
ヴィンセントが教えてくれたこと(St. Vincent)とは、2014年に公開されたアメリカのコメディドラマ映画。2014年のトロント国際映画祭で「最優秀ピープルズ・チョイス・アワード」の次点に選出され、初公開された。監督と脚本を担当したセオドア・メルフィは、本作が劇場公開映画のデビュー作である。1日をバーや競馬場へ通って過ごす借金まみれの老人と、隣人のシングルマザー親子との心の交流を描く。
『ヴィンセントが教えてくれたこと』(St. Vincent)の概要
『ヴィンセントが教えてくれたこと』(St. Vincent)は、2014年に公開されたアメリカのコメディドラマ映画。2014年のトロント国際映画祭で「最優秀ピープルズ・チョイス・アワード」の次点として選出され、初公開された。日本では翌2015年に劇場公開されている。監督と脚本を担当したセオドア・メルフィは、本作が劇場公開映画のデビュー作である。ビル・マーレイが主人公の老人・ヴィンセント役を演じ、他にメリッサ・マッカーシー、ジェイデン・リーバハー、ナオミ・ワッツ、クリス・オダウドなどの豪華出演陣が登場している。
1日の大半をバーや競馬場で過ごし、ギャンブルで有り金をすってしまったり、自ら倒した柵の修理代を隣人に請求したりする「不良オヤジ」のヴィンセント。そんな彼の隣人として、シングルマザーに連れられた少年・オリバーが引っ越してくる。
気難しい不良オヤジと、転校したばかりでいじめられっ子の少年。偶然家が隣同士になった2人がふとしたきっかけから交流を深めていき、心を通わせるようになる。映画を視聴した人々からは「ラストの演出は思わず目頭が熱くなる」「こんな隣人が欲しかった」などの声が寄せられた。
『ヴィンセントが教えてくれたこと』(St. Vincent)のあらすじ・ストーリー
地域のダメオヤジと母子の出会い
借金まみれで厄介な老人のヴィンセント。彼は1日の大半をバーや競馬場で過ごし、娼婦であるダカへの代金や酒に金をつぎ込む暮らしをしていた。
しかしあるとき、ヴィンセントの資金源である銀行からの担保金が、ついに借入限度額を超えてしまう。口座を閉じようにも資金がないヴィンセントはやけくそになり、酒を浴びに街へ繰り出すのであった。その翌日、とある引っ越し業者のトラックがヴィンセントの敷地内へ突っ込んでくる。隣に新たな隣人が越してきたということを悟るヴィンセント。引っ越してきた女性・マギーは、トラックの衝突により故障した車についてヴィンセントへ謝罪するも、ヴィンセントは弁償しろと言い残して家に引っ込んでしまうのであった。
マギーは浮気した夫から逃げて、息子のオリヴァーと二人暮らしを始めるために新天地へ引っ越してきた女性だった。新たな街で初出勤を控えるマギーは、オリヴァーのことを気にしながらも彼を一人きりで学校へ登校させる。
オリヴァーは、新しいクラスでその小さな身体からイジメの対象となってしまい、なじむことができなかった。いじめっ子のロバートに鍵を盗まれてしまったオリヴァーは、家の前でただただ途方に暮れる。
そこに偶然ヴィンセントが帰宅し、競馬場で借金取りに返済を迫られた彼は子守り代の請求を目的にオリヴァーを家に上げる。そして、帰宅したマギーに自らオリヴァーのシッターをすると申し出るのであった。
オリヴァーとの友情
その日から、オリヴァーとヴィンセントの奇妙な関係が始まった。ヴィンセントが「妊娠を理由に店をクビになった」という娼婦のダカの愚痴を聞いていたところ、多忙を極めたマギーからオリヴァーを迎えに行くようにと依頼の電話がかかってくる。
オリヴァーは迎えに来たヴィンセントからマギーに連絡するよう言われ、公衆電話で電話をかけることにする。その時、ロバートらに絡まれ暴力を振るわれるが、ヴィンセントが介入して彼らを追い払った。その後2人は介護施設「サニーサイド」に向かい、ヴィンセントは医者の格好をしてアルツハイマー型認知症の患者であるサンディに会って話をする。帰宅したオリヴァーは、いじめっ子との戦い方をヴィンセントから指南されながら過ごす。
その日を境に、ヴィンセントはオリヴァーを色々なところへ連れて行くようになった。競馬やバーへ彼と共に赴き、娼婦のダカとも知り合いになるオリヴァー。そうしてヴィンセントと過ごす日々のさなか、オリヴァーはついにいじめっ子ロバートへヴィンセント直伝のパンチを見舞ってしまう。
