まんまるポタジェ(漫画)のネタバレ解説・考察まとめ

『まんまるポタジェ』とは集英社の漫画雑誌『YOU』で2015年2月号から連載されていた漫画で、家族の物語。作者はあいざわ遥。主人公の塔子はバリバリのキャリアウーマンだったが、過労で倒れた。夫のヒロは家族のために田舎に引っ越す。夫婦・親子、そこで出会う様々な人達との関係が深まっていく様子が描かれている。ほのぼのとした家族愛や人の優しさが感じられるのがこの作品の魅力である。全12巻。完結。

『まんまるポタジェ』の概要

『まんまるポタジェ』とは集英社の漫画雑誌『YOU』で連載されていた漫画で、家族の物語。作者はあいざわ遥。2015年2月より連載が開始され、コミックスは全12巻。完結している。主人公の木乃原塔子(きのはらとうこ)は東京でバリバリ働くキャリアウーマン。娘の木乃原ハナ(きのはらはな)の育児や家事は主に夫の木乃原ヒロ(きのはらひろ)がしている。塔子が過労で倒れたことをきっかけに、ヒロはハナをのびのび育てたいという思いもあり、田舎に引っ越してカフェを開業する。塔子は不器用ではあるが、優しい母であり、慣れない田舎暮らしの中で、距離のある娘と向き合っていく。登場する様々な人間の生き方、考え方が優しく描かれている。

『まんまるポタジェ』のあらすじ・ストーリー

田舎暮らしスタート

近所の人からたくさんの野菜をもらう塔子(右コマ中央上)

過労で倒れた主人公・木乃原塔子(きのはらとうこ)と夫・木乃原ヒロ(きのはらひろ)は田舎へ引っ越しをする。一人娘の木乃原ハナ(きのはらはな)は5歳で、仕事人間だった塔子にはなついていない。塔子は引っ越しを機に仕事をやめ、ハナと過ごす時間を大切にしていこうとする。ヒロはこれまでのレストランでの経験を活かし、田舎で喫茶店「カフェきのはら」を開業する準備を進めている。近所の人たちは優しく、野菜などを持ってきてくれるが、塔子は野菜が食べられない。これから始まる田舎暮らしに不安や疲れが出てきた塔子を気遣い、ハナがミニトマトをあげようとする。しかし、そこに青虫がついており、虫が苦手な塔子は「無理!」と大きな声で叫んでしまう。怒ったハナが走り出す先には川があり、慌てて止めようとした塔子は足をくじいて動けなくなってしまった。自分のせいでママが怪我をしたのだと感じているハナ。野菜を食べれば元気になると聞いたハナは、ママに元気になってもらうために、今すぐにでも畑で野菜を作りたいと涙ぐむ。それを布団の中で聞いた塔子は、夫とハナの優しさを感じ、これまでの自分を反省し、田舎暮らしを決意する。さらに畑仕事を自分がやりたいと言いだす塔子。畑がポタジェという見た目にも美しい家庭菜園になる日を目指して、家族での田舎暮らしが始まった。塔子はヒロの手伝いをしようとするが、皿を割ったり、料理をこぼしたりして、失敗ばかり。一方ヒロはフレンチの料理を地域の人達に試食してもらうが、高齢の方が多かったので、反応はあまり良くなかった。夫婦でゆっくりと話し、初心を思い出したヒロは地域の人に喜んでもらえるメニューを考えることができた。病み上がりの塔子を気遣って、ヒロは店のこと、家事、育児を全てこなしている。引っ越した先でハナが通う幼稚園ははだし保育を行っていたり、木登り、泥遊びが主流だが、前の幼稚園とのギャップがありすぎて、ハナははだしになることができない上に同じクラスの竹田太一(たけだたいち)から泥団子をぶつけられてしまう。ショックを受けたハナは家に帰っても元気がない。次の日、幼稚園でハナがお絵かきをしていると、女の子が話しかけてきて一緒にお絵かきを始める。ハナも嬉しそうだったが、そこへ太一があらわれ、絵にいちゃもんをつけ、泥をつけたので、女の子が泣いてしまった。それを見てハナは太一を蹴ったため、太一はケガをしてしまい、幼稚園から塔子へ連絡がいった。塔子は竹田ファームに謝りに向かうが、ハナは自分は悪くないと怒り、再び太一と喧嘩を始める。太一の母である絵里が仲裁に入り、お互いに謝ることができた。仲直りしたハナと太一は塔子の家の庭で遊ぶ。するとハナは裸足で外に出ることができた。

