杖と剣のウィストリア(漫画・アニメ・小説)のネタバレ解説・考察まとめ
『杖と剣のウィストリア』とは、大森藤ノが原作を手がけ、青井聖が作画を担当する漫画、およびそれを原作としたアニメや小説作品である。2021年1月号から『別冊少年マガジン』にて連載が開始され、2024年7月からはTBS系列でアニメが放送された。物語の舞台は、空を奪われた魔法絶対至上主義の世界で、魔法学院では最強の魔法使いを育成する教育が行われている魔法を使えない落ちこぼれのウィル・セルフォルトが、「至高の五杖(マギア・ウェンデ)」になる夢を追い続け、魔法世界の常識を覆していく姿を描く冒険譚だ。
『杖と剣のウィストリア』の概要
『杖と剣のウィストリア』とは、大森藤ノが原作を手がけ、青井聖が作画を担当する漫画、およびそれを原作としたアニメや小説作品である。2021年1月号から『別冊少年マガジン』にて連載が開始され、2024年7月からはTBS系列でアニメが放送された。青井聖の初連載作品である。アニメ版では、監督を𠮷原達矢が務め、アニメーション制作はアクタスとバンダイナムコピクチャーズが共同で行っている。
舞台は、天上からの侵略者により空を奪われた「魔法絶対至上主義」の世界だ。この世界では「本物の空」を取り戻すため、最強の魔法使いを育成する魔法学院が存在する。しかし、主人公のウィル・セルフォルトは魔法を使えない落ちこぼれの生徒でありながら、最強の魔法使いである「至高の五杖(マギア・ウェンデ)」になる夢を諦めていない。物語は、ウィルが魔法が使えないという弱点を抱えながらも、剣術と知恵を駆使して試練に立ち向かい、魔法世界の常識を覆していく冒険譚だ。彼は魔法世界で唯一の「戦士」として活躍し、仲間とともに数々の試練を乗り越え、成長していく。緻密に描かれた世界観、個性豊かなキャラクター、そして魔法と剣が交錯する迫力あるバトルシーンがこの作品の大きな魅力である。主人公ウィル・セルフォルト役は天崎滉平、幼馴染であるエルファリア・アルヴィス・セルフォルト役は関根明良が担当している。連載当初に松岡禎丞がウィルの声を担当したPVが公開されたことでも注目を集めた。さらに、2024年7月には前日譚『杖と剣のウィストリア グリモアクタ -始まりの涙-』がGA文庫から刊行され、物語の世界観がさらに広がっている。
『杖と剣のウィストリア』のあらすじ・ストーリー
空を奪われた世界
舞台は「天上の侵略者」によって空を奪われた魔法至上主義世界。人々は「至高の五杖(マギア・ウェンデ)」によって一時的に侵略者を退けられた。しかし、本物の空は依然として奪われたままである。人々は「偽りの空」の下で暮らしている。この状況を打破すべく、人々は新たな魔法使いを育成し、再び空を取り戻すことを目指していた。
リガーデン魔法学院の落ちこぼれ、ウィル・セルフォルト
リガーデン魔法学院の6年生ウィル・セルフォルトは、筆記のみの優等生である。彼は初歩的な魔法すら使えず、学院の落ちこぼれと見下されている存在だ。幼なじみのエルファリア・アルヴィス・セルフォルトとの約束を果たすため、魔導士として最強の称号である「至高の五杖(マギア・ウェンデ)」目指しているが、その道ははてしなく遠い。ある日、ウィルはいつものようにダンジョンでモンスターを倒し、単位を稼いでいた。そんな中、自分を見下す同級生シオン・アルスターたちが、本来低層階にいるはずのない強敵に襲われている場面に遭遇する。シオンの魔法は全く通用せず、彼らは窮地に立たされていた。ウィルは即座に戦況を分析し、モンスターの弱点を見抜いた。彼は魔法が使えないため、豊富な知識と過去の経験に基づいて行動する。相手の動きを冷静に観察し、その隙を突いて巧みにモンスターの動きを封じながら確実に攻撃を重ねていく。最終的には、モンスターの防御が緩んだ瞬間を狙い、仕留めることに成功した。
