流行り神 警視庁怪異事件ファイル(ゲーム)のネタバレ解説・考察まとめ

『流行り神 警視庁怪異事件ファイル』とは、2004年に日本一ソフトウェアより発売されたプレイステーション2用のホラーテキストアドベンチャーゲーム。
主人公は警視庁の警察史編纂室に所属する警部補として、「コックリさん」や「チェーンメール」など、都市伝説を題材にした怪事件を解決していく。
タイトルの『流行り神』は、「一過性の流行の中で崇拝される神仏や偶像」を意味している。

『流行り神 警視庁怪異事件ファイル』の概要

『流行り神 警視庁怪異事件ファイル』は、2004年に日本一ソフトウェアより発売されたプレイステーション2用のホラーテキストアドベンチャーゲーム。
初回限定盤には本編とは関連のないエピソードを収録したドラマCD『怪異事件ファイル』が付属していた。
2005年には本作に改良を加えた廉価版の『流行り神Revenge 警視庁怪異事件ファイル』がプレイステーション2向けに発売。
2023年にはプレイステーション4、プレイステーション5、Nintendo Switch用パッケージソフト『流行り神 1・2・3パック』がリリースされるなど、今作以降シリーズとして多くの商品がリリースされている。
このほか、2006年より公式サイトで異なる2種の結末を盛り込んだ『流行り神 the Movie』の全8話が順次配信され、この全話を収めた『流行り神 the Movie 恐怖DVD』が『流行り神2』に同梱された。

都市伝説が土台になった不可解な事件を捜査し、解決へ導いていくのが全シナリオの基本的な流れで、分岐によって「科学的」もしくは「オカルト的解釈」へその後のシナリオの方針が決まっていく。
プレイ中に登場する専門用語などは「F.O.A.Fデータベース」という辞書に順次登録されていき、収集できるワードも科学ルート、オカルトルートで異なる。
このデータベースの収集率は隠しシナリオの解放条件にも関わっており、特定の分岐を辿らなければ手に入らないものも存在している。
分岐をどの程度回収したかはシナリオ毎に「既読率」で表示され、回収漏れの有無はここで判断できるようになっている。
プレイ中には要所で「セルフ・クエスチョン(自問自答)」があり、ここでの推理がシナリオの方向性を決定づける重大な要素になっているほか、シナリオ終盤では人物相関図に最適なワードを当てはめていく「推理ロジック」での総括があり、これらは終了時の評価(ランク)に大きく関わる。

実際には存在しないとされる警視庁の地下5階。そこには常識では考えられない不可解な事件を記録した、膨大なファイルが収められている警察史編纂室という一室があった。
主人公はその警察史編纂室に所属する若手警部補として、科学とオカルト、両方からの視点で怪事件に対峙する。

『流行り神 警視庁怪異事件ファイル』のあらすじ・ストーリー

序章

コンクリートに囲まれた薄暗い部屋の中で目を覚ました男は、自らに関わる記憶の一切を失っていた。
室内にはどこからともなく謎の人物の声が響いてくる。
「F.O.A.F(フレンド・オブ・ア・フレンド)という言葉を知っているかね?」
更に声は行方不明になった刑事・風海純也について語り、最後にこう続ける。
「これは、私の友人の友人から聞いた話なのだが―。」

第零話「チェーンメール」

警視庁地下5階、警察史編纂室に所属している警部補・風海純也の携帯電話に、「今話題になっている、連続殺人事件の犯人を目撃した」という旨の、差出人不明のメールが届く。
「メールで詳しいことは言えないが、何とか犯人を止めたい」と綴られたそれは、協力してくれるなら電話番号を返信し、直接の協力が難しいのであれば3日以内に10名にこのメールを転送してほしい、という形で締めくくられていた。

そのメールに電話番号を返信すると、送り主から電話があり、犯人は、「はっとりえりさ」という人物であると告げられる。
その名前を調べたところ、その名前が人気アイドル・川原ミユキのものと同じだと判明する。
風海は送り主と直接会う約束を取りつけ、この川原ミユキの大ファンだという部下の小暮刑事を伴い、詳しい話を聞きに行くことにした。

