クソオヤジは実は聖人だった!? 映画「ヴィンセントが教えてくれたこと」にほっこり!
気難しい不良オヤジと、転校したばかりでいじめられっ子の少年。偶然家が隣同士になった2人がふとしたきっかけから交流を深めていき、心を通わせるようになる。ありがちな設定でありながら、しかしラストの演出は思わず目頭が熱くなります。こんな隣人が欲しかった。映画「ヴィンセントが教えてくれたこと」をご紹介致します。
あらすじ・ストーリー
アルコールとギャンブルが大好きで、ちょっとクセのあるヴィンセント(ビル・マーレイ)は、隣家に引っ越してきたシングルマザーの12歳の息子、オリバー(ジェイデン・リーベラー)の世話をすることになる。酒場や競馬場へと連れ回し、ろくでもないことを教え込むヴィンセントに反発するオリバーだったが、嫌われオヤジに隠された真の優しさや心の傷に気付いてから、徐々に二人は心を通わせていき……。
見た目は不良、しかし中身は噛めば噛むほど味の出る極上オヤジ
ヴィンセントは間違いなく不良オヤジ。ギャンブルで金は摩るし、自分で倒した柵の修理代を隣人に請求したりする。いささか型にはまり過ぎな不良オヤジの気もありますが、不思議と憎めない存在です。おそらく彼は常に最高を目指しているだけなのでしょう。介護施設にいる妻には最高の毎日を過ごしてほしくて、分不相応な高級施設で生活させていますし、妊娠させた貧乏な売春婦に自腹でエコー検査を受けさせたりしています。
何事にも妥協できないだけなのでしょう、彼は。傍から見ればそれはいじわるだったり偏屈に見えたりするかもしれませんが、一歩彼の中に足を踏み入れてみれば極上の味わいが全身を包み込みます。不器用な性格でどれほどの損をしてきたのか。第一印象と知り合ってからの印象が180度違います。とはいえ、不良は不良。別に良い人というわけではないんですけどね。しかしそこがまた正直で良い。
ラストの落とし方に思わず目頭が熱くなる
このようなハートウォーミングな映画のラストは大体パターンが決まっていたりします。子供が危機に陥っているのを偏屈な老人が助け、その結果として老人が病院に担ぎ込まれたりとかですね。しかし、この作品は違います。そのパターンはあるものの、それはあくまで中盤の話。この物語は一体どうやって締められるのだろう、ここまできたら中途半端は嫌だと思っていたところに最高のクライマックスが用意されています。
ここで随所に散りばめられていた「聖人」が出てくるのかと驚いたと同時に、胸が暖かくなりました。原題が「St. VINCENT 」、聖ヴィンセントなのでなんとなく予想はできましたが、それにしても演出の仕方が素晴らしい。このラストはぜひとも観賞して観て欲しいと思います。この映画の良いところは、最後の最後までヴィンセントが不良だということ。良い人になりきらないところが、また面白い。
まとめ
エンドロールが流れる間、延々とヴィンセントが歌います。原曲が流れている裏で歌うものだから、ところどころ音が外れたり声量が逆転するのが面白い。最後までヴィンセントが楽しませてくれます。嫌なやつだと思っていた人が実は良いやつだった、という通り一遍の物語ではありません。なぜならヴィンセントは本当に嫌なやつだから。嫌なやつだけど、同時に良いやつでもあるんですよね。笑って泣ける映画「ヴィンセントが教えてくれたこと」。どうぞご観賞ください。