学院内では、優等生のシオンが強敵を倒した話題で盛り上がっていた。しかし、実際に討伐したのはウィルであることを知っているのは、シオンと一部の教師たちだけだった。その事実を知っていても、教師のエドワルド・セルフェンスは、魔法が一切使えないウィルの存在を認めようとしない。かつてエドワルドは「至高の五杖(マギア・ヴェンデ)」に限りなく近づき、闇蛇アンジャと呼ばれ恐れられた魔導士である。そんな彼が、ウィルに対して特別な課題を課すこととなる。その課題とは、エドワルドとの模擬戦で一撃を与えることだった。突然の試練に、丸腰のウィルは何もできずに逃げ回るしかなかった。ウィルは剣さえあればと呟く。それに気付いたのは、彼の使い魔であるキキだった。キキは、ウィルの行動を見守り、迷宮に潜る際や危険な場面で彼を監視するために側にいる存在だ。忠実で賢明なキキは、すぐに剣を取りに行こうとするが、その途中で傷を負ってしまう。ウィルの同級生で、彼にとって初期の段階では唯一の友人であったコレット・ロワールがその様子を見つけ、異変を感じ取ったコレットが急いで剣をウィルに届けることに成功する。そのおかげで、ウィルはついにエドワルドに一撃を入れることができたのだ。
氷姫エルファリアの勅令
学院全体に、深窓の氷姫エルファリア・アルヴィス・セルフォルトから「フロスト・ウォーカーの氷核を採取せよ」という勅令が下された。エルファリア・アルヴィス・セルフォルトはウィルの幼馴染であり、わずか15歳で「至高の五杖(マギア・ヴェンデ)」に選ばれた天才魔法使いだ。彼女は氷と水の魔法を得意とし、学院では「深窓の氷姫」として知られている。ウィルは、この依頼が幼馴染からのものだと知り、何としても達成しようと決意を固める。彼はルームメイトである魔工師ロスティ・ナウマンが作成したマジックアイテムを手にし、討伐に向かうことにした。ダンジョン内でアイリス・X・ステラマリスと出会い、共に進むことになるウィル。彼女は「発掘機関(ウォッチャー)」に所属し、学院では「アイリス・チャーチル」という偽名を使って身分を隠していたが、ウィルの独自の戦術に感銘を受けていた。
彼は「探知サーチ」の魔法を使用せず、知識と経験を駆使して「大物」の気配を感じ取り、フロスト・ウォーカーの位置を特定する。以前にフロスト・ウォーカーと戦った経験があるウィルは、その弱点を熟知しており、ロスティが作ったマジックアイテムを巧みに使い、フロスト・ウォーカーの身体に炎を通すワイヤーを巻き付け、一気に熱攻撃を仕掛ける作戦を実行する。そして、フロスト・ウォーカーの氷核採取に成功し、幼馴染の依頼を達成するのだった。魔法を使わずに、知識と経験に基づいた戦い方をするウィルの姿に、彼と共に進んでいたアイリスも驚きを隠せなかった。
魔導大祭への出場
ウィルの友人コレット・ロワールやシオンは実技試験に軽々と合格した。そして学年トップ3であるリアーナ・オーウェンザウス、イグノール・リンドール、ユリウス・レインバーグにいたってはすでに1万を超える単位を取得していた。一方のウィルは卒業に必要な単位数すら満たしておらず、塔からスカウトが押しかける魔導大祭では魔法の使えないウィルには活躍も見込めない。そんな大祭を控えたある日、ウィルがアルバイトをするドワーフ族ジーナの居酒屋に、ユリウスがやってくる。そこでドワーフ達を軽視するユリウスにウィルは怒りを示し、ユリウスの子分達を一蹴することになる。ウィルはドワーフたちの名誉を賭け、ユリウスと戦う決意をし、コレットとシオンとともに小隊を組んで魔導大祭へ出場する。大祭当日、エルフが魔法で作り出す5つのフィールドを舞台に、3人1組で祭壇の王冠を奪い合う競技「奪冠クラウン・アタック」で勝負することになる。ウィルはコレットの魔法に自身の驚異的な力をかけ合わせて順調に進んでいく様子に会場は騒然。一方、コレットに頼まれて渋々ウィルのチームに加わったシオンは、ダンジョンでウィルに助けられた屈辱を抱え込んでいた。大勢の観衆の前で、突然チームメイトのウィルに攻撃をしかけたシオン。ウィルに抱いていた複雑な思いが競技中に爆発してしまったのだ。目標に向かってひたすら突き進むウィルの視界に、自分は入っていない。その悔しさを魔法に込めるシオンを見て、ウィルは初めてシオンの想いに気づくのだ。ウィルの小隊が競技に復帰した頃、ユリウスのチームは王冠まであと一歩のところにいた。ユリウスが得意とする氷結魔法の包囲網に囲まれたウィル。5人に分身するユリウスの技は、稀代の天才魔導士エルファリアが編み出した12の氷魔法のひとつ「白の芸術アルスワイス」。攻撃や爆発も自在に行う分身術に静まり返る会場。エルファリアの後継者にふさわしいのはユリウスだと誰もが思った瞬間、冷静さを取り戻したウィルがユリウスの分身を剣で砕く。誰よりもエルファリアの魔法を熟知しているウィルの反撃が始まる。幼い頃に幼馴染にこの魔法でいじめられたことを思い出し、完全な魔法ではないことを見破りユリウスを倒す。
しかし、ユリウスとの勝負に集中していたため、その隙にイグノールがあっさりと競技の優勝を持っていってしまうのである。
