家栽の人(漫画・ドラマ)のネタバレ解説・考察まとめ

『家栽の人』は1988年~1996年に『ビッグコミックオリジナル』で連載された毛利甚八作・魚戸おさむ画の裁判を扱った人情物青年漫画、及び本作を原作としたテレビドラマである。家庭裁判所の裁判官桑田義雄が裁判を進めていく中で裁判に関わる人々の心情を書いた人情系漫画。多くの悩みや問題を抱えて裁判所にやってくる人々を桑田が裁判を通じて救っていく。また、桑田に様々な感情を持ちながら桑田と関わっていく裁判所の個性的な職員たちも魅力的だ。

桑田は、高崎書記官から傷害事件を起こした暴走族の少年を保護観察処分を新聞で非難されていることを聞く。「長い間、暴走族の少年らによる深夜の騒音に苦しめられ、そのあげくに二か月の重傷を負わされた市民がいるのである。その少年達をまた町に戻すということは、裁判所は私達市民に、この先ずっと脅えて暮らせというのであろうか……」と書かれていると話す高崎に、桑田は「町が育てなければ誰が少年達を育てるんですか?」と言う。続けて「それよりも高崎さんにも考えていただきたいことがあるんです」と話す桑田だが、それは「この花壇コスモスの後何を植えたらいいでしょうね?」という内容だった。

桑田「あなたの子供が今、ここに立っていることが、あなたの教育の結果ですよ。これをどう償うつもりですか?彼を、これからどう育てるか答えて下さい」

桑田と父親のやり取りの終わりに一礼する少年。彼は父親に押さえつけられた自分を振りほどいてみたいだけだった。

恐喝で家裁に送られてきた少年の父親は、息子に柔道を教えて勉強も付きっ切りで厳しく育てて来たという。しかし裁判所で桑田は父親に「あんな育て方をすれば、誰だって非行に走ります」と言った。柔道を通じて何人もの子供たちを育ててきたと返す父親に、「他の少年達には帰る家があるんです。あなたは父親としてではなく他の物で息子さんを縛ってきたんじゃありませんか?」と続ける。父親はついカッとなって「息子の非行は私のせいじゃない!!」と叫ぶが、「違います!あなたの子供が今、ここに立っていることが、あなたの教育の結果ですよ。これをどう償うつもりですか?彼を、これからどう育てるか答えて下さい」と桑田に言われ、動揺しながら「そ、そう言われてみると…どうすればいいのか……皆目分かりません…」と落ち込む、そんな父親の姿を見た少年は、桑田に一礼する。

桑田「私達がこうして集まっているのは、その10歳の子を育てるためですよ。たとえ10歳でも自分自身の世界を持っているんじゃないでしょうか?」

親だけでなく、町も子供が育つ重要な要因であるという台詞

離婚後どちら子供をひきとるかで揉めていた夫婦の娘が行方不明になった。桑田は「今度の調停ではその子の話を聞いてみましょう」と言う。調停委員は「まだ10歳子供ですよ」と返すが、桑田は「私達がこうして集まっているのは、その10歳の子を育てるためですよ。たとえ10歳でも自分自身の世界を持っているんじゃないでしょうか?」と話し、両親や祖父母との関係性以外にも子供が自分の居場所を決める理由があることを示唆する。子供は育った土地や友人と離れたくなかったのだ。

桑田「私たちが少年に対してできることは、小さなことです。だけど小ささを恥じて、それをしまい込む人が多すぎるんです」

息子との上手くいかないことを話した近藤への返答

ベテラン調査官近藤は息子の友人を担当することになった時から、息子との関係が上手くいなくなってしまったことを桑谷に話す。「少年とぶつかり合うには、年を取り過ぎたしれませんね…口では偉そうなことを言いながら、自分の子供一人育てることができないのがわかってしまった…」と言う近藤に対し、桑田は「息子さんが可愛いなら思い切り可愛がればいいじゃないですか」「私たちが少年に対してできることは、小さなことです。だけど小ささを恥じて、それをしまい込む人が多すぎるんです」と話し、近藤にまだできることがあることを伝える。その日の夜近藤は息子に自分が悪かったと伝え和解する。

渋谷調査官が母親を息子に会わせるために背負って運ぶシーン

昔息子を残して蒸発したという女性を息子に再開させるため、渋谷は彼女と共に息子の元に向かう。しかしかつて捨てた息子と会うことに後ろめたさを感じる女性は、途中で足を止めてしまった。渋谷は「変な調査官だと思って下さい」と言い、女性を背負って息子の元へ連れていく。同じように母親が蒸発している渋谷には、彼女を放っておくことが出来なかったのだ。

仕事中に暴行を受けた少女が帰り道に傷ついた男の子と出会うシーン

売春で生計を立てる少女やよいは、客と口論の末暴行を受け顔に怪我をする。その帰り道やよいは河原の道を歩いている傷だらけの男の子と出会う。彼女は男の子の傷を心配して話しかけるが、逆にやよいの傷を心配してきた。男の子に自分と同じものを感じたやよいは、彼を家に連れて帰る。男の子も孤児院でいじめにあって逃げ出してきていた。

桑田「あなたは知らないだけですよ。その恐ろしい輪の中から抜け出した時に…人がどんな顔で笑うかを」

石嶺は孤児院から逃げ出して、このままではまた孤児院に戻ることになったであろう男の子の母親を探し出し、少女とも再会させて一緒に食事をする時間を与える。

少年たちの処遇に悩んでいながら桑田に反発して少年事件を軽く見る石嶺判事に、桑田は
「あなたには少年事件はつまらなく見えるのかもしれない。たしかに声の届かない子供たちは多い。何も身に付けていない絶望的な子供たちも多い。しかし長く少年たちを眺めていると、わかってくることもあります」
「多かれ少なかれみんな、生きてきた中でいじめられた過去を持っている。小さな子は大きな子に、力のある子は頭のいい子に、頭のいい子は大人に、女は普通の男に、普通の男は強い男に、強い男は組織に、組織はより強い組織に……原因をたどっていくと尽きない………」
「私は普通の人間です。でも少年法を使えばその連環を断ち切れるかもしれない」
「あなたは知らないだけですよ。その恐ろしい輪の中から抜け出した時に……人がどんな顔で笑うかを」
と答える。この時はまだ桑田の言葉を理解していなかった石嶺だが、熟考の末に救った少女は、輪の中から救い出された男の子の笑顔に救われたことを彼女の手紙から知る。

『家栽の人』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

福岡家庭裁判所のマンホールに「家栽」の文字

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『家栽の人』の「栽」は裁判の裁では無く栽培の栽であるが、福岡家庭裁判所にあるマンホールにも「家栽」の文字が書かれている。しかも『家栽の人』を意識したものでなく字を間違えたものらしく、連載開始より12年も前の1975年頃に作られたもののようだ。

植物「以外」のタイトル2つ

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