待ち合わせ場所に現れたのは、メイクアップアーティストの女性・林奈緒だった。川原ミユキとは、彼女が新人アイドルだった当時から親交があるという。
とある心霊番組に出演してから豹変した川原を心配していたが、ある日彼女が犠牲者を手にかける現場を目撃したという旨を、両目を押さえながら語る林。
その後、殺害現場だと案内された廃ビルには、黒魔術を彷彿とさせる祭壇や、中世の者と思われる大きな鉄製の拷問器具が置いてあった。
目撃談を語る林の声に耳を傾けながらも、禍々しさに絶句する風海たち。そこに、川原ミユキが現れる。
川原は隠れている彼らには気づくことなく、犠牲者のものと思われる血液を浴び、肌に擦り込み、外国語の呪文のようなものを呟いていた。
小暮はあまりの凄惨さに気絶。被疑者である川原を確保しようとする風海だが、人間離れした力の彼女に首を締められ、彼も気絶してしまう。

上司の犬童警部に叩き起こされた風海は、自身が気絶している間に事態が収拾していたことを知る。
偶然近くを通ったという犬童の手によって川原は確保され、その後捜査一課に引き渡されたようだった。
そして情報提供者の林は現場から忽然と姿を消しており、犬童も会っていないという。
犬童は現場に飾られていた「エリザベート・バートリ」の肖像画を見て事件の全容を把握した様子だった。
300人以上もの若い女性を殺害し、その生き血で入浴していたといわれるこの稀代の悪女が川原ミユキに憑依したのではないか、と仄めかすような推測が犬童の口から語られるが、真相は闇の中となった。
行方不明になっていた林は、現場に残されていた中世の拷問器具「鉄の処女」の中から発見された。
死後4ヶ月ほどが経っており、その遺体には両目がなかったという。

第一話「コックリさん」

警視庁捜査一課の新人警部補であった風海は、所轄署の巡査長であった小暮と協力して、私立花峯高校で相次いでいた在校生自殺事件の捜査にあたることになった。
捜査の進捗は捗々しいものではなく、手に入った証拠も、生徒が校舎裏で燃やそうとしていた「血の付いたウィジャ盤(コックリさんを呼び出すための紙)」と現場に残されていた「お札のような紙切れ」のみ。
風海たちは学長に生徒が燃やそうとしていたウィジャ盤を見せて心当たりを尋ねる。
ウィジャ盤を見た学長は、2年前に崎田美佐という女生徒が交通事故死した際に蔓延した「コックリさんの呪いで死んだ」という噂の収束を図り、学校側が彼女の供養塔に仕立てた「狐塚」に風海たちを案内した。
すると、そこには毎日狐塚を訪れて祈っているという男子生徒がいた。
彼の名前は野沢翔太、くだんの崎田美沙の幼馴染であった。
風海たちはその後、校内で口論している神山由佳と別の女生徒、そして野沢翔太の3人を目撃する。

翌日、助っ人として花峯高校に現れた民俗学講師の霧崎、自殺した生徒の検視を担当した式部に見識を聞きながら校内を捜査していると、神山と、前日に神山と口論していた堀川麻里、前日にウィジャ盤を燃やそうとしていた山野恵子の3人がコックリさんに興じている現場を見てしまう。
彼女たちは、願い事を叶えてもらう代償としてコックリさんに血を差し出す約束をし、それを破ったから二人の女生徒は自殺したと語った。

崎田と神山、そして自殺した生徒たちは同じクラスに在籍していたことも判明し、コックリさんに関わっていた3人の女生徒たちにはそれぞれ護衛がついた。
しかし翌朝、3人がコックリさんをしていた教室で、寝間着姿のままで全身を切り付けられた山野恵子が死んでいるのが発見される。
捜査に行き詰まりを感じる風海に、謎の人物から警察史編纂室に行くよう助言の電話が入る。
電話の通りに警視庁の地下5階に向かってみた風海は、そこで2年前に死んだ崎田美佐の日記を見つける。
日記には、幼馴染の野沢を紹介してから、親しい友人であった神山が変わっていったことが克明に綴られていた。
崎田の事故死は、野沢に恋をし、嫉妬に狂った神山にいじめを主導され、追い詰められた末の悲劇だったのだ。