総合実習とイヴィル・グランドデュークとの最終決戦
ウィルはユリウスを倒したことで一躍注目の存在となり、来たる総合実習のチームへの誘いも殺到している。焦ったコレットはウィルとのデートを取り付けるが、待ち合わせ場所にはウィルのルームメイトであるロスティも現れた。ウィルを巡ってコレットとロスティの争いが勃発している最中、ウィルは街中でリアーナに声をかけられる。誘われるままについていくと、そこにはシオン、ユリウス、イグノールという錚々たる顔ぶれが揃っていた。
リアーナ、イグノール、ユリウス、シオン、そしてウィル。コレットも追随し、総合実習が始まる。普段は行けない7層以下で高単位のモンスターを倒す、危険なサバイバル実習である。リアーナたちの能力が高すぎるあまり、ウィルはお荷物となっていたが、それでもくじけずに自分ができることを探している。目標の敵「赫灼のナベルス」を探し求め、10層にたどり着いたウィルたちだったが、そこでは大量のモンスターが死骸となっていた。さらにはナベルスも屍となっていた。
謎の巨大モンスターによって10層から11層に落とされてしまったウィルたち。ここから先は学院の管理外であり、「塔」の領域の危険地帯である。11層でウィルと2人きりになったイグノールは、自分はエルフの落ちこぼれだと語り始めた。「至高の五杖(マギア・ヴェンデ)」のひとり、エルノール・リヨス・アールヴはイグノールの乳兄妹である。親しい者のために「至高の五杖(マギア・ヴェンデ)」を目指すイグノールに、ウィルは自分の姿を重ねる。その頃、コレットとリアーナの前に闇の魔力をまとった2人組の魔導士が現れる。コレット達を消し去ろうと魔法を放つが、間一髪のところでウィルたちは2人と合流する。
謎の魔導士たちが召喚する、10層の床を破壊した怪物イヴィル・グランドデューク。さらに無数のモンスターに包囲されるという絶体絶命の状況である。それでもウィルは告げた。「戦おう」と。彼を信じて全員で魔法攻撃を仕掛けるが、イヴィル・グランドデュークにはまだ及ばない。恐怖と戦いながらも立ち上がったウィルは、勇気を出して敵に向かい駆け出す。コレットの魔力から生み出された巨剣を振り下ろし、イヴィル・グランドデュークの翼を叩き斬るウィルであるが、決定打にはならなかった。
「杖」と「剣」に導かれるまま、ウィルはシオンの火炎魔法を剣に取り込み、「炎貴の魔剣イグニス・ウィース」と唱えてグランドデュークを一刀両断する。駆け付けた「至高の五杖(マギア・ヴェンデ)」光皇の杖、マステリアス・ノア、アロン・マステリアス・オールドキングの遠征隊に助けられ、ウィルたちはダンジョンから脱出する。学院に戻っても、魔剣を手にしたときの感覚とアロンの傍らにいた少年・フィンのことが忘れられないウィルである。激闘を繰り広げた者たちにしばしの休息が与えられる中、学院最後の卒業試験が始まろうとしている。
『杖と剣のウィストリア』の登場人物・キャラクター
主要人物
ウィル・セルフォルト
CV:天崎 滉平(幼少期:日向 未南)
ウィル・セルフォルトは、魔法学院の六年生でありながら、魔法を使えない「無能者」と呼ばれる少年である。しかし、彼はその欠点を補うかのように、超人的な身体能力を持ち、「剣」を駆使する戦士として活躍している。種族はリザンスで、幼い頃に捨て子として孤児院で育った背景を持つ。ウィルは、幼馴染のエルファリアとの約束である「塔の頂での再会」を果たすため、魔法学院に通い続けるが、魔法が使えないことで学院内では孤立しがちだ。彼が操る唯一無二の力「魔剣(ウィース)」は、剣に魔法を宿らせる特殊な魔法であり、他者の魔法を剣で受け取り、それを自分のものとして使うことができる。また、戦闘中に一度だけ発動した「白銀解放(リミット・オフ)」では、白銀の髪とともに雷速で動き、驚異的な身体能力を発揮する。これにより、ウィルは「第五源素」や「始源の鍵」などの伝説に関連する存在として注目されるようになる。境界祭での襲撃事件では、ウィルが剣の魔法を駆使し、都を壊滅の危機から救った。その功績により、ついに彼は塔に登ることを許され、さらなる試練に挑むことになる。塔では氷の派閥に所属する予定だったが、最終的には雷の派閥を率いるゼオのもとで活動することになる。
エルファリア・アルヴィス・セルフォルト
CV:関根 明良
