ゼイチョー!(漫画・ドラマ)のネタバレ解説・考察まとめ

『ゼイチョー! ~納税課第三収納係~』とは2016年から2017年まで慎結が『BE・LOVE』(講談社)で連載した漫画、およびそれを原作としたドラマ作品。東京都にある架空の市役所、幸野(みゆきの)市役所を舞台に、新人市役所職員である百目鬼華子が、納税課に配属され、徴税吏員として市民と関わっていく中で、税金を払うことができない市民のそれぞれの事情や思いを知り、葛藤しながらも理想の徴税吏員を目指し、成長していく姿を描く。

滞納

税金を納めないこと。

徴税吏員

市役所職員の中でも、税金を取り扱うことを業務としている職員。時には税金を払わない滞納者に対し、財産の調査、差押ができるなどの権限を持つことから、市役所職員の中でも、税金を取り扱う一部の職員に対してのみ与えられる権限を持つ。

臨宅

滞納者に対するアプローチのひとつ。滞納者の自宅に収納係が赴き、税金の納付に向けて相談をしていくことを指す。他にも書面で通知する、電話をするなどがあるが、これらに加え、何度も臨宅をしても滞納者が応じない場合は、強制執行となる。臨宅は、収納係のうち二人がペアとなって行う。

強制執行

市役所が滞納者に対して取る最終手段。滞納分に充てるため、金額に換えられるもので家にある財産を市役所が差し押さえることを言う。生活必需品である寝具以外の寝室にあるものはすべて運び出したり、車も使用できないようチェーンをかけたりする。他にも滞納者の給与や口座を差し押さえる等の処分もある。

『ゼイチョー! ~納税課第三収納係~』の名言・名セリフ/名シーン・名場面

百目鬼華子「私たちは敵じゃない! 頼ってください!!」

第一話「大型新人、現る」にて、生活に困りとうとう友人にも見放され孤独を感じていた同級生の浅川真奈美に拒まれるも、必死に食らいつく華子が言ったセリフ。

かつて自分をいじめていた同級生であり、現在は病気の母を抱え苦しい生活を送っている浅川真名美に対する華子のセリフ。病気の母を抱えていることからバイトのシフトも増やせず、友人から借金もしていたが、とうとうその友人からも着信拒否をされ、誰にも頼れないと思っていた浅川。そんな彼女に、「私たちは敵じゃない! 頼ってください!!」と華子は叫ぶ。市民が困っているときに助けるのが市役所だと教える華子の言葉は、追い詰められていた彼女の心を救うことになった。

百目鬼華子「お金ごときで死を選ぶなんて馬鹿みたい」

第二話「和菓子の味」にて、お金を工面するため自殺を図ったところを華子たちに発見され、一命をとりとめ入院した和菓子屋の社長である福田に対する華子のセリフ。

多額の税金や借金を抱えた和菓子屋の社長である福田が、自殺を図り、自分の生命保険金で滞納分や従業員の退職金に充てようとしたことを知った華子が、福田に対して向けた言葉。何も相談をせず、自分の命を犠牲にし自力で解決しようとした福田に、「お金ごときで死を選ぶなんて馬鹿みたい」と命よりも大事なものはないと伝え、周囲の従業員や自分たちを信頼してほしいと訴える。解決できない困ったときのために自分たちはいる、という華子が続けた「私たちに仕事をさせてください!!」という言葉には、市民のことを第一に考え寄り添うことこそが仕事であるという華子の徴収に対する姿勢が表れている。

百目鬼華子「でもそのご家族の――碧くんと彩ちゃんの顔がちゃんと見えてますか!?」

第三話「子どもの顔」にて、育児を一人で頑張るあまり、子どもたちの表情を見ていなかったことに華子の発言で気づかされる木下。

亡くなった妻との約束を守るため、自分だけで生活を支えようと躍起になり、一人で抱え込もうとするシングルファーザーの木下に問いかけた華子の言葉。会社を早退し、同僚から白い目で見られながらも、保育園から息子である碧と熱を出した娘の彩を引き取り、自宅で仕事をするためひとりパソコンに向かう木下。仕事に追われる木下は、絵本を読んでほしいとせがむ碧の言葉に「我慢しろ」と言い、娘の彩が熱を出しても薬を飲ませるが、病院に連れていくこともできない。二人の子どもたちは泣き出し、木下はただ妻との約束を守りたかっただけなのに、こんなはずじゃなかったと追い詰められていく。しかし、「でもそのご家族の――碧くんと彩ちゃんの顔がちゃんと見えてますか!?」と華子に一喝され、大切なのは、約束を守るため一人で抱え込むのではなく、目の前にいる家族の顔を見ることだと気づく。子どもたちを守るためにはどうすることが最善なのか、考え始めた木下は、時には市役所の制度や妻の両親の手も借りながら、子どもたちと向き合っていくことを決意したのだった。

百目鬼華子「おいしい おいしい!!」

第11話「避けられぬ壁[後編]」にて、7歳の誕生日に強制執行に遭い、無残な形になったケーキを思い出しながら、今は母が目の前で出してくれるケーキの味をかみしめる華子。

母である麻子に過去に受けた強制執行についてどう感じているか問うた華子に、「あのことがあって変われた」と穏やかな笑みを浮かべる母。強制執行があった日は、華子の誕生日で、母はお金がない中で、華子のためにケーキを用意していた。しかし、強制執行の騒ぎの中でケーキはつぶれ落ち、無残な姿となり、華子は食べることがかなわなかった。だが、今は幸せそうに微笑む母の麻子からケーキを振舞われ、「おいしい おいしい!!」と言いながら食べることができる。あの日食べられなかったケーキを今は食べることができるという、あのときは辛かった経験も幸せな今につながっているということをかみしめる華子の表情に心動かされるだろう。

饗庭蒼一郎「俺弱くてよかったのかもなー 自分にあった場所を見つけたんだから」 「沖矢 きみの場所もきっとある 時間がかかっても きっと見つかるから」

第16話「相棒の条件[後編]」にて、アルコール依存症になってしまった後輩の沖矢の自宅前で、今の仕事に対する思いを話す饗庭。

国家公務員のキャリアの出世競争から追われた自分を責め続け、現実の自分を受けいれられずアルコール依存症になった後輩の沖矢に向けた饗庭の言葉。饗庭自身も強くあろうとしすぎて、自分を追い詰め、結果国家公務員を辞め、現在の市役所職員となるに至っている。強くあろうとすることも成長のためには悪いことではないが、「俺弱くてよかったのかもなー 自分にあった場所を見つけたんだから」と話す饗庭は、自分を追い詰めない弱さも大切だということを身をもって知っている。そんな彼の言葉だからこそ、沖矢にもそして読者に対してもこの言葉の重みが伝わる。そして、 「沖矢 きみの場所もきっとある 時間がかかっても きっと見つかるから」という饗庭のあたたかい言葉に、とうとう沖矢は、酒をやめたくてもやめられない自分の状況について吐露するのだった。

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