自殺島(漫画)のネタバレ解説・考察まとめ

『自殺島』とは2008年より森恒二が『ヤングアニマル』にて連載していた作品。政府によって、自殺未遂の常習指定を受けた者は自殺島に送り込まれてしまうという、近未来の日本を舞台に物語が展開されていく。島に流された未遂者のセイは、同じ未遂者と共に過酷なサバイバルや人間同士の争いに巻き込まれていくが、そこで生き抜くための覚悟を決めた時、本物の友情や、愛を手に入れるセイの成長を描いていく。また生きる意味、幸せとは、という生きていく上で誰もが一度は考えるテーマに、真っ向から問いかけてくる作品でもある。

『自殺島』の概要

『自殺島』は森恒二が2008年から2016年まで『ヤングアニマル』にて連載していた作品。全17巻。本作品の主人公セイは、生きることに何の希望も喜びも見いだせなくなり、何度も自殺未遂を図る青年。近未来の日本では国民がIDで管理されるようになり、生きる権利と義務を果たさない者は、その権利を放棄したものとみなされる。セイもまた、自殺未遂を何度も繰り返すうち、病院でも常習指定がされていた。日本政府は、近年急増している自殺者の費用を負担しきれなくなり、自殺未遂者を島流しにして切り捨てると、ネットでまことしやかに囁かれていた。その島の名は自殺島。セイもまた、他の自殺未遂者と共に自殺島に島流しにされてしまう。この島に流された、自殺未遂をした者のIDは死亡という形で消滅しており、権利もはく奪され、日本国における義務や権利もまた遵守する必要もない。つまり完全に個の存在を抹消された存在となっていた。またこの島は日本近海にあり、本島に近づけば命の保証は無いという。セイたち自殺未遂者は、守られるべき国から追放され、無法地帯の島での共同生活を余儀なくされてしまう。
その日からはじまる未遂者同士の生活。死ねないなら生きるしかないと、心に決めたセイ。同じ未遂者である、ハーフの女性リヴ、リーダー気質のリョウ、冷静な判断で周りを導くカイなど、他の未遂者達と協力し、食べられるものを見つけ、命をつないでいく。それは生きる思いを挫かれた者たちが、戸惑いながらも明日生きることへと手探りで模索し、自らの命を諦めない姿を描いていく群像劇であり、究極のサバイバルストーリーだ。またそんな絶望の中でも、セイたちが自殺未遂ばかりを繰り返していた人生では、決して感じることはできなかった生命の輝き、生きる事への意味。セイが自身の命と向き合い、何物でもなかった自分を脱却し、自らの殻を破って成長していく姿を描いた作品でもある。

『自殺島』のあらすじ・ストーリー

未遂者たちのそれぞれの選択

オーバードーズと手首に傷がついた状態で、病院に担ぎ込まれる青年、セイ。セイは自殺未遂常習犯として病院に登録されており、看護師と医師はそれに気づく。そこで医師は「今この国では生きる権利が当然与えらえているが、本人の自由意思でその権利を放棄できる」と告げた。セイは生きる権利を放棄し、医師が渡す書類にサインをして、眠りについた。

再びセイが目を覚ますと、そこは見覚えのない島だった。目の前には腕にリストカットの傷を持つ髪の長いハーフの女性がおり、セイは思わず見つめてしまう。
セイは人が群がっている所に行くと看板が立っており、そこには「ここにいる人間は生きる事の義務を放棄したので、この島に連れてこられたこと、あらゆる権利を有しておらず、本島近海に侵入するようであれば、命の保証はない」とのことが書かれていた。

近年、爆発的に増えている自殺者の医療、社会復帰支援などの費用がかさみ、国で支えきれなくなった自殺未遂患者を、当人の自由意思を尊重し、切り捨て島流しにする。ネットでは噂になっていた、国から切り捨てられた者たちが行きつく場所、それが自殺島と呼ばれる島だった。
セイの周囲で動揺が広がる中、自殺未遂者は現実を悲観して島で自殺を図るものと、死にたくても死ねない者とに分かれた。セイもまた死にたかったが、転落死を図ってすぐ逝けずに苦しむ人間の凄惨な姿を見て躊躇する。そんな中、暑い日差しを浴びて喉の渇きを感じるセイや未遂者たちに、リョウという青年が水を探さないかと提案した。リョウは未遂者にはふさわしくないような前向きな姿勢を示す青年であり、彼の持つリーダー気質に皆従った。一方、闇雲に素人が探しても水は見つけられない、河口を目指すべきだと冷静に提案する者もいた。その人物は、かつてセイが自殺未遂後に入れられた施設に入所していた、セイよりひとつ年上のカイという青年だった。思わぬ形でセイはカイと再会し、セイは彼の持つ理性的で思慮深い性格を思い出していた。その気質はこの異常な場においても発揮し、冷静さを保って周りの者たちを説き伏せていた。未遂者たちはカイの言葉に従う形で河口に向かい、無事に水を見つけ喉を潤した。
だがセイは水を飲みながら、死にたいのに生きようと活動している事に矛盾を抱えていた。

