『春の夢』とは、吸血鬼一族の物語を描いた萩尾望都によるファンタジー漫画『ポーの一族』の40年ぶりの新作漫画である。『月刊フラワーズ』2016年7月号で発表され、2017年3月号から7月号にかけて連載された。1940年代、第二次世界大戦下の欧州を舞台に、バンパネラのエドガーとアランがウェールズでドイツ人少女ブランカと出会う物語を描く。一族の謎や戦時中の生活に焦点を当てており、2016年の発表時には掲載誌が完売・重版される社会現象を巻き起こした。
美しい少年の姿を保ったまま、永劫の時を生きるバンパネラ。幼少期にポーツネル男爵夫妻の養子となり、現在は自らも男爵を名乗っている。正体が露見せぬようアラン・トワイライトと共に各地を転々としており、現在はイギリスのウェールズ地方に身を潜めている。常に冷静沈着で感情を排した態度を崩さないが、アランに危機が迫れば身を挺して守り抜く強さを持つ。偶然出会った少女ブランカに心を惹かれるが、彼女を自身の過酷な運命に巻き込まぬよう、あえて冷徹に振る舞う。また、一族の者と密会し、自らのエナジーを分け与えて若さを提供する役割も担っている。
アラン・トワイライト
かつては人間だったが、エドガーの手によって一族に加えられたバンパネラの少年。体がバンパネラとして完全に安定していないためか、頻繁に激しい眠気や貧血症状に襲われ、そのたびにエドガーからエナジーの補給を受けている。エドガーがブランカと親密になることに強い拒否感を示しており、彼女の魅力に対して密かに嫉妬の炎を燃やす。自身を介抱してくれたファルカに対して憧憬の念を抱くが、その接触はエドガーによって厳しく制限されている。
ウェールズで出会う人々
ブランカ
ドイツのハンブルクから、戦火を逃れてウェールズのアングルシー島へやってきた16歳のユダヤ人の少女。ナチスの迫害を回避するため、不慣れな異国で弟ノアを慈しみながら、叔父ダン・オットマーの屋敷で暮らしている。敵国語であるドイツ語を自らに禁じているが、両親との思い出が詰まった故郷への想いは断ちがたく、孤独を抱えていた。しかし、エドガーとの出会いを通じて過去の記憶を肯定し、前向きに生きる勇気を得る。謎めいたエドガーの存在に強く魅了されていく。
ノア
ブランカの弟である11歳の少年。姉と共にオットマー家に身を寄せている。年齢に比して幼い言動が目立ち、周囲への配慮や場の空気を読むことは不得手である。純粋かつ好奇心旺盛な性格だが、注意散漫で怪我が絶えず、常に姉を心配させている。精神的な幼さゆえにブランカの深い孤独や悩みを理解するまでには至っていないが、エドガーには全幅の信頼を寄せて懐いている。
ダン・オットマー
ブランカとノアの義理の叔父であり、ザブリナの夫。かつてはリバプールで商売を営んでいたが、一族の男たちが代々発症する宿命の「眠れない病」に冒され、ウェールズで静養生活を送っている。実はオットマー家はポーの一族とは異なるギリシャ系の不死の一族「ルチオ」の血筋である。40代前半で発症し一度は死を迎えるが、その後バンパネラとは異なる形態の吸血鬼として転生し、永遠の時間を生きる選択をすることになる。
ザブリナ・オットマー
ダン・オットマーの妻で、ブランカたちの母の姉。軍に所属する才女であり、そのドイツ語能力を重宝されている。ドーバーでの任務中に幼馴染の息子を保護し、連れ帰るなどの情に厚い面を持つ。病床の夫を頑なに医師へ診せようとしない義母の言動に不信感を抱くが、家系の秘密を知らぬまま苦悩し、最終的には見守ることしかできずにいる。姪のブランカや甥のノアを実の子のように可愛がっている。
不死の一族
ファルカ
エドガーとは異なる血統に属する、紅ルーシ出身の吸血鬼(ヴァンピール)。「男装の麗人」を彷彿とさせる優雅な女装を好む。1925年のパリ万博でエドガーと出会い、初対面ながらアランの治療を快く引き受けた気さくな性格の持ち主である。一方で、アランをエドガーから引き離そうと画策したり、ブランカを翻弄したりするなど、周囲を混乱させるトラブルメーカーとしての側面も併せ持つ。14歳で結婚したが、戦火によって愛する家族をすべて失った悲劇的な過去を背負っている。
『春の夢』(ポーの一族)の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
『ポーの一族』のシリーズ16作目の作品
『ポーの一族』は本編第1作の『すきとおった銀の髪』が『別冊少女コミック』1972年3月号に掲載されて以降、断片的に掲載されていた。本作『春の夢』は本編だけであれば15作目の作品となるが、番外編である『はるかな国の花や小鳥』を第12作とカウントすると、16作目となる。
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目次 - Contents
- 『春の夢』(ポーの一族)の概要
- 作者・萩尾望都のプロフィール
- 『ポーの一族』について
- 『春の夢』(ポーの一族)のあらすじ・ストーリー
- 戦火のウェールズでの出会いと「赤い家」の休息
- 一族との契約と「目」の覚醒
- オットマー家の呪いと「ルチオ」の正体
- クロエの反逆とブランカの悲劇
- 旅立ちと数年後の再会
- 『春の夢』(ポーの一族)の登場人物・キャラクター
- 主要人物
- エドガー・ポーツネル
- アラン・トワイライト
- ウェールズで出会う人々
- ブランカ
- ノア
- ダン・オットマー
- ザブリナ・オットマー
- 不死の一族
- ファルカ
- 『春の夢』(ポーの一族)の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
- 『ポーの一族』のシリーズ16作目の作品
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