ゆっくり育つ家族の絆

ビストロに見習いで入った頃、ヒロは塔子に出会った。塔子はお客さんとしてヒロの働く店によく来ていたのだ。話したことはなかったが、ヒロは塔子に憧れていた。ある日、閉店後に走って来店する塔子に、思い切って、夕飯を作るのでヒロの家で食べていかないかと誘うと、塔子も快く家に行く。野菜嫌いな塔子に野菜が入っていることがバレないように調理したものを振る舞い、塔子もヒロの料理をとても気にいる。それがきっかけで、塔子はヒロの家に通うようになり、付き合い始めた。そのまま、結婚・妊娠とトントン拍子に進む。仕事が好きな塔子のために、ヒロは自分が仕事をセーブして子育てをすることにした。しかし、そのためヒロは同期にどんどん遅れをとっていく。ヒロが考案したメニューもビストロの方針とは合わない。また、子育てをする中でヒロは、ハナを広い屋外で思い切り遊ばせてあげたいと思うようになる。一方で塔子はお弁当を食べる時間もないほど忙しい日々を送っていた。そんなある日、店長がヒロに独立を勧めてくれ、認められていたことを知る。そこへ塔子が過労で倒れたという連絡が入った。塔子にこれまで甘えすぎていた自分を反省し、家族みんなが幸せになれる方法をみつけようと、引っ越しと開業を決意したのだった。引越し後は塔子の体調を気遣い、ゆっくりとやっていきたいヒロであったが、塔子はそんなヒロの役に立ちたくて、ヒロの許可なくテレビ局の取材を頼んでしまう。テレビ放送後は急にお客さんが増え、忙しすぎてハナの幼稚園の迎えを忘れてしまうほどだった。幼稚園が休みの土曜日はハナを一人にせざるを得なく、ハナは毛虫に刺されてしまう。塔子は多忙の事態を引き起こしてしまったことを反省し、ハナとの時間を大切にしたいと思い直す。ヒロにも謝り、思いを伝え合い、ヒロの優しさを大切にしていこうと改めて思う塔子なのであった。取材効果はすぐに無くなり、混雑しなくなったので家族の時間が戻った。そんな中、ポタジェで育てたミニトマトが初めて一つ赤くなり、ハナは竹田ファームのおばあちゃんに届けに行こうと提案する。塔子はポタジェの虫取りがなかなか終わらないので、ハナは一人で無断でおばあちゃんちに向かう。途中ヘビに出くわしたり、転んでしまいながらも畑に着いた。しかしそこは久本さんというカフェきのはらの常連のおじいちゃんの畑であった。ハナは最初、久本さんに野菜泥棒と間違われ怒鳴られてしまう。誤解は解け、麦茶やお菓子をたくさんもらって竹田ファームまで久本さんに送ってもらった。竹田のおばあちゃんはハナの家であるカフェきのはらにいると聞いて向かうと、そこではハナがいなくなったと大騒ぎになっていた。無事に見つかって泣きながら叱る塔子に、ハナは素直に謝る。そして竹田のおばあちゃんにミニトマトを食べてもらえたのだった。

塔子の挑戦

塔子は田舎暮らしには自動車が必要と思っている。ポタジェ用の苗を買いに行くにしても、ハナが熱を出した時に病院に連れて行くにしても、車が必要なのだ。しかし塔子は虫が嫌い過ぎて、車内に虫が入ってきた時点で事故を起こしてしまうと、免許取得に踏み切れない。また、ヒロに相談すると反対されるに違いないと思い込み、言えないでいた。何に悩んでいるかわからないヒロは、相談なしに結論を出し、行動に移してしまう塔子の性格を知っているので、これから何が起こるのか心配している。もしかしたら塔子が田舎暮らしをやめて東京に戻りたいと思っているのではと勘違いし、ちょっとズレた視点で必死に塔子を励ましていた。ヒロの思いが通じて、塔子はようやく車の免許を取りたいとヒロに話すことができた。ヒロは拍子抜けしていたが、ひとまず誤解は解け、塔子は教習所へ通うことになる。教習所ではブルーベリー農園の娘であり、A女短大生の三橋奈緒(みはしなお)に出会う。塔子は仮免は2回落ちていて、イヤミな教官にイヤミを言われている。三橋はキツイ性格だが美人で根は優しいので、落ち込んでいる塔子を励ましてくれた。ただ、教習中、三橋はイライラしていることが多い。なぜなら三橋の彼が東京の大学に進学して遠距離となっているからだ。そのため三橋は車の免許を取ろうと頑張っていたが、電話では喧嘩が多くすれ違っていた。一方で、カフェきのはらではヒロがデザート作りに割く時間がなく、売り切れることが多くなり困っていた。そんなとき、三橋の母が作ったブルーベリーケーキを三橋が塔子に差し入れてくれる。それがきっかけでカフェきのはらでは、三橋の母が作るケーキを出すことになった。しばらくして、三橋も塔子も卒業検定に受かり、残すは本試験だけとなっていた。これまでイヤミだった教官も、試験の前に食べると良いと飴をくれた。後日、免許センターで本試験を受けた二人は一緒に合格をする。合格に喜んでいると、なんとそこに三橋の彼もいて、一緒に合格していた。三橋の彼も三橋にいつでも会いに行けるよう、免許を取ろうとして忙しかったのだ。それがわかり、三橋と彼は仲直りする。さっそく、ケーキの配達や彼の元へ向かうため、車を運転している三橋なのであった。