日記を読んで急行した風海たちが狐塚に到着した時、そこには神山と堀川、そして野沢がいた。
堀川は野沢の前で神山が崎田をいじめていたこと、そして神山に教えた「コックリさんによる恋愛成就」が真っ赤な嘘であることを暴露する。
怒りで理性を失った神山は獣のように豹変して堀川に襲い掛かるが、隙をついた堀川が神山の脇腹に尖った木片を突き立てた。
野沢は、自らの存在が一連の事件の火種になったことを悟って深く落ち込み、堀川に自分のことも殺すよう懇願する。
堀川はそんな野沢にずっと崎田が好きか、と尋ねた。
そして、はっきりと肯定する野沢を見て幸せそうに微笑み、そのまま倒れてしまう。
続いて野沢も意識を手放したため、3人の生徒たちは風海たちが手配した救急車で搬送されていった。

数日後、花峯高校は平穏を取り戻していたが、神山は救急搬送中に救急車ごと消息を絶ち、今もまだその所在はつかめていない。
堀川は一命を取り留めたが、数ヵ月間分の記憶を失ってしまっていた。
そして、堀川は2年前に心臓移植の手術を受けており、この時の臓器提供者が崎田美佐であることを、式部が秘密裏に打ち明けた。
崎田の遺志が心臓を通して堀川に届いたのだろう、と解釈し、クビを覚悟でそのままの考えを報告書にまとめていた風海だったが、その報告書を提出する前に、警察史編纂室への異動の辞令を受け取るのであった。

第二話「鬼」

小暮と共に警察史編纂室に異動して数日。
風海は、コックリさんの事件の時も電話をかけてきた謎の男から「児童誘拐の捜査に参加するように」と連絡を受ける。
小暮と共に被害にあった斉藤家に急行する風海だが、担当の印南警部に追い返されてしまう。
しかし、そこで印南の部下で小暮と警察学校の同期だという道明寺巡査長が声をかけてきた。
彼との相談の結果、風海たちは秘密裏に捜査に参加することになる。

誘拐されたのは8歳の斉藤裕介という少年で、両親の離婚後、レストランを経営する実業家の母・由香利と2人で暮らしていた。
誘拐の現場を見ていた少年からは「鬼が連れて行った」という証言が出ていたが、印南警部は作り話と取り合わなかったという。
犯人の要求は金銭ではなく、「由香利が単身で、”柘榴の実”を訪れる」というものだったことがわかるが、由香利はこの柘榴の実という単語に心当たりがない様子だった。
更に、斉藤家に、ちょうど漢字の「鬼」の頂点にある「ノ」の部分が取れたような形の漢字が1文字だけ書かれた、不気味なファックスが届いた。
これについても、由香利は意味がわからないという。
怪文書を送った犯人と思しき斉藤家の隣人、安西は「裕介がいなくなって、由香利はせいせいしている」と言い残していた。
安西の一言に引っかかるものを感じた風海は、道明寺を通じて令状を取り、斉藤家の家宅捜索を行うが、誘拐事件解決の手掛かりは見当たらない。
別の視点から犯人像を洗いなおした風海たちは、雪村恭子という女性に行き当たる。
詳細に雪村宅の家宅捜索を行った道明寺から、斉藤家に届いたファックスと同じ文字が書かれたお札のようなものを発見したと連絡があった。
風海たちは、お札の発行元である寺に赴き、それがこの寺で祀られている鬼子母神に関わるものであることを知る。
鬼子母神は子供を守る神であることも知り、雪村の真の狙いを悟った風海たちは、由香利に「裕介と雪村恭子が柘榴の実で待っている」と伝える。

雪村の名前に激しく動揺した彼女は、大きな病院の廃墟に風海を連れてきた。
看板には「グラナダ・マタニティクリニック」という文字と柘榴の実のイラストが描かれている。
このクリニックでは秘密裏に代理母出産を行っており、子供ができなかった由香利がこの病院の戸を叩いたことで、裕介は生まれたという。
風海に胸の内を聞いてもらったことで吹っ切れた彼女は、裕介を助けるため、廃墟の中へと踏み出した。

明かりの漏れ出す病室の中に入ると、鬼の形相をした雪村が裕介に鎌を突きつけていた。
母親の資格はない、と由香利を断罪する雪村だが、裕介は自分のママは1人だけだと由香利を庇い、雪村に向かってランプを投げつける。
壁にぶつかって割れたランプは燃え広がり、辺りを火の海にした。
雪村を羽交い絞めにして食い止めていた風海は、火の粉を浴びて更に暴れる彼女に振り落とされ、窓から転落してしまう。
風海が雪村を止めている隙に逃げ出した由香利は、裕介とはぐれてしまっていたが何とか再会し、共に逃げようと外を目指す。
そこで親子の前に鎌を持った雪村恭子が立ちふさがるが、由香利は怯むことなく「裕介は私の子」と断言する。
その後、静かに業火の中に消えていった雪村は、裕介いわく「最後に笑っていた」という。