セイたちは廃校を見つけ、そこを生活の拠点にすることにした。そこでは夜這いが横行しており、セイも誘われる。だがターゲットにされていた女性は、島で目を覚ました時に見かけた、セイにとって印象的なハーフの女性だった。セイは乱暴される女性を守ることもできず、ただ立ちすくんでしまう。そこへリョウが現れ、女性を襲う輩を追い払っているのを傍観し、セイは強い意志を持って行動する者とは対照的に、心に何の意志も持たない自身の空疎さを感じる事になる。

セイの狩猟

島での生活が続いていくと、段々得意分野を発揮していく者が現れた。リョウは海に潜って魚を獲り、カイはその豊富な知識から、獲った食料の保存方法などの知恵をだしていく。また他の者もそれぞれが協力しあい、グループの生活を築き上げていった。
そんな集団社会が作られていく中で、リョウとカイはその中心人物となっていく。リョウはこの集団社会に秩序を持たせ、安心して生活できるようにと皆を引っ張っていく一方で、カイは生死に関わらない人間関係の問題は、個人で解決するのが良いと、集団社会に秩序を持たせる事に反対の意を示し、2人の関係性に不穏がよぎる。
そんな中、セイは同じ未遂者のひとりから、何も持たざる者だと指摘され、ふさぎ込み気力をなくしていた。同じころ、漁猟の収穫も思うように獲れなくなり、比較的採取しやすかったバナナも大量に盗まれる事件が起きた。食料がとれなくなることで、いがみあい集団はバラバラになっていく。折しも季節は冬が来ようとしており、日に日に下がる気温に漁猟自体も厳しく、食料調達問題がグループの中で頭をもたげていた。
セイはあるとき野生のシカに出会い、その生命力の強さや美しさに魅了されるようになる。なぜセイはこんなにシカに魅せられるのか、気づけば共同作業をすることが多くなったトモという青年に話をすると、トモは「生きる事のみで、生きる喜びを知っているんだ。僕ら人間以外は…」という言葉に、セイの心の中で感情がないまぜになっていった。幸せの価値観を押し付けられていた頃は、幸せを感じられもしなければ、ただ苦しい人生を強いられていただけだった。だがセイは自殺島に来てから野生の動物の美しい生に触れながらも、ここでは人間と動物は獲る側と獲られる側という命のやり取りをする関係であると気づき、その美しい命を奪ってまで生きる資格が自分にあるのかと、セイはその答えを導き出そうとしていた。

セイは島に来る前の学生時代、弓道部にいる先輩から弓道の道具や歴史についてよく話し相手になっており、その知識をもって弓や矢を自作し、狩猟にでることを決意した。
野営をし、持参した食料も尽きてついには昆虫まで食べながら何日もシカを追い、なんとかシカを射止める事に成功する。そうして苦労の果てに得たシカを食べる事で、はじめて「命に感謝」し、セイはあらゆるものに生かされてこの命が繋がれてきたことを実感する。そしてこの事をきっかけに、「生きよう」と強く心に誓った。

残りのシカ肉をグループがいる廃校に持ち帰る最中、セイは先住人に遭遇する。先住人はかつて囚人としてこの島に送られており、そのときの島の名は「無法島」と呼ばれていた。先住人はこのシカ肉を分けてもらう代わりに、セイに燻製の作り方を教え、また先住人の元で増えすぎて困っていた子犬もセイに譲った。セイはこの子犬にイキルと名をつけ、狩猟犬として育てることに決めていった。

海側のグループとサワダ

セイが狩猟をすることで肉が食べられるようになり、食料問題に対するグループの緊張感も和らいでいった。だがそれも束の間、ナオという美しい容姿の女性が突如としてセイたちの集落に現れたのだ。カイはナオが売春婦であることを見抜いたが、そのナオの存在はグループで賛否が分かれることになった。

