「友情」か「仕事」か…難しい選択を描いた「冴えない彼女の育てかた」
春にアニメが放映された「冴えない彼女の育てかた」ですが、放映分では和気あいあいだったのが、原作では人間関係的に難しい局面に直面しています。クリエイターとしてのステップアップを取るのか、サークルメンバーとしての「和」を取るのか…答えのない問題です。果たしてキャラクターたちはこのような問題に対してどのような選択をしたのか。ネタバレ全開でお送りしますので、原作未読の人はご注意ください。
一応、ゲーム制作は成功したけれど…
「冴えない彼女の育てかた」(作・丸戸史明、イラスト・深崎暮人)の原作を読んでいない人は、ゲーム制作が上手くいったのかどうか気がかりな人もいるのではないでしょうか。
結論からいえば、紆余曲折はありますが完成します。ただ、納期から大幅に遅れてしまったため、冬コミでは少ないロットしか販売できない羽目になりますが、それでも数少ない購入者からは高い評価を得ることになり、ショップでの販売分もあっという間に数千本単位になるほどになります。
こうなると次はこのサークルで何を作るのかということになりますし、主人公の倫也とヒロインの恵はこのサークルで次回作を作りたいと願っていました。でも、原画担当の英梨々とシナリオ担当の詩羽の思いは違っていたのです。
クリエーターとしてのステップアップを取った2人
卒業式の日、詩羽は倫也にコンシューマーゲーム制作に参加するため、英梨々とともにサークルを抜けることを明かします。サークルの存続よりも、自らのクリエーターとしてのステップアップを取ったのです。
何の相談もなしに脱退を決めた2人に対して、恵は怒り、英梨々に絶交を言い渡すのです。
『でも、でも……っ、それは、ちがうんじゃ、ないかなぁ……っ』
『なんか、ぜんぜん、まちがって、ないかなぁ……っ!』
(「冴えない彼女の育てかたGS」220ページより引用)
サークルを「捨てた」英梨々に、恵は泣きながらそう訴えるのです。
答えの出ない問題
現実でも、こういう問題にぶつかったら答えは出ませんよね。あえて答えを出すなら「その人の選んだ道が正解」としか言えない問題です。恵の行動に対して詩羽はこう英梨々に言うのです。
だって、彼女はクリエイターではないから。
だって、彼女は英梨々の親友だから。
だって、彼女はサークル存続を強く願っていたから。
だって、彼女は、多分、彼の、一番の理解者だから……
「理解できなくても納得しなさい。誰がどう考えても、彼女の方が正しいの」
(「冴えない彼女の育てかたGS」223ページより引用)
この言葉が普遍的かどうかは別にして、正解の1つなのかもしれません。
あえて言うならば、英梨々がこの問題に直面するには精神的に幼すぎたのが悲しいところです。
ちなみに「冴えカノ」は現在、8巻まで出ていますが、まだ2人は仲直りしていません。
果たして今後、どうなるのでしょうね……。