窓から転落した際に右足を骨折し、入院生活を送っている風海。
お見舞いに来た小暮から、怪文書の犯人は安西だと判明したことと、捜査一課に道明寺という刑事は在籍していなかったことを聞く。
そして、裕介から託されたという雪村恭子宛ての手紙に目を通す風海。
また遊ぼう、という無邪気な思いが綴られたそれを、風海はクリニックの焼け跡に埋めてあげてほしいと頼む。
そこへ、印南の元から無断で持ち出したという雪村恭子の経歴を手にした犬童警部が現れる。
20年前、夫と共にマタニティクリニックを開業し、不妊治療への限界を感じて自ら代理母になった雪村。
だが、2年前に夫が焼身自殺を遂げたためにクリニックは閉業を余儀なくされ、更に夫はこの自殺に雪村を巻き込もうとしていたことも書かれていた。
犬童は、今回の火事の焼け跡からは雪村の遺体が見つかっていないことを風海たちに伝える。

「もしかしたら、2年前に死んどったのかもしれんなぁ」

暴論ともいえる推測だったが、思いあたる節もあるような気がしてしまった風海と小暮には、それを「ない」と断定することはできなかった。

最終話「名前のない駅」

男はまだ、コンクリートに囲まれた密室にいた。
部屋の中で謎の男の声に耳を傾けているうち、脳裏に、たった今、話に聞いただけの存在のはずの小暮たちの顔がハッキリと浮かんでくる。
男は、自分こそが行方不明になっているという「風海純也」であることを思い出した。
目を覚ますと、そこは病室のようだった。ベッドの脇には小暮、霧崎、式部が付き添っている。
診察を担当した式部によると、風海は4日前に病院の入口で倒れているところを保護され、記憶が戻らないため逆行催眠をかけられていたのだという。

霧崎の教え子である間宮ゆうかに誘われた風海は、彼女と共に地下鉄に乗り込んだ。
いつのまにか電車は建設途中に放棄されたような駅に停車しており、間宮は「名前のない駅」が実在した、と喜んでいた。
間宮によればこの駅の少し先に何かがあるというのだが、どうしてもそれが思い出せない風海。
間宮は4日前から行方不明になっている。4人は唯一の手掛かりである「名前のない駅」を目指すことになった。

地下鉄の終着駅から更に奥へと続く線路を見つけて徒歩で進んだ4人は、建設途中のような、誰もいない駅に行きついた。
そこは間違いなく間宮と風海があの日地下鉄を降りた場所だった。
駅の先に続いていたトンネルを抜けると墓場があり、墓を調べたいという霧崎をその場に残して進んでいくと、古い研究施設のような場所に出た。
風海たちはそこで白髪の男と一緒にいる犬童警部に遭遇する。
彼らの説明によると、かつてこの場所で行われていた「悪魔の実験」を再開するという話が男の属する組織で持ち上がったという。
その実験の再開を阻止したい男は仕事仲間の犬童に依頼し、1時間後にここを爆破するということだった。

犬童たちと入れ替わるように霧崎が合流し、ようやく間宮を見つけるが、間宮を救出してすぐに大規模なポルターガイスト現象に見舞われる。
何者かが追ってくる気配を感じながらも急いで駅へ向かう一行だが、間宮を支えていた風海ははぐれてしまったため、手近な部屋に隠れて追跡者をやり過ごす。
間宮は「人為的に死者の霊魂を操作する」実験が行われているという噂の現場が、この施設であることにあたりをつけていたため、幽霊との交渉を試みるよう提案する。
交渉は成立し、何とか見逃してもらえるよう約束を取りつけた風海。
隠れていた部屋の前からは小さな足跡が続いており、それを辿っていくと子供を監禁していたと思われる小部屋の前に行きついた。
「悪魔の実験」が実際に行われていたことを確信した風海たちだったが、その時、大きな地震のような揺れが施設を襲う。
先へ進むことにして部屋の外に出ると、通路の先には男の子の影が見え、誘導するように通路の電灯が灯る。
無事に施設からの脱出に成功した風海たちが出口付近で3人と合流したのを見計らったかのように、地下世界は崩壊を始めたのであった。

