ゼイチョー!(漫画・ドラマ)のネタバレ解説・考察まとめ

『ゼイチョー! ~納税課第三収納係~』とは2016年から2017年まで慎結が『BE・LOVE』(講談社)で連載した漫画、およびそれを原作としたドラマ作品。東京都にある架空の市役所、幸野(みゆきの)市役所を舞台に、新人市役所職員である百目鬼華子が、納税課に配属され、徴税吏員として市民と関わっていく中で、税金を払うことができない市民のそれぞれの事情や思いを知り、葛藤しながらも理想の徴税吏員を目指し、成長していく姿を描く。

『ゼイチョー! ~納税課第三収納係~』の概要

『ゼイチョー! ~納税課第三収納係~』とは2016年2月から2017年3月まで慎結が『BE・LOVE』2016年4号から2017年6号で連載した漫画、およびそれを原作としたドラマ作品である。単行本全4巻、全20話。2023年10月から12月にかけて日本テレビ系列土曜ドラマ枠で、ドラマ『ゼイチョー「払えない」にはワケがある』がSexy Zoneの菊池風磨主演で放送された。ドラマ化を記念し、2023年11月から2024年2月には、物語当初から3年が経過した世界を描いた「特別番外編」が同じく『BE・LOVE』で短期集中連載された。
東京都幸野(みゆきの)市役所の納税課に配属された百目鬼華子(どうめきはなこ)は美人で優秀だが、「公務員なめないでくださいね」と窓口で市民に言い放ってしまうなど問題発言もある大型新人。先輩職員の饗庭蒼一郎(あいばそういちろう)とペアを組み、期限を過ぎても税金を払わない市民の自宅を訪問する仕事を行っている。市民ひとりひとりが抱える、税金を払うことができない理由。それをを知った華子は、自分は税金を取り立てる敵ではなく、個々の市民の事情に寄り添う味方になりたいと、日々奮闘する。真正面から市民に向き合う徴税吏員(ちょうぜいりいん)を目指し、華子が成長していく姿を描く。華子は自身の家族もまた税金を払えず、財産を差し押さえられてしまう強制執行にあった過去を持ち、今の自分が置かれた立場に悩んでいくが、先輩職員の饗庭や同じ納税課の収納係の仲間の姿から、一個人としてではなく、一徴税吏員として公明正大に滞納者と関わるようになっていく。

『ゼイチョー! ~納税課第三収納係~』のあらすじ・ストーリー

収納係に現れた大型新人

幸野市役所の納税課に配属された新人職員の百目鬼華子(どうめきはなこ)は徴税吏員で、クール美人の外見とは裏腹に、窓口で文句を言う市民の目の前でボールペンを突き立てるなど、突飛な行動をする大型新人。税金を納めるための納付書を窓口で作成したり、税金を払わない市民の自宅に訪問し、納付をしてもらうよう働きかける臨宅を行っている。華子は先輩職員の饗庭蒼一郎(あいばそういちろう)と組み、日々市民宅を訪問する。

華子が担当した最初の臨宅の対象者は、華子の同級生だった浅川真奈美(あさかわまなみ)。真奈美は学生の頃、華子をいじめていたが、現在は病気の母とアパートに住み、コンビニのバイトで生計を立てていた。看病とバイトに追われる生活の中、母さえいなければと思うまで追い詰められてしまう。しかし、税金を払うように自分のところに催促に来たと思っていた華子が確定申告のやり方を教え、逆に納めていた税金が還付され、戻ってくることを知る。感謝する真奈美に、華子は税金の前には誰でも公平であると告げ、私情にはとらわれない仕事をする。

税金を払えない理由は人の数だけ存在する。華子はそれぞれの事情を汲み、大変なときに頼ってもらうのが自分たちの仕事だと言い、滞納者に寄り添い、助けとなっていく。それぞれぎりぎりのところまで自分を追い詰めていたが、華子によって助けられた滞納者は、皆ほっとして涙を流した。