ナオは山側でグループができたのと同時期につくられた海側のグループの一員だったが、そのグループの圧倒的なリーダー、サワダの暴君に嫌気がさして逃れてきたのだ。
同じころ、サワダ率いる海側のグループではナオが失踪したことが問題となっており、サワダはグループの男たち数名にナオを探し連れ戻せと命令をしていた。しかし連れ戻す事に失敗し、サワダは不満を募らせていった。

一方セイたちがいる山側のグループは、今も自殺者が絶えずに不穏な空気が漂っていた。そんな中、セイはたまたまトモが女性もののワンピースを着ているところを目撃し、トモが性同一障害であることを知って、理解し受け入れる。セイに促される形でトモはグループにも障害の話をするが、カイだけは否定的な発言をしてその場を去った。しかし翌日カイに心酔している女性が首を吊って自殺している所をセイたちは発見し、スギという男性がその死体に疑念を抱いた。スギは首吊り未遂をしてこの島に送られてきた人間だ。首吊りなら首に残る痕が斜めにできるが、この死体の痕は真っすぐ、つまり絞殺されたと判断した。外の人間なら自殺に見せかけて殺す必要もない、だから犯人は仲間のうちの誰かだとスギは結論付けた。トモは精神的に限界が来た時にいつもカイに話を聞いてもらっていたが、その際トモはカイから死の誘惑をかけられていたのだとセイに話した。このことでセイはカイに人を死に誘うのは止めるように言うが、カイは「死にたい人間に、それで良いと言うのは罪ではない」と、全く聞き入れずに話は終わった。

それからしばらくして、セイはハーフの女性に特別な感情が自分の中にあることに気づき、気持ちを抑えられずにいた。だが女性は幼い頃養父から性的虐待を受けており、心の中ではセイに惹かれていても、体の方は男性のセイを受け入れられないと告げる。過去の話の中で女性がマリアという名前だと知ったセイはその名を呼ぶものの、マリアという名前は養父から何度も呼ばれ、呪縛そのものでしかないと言われてしまう。そこでセイは新たにリヴという名を提案し、セイとイキルとリヴで同じ意味を持つ名だと伝えると、リヴはその名前を気に入り、その名で呼んで欲しいと告げた。リヴは過去の精神的苦痛から一歩踏み出し、セイと共に「生きていこう」と決めていく。

集落では、リョウに気がありながらもつれなくされているミキに、カイは巧みな言葉で彼女を自殺へと導こうとしていた。その現場をセイ、リヴ、トモに目撃され間一髪ミキの自殺を食い止める。騒ぎを聞きつけ、後からリョウ、スギも駆けつけて、カイがミキを死へと誘いこんでいた事がその場にいた全員に知れ、カイはリョウから集落の追放を言い渡される。
その夜カイは廃校に放火してグループの人間を殺害しようとしたが、すぐに火は消し止められ、死傷者は誰1人でなかった。このことでグループからは、カイを生かしてはおけないとカイ捜索隊を結成し、逃走したカイの行方を追った。
同じころセイは火事によって焼失してしまった食料の不足を解消するために、リヴと共に狩りをしに森へ入る。そこで偶然逃亡しているカイを発見するが、カイはセイに発見されても狼狽えもせずに歩みを止めない。セイは矢を射るか逡巡するも、脳裏にカイとの思い出がよぎり、結局彼を逃がしてしまう。消息を絶ったカイは次第に仲間から忘れ去られたが、その頃カイは海側グループのサワダに接触し、グループに入れて欲しいと頼みこんでいた。サワダから、山側グループを手に入れたいが策はないかと問われたところ、カイは「リョウとセイを殺せば、グループは解体するだろう」と答え、その回答を気に入ったサワダは、カイを海側グループに受け入れることを承諾する。

そんな中、第二陣の船が島に到着する。セイとリョウが島に降り立った人たちに接触し、山側グループに案内した。だがその未遂者の1人、織田はこの自殺島を取材するルポライターとして、この島に潜りこんできたのだとセイたちに話した。他にも一緒に島に送られたが、パニックが起きてはぐれてしまった知り合いの女性を探したいという男性もいた。女性を探したい男性の思いを汲んで、サワダのいる海側グループの集落を偵察することに。そこでセイ、リョウを中心とした偵察隊を結成し、早速夜に決行した。問題なくサワダのいる集落までたどり着いたセイたちだが、そこで目撃したのはおぞましいほどの乱交であり、そこに探していた女性も混ざっていた。
だがそこでサワダにセイたちが来ていることを気づかれてしまい、すぐに海側グループと戦闘態勢に入ろうとしたその時、セイたちの前にカイが現れる。そしてカイは「夜襲をするとは愚かだ、先に仕掛けてきたのだからもう安心して眠ることはできない」とセイたちに告げる。
これを機に、山側グループ、海側グループの争いが始まっていくことになった。