霧崎 水明編「さとるくん」

中学生だった霧崎水明は、一学期の終業式の日、同級生の田井野から「さとるくん」の噂を聞いた。
校区内にある公園の電話ボックスから、特定の番号に電話をかけると「さとるくん」という人物に電話が繋がり、その人物に未来のことを尋ねれば答えてくれるというものらしい。
話の真偽を確かめるため、同級生の美久がその番号に電話をかけるが、機械音しかしなかったという。
それから数時間後、霧崎の元に例の電話ボックスで美久が殺害されたという凶報が届いた。
美久は「電話をかける」と言い残して家を飛び出したのだという。
翌日、美久の葬儀に参列していた霧崎は、自分を監視するかのような視線を感じていた。
美久の葬儀の後で敦子、田井野と例の公園で落ち合う約束をして自宅に戻った霧崎は、父・道明から「さとるくんには絶対に電話をかけないように」と忠告を受ける。

田井野と合流した霧崎は、美久の死をさとるくんの手によるものとする彼の主張を挫くべく、自身で電話をかけてしまう。
「わたしを見ないで」とだけ言って切れた電話に驚いたものの、電話ボックスにさとるくんの電話番号を記したチラシがあるのを見つけた霧崎は、いたずら電話に加担させようとする誰かの仕業だろうと考える。
その後、3人は成り行きで道明と共に美久の家を訪ね、そこで美久の遺体が消えたことを聞かされる。

お馴染みとなった公園で合流した霧崎たちは、消えたはずの美久の遺体が逆さ吊りにされているのを見つけてしまう。
現場に続々と関係者が集まる中、敦子は霧崎を少し離れたベンチに呼び出し、美久が殺された日、自らもさとるくんに電話をかけたことを告白した。
ただ、何を話したかの記憶は一切ないという。

公園近くの空き家で、霧崎は道明と連れの女性に遭遇する。
道明たちは、さとるくんは、物の本当の名前である「忌み名」を集めることを目的にしており、非常に危険だから近寄らないよう忠告していた、と説明した。
続けて「現場に足跡があり、美久の遺体は自ら発見現場に歩いて行っている」と聞き、絶句する霧崎。
その時、霧崎は不意に、チラシに書いてあった電話番号と、自身の担任の響子先生の電話番号が同じであることを思い出す。
それを道明と女性に伝えると、2人は、仕事ができた、と去っていった。
2人が去ったあと、「公園に行く」と言い始めた敦子に付き添う霧崎は、公園の茂み付近から、例の視線を感じていた。
自分なりに推理し、視線の主は響子であるという結論に達していた霧崎は、真実を確かめるべく茂みへと近づいていく。
茂みから飛び出してきたのはやはり響子だった。彼女は手にしていた棒で敦子を殴り、続いて霧崎を殴り倒す。
薄れていく意識の中、霧崎には駆け寄ってくる道明の姿と、自らの目を切り付ける響子がぼんやりと見えていた。

病室で目覚めた霧崎は、響子が美久殺害を認めたことと、敦子の意識が戻っていないことを聞いた。
田井野と共に病室に訪れ敦子に話しかけていると、不意に彼女の意識が戻る。
しかし、明らかに正常ではない状態で、その場にいないさとるくんに語りかけ始めた敦子を見て、かける言葉を探すことはできなかった。

式部 人見編「カシマレイコ」

式部人見が新人医師として勤務していた病院に、カリスマモデルの鏑木輝充が運び込まれた。
鏑木の右手は強い酸で焼かれたような状態で爛れており、そのまま息を引き取ってしまった。
鏑木を看取った式部と上司の高田医師の前に、ゴシップ誌の記者・落合圭三が現れる。
落合は鏑木よりも、高田が担当する一般の入院患者の少年、福岡篤文に目をつけている様子だった。
しつこく院内をうろついている落合に「福岡篤文の病気は、未承認の薬を用いたことによる副作用ではないか」と尋ねられた式部。
全く取り合わなかった彼女だが、高田の机の上に見慣れない薬のアンプルを見つける。
彼のパソコンの画面に表示されていたファイルには「福岡篤文」の名前があったため、怪しく思った式部はそれを追及するが「明日詳しく話す」と躱されてしまう。

