ポーの一族(萩尾望都)のネタバレ解説・考察まとめ
『ポーの一族』とは、1972年から続くバンパネラ(吸血鬼)の少年・エドガーを主人公とした少女漫画。その耽美さと人間に受け入れられず孤独に過ごさなければならないバンパネラ達の哀愁に、根強いファンがいる。親和性の高い宝塚歌劇団で2018年に舞台化された。エドガーが永遠に歳をとらない少年として各地をさすらい、仲間を失くしながら一人生き延びて行く物語。
ポー(もしくは「一族」)
「村」を形成し、バラを育てて生きているバンパネラの一族。
村長に当たる人物は大老(キング)ポーと呼ばれ、誰よりも長く生きている。
エドガーは大老ポーから直接バンパネラに加えられたので、直系として「血が濃い」と言われている。
そのため弱点などが少ない。
村に迷い込む人間もたまにいるが、数日滞在し、自分の住む場所に戻ると「そんな村は存在しない」と言われ、実際に二度とたどり着けない。
エヴァンズの遺書
エドガーとメリーベルの実の父親、「エヴァンズ伯爵」の母親違いの兄である「オズワルド・オー・エヴァンズ」が残した遺書。
内容は、エヴァンズ家に「エドガーおよびメリーベルと名乗るものが今後現れたら、彼らの身分。国籍・年齢などに関わらず、エヴァンズ家の資産全てを付与すべし」というもの。
子孫であるヘンリー・エヴァンズ伯爵が記憶喪失のエドガーを保護し、この遺書の内容を思い出す。
遺書の効力はすでになかったが、エヴァンズ家の子孫は実際にエドガーとメリーベルに接し、彼らを手厚く保護することとなる。
ランプトン
「ランプトンの絵」のことをこう呼ぶ。
肖像画に描かれている少年はエドガーをモチーフにしたもので、時を超えて「自分はこの少年に出会った」という人間が一同に会し語り合う「ランプトンは語る」という掌編のことも示す。
本来はトーマス・ローレンスが1825年に描いた「ランプトン少年像」という実在の絵画を指す言葉だが、作中ではこのランプトンの少年像の顔のみをエドガーに差し替え、アーサー・トマス・クエントン卿が残した11枚の絵画を便宜的に「ランプトン」と呼んでいる。
11枚ある肖像画のうち、10枚目の「庭先のランプトン」と呼ばれる絵だけが、「花の中のランプトン」と名前を変えて作中で現存している設定となっている。
少女漫画家初の紫綬褒章の受章者「萩尾望都」
福岡県出身。「代表作は「ポーの一族」、「トーマの心臓」、「11人いる!」、「残酷な神が支配する」など。
SFからラブコメ、心理サスペンスと描くジャンルは幅広く、多くのファンを魅了している。
竹宮恵子や大島弓子とともに、「花の24年組」と呼ばれる大ヒット少女漫画家のひとりで、「少女漫画の神様」などと呼ばれることもある。
2012年春に、少女漫画家では初となる紫綬褒章を受賞した。
『ポーの一族』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
推理作家の大家から名前をとった
エドガーとアランの名前は、推理作家である「エドガー・アラン・ポー」からとられている。
その他にもリデルの名前は「不思議の国のアリス」のモデルであるアリス・プレザンス・リデルから来ているのではないかという推測があり、いとうまさひろが書いた『ふしぎの国の「ポーの一族」』では、「不思議の国のアリス」と「ポーの一族」の共通点などを研究している。
香取慎吾がバンパネラを熱演
2016年3月27日にテレビ朝日系「日曜エンタ」枠で放映された「ストレンジャー〜バケモノが事件を暴く〜」では、バンパネラという設定を「ポーの一族からインスパイアされたとして、原案を萩尾望都の名前にしている。
舞台は日本で、主人公のバンパネラを香取慎吾が演じた。
原作でアラン・トワイライトに当たる役どころは女性である中条あやみが演じ、メリーベルの要素も併せ持った。
また、原作をそのまま映像化したのではないため、主人公がバンパネラになった経緯が大きく異なる。
原作では、エドガーがメリーベルを、バンパネラであるポーの一族から守るために、老ハンナに一族の仲間に加わることを約束したが、ドラマ「ストレンジャー〜バケモノが事件を暴く〜」では、香取慎吾演じる三杉晃は、最愛の妻子を亡くし、失意から睡眠薬自殺を測ったところを、中条演じる真里亞というバンパネラの末裔から救われ、バンパネラとなる。
宝塚版「ポーの一族」の洗練されたヴィジュアル
「ポーの一族」は萩尾望都の耽美な作風から、宝塚の舞台化を望む声が昔から一定数あった。
萩尾望都作品は「半神」など実際に演劇に使用されているものも多いが、「ポー」だけはなかなか舞台化されなかった。
しかし2018年1月から3月にかけて、宝塚歌劇団花組にて舞台化が決定。
主演は明日海りおと仙名彩世がつとめた。
脚本と演出は小池修一郎で、小池は「ポーの一族をいつかミュージカル化したい」と夢見て宝塚歌劇団に入団した経歴の持ち主で、1985年から作者である萩尾望都に舞台化申請を出し続けていたが、そのラブコールがようやく受け入れられた形。
宝塚歌劇団は古くは「ベルサイユのばら」、2000年代に入ってからは「るろうに剣心」などのミュージカル化をしており、実写化とも2.5次元化とも言えるこの舞台には多くの不安と期待が寄せられた。
しかしキーヴィジュアルが発表されると同時に、そのあまりの完璧さに、舞台化を反対していた勢力も声を小さくせざるを得なかった。
宝塚花組「ポーの一族」制作発表会
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目次 - Contents
- 『ポーの一族』の概要
- 『ポーの一族』のあらすじ・ストーリー
- 『ポーの一族』の登場人物・キャラクター
- バンパネラ(吸血鬼)
- エドガー・ポーツネル
- メリーベル・ポーツネル
- アラン・トワイライト
- フランク・ポーツネル男爵
- シーラ・ポーツネル男爵夫人
- 老ハンナ・ポー
- 大老(キング)ポー
- エドガーたちと深く交流した人間
- リデラード(リデル)・ソドサ
- エディス・エヴァンズ
- 『ポーの一族』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
- メリーベルに二度と会わないことを決め、別れを告げるエドガー
- 「好きなら好きなほど 愛してれば愛してるほど きみは後悔するんだ 幸福にしてやれないもどかしさに!」
- 「きみはどうする?…くるかい?」「おいでよ……」
- 眠りについたエドガーが今まで出会った人々を思い返すシーン
- 『ポーの一族』の用語
- ポー(もしくは「一族」)
- エヴァンズの遺書
- ランプトン
- 少女漫画家初の紫綬褒章の受章者「萩尾望都」
- 『ポーの一族』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
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