山側グループと海側グループの抗争

山側グループでは本格的な戦いに備え、手先が器用なボウシと名乗る男が盾や槍などの装備品を作り、準備を整えていた。一方サワダも襲撃を決行。サワダと海側グループは殺意をもって山側グループの人間を襲うが、事前に準備した盾と槍が何の策もなく突入した海側グループを圧倒的に制し、サワダたちを返り討ちにした。その夜、なるべく戦いたくないリョウは、これからは戦うことに迷いのない強いリーダーが必要だと、戦闘派のリュウという人物を新リーダーに任命し、リュウもこれを快諾した。
翌日リュウは昨日の快進撃もあり、本格的に海側グループが装備を整える前に襲撃するべきだと提案し、有志を集って襲撃を決行することにした。
一方海側のグループでは、カイが火炎瓶を作って山側グループの襲撃に備える。リュウは夜襲でサワダの集落に乗り込むが、カイの火炎瓶によって劣勢に立ち、リュウは命からがら仲間のもとに帰ってきた。

その後も何度かサワダは山側の集落に偵察隊を送るものの、何の収穫もない事に腹を立てて、カイに何らかの成果をあげるように指示する。
そこでカイは海側の男たちと共に廃校に忍び込み、そこで作業していたトモを人質として海側の集落に連行してしまう。サワダのもとに連れてこられたトモは、サワダにトモの心が女性であると勘づかれてしまい、トモは女性としてサワダに接触されてしまう。

セイはトモ奪還のためにリヴ、リョウらと共に海側の集落に赴き、セイはサワダたちの集落の家屋に火矢を放った。海側グループが火事で混乱している最中、リョウはトモを発見して連れ出そうとするが、トモはそれを拒否する。トモはリョウに「戻れない」と告げ、トモの奪還作戦は失敗に終わった。リョウはトモの言う「戻れない」の意味について話し合った。リヴは戻らないのではなく、戻れないと言ったのだから、何かあったのだと推測した。その意味が持つおぞましい事実に気づいたセイは、サワダに殺意を抱いていく。
セイは単独でトモ奪還を心に決め、グループの仲間に「リヴと共にこの集落を出る」と宣言し、翌日に集落を出発した。山を越えた先に発見した海辺の家を新たな拠点に決め、セイとリヴはそこで寝食を共にしていく。だがリヴは時おり養父の夢を見てうなされているのを、セイは傍で見ていても何もしてあげることができなかった。彼女に優しく触れることさえ、彼女にとっては呪いを呼び起こす事になり、セイは苦悩する。しかしリヴはセイに触れて欲しいと願い、セイとリヴは罪も苦しみも全て分かち合うと誓いあって、2人は初めてひとつに繋がり満ち足りる事ができた。

平和に暮らしていた山側の集落、そしてセイとリヴの生活だったが、サワダはまた新たな戦いの準備をすすめていた。サワダとカイの作戦で、山側集落に海側の女たちを刺客として送りこみ、山側の男を3人殺害した。
この事件をきっかけに、山側グループも本格的に海側グループと抗争する意志を固める。
山側グループは抗争となればセイの戦力が必要になってくると、セイを呼び戻す事にした。セイは伝令係から戦いの知らせを受け、リブとの平穏な生活を失うことに迷いながらも参戦する意志を見せた。
先行してセイがサワダの暗殺を計画し実行に移すものの、人を射ることに迷いがでたセイが放った矢は、サワダの体をかすっただけだった。サワダの暗殺は失敗に終わり、このことが引き金となって、サワダ率いる海側グループと全面抗争になっていったのだ。