鏑木の検視は、高田の手によって行われた。死因は強い酸を浴びたことによるショック症状とのことだった。
その後、霊安室に鏑木の遺体を確認しに行った式部は、右手部分が忽然と消えていることに気がついた。
更に、鏑木の婚約者である希樹比佐子がかつて高田の患者であったことや、鏑木と希樹、そして式部と同じ病院の研修医である津積は小学校の同級生であることが発覚する。
希樹は小学校時代に電車の事故に遭って右手を負傷しており、その事故を「カシマレイコ」の都市伝説と絡めて報道されてしまったため、同級生たちからいじめを受けていたのだという。
式部の中で、希樹への疑念が膨らんでいく。
希樹の家を訪ね、彼女と対峙した式部は、単刀直入に「右腕を持ち去ったのはあなたではないか」と尋ねる。
初めは白を切っていた希樹だが、式部の追及に逆上し、いじめの復讐として鏑木の右腕に酸を浴びせたことを告白する。

翌日、約束していた店で待つ式部の前に現れたのは、高田ではなく落合だった。
式部の隣の席に着いた落合は、冷戦時代に人体実験で用いられていた薬についての話を始めた。
人為的に超能力者を作るための新薬で、ある組織が篤文を実験体としてその薬を投与しており、主治医であった高田はその組織の手先だというのだ。
そこに津積が現れ、自らが高田の指示でその薬を篤文に投与していたこと、希樹もその薬の被検体であったことを告白する。
実験に失敗した高田と篤文が姿を消した、ということも聞いた式部は病院へ引き返した。
高田の研究室は、初めから誰もいなかったかのようにきれいに片付けられていたが、パソコンだけは残っていた。
パソコンには式部が見てしまったままの篤文についてのファイルが開かれており、落合と津積の証言を概ね裏付ける内容が書かれている。
そして、パソコンにはもうひとつ「hitomi.txt」というファイルが残っていたが、パスワードが掛かっていて見ることは叶わなかった。
諦めて帰宅することを決めた式部だが、バイクに跨った時、タンクの部分に「kashima reiko」と読める落書きがあることに気が付く。
急いで高田の研究室に戻った式部は、先ほどのテキストファイルにそれを打ち込む。
するとファイルは開いたが、何者かが故意に消したようで、中身はひどく文字化けしていて読むことはできない。
式部はその文字化けした「hitomi.txt」をフロッピーディスクに保存すると、今度こそ高田の研究室を後にした。

間宮 ゆうか編「神隠し」

高校生だった間宮ゆうかは、冬休みを間近に控えたある日、部活の先輩の佐倉智子から「ホルマリン漬けの女生徒」の噂を確かめに行こうと持ちかけられる。
どうやら佐倉は、40年前にこの学校の男性教師と女生徒が失踪した事件が噂の元ネタではないかと考えているようで、自説を検証したい様子だった。
かくして冬休み初日の夕方、間宮と親友の羽黒薫は学校近くで佐倉と落ち合うことになった。
そこに誘っていない新聞部の下橋ミキが強引に合流したり、老母を連れた男性教諭の小松に遭遇したりとアクシデントは続いたが、何とか学校へ忍び込むことには成功する。

4人は、封印されていた教室から失踪した教師の日誌を発見する。
それを読むところによると、この教師と女生徒は恋仲にあった様子のため、4人はこの失踪事件の真相は駆け落ちだったのだろうと結論付けた。
その時薫が倒れてしまったため、彼女たちは佐倉の指示で宿直室へ向かう。
宿直室は無人だったが、間宮と下橋はつい先ほどまで誰かがそこにいたような痕跡があることに気づく。
外は猛吹雪で、宿直室の電話は不通。携帯電話も圏外で使用することができなかった。
しかしこの状況にも関わらず、佐倉は間宮に先ほどの教室を1人で調べてくるよう強要する。
途中で足を挫いてしまったために同行できない、と申し訳なさそうにする下橋の視線を受けながら、間宮は渋々と宿直室を出るのであった。

間宮は先ほどの日誌を改めて読み直し、女生徒は多々良家、教師は羽黒家の人間であったことを突き止める。
そして宿直室へ戻る途中、トイレに付き合ってほしいという佐倉と合流した間宮だが、トイレで緑色の顔をした天狗のようなものを見てから気を失ってしまった。
目覚めるとトイレの個室に閉じ込められていたが、自力で脱出し、急いで宿直室へ戻る。
辿り着いた宿直室には佐倉と下橋はおらず、室内には殴り殺された薫の遺体があった。
呆然としたまま外に出ると下橋が立っており、佐倉が吹雪の中、助けを求めに外へ出ていったことを伝えられる。
時折聞こえてくる謎の羽音のようなものにすっかり怯えている下橋は、宿直室へ戻ることを提案してくる。
宿直室に戻ると、どういうわけか薫の遺体は忽然と消えていた。
疑問に思い、天井に目をやった間宮を強引に外へ連れ出して「天井裏の窓から赤い影がこちらを覗いていた」という下橋。
その言葉通り、追ってくる影から逃げる間宮たちは、点々と続いている血痕を発見した。

