として加わった”りん”は、実の親に、真冬だというのに表に放り出されていた被虐待児でした。
それを連れてきて、温かい食べ物を与えたのは間違っていたのでしょうか。
血はつながらないけれど、愛情をもって接していた大人たちと、産みはしたけれど、その子の前で「産みたくなかった」と言い放ち、傷を作り邪険に扱う親。
その対比は観る者の思考を揺さぶり、価値観を根底から覆すほど濃密な問いかけをしてきます。
万引きは悪いことです。
しかし、彼らがそこで暮らしていた日々のすべては駆逐されなければならないほどの悪だったのか。
一人一人が抱えてきた事情の重さもあいまって、鋭利な刃物のように様々な問いかけが見る側に投げかけられる、そんな映画でした。
見終わって、その日報じられていた、虐待されて亡くなった小さな女の子のニュースとかぶり、涙が溢れました。
あの子がもし誰か、他の大人に発見され、きちんと保護されていたらきっと今も生きていたはず。
でも、映画の中の彼女の未来は一体どうなるのか。
今この映画が公開されたのは本当に偶然なのでしょうが。
それだけとは思えない不思議な力を感じた映画でした。