山側グループが海側集落に攻め入るが、サワダたち海側グループはそのすきに廃校に侵入してしまう。同じころ、行動を別にして漁に出ていたセイ、リヴ、織田は廃校周辺の様子がおかしいことに気づき、セイは織田を連絡係にして、海側集落に攻め入った山側グループに、すぐ廃校に引き返すように促す。急いで山側グループは廃校に引き返すが、すでにサワダたちに占拠されて廃校には入れない。海側グループから校門で攻撃を受け続け、山側グループは立ち往生してしまう。しかし何とか海側グループに反撃し、校門を突破。その勢いで廃校を奪還しようとするが、廃校内にいた山側グループのひとりをサワダは人質として捕らえ、見せしめのために突き落として殺してしまう。まだ廃校に残る仲間の身の安全を守るためにも、山側グループは廃校奪還を諦め一旦退却する。その夜、屋上に残る山側グループの仲間たちと協力し、セイは縄をくくりつけた矢を屋上目がけて放った。その縄を屋上の頑丈な部分に縛りつけ、セイ、リョウ、ボウシが縄を登り、屋上から廃校内部へと潜入することに成功した。

一方スギ、リュウは見張り役を倒し、正面から校舎を突破する。セイたちと、スギ、リュウは合流しサワダの元へ駆けつけるが、サワダは身の危険を感じて女たちの服を脱がせ縄でしばり、生身の人間の盾をつくる。そこには女たちと同様に裸にされ縛り付けられているトモの姿もあり、その姿に動揺するセイたち。だがトモを乱暴に扱う男の腕にセイは矢を放ち、迷いなく人を射る姿勢をサワダに示した。セイたちは徐々にサワダを追い詰めるが、そこにカイが現れ裸の女たちを槍で突き、ひるむセイたちにサワダが勢いづく。しかしスギが機転を利かせてサワダを挟み撃ちにし、一気に形勢逆転。サワダを追い詰め、ついにサワダはその場から逃走する。セイはサワダの後を追い、とうとう追い詰めてセイはサワダの背中に矢を放つ。しかし致命傷には至らず、サワダは海に飛び込むが、そこにいたサメに体を食いちぎられて絶命した。

海側グループと山側グループは、基本的にお互いの集落に近づかないという取り決めを行い、戦いの幕を下した。そして海側グループにいたカイの身柄は山側グループに引き渡され、カイはトイレに幽閉された。

セイとカイの決着

集落では平和が訪れ、セイとリヴは、ボウシと彼女のタエと共に合同結婚式をとり行ってもらい、その日は皆が祝福した。
幸せに包まれた時間の中、幽閉していたカイの口車にのり、リョウはカイを外に出してしまう。カイはリョウをナイフで刺し、その場にたまたま居合わせたリヴを拉致してしまう。それに気づいたセイたちはリョウの最期をみとり、カイを捜索する。カイはリヴに山を案内させ、開けた草原に立つ木にリヴを繋ぎ、リヴの手首から出血させ、セイが夜襲にもちこまないように短時間で勝負をかけた。すでにセイはその場所まで辿り着いており、カイはセイに日没までに来ないとリヴが失血死すると呼びかける。カイはセイを殺す気であり、リヴさえ人質にとればセイの命は容易に奪えると思っていたのだ。逡巡しているセイの前を通りかかったのは、昔会った先住人だった。セイは自分が着ている服を先住人に着てもらい、入れ替わることでカイの目を逸らした。その隙にセイはカイに気づかれないように回り込み、カイの体に弓を射って殺害した。

その後島は開放され、以後島の住人とNGO団体により「イキルの島」と改名し、特別自治区を保ったまま未遂者の社会復帰プログラムとして活用されることになった。

『自殺島』の登場人物・キャラクター

主要登場人物

セイ

本作の主人公。自殺島に来た当初は、死ねないなら生きるしかない、自分がどうしたいのかわからない、など非常に受け身で主体性のない思考の持ち主だった。だが生きる事への問いを常に心の中に持っており、同じ未遂者であるリヴと共に生きる意味についての答えを模索していた。その過程でリヴと少しづつ心を通わせあい、やがてお互いなくてはならない存在となる。生きる意味、生きる資格を求めて、学生時代の先輩から教えられた知識を元に、矢と弓を自作し狩猟にでる。過酷なサバイバルを通し気づきを得て成長していく姿に、次第に仲間から頼られる存在になっていく。

リヴ

手にリストカットの傷を持つ、髪が長いハーフの女性。島に来る前、養父から性的虐待を受け、心に深い傷痕を残す。実はマリアという本名があったが、養父からこの名前を呼ばれながら虐待されていたため、名前そのものが呪縛となっていた。そのためセイが彼女のためにリヴと名前をつける。セイ(生)とリヴ(生きる)で同じ名前だという意味に、この名前を気に入ったため、以後彼女はリヴとして呼ばれることになる。セイと恋仲の関係。

山側グループ

リョウ

honjou_mamic6
honjou_mamic6
@honjou_mamic6

目次 - Contents