陶芸家との出会い

塔子が何枚もお皿を割るので食器を買い足そうとしていたところ、道の駅にとてもいい感じの食器を見つける。地域の陶芸家の佐藤トシオ(さとうとしお)が作ったもので、陶芸教室も開催している。トシオが働く工房の名前は「さとう陶工房」。そこで塔子とハナは工房を訪れてみることにした。奥さんの佐藤ユリ(さとうゆり)は妊娠中。産休前は役所の職員として働いていて、とても明るい性格で、塔子とハナのことを歓迎してくれた。一方夫のトシオは、無愛想で文句ばかり言いながら陶芸を教える。ハナがひよこを作っているのをくだらないとも言っていた。塔子が作ったお茶碗に、ハナが作ったひよこをのせて作品は完成。焼き上がり後に連絡することになっていた。ちなみにトシオはハナに対抗して大量にひよこを作っていたという可愛い一面もある。トシオは、最近作品づくりに行き詰まっていて、気に入らない作品は全て壊してしまっている。その流れで、ハナと塔子が作った作品も間違えて壊してしまった。トシオとユリは木乃原家に謝罪し、替わりの作品を見せてくれる。感動したハナはトシオに作り方を教わりながら、真似て作ると前回より気に入った出来で大喜びだった。トシオは何かひらめいたように、子供食器ばかり作るようになる。久しぶりに楽しそうに仕事をする夫にユリも嬉しそうだった。カフェきのはらでもさとう陶工房の皿を注文したり、販売スペースを作ることになった。しばらくして、無事に男の子が誕生し、タクと名付けられた。トシオはほとんど子育てに参加しないので、ユリが一人で育児をしている。不満が溜まったユリはトシオの失敗作の皿を憂さ晴らしに割り続ける。驚いたトシオはユリの母親に連絡し、来てもらった。母にタクを見てもらい、久しぶりにユリは少し休むことができる。母と話すことでトシオの不器用な愛情にも気づくことができた。カフェきのはらに置く食器を取りに来た時に塔子に誘われ、ユリもオープンガーデンに参加することになった。オープンガーデンは、マルシェも兼ねていて、地域の人たちが出店する。露店の方が盛況で、庭をみてもらうという本来の目的は薄れている。しかし、木乃原家が築き上げた地域の人達との温かいつながりを感じるイベントになっていた。

コーヒー店とのつながり

藤田(ふじた)は、塔子の住む地域の駅前で自家焙煎のコーヒー店を営んでいる。藤田はジャズが静かに流れ、子どもの入店お断りの店で、頑固で無愛想なマスターを目指していた。しかし、実際は高齢者のたまり場となり、ジャズなど聞こえないぐらい話し声が賑やかだ。至高の1杯をブラックで味わってほしいのにコーヒーには砂糖やミルクをたっぷり入れられてしまう。煮物や野菜の差し入れも絶えない。コーヒー店開業前は会社員をしていて、クレーム担当を任されることが多く、謝り癖がつくほどだった。そんな自分が嫌で、妻には止められたが振り切って田舎へ来たのだ。ある日地域の餅つき大会に参加して、太っていた自分が野菜中心の生活で痩せて健康になっていたことに気づく。餅つきも軽やかで、地域の人達がこぞって褒めてくれることがまた嬉しかった。藤田が本当は優しいことは地域の人達も知っていて、地域にすっかり馴染んでいた。そこへ藤田の息子の藤田洋一(ふじたよういち)が自転車の旅で父親のもとに訪れる。藤田は驚いて喜ぶ。息子は地域に馴染んでいる父親を見て、安心した様子だった。カフェきのはらでは料理は好評だが、コーヒーだけは不評である。藤田もカフェでコーヒーを飲んでそのまずさに愕然とし、コーヒーの入れ方をヒロに教えることにしたのだった。