エルファリア・アルヴィス・セルフォルトは本作のヒロインで、ウィルの幼馴染である。愛称はエルフィ。彼女もウィルと同様にリザンスという種族で、幼い頃から同じ孤児院で育った。15歳という若さで「至高の五杖(マギア・ヴェンデ)」の1人に選ばれた天才魔法使いであり、特に氷と水の魔法において卓越した才能を発揮する。「氷姫の杖(アルヴィス・ヴィーナ)」と称され、魔法学院内では「深窓の氷姫」として知られている。彼女の最大の武器は、自らが創造した「十二の氷秘法(エル・グラス・フロース)」であり、その中でも特に一の法「白の芸術(アルスワイス)」を使って多数の分身体を作り、敵を圧倒する。その技術により、分身体が詠唱を継続する「継承詠唱」が可能であり、戦闘中でも中断なく長文詠唱を行使することができる。学院ではその天才的な能力と美貌から「聖女」と崇められているが、内面ではウィルへの一途な思いと、怠惰な生活を送る一面を持つ。「聖女の皮をかぶった不真面目至高の五杖」と呼ばれるほど、二度寝や三度寝、果てには服を着ることさえ面倒と感じることがある。それでも魔法に関しては一切の妥協がなく、幼少期にウィルの魔法に助けられたことで彼の実力を知っており、塔の上から常に彼を見守っている。
リガーデン魔法学院
コレット・ロワール
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目次 - Contents
- 『杖と剣のウィストリア』の概要
- 『杖と剣のウィストリア』のあらすじ・ストーリー
- 空を奪われた世界
- リガーデン魔法学院の落ちこぼれ、ウィル・セルフォルト
- 氷姫エルファリアの勅令
- 魔導大祭への出場
- 総合実習とイヴィル・グランドデュークとの最終決戦
- 『杖と剣のウィストリア』の登場人物・キャラクター
- 主要人物
- ウィル・セルフォルト
- エルファリア・アルヴィス・セルフォルト
- リガーデン魔法学院
- コレット・ロワール
- シオン・アルスター
- ユリウス・レインバーグ
- リアーナ・オーウェンザウス
- イグノール・リンドール
- アイリス・X・ステラマリス
- キキ
- ゴードン・バレー
- リリール・マース
- ルナイス・アレート
- ジョルア・モレーン
- ロスティ・ナウマン
- ロゼ・プレナント
- エマ・クレバー
- ワークナー・ノーグラム
- エドワルド・セルフェンス
- エリザ・ノスフェラート
- コルドロン・アヌーブ
- 魔法使いの塔(メルセデス・カウリス)
- クレイルウィ・セラ
- キャリオット・インスティア・ワイズマン
- ゼオ・トルゼウス・ラインボルト
- エルノール・エルリーフ(リヨス)・アールヴ
- アロン・マステリアス・オールドキング
- ログウェル
- フィン
- クロイツ・ハーロン
- サリサ・アルフェルト
- フィルヴィス・シャリア
- レフィーヤ・ウィリディス
- ロッジ・ホランド
- 魔導の央都の住人
- ドナン
- ジーナ
- 破滅の書(ゴーティア)
- マルゼ
- 首無し
- シェイド
- 『杖と剣のウィストリア』の用語
- 種族
- リザンス
- カーバンクル
- ドワーフ
- エルフ
- 組織
- 魔導士(メイジ)
- 至高の五杖(マギア・ヴェンデ)
- 天上の侵略者
- 破滅の書(ゴーティア)
- 世界
- 魔法使いの塔(メルキセデス・カウリス)
- リガーデン魔法学院
- その他
- 魔導大祭
- 総合実習
- 『杖と剣のウィストリア』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
- ウィル・セルフォルト「僕だってやればできるんだ…!魔法が使えなくたって…!!」
- エルファリア・アルヴィス・セルフォルト「私、知ってるよ」「ウィルは優しくて、誰よりも『勇気』があるんだって」
- ウィル・セルフォルト「『決して諦めない事』、それは魔法の力にも勝る」「僕の大好きな言葉」
- 『杖と剣のウィストリア』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
- 『杖と剣のウィストリア』誕生のきっかけは難航した前企画の取りやめ
- 青井聖とのタッグは大森藤ノの一目惚れ
- アニメ制作チームと原作者の建設的な意見交換で進化する作品
- 『杖と剣のウィストリア』の主題歌・挿入歌
- OP(オープニング):PENGUIN RESEARCH「Fire and Fear」
- ED(エンディング):TRUE「フローズン」