不審な影から逃げながらも、薫は羽黒と多々良のいざこざに巻き込まれて殺害されてしまったとして、果たして誰が殺したのだろうか、と推理を組み立てる間宮。
そして「この肝試しの話を持ちかけた佐倉と、途中で遭遇した小松教諭が共犯関係」ならば、状況に矛盾がないという結論に辿り着いた。
そこで下橋が、学校からほど近いところにある滝に薫の遺体が投げ込まれるかもしれない、と言い始める。
その滝は「天狗の祠」と呼ばれており、一度落ちると2度と浮いてこないと言われていることを知った間宮は、下橋を安全な場所に避難させ、単身で天狗の祠へ向かう。
しかし、その途中で空を飛ぶ影に襲われて崖から転落し、気を失ってしまった。

病院に運ばれた間宮は、下橋の知らせで救助が来て、自分が助かったことを知る。
話を聞かせてくれた若い刑事によると、40年前の失踪は実は駆け落ちではなく心中で、それを裏付ける証拠も出てきているのだという。
女生徒こと多々良イサミはこの心中で死亡。
生き延びた教師、羽黒亮二は後に結婚して娘をもうけたというが、刑事はこの娘こそが薫なのではないか、と推測していた。
そして、小松は多々良イサミの弟であることがわかっており、仲の良かった姉を死なせた羽黒亮二への復讐を動機に、薫を手にかけたのではないかと考えているようだった。
佐倉は小松と恋仲であったために、この一連の事件に協力していたのではないかと思われるが、事件後に小松は失踪している。
その上、肝心の佐倉は錯乱してしまっているため、現状で詳しい話は聞けそうにないのだという。
後に佐倉は正気に戻ったが、事件についての記憶をすっかり失ってしまっていた。
間宮も転校したため、それからのことはわかっていない。

霧崎の研究室でこの体験を語り終えた間宮に、風海は「神隠しに見立てた殺人なら、血痕が残る殺害方法は取らないのではないか」と指摘した。
実際に薫を殺したのは天井裏に潜んでいた天狗で、犯人とされる小松と佐倉はその天狗に振り回されているのではないかと語る風海。
この指摘を聞いた間宮は、薫は本当に「神隠し」にあっただけで、今もまだ生きているのかもしれない、と、かつての親友に思いを馳せるのであった。

番外編「退魔師、犬童蘭子」

犬童蘭子。警視庁地下5階、警察史編纂室に所属する警部だが、実は彼女には魔を憎み、滅することに生命を賭している「退魔師」という裏の顔があった。
彼女はある組織に属して活動しているが、同じくそこに属している男から「殺生石」の怨念を封じるよう依頼された。
花峯高校の裏にあったその石に、封じる必要があるほどの強い怨念があるようには思えなかった犬童。
しかし、2日前に生徒が自殺する事件があったことと、おそらくこの石が関連していることを聞き、調査を開始する。
連続自殺事件を捜査している風海や小暮たちとニアミスしながら調査を進めていくと、ある女生徒が抱いている恋心と、恋敵への憎悪が殺生石に力を与えているらしいことを突き止める。
そこで犬童は経文を用意し、それを捧げることで殺生石の暴走を止めようと考えた。
だが女生徒の想いは予想以上に強いもので、彼女が激昂した際に落雷を引き起こしてしまった。
さらに悪いことに、殺生石がその落雷を受けて経文が破れてしまい、封じられていた怨念も復活してしまう。
犬童はそこに封じられていた九尾の狐と対峙し、瀕死の状態まで持ち込むが、落雷に驚いて様子を見にきた風海たちに断末魔の苦しみを分ける、と脅され一度退くことに決める。

そして翌日、師匠の元を訪れて新しい退魔具を持って再び九尾の狐との戦闘に臨む犬童だったが、狐は触媒の女生徒から流れ込む負のエネルギーで強さを増していた。
苦戦する犬童が諦めかけた時、触媒の女生徒の脇腹に別の女生徒が木片を叩きこんだことで、彼女は狐の討伐に成功する。

