ハードミステリーの秀作 映画「誘拐の掟」の魅力をご紹介します!
ハードボイルド好きにはたまらない。このタイトル、主人公、内容。全てを取ってみても完璧。完全にタイトルだけでレンタルしたのですが案の定大当たり。ハードボイルド特有のストーリー展開が好きな方は絶対にはまること間違いなし。映画「誘拐の掟」をご紹介致します。
あらすじ・ストーリー
ニューヨーク中が連続誘拐殺人事件におびえていた1999年、元刑事のマット(リーアム・ニーソン)のところにある依頼が舞い込む。それは妻を誘拐された夫からの、犯人を見つけ出してほしいというものだった。マットはこれまでの刑事人生で身に付けた全てのスキルを総動員して誘拐犯の捜索に挑むが、相手もなかなか尻尾を出さず……。
淡々と、粛々と進んでいく
クライマックスはあるけれども分かりやすい山場はありません。全体的に淡々と進んでいく印象。しかしハードボイルドにそれを求めてはいけません。猟奇殺人を追う渋いオッサンのカッコ良さ。哀愁漂うその後ろ姿。どうしてハードボイルド作品に出てくる俳優というのはこうも悲し気な雰囲気を漂わせているのでしょうか。ミステリー作品と銘打ってはいるものの、その要素は前面に出てきません。結局のところ快楽殺人ですからね。意外な犯人というわけではありませんのでミステリー要素を期待している方はご注意を。
全体的にくすんだ色合いが味わいを醸し出しています。導入は回想で、そこから時が一気に進みます。絶対にこれ過去になにかあったでしょうという視聴者の想像を弄びながら場面はくるくると変わっていく。登場人物は基本的に真っ黒かグレーゾーンの人々ばかり。善人がほぼいないのがまた男心をくすぐります。男臭さはハードボイルドの特徴ですね。ラブの要素もほとんどなく、その点ではかなり泥臭い展開を思う存分味わうことが出来ます。
無駄な描写を必要としない秀作
どうやらこの映画には原作があるらしいのですが、残念ながら未読です。小説はミステリー作品とありますがどうなんでしょう、映画を観た限りは純粋なハードボイルド小説に思えましたが。小説を日々好む方は比較的受け入れやすい作品だと思います。無駄な描写が無く、視聴者にある程度の補完を任せてくれますので。しかし1から10まで説明してもらわないと気の済まない人はあまり面白さを感じないかもしれませんね。結局これはどういうことなの、と余韻というか余地を味わう土壌が整っていないわけですから。
人によってかなり好き嫌いの分かれる作品という印象です。実際ネット上の批評を一通り見てみてもその傾向は見て取れます。冗長という意見もあれば、これこそがハードボイルドという意見も。私的にはあまり冗長に感じませんでした。ハードボイルドは内容を楽しむと同時にその空気感を堪能するもので、緩急を巧みに織り交ぜるような作品ではないんですね。中にはそういった作品もありますが、クールで粛々と物語が進んでいく。これこそがハードボイルドの醍醐味です。
まとめ
ハードボイルドはタイトルだけで選んでも大体当たってくれる嬉しいジャンルです。全く関係のない邦訳だとしても、日本語というのはやはりハードボイルドに合っているんだと思います。というよりも漢字が合っているんですかね、雰囲気に。固い印象。まさにその通りの展開。ユニークさも、どんでん返しもありませんが、その代わり濃密な人生の縮図がそこには詰め込まれています。紛うことなき秀作でした。ごちそうさまです!