家栽の人(漫画・ドラマ)のネタバレ解説・考察まとめ

『家栽の人』は1988年~1996年に『ビッグコミックオリジナル』で連載された毛利甚八作・魚戸おさむ画の裁判を扱った人情物青年漫画、及び本作を原作としたテレビドラマである。家庭裁判所の裁判官桑田義雄が裁判を進めていく中で裁判に関わる人々の心情を書いた人情系漫画。多くの悩みや問題を抱えて裁判所にやってくる人々を桑田が裁判を通じて救っていく。また、桑田に様々な感情を持ちながら桑田と関わっていく裁判所の個性的な職員たちも魅力的だ。

本作の各話のタイトルは、植物の名前か植物に関係する言葉となっているが、単行本12巻第9話の「山川草木」と15巻第8話の「沼」のみ異なる。

異色回「ホオズキ」

『家栽の人』はコメディ風のシーンもあるが、話は基本的にシリアスなものである。しかしこの「ホオズキ」の回だけは全く毛色が異なる。目黒支部長の視点で物語が展開され、権威主義的な裁判所を改めるために職員の服装は自由になり、裁判で裁判官は相手の生活環境に合わせた服装を着る義務があるとして、目黒は居酒屋の親父の恰好で居酒屋風の法廷に入り、被告の出身の名古屋弁で裁判を行う。他にも植物に覆われた「緑の法廷」があったり、目黒が職員達と庭で昼食を取りながら談笑したりと、現実とはかけ離れた光景が続いたところで目が覚め、全て夢であったことが分かる。だが目黒はどこか寂しそうだった。

原作者・毛利甚八の遺作『「家栽の人」から君への遺言 佐世保高一同級生殺害事件と少年法』

原作者毛利甚八が没年である2015年に講談社から出版された書籍。現実離れした人物を『家栽の人』の主人公に据えたことに苦しんでいた著者が、末期の食堂癌と戦いながら戦後少年法の問題と安易な少年法叩きに警鐘を鳴らす作品。
本書前半では戦後の裁判所と法曹界の問題を検証、神戸児童連続殺傷事件や光市母子殺害事件の現場での取材、非行少年を雇い続ける(株)野口石油会長・野口義弘氏や少年鑑別所・少年院からの進学を支援する学習塾フジゼミ社長・藤岡克義氏への取材の様子が書かれている。
後半は佐世保高一同級生殺害事件への手紙という形で自身の死を目前に最後の言葉を紡ぐ内容。
目次
第一部 原作者が迷い込んだ少年法の戦後史
第一章 家栽の人をふりかえる
第二章 少年法叩きの一五年を考える
第三章 少年院の世界
第四章 非行少年100人を雇った男
(株)野口石油会長・野口義弘(福岡県北九州市)
第五章 少年鑑別所からの大学進学、請け負います
学習塾フジゼミ社長・藤岡克義(広島県福山市)
第二部 佐世保の君に贈る手紙
第六章 第一信 忙しすぎる夏
第七章 第二信 最高裁に乗り込む
第八章 第三信 ぼくが思春期に出会った死
第九章 第四信 維摩詰の足元で

『家栽の人』の主題歌・挿入歌

TBS版ドラマ主題歌:大貫妙子「春の手紙」

春の手紙(歌・作詞・作曲:大貫妙子)

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