そんな中、幸野市役所に新しく、財務省から出向した副市長が就任することとなる。副市長の相楽義実(さがらよしみ)は、華子を下の名前で呼び、市役所の面々をざわつかせるが、彼は華子の異母兄であった。また、同時に饗庭が財務省にいた頃の同期だったと判明し、饗庭が元は国家公務員だったことが明らかになる。

華子の初めての挫折、強制執行

徴税吏員の仕事にも慣れてきた華子が所属する収納第三係のもとに、他の収納係が行う強制執行のサポートをするように声がかかる。強制執行は、納期限を過ぎても税金を納めず、催促の手紙や電話、臨宅を行っても何度も無視を続け、払わなかった滞納者に対する最終手段であり、滞納者が持っている家財を強制的に市役所が差し押さえるというもの。所有者の意に添わず、家宅捜索をするその行為は、新人職員にとっては、ただでさえ精神的に負担が大きいことに加え、華子は幼少期シングルマザーの母が滞納していたために強制執行をされたという過去を持っていた。徴税吏員である自分の立場である以上、避けては通れないと自他ともに言い聞かせる華子であったが、いざ強制執行の場に立ち会ったとき、滞納者の子である少年から拒絶を受け、立ち尽くしてしまう。

結局初めての強制執行に最後まで立ち会えなかった華子は、同じ係のメンバーに心配され、休むように言い渡される。華子は自分の母を訪ねようと思い立つ。華子の母は現在は再婚し、苗字も変わり幸せそうだ。過去に受けた強制執行についてどう思っているか尋ねる華子に母は、強制執行は確かにつらかったが、そのときに納税課にいた女性職員にいろいろ教えてもらい、ずいぶん助けてもらったことを話した。華子はそのときの女性職員の羽生(はにゅう)に憧れて公務員になり、納税課の希望を出したのだった。羽生のようになりたかったが、強制執行のときに何もできなかったと落ち込む華子。市役所に入って3か月なのだからまだまだこれからだと励ます母の言葉や、華子なりのやり方で頑張ればいいと諭した係長の言葉に、華子は自分を取り戻したのだった。

相棒であること、華子と饗庭の過去

饗庭とのペアも馴染んできた華子。そんな二人の次の訪問先の滞納者沖矢(おきや)は、饗庭の財務省時代の後輩だった。国家公務員の仕事に疲弊した沖矢は、辞職後アルコール依存症になり、税金を滞納してしまっていた。現在の沖矢の姿に、もっと早く接触をすべきだったと饗庭は自分の判断の過ちを激しく後悔する。普段の飄々とした雰囲気からは想像もできないほど落ち込む饗庭に拒絶される華子。華子は担当である自分と饗庭のバディでしっかり向き合うことこそが、沖矢を救うのだと諭す。華子の懸命な訴えと、同僚の原田(はらだ)の言葉に、自分にも沖矢にできることがあると思い出す饗庭。泣きながら「立ち直りたい」とこぼした沖矢に、饗庭は市役所で待っていると告げた。

強制執行を乗り越え、成長する華子と前に進み始める饗庭

饗庭と華子が次なる臨宅に向かった先は、武谷悠(たけたにゆう)。彼はあらゆる税金を滞納していた。彼は武谷建設という会社の社長の息子であった。二人が臨宅から帰ってすぐ、幸野市の市議会議員が、副市長である相楽に圧力をかけ、得意先の子息から税金を徴収することのないよう言って去っていく。華子と饗庭は、副市長に呼び出され、武谷は保留にし、他をあたるように指示する。就任後、市の徴収強化体制を敷いた副市長の行動と矛盾する発言に、華子は反発する。

市の有力者である武谷に踏み込んだことで、納税課は市役所内で武谷建設の関わる部署から白い目で見られるようになる。華子は武谷も他の市民も何も変わりはないと考え、何度も武谷の自宅に足を運ぶが、一向に武谷の態度は変わらない。市民として武谷と話し合えないか考えていた華子だったが、滞納者たちの辛く苦しい思いを何とも思っていない武谷の発言に、華子はとうとう強制執行を行うことを決意する。