ハナの卒園

ハナの通う幼稚園は卒園シーズンを迎え、ハナはまもなく小学生になる。年下の子達に譲ったり、いろいろなことを教えられるしっかりとしたお姉さんに成長していた。幼稚園の先生や友達はさみしくて泣いている。しかし、全員同じ学校へ行くのだからと、ハナは周りの子供や大人がなぜ泣いているのかを理解できないでいた。むしろ、ハナは早く小学生になりたくてウズウズしていた。なぜなら、親がいないと家の外に遊びに行けないからである。小学生になって一人で遊びに行くことを楽しみにしていた。結局卒園式当日も泣かなかったハナだが、春休みになり、もう幼稚園に通わないことがわかると、幼稚園が恋しくなる。そこでハナは一人で自転車に乗り、幼稚園へ行こうとするが、家の前で車を避けようとして転倒してしまう。幼稚園に行こうとしていたことを塔子に話すとハナは泣き出してしまった。ハナの気持ちを理解した塔子はハナと一緒に幼稚園へ行く。幼稚園へ着くとそこには太一や他の卒園児も遊びに来ていた。卒園児を送り出して抜け殻になっていた担任の先生はとても喜ぶ。友達や先生に会えたハナは元気になり、また遊びに来るねと言って帰っていった。

『まんまるポタジェ』の登場人物・キャラクター

主要人物

木乃原塔子(きのはらとうこ)

主人公。目の上の長さの前髪で、ストレートのロングヘアスタイル。バリバリのキャリアウーマンで、娘の子育てと家事を旦那に任せ、仕事を頑張っていた。しかし、過労で倒れてしまい、仕事を辞める。これまであまり関われなかったことを反省し、娘、木乃原ハナ(きのはらはな)との関係を立て直そうと努力する。旦那、木乃原ヒロ(きのはらひろ)の役に立とうとカフェを手伝うこともあるが、食器を割るなどドジで失敗ばかり。野菜が嫌いで食べられなかったが、ヒロの料理や新鮮な野菜のおかげで少しずつ克服している。虫が大嫌いだが、畑をやりながらわずかながら処理できるようになった。持っている服はジャージかスーツのみだったので、買い足したがどれも畑作業向きでオシャレとは程遠いものである。自動車免許は以前教習中、車内に虫が入ってきて事故を起こしてから、取得せずにいた。しかし田舎で暮らしていくには車が必要と考え、苦戦しながらも取得する。田舎に来ても頑張ってしまう性格は変わっていなくて、畑仕事も過密なスケジュールを立てて、試行錯誤しながら頑張っている。オープンガーデンをやりたいがあまりにも貧相な庭なので、田舎で知り合った人たちに露店を出してもらい、マルシェのような形式にすることで盛り上げた。塔子の優しい人柄が田舎で人と人とのつながりを作っていく。

木乃原ヒロ(きのはらひろ)

塔子の旦那。木乃原ハナ(きのはらはな)の父親。料理人。前髪が短く短髪。趣味はDIY。塔子の妊娠をきっかけに仕事をセーブし、子育てと家事と仕事を器用にこなしていた。家族のために仕事をセーブしていたが、塔子が倒れたことをきっかけに、これまで塔子に頼りすぎていたことを反省し、独立を決意。田舎で自分の店「カフェきのはら」をオープンする。面倒見が良く、塔子の野菜嫌いを克服させるために、野菜が入っていることがわからないようにレシピを考え、塔子の健康管理までしている。ほとんど怒らないが、思ったことをどう伝えていいかわからない。塔子が田舎暮らしに慣れてくると、だんだん自分の役割が店で調理するだけになっていることに気づき、自信をなくす。家族を幸せにするために田舎に来たのに、結局塔子に負担をかけてしまっていて、不甲斐なく感じる。それでも竹田絵里(たけだえり)の夫に話を聞いてもらったり、塔子に感謝されたりするうちに幸せを感じ、乗り越えていった。

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