一方で、マギーのもとへは夫から親権の譲渡を目的にした裁判通知が届いていた。泣き腫らした目のマギーを気遣うヴィンセントは、この親子に対する友情と愛着が生まれ始めていることを自覚する。
そんなある日、学校からオリヴァーの喧嘩騒動について連絡を受けたマギーは、オリヴァーと共に帰宅した酔っ払いのヴィンセントに喧嘩のことを知っていたのかと詰め寄った。
ヴィンセントはカッとなってしまい「オリヴァーを放ったらかしにしているから言えなかったのだろう」とマギーに答える。それを聞いたマギーは、悲しみと怒りからヴィンセントに暴言を浴びせてしまうのであった。
ヴィンセントの危機
ヴィンセントは、介護施設「サニーサイド」の事務室を訪ねていた。施設の支払いが滞っていることをヴィンセントに伝え、もっと安い施設への移動を推奨する院長。以前彼が医師を装って診察のような会話をしていたサンディは、ヴィンセントの妻だったのである。納得がいかないヴィンセントだが、言い返す言葉も見つからず悔やむ表情を浮かべるしかなかった。ヤケになったヴィンセントは、全財産を競馬に突っ込んで失ってしまう。絶望の末に帰宅すると、そこには借金取りが待ち構えていた。彼らはヴィンセントからサンディの所持品を取り上げようとする。
必死に抵抗するヴィンセントであったが、突然床に倒れこみ、そのまま動かなくなってしまう。借金取りたちは立ち去っていき、そこには1人動かなくなったヴィンセントが残っていた。
帰宅したオリヴァーに発見されたヴィンセントは、マギーの勤務先の病院で脳卒中の診断を受ける。その日から、ヴィンセントのリハビリの日々が始まった。オリヴァーとマギー、そして娼婦のダカに励まされ、嫌々ながらも彼らから支援されてリハビリを続けるヴィンセント。こうして彼は一命を取り留め、無事に退院することができた。
その頃、マギーは夫との親権を巡る裁判に出席していた。そこで、ヴィンセントがオリヴァーに対して教え込んだ数々の「大人の遊び」を初めて知ることになるのであった。結果的に共同親権になってしまったマギーは、ヴィンセントへ今後一切オリヴァーを預けないと宣告する。
この一方で、いじめっ子だったロバートと和解したオリヴァーには、「聖人とは何か」という授業で「身近にいる聖人について発表する」という課題が出されていた。
「聖人」の定義
退院したヴィンセントは、サンディの入所している施設から大量の留守電が入っていることに気付く。それは、彼女の訃報を知らせるものだった。ヴィンセントが入院している間の出来事だったという。悲嘆にくれるヴィンセントを気遣うオリヴァー。それに対してヴィンセントは「自分のような人生を歩まず、しっかり生きるように」と伝えるのであった。そして彼は、とうとうオリヴァーに別れを告げる。
その夜、ヴィンセントはサンディとの思い出の品や写真などの一切を全てを捨てることを決意する。彼によって出されたゴミの中から、オリヴァーはヴィンセントがただの飲んだくれではなかったという証拠を見つける。そして、学校の課題である「身近な聖人」の作文で、ヴィンセントについて書くことを決めるのであった。
発表会の当日、ダカはヴィンセントを騙してオリヴァーが課題を発表する会場へと連れてくる。オリヴァーは、ヴィンセントが軍人であった過去を明かし、彼との思い出や、自分に教えてくれたたくさんのことを語る。壇上へ呼ばれたヴィンセントは、聖人の証であるメダルをオリヴァーから贈られ、互いにありがとうと伝え合った。
その後、無事に脳卒中から回復したヴィンセントの家には、ダカと生まれたての赤ん坊、マギー、オリヴァーと、すっかり彼の友達になったロバートが集まっていた。荒み、飲んだくれて過ごしてばかりいたヴィンセントの周りには、いつのまにか沢山の光が差していたのだ。
『ヴィンセントが教えてくれたこと』(St. Vincent)の登場人物・キャラクター
ヴィンセント・マッケンナ(演:ビル・マーレイ)

日本語吹き替え:江原正士
偏屈な性格で人当たりも悪く、周りの人々からは敬遠されている老人。かつてはベトナム戦争に従軍したベトナム帰還兵だったが、最愛の妻であるサンディがアルツハイマー型認知症になってから、借金を重ねて酒とギャンブルに依存する毎日を送っている。