武谷に対する強制執行の日、最初は余裕の表情を見せていた武谷だったが、収納係の大人数が一斉に動き、次第に青ざめていく。華子に対しグラスを投げつける武谷の前に、とっさにかばうように間に入る饗庭。公務執行妨害で取り押さえられる武谷に対してもなお、話をしようとする姿勢を崩さない華子。華子は自分が幸野市役所の職員で武谷が幸野市の市民だから力になりたいと言う。華子の真摯な姿勢に初めて武谷は泣き崩れたのだった。

強制執行に協力してくれた副市長の相楽のもとに訪れた華子は、協力に対する礼と最初に反発してしまったことへの詫びを口にする。そんな妹に対し、過去に異母兄妹として一緒に過ごした後に、兄妹の父と華子の母が離婚し、父が華子の母に慰謝料や養育費を払わなかったことで苦しい生活をさせてしまい、申し訳なかったと吐露する相楽。父の葬儀に出ることを拒絶された華子は、兄である相楽がそんなふうに思っていたことを驚く。相楽は父の葬儀に出ることで、華子が相楽の親類縁者にひどい言葉を投げつけられるのではないかと懸念し、華子を遠ざけていたのだった。兄として妹である自分を守ってくれていたことを知り、兄との長年のわだかまりがとけた華子は、兄の相楽に穏やかな笑みを浮かべて見せた。

納税課の収納係では、饗庭が昇任試験を受ける話題が持ち上がる。饗庭は以前は役職に興味を持っていなかったが、華子の諦めない姿を見て、華子と一緒ならもっと市民のためにできることがあるのではないかと思うようになり、そのために役職者を目指すようになったのだと話す。滞納処分される側を経験し、市民の生活に寄り添うことができる華子だからこそ、納税課の上に立つべきだと伝える饗庭。華子は役職者にしかできないこともあるが、まだまだ自分は現場で学ぶことがあると言い、自分がそうしてもらったように市民が税金で泣くことのないようにそばで支えたいと力強く応えたのだった。

『ゼイチョー! ~納税課第三収納係~』の登場人物・キャラクター

主要人物

百目鬼華子(どうめきはなこ/演:山田杏奈)

幸野市役所納税課第三収納係に配属された新人職員。クールな美人だが、税金について不平を言う市民の目の前でカウンターにボールペンを突き立てたり、お金が床に落ちた音で金額がわかったり、投げつけられた現金を急いでなりふり構わず拾いに外まで走ったりと、予測不能な行動が多い。7歳のときにシングルマザーであった母が強制執行に遭った過去を持つが、その際に親切に接してくれた羽生という女性職員に憧れ、納税課の職員を志した。

饗庭蒼一郎(あいばそういちろう/演:菊池風磨)

華子とペアを組む先輩職員。顔の良さと軽い脱力系のノリで市役所内の女性職員から人気を集めているが、華子には通じず、彼女をおもしろいと感じている。相楽とは財務省にいた頃の同期であったが、激務に耐えかねて財務省を去っている。最初は華子の母が強制執行に遭った過去を知ったうえでどこまで華子が頑張れるかを見ていただけのつもりだったが、いざというときには助言をしたり、めげずに突き進む華子の姿に彼自身も影響されていく。

幸野市役所納税課第三収納係

係長(演:光石研)

第三係のお父さん的存在。いつも穏やかな表情で第三係を見守る。部長や課長から武谷に対する臨宅について妨害があった際も、「きみたちはいつも通り仕事をしてくれればいいから」と華子と饗庭に伝える部下思いの一面がある。15~20年前に第三係の職員を経験しており、華子の家の家宅捜索時にも立ち会っており、華子を泣かせてしまったことを後悔していた。初めての強制執行で落ち込んだ華子の背中を押す。

原田宰(はらだつかさ)

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