数日後、犬童が所属する警察史編纂室には「コックリさん」事件の功績を組織から認められ、秘密裏に手を回され異動してきた風海と小暮が現れていた。
こんなひよっこを送られても、と悪態をつく犬童だが、内心では新しい部下たちに期待を寄せるのであった。

『流行り神 警視庁怪異事件ファイル』のアイテム

チェーンメール(ちぇーんめーる)

第零話「チェーンメール」で、風海の元に「連続殺人犯の正体を知っている」という形で届いていたメール。
受信者に対し、他者への転送を促して拡散することを要求する迷惑メールの一種。
「転送しなければ不幸な目に遭う」などの文言を盛り込んであることが殆どで、風海に届いたものには「転送しなければ次の犠牲者はあなただ」と書かれていた。

Dada_05042016
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『魔界戦記ディスガイア5』とは、日本一ソフトウェアの開発によるシミュレーションRPG『ディスガイアシリーズ』の第5作目。PlayStation 4専用のゲームとして発売された。舞台は魔界。テーマは「魔王集結、復讐と反逆」。全魔界消滅を目論む魔帝ヴォイドダーク率いるロスト軍を阻止すべく主人公「キリア」と5人がそれぞれの復讐のために力を合わせ魔界を救う。今作の魅力はプレイの快適さ。過去作をプレイしたことがある人や初めてプレイする人にも遊びやすい作品となっている。

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夜廻三(ゲーム)のネタバレ解説・考察まとめ

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『夜廻三』とは、日本一ソフトウェアから発売された夜道探索アクションゲーム『夜廻』シリーズの3作目にして、夜廻6周年記念作品。デフォルメされたポップなデザインとは裏腹に、ダークな世界観と物悲しいストーリーが特徴のゲームだ。 学校で苛烈ないじめを受けている主人公が、呪いを解くために夜の町を歩き回り、忘れていた記憶を拾い集めるという物語。おばけをやり過ごすアクションが「隠れる」から「目を閉じる」に変更された。 「ファミ通・電撃ゲームアワード2022」のホラーゲーム部門にて最優秀賞を受賞した。

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『探偵撲滅』とは日本一ソフトウェアから発売された、探偵シミュレーションアドベンチャーゲーム。探偵助手の北條和都(ほうじょう わと)が主人公となっており、プレイヤーは和都の目線で物語を進めていく。アドベンチャーパートと捜査パートに分かれており、テキストを読み進め、起こった事件に対して捜査をする、というのが本作の流れとなっている。個性的なキャラクターと先が読めないストーリーが魅力の作品だ。

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夜廻(ゲーム)のネタバレ解説・考察まとめ

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『夜廻』とは、日本一ソフトウェアから発売された夜道探索アクションゲームシリーズの1作目。本作の好評を受けて『深夜廻』、『夜廻三』と続編が制作されている。PlayStation Vita、Nintendo Switchなど様々なプラットフォームでリリースされている。 幼い少女が姉と愛犬を探して、夜の町を歩き回るというストーリーだ。キャッチコピーは「夜の怖さをおぼえていますか?」。 「電撃PSアワード 2015」インディーズ部門で第1位を獲得し、PHP研究所から小説版も発売されている人気作だ。

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『深夜廻』とは、日本一ソフトウェアから発売された夜道探索アクションゲームシリーズ『夜廻』の2作目。PlayStation 4、PlayStation Vita、Nintendo Switch、Steamといった様々なプラットフォームでリリースされている。衝撃的なチュートリアルと悲劇的なストーリーが大きな反響を呼んだ。PHP研究所から小説版が発売されている。 親友を探して夜の町を歩き回る少女を中心に、2人の主人公のエピソードが交互に描かれる。キャッチコピーは「あなたをさらいに夜がくる」。

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チャンネル登録者数が100万人を突破するなど、大人気Youtuberである兄者弟者さん。今回はそんな兄者弟者さんの数多くある動画の中でも人気のある、ホラー動画に注目。このホラー動画は他の方とは異なり「極限の緊張感を味わえ、そしてなぜか笑えてしまう」のです。それは何十年も前のゲームから最新のものまで、プレイ人数も単身から複数人と、まさに多種多様です。※ホラー動画などが苦手な方は、ご注意ください。

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