オリヴァーたちが隣家に引っ越してくるまでは、愛猫のフィリックスと買春相手のダカにだけ心を開いていた。最初はマギーに報酬をもらうために嫌々オリヴァーを預かっていたが次第に打ち解けるようになり、マギーに内緒で競馬場やバーに連れまわしたり、兵士時代の経験を基にしていじめっ子を撃退するための武術を教えていた。
所持金がほとんど無いため高級介護施設への料金を滞納し続け、施設側からもっと安い施設へサンディを移動するように迫られる。
マギー・ブロンスタイン(演:メリッサ・マッカーシー)

日本語吹き替え:斉藤貴美子
ヴィンセント宅の隣に引っ越してきた女性。夫のデヴィッドが浮気をしたため離婚準備中で、シングルマザーとして生活費やオリヴァーの学費を稼ぐため夜遅くまで医療技術者の仕事に勤しんでいる。ヴィンセントの人間性に漠然とした不安を持ちながらも、他に頼める人がいないため、1時間12ドルで放課後のオリヴァーのシッターを依頼する。
オリヴァー・ブロンスタイン(演:ジェイデン・リーバハー)

画像奥の少年がオリヴァー
日本語吹き替え:宇山玲加
ブロンスタイン家の1人息子。12歳。周りの子供と比べ、大人びた性格をしている。体力がなく運動が大の苦手で、体育の授業では腹筋ができず、走るとすぐ息切れしてしまうことを理由に、転校早々いじめっ子のロバート・オシンスキー達にいじめられてしまう。
ヴィンセントと話して彼が「悪い人ではない」ということを見抜き、2人で様々な場所へ出かけている内に本来の子供らしさが戻っていき、ヴィンセントにとっても心の支えとなっていった。
訪れた競馬場で馬を勘で選んで3連単を当て、手にした大金をヴィンセントと分け合う。ロバートとは、ヴィンセントから伝授された武術で反撃した後で和解してよい友人となる。母であるマギーの心情はしっかりと理解しつつ、父親にも会いたいと密かに願っている。
ダカ・パリモヴァ(演:ナオミ・ワッツ)

日本語吹き替え:八十川真由野
ストリップ劇場で働くロシア人ストリッパーで、売春婦。売春の常連であるヴィンセントとは親しく、行為後によく劇場まで送ってもらっている。妊婦で客がつかなくなり以前より稼げず、検査費用も持っていないため胎児の性別すらわからない。身重で動きにキレがなくなり、その結果劇場から解雇通告されたことをヴィンセントに明かしている。彼が脳卒中で倒れた後も、友人として献身的にリハビリを支えた。
目次 - Contents
- 『ヴィンセントが教えてくれたこと』(St. Vincent)の概要
- 『ヴィンセントが教えてくれたこと』(St. Vincent)のあらすじ・ストーリー
- 地域のダメオヤジと母子の出会い
- オリヴァーとの友情
- ヴィンセントの危機
- 「聖人」の定義
- 『ヴィンセントが教えてくれたこと』(St. Vincent)の登場人物・キャラクター
- ヴィンセント・マッケンナ(演:ビル・マーレイ)
- マギー・ブロンスタイン(演:メリッサ・マッカーシー)
- オリヴァー・ブロンスタイン(演:ジェイデン・リーバハー)
- ダカ・パリモヴァ(演:ナオミ・ワッツ)
- ブラザー・ジェラティ(演:クリス・オダウド)
- アナ(演:キンバリー・クイン)
- サンディ(演:ドナ・ミッチェル)
- ズッコ(演:テレンス・ハワード)
- ロバート・オシンスキー(演:ダリオ・バロッソ)
- ロジャー(演:レイ・ヤンニチェッリ)
- デヴィッド(演:スコット・アドシット)
- テリー(演:ネイト・コードリー)
- ミッチェル(演:レニー・ヴェニート)
- シャーリー(演:アン・ダウド)
- ガス(演:レグ・E・キャシー)
- リンダ(演:ディードル・オコンネル)
- 『ヴィンセントが教えてくれたこと』(St. Vincent)の用語
- 聖パトリック小学校
- サニーサイド
- 聖人
- 『ヴィンセントが教えてくれたこと』(St. Vincent)の名言・名セリフ/名場面・名シーン
- オリヴァーからヴィンセントへのメダル授与
- エンドロールで歌うヴィンセント
- 『ヴィンセントが教えてくれたこと』(St. Vincent)の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
- 猫のフェリックスへの接し方で示唆されていたヴィンセントの「聖人」ぶり