刑務所の中(漫画・映画)のネタバレ解説・考察まとめ
『刑務所の中』は『アックス』にて連載された、銃刀法違反で捕まった花輪和一の実話に基づく漫画であり、これを原作とした崔洋一監督による映画である。逮捕後の刑務所生活のリアルを知ることが出来る作品で、他の囚人達とのやり取りがユーモアに富んだ表現で描かれている。本作は異色の獄中記漫画」として話題となり、第5回手塚治虫文化賞の最有力候補となった。受賞は「マイナー漫画家を自負する自分としてはいかなる賞も貰う資格が無い」という花輪の信念により固辞した。
「銭解放」
刑務所内では配食係などをやる事でお金を稼ぐ事が出来た。
それは微々たる額なのだが、囚人達はこれを駆使して鉛筆やタオルなどの私物を買うのだった。
檻の中は不自由だが、ここだからこそ自由なものもある。
それは家賃、ガス代、水道代、電話料金等。
毎月必ずある支払いから完全に解放されるのだ。
特に食費がタダなのはでかい。
シャバに出れば国民健康保険の督促状、国民年金保険の督促状。
花輪和一が出所した際に受領した作業金額は、59,025円だった。
「免業日」
免業日の起床時間はいつもより1時間遅い。
この日も朝から食事が配膳されるのだが、ご飯の量が立ち仕事と座り仕事で決まっており、それ以外のオカズは均等に分けられるし、自分のオカズを他人にあげることは許されない。
沢庵を1つ貰っただけで懲罰に落ちた班長もいるくらいだ。
これは強い者が弱い者の食事をとらない為の配慮である。
朝食が済むと、免業日はゆったりする。
囚人には階級があり、階級の上の者であれば集会に参加して映画を見る事も出来る。
3級であれば1ヶ月おきに1回、2級であれば毎月1回と言った具合である。
そしてお菓子とジュースも配られるので、映画を見ながらこれを食べるのである。
その日はアルフォートとコカコーラだった。
集会場ではドヴォルザークの「新世界」が流れていた。
映画はクリント・イーストウッドの「許されざる者」。
集会が終わると雑居房に戻るのだが、囚人達は集会の土産話を楽しみにしているのだった。
シャバでは甘いものが溢れているので、甘さ控えめのお菓子が好まれる傾向にあるのだが、刑務所内では甘いものは少ないため、甘い甘いお菓子が好まれたのだった。
その後、囚人達は読書をしたり書き物をしたり、昼寝をしたりと自由な時間を過ごすのだが、外の天候や季節とは全く無縁の生活となるため、豚に思いをはせながら泥のように眠る花輪和一だった。
「囚人の欲」
囚人には定期的にチリ紙が配られる。
これは無くなればまた支給されるため、大事に使う必要はないのだが、何故か皆これをロッカーの奥にせっせと溜め込み積み上げてゆく。
なんか気分が良いという理由であって、これは人間の欲である。
この日、工場内では覚醒罪で捕まった囚人が乱闘騒ぎとなり、工場へ戻ってくることは無かった。
彼は真面目に仕事を務め、乱闘も最初に殴られた被害者だったのだが、応戦したため同罪となったからだ。
分かっていてもやらずにはいられない欲が人間にはある。
花輪和一が再びロッカーをあけると、今まで積み上げてきたチリ紙は全て没収されていたのだった。
「軽屏禁」
不正連絡を行った花輪和一は10日間、独居房に入れられたのだが、とにかくやる事がない。
ただ定位置で正座をするだけなのだが、寝ることは許されず入浴も禁止なので、ただひたすらに苦痛である。
何もする事がない時に思い出すことと言うのは、だいたい碌なことではない。
次の日の朝、起きてからわざと頭をハッキリとさせないように頑張ってみた事もあったのだが、特に得られたものはなかった。
どうせやる事もないのだからと、花輪和一はこれを諦めた。
その後、10日ぶりの風呂に入る事が出来た花輪和一は、翌日函館に押送されるのだった。
『刑務所の中』の登場人物・キャラクター
303号室の受刑者たち
花輪和一(はなわかずいち/演:山﨑努)
受刑者番号222番。
罪名は銃砲刀剣類等不法所持、及び火薬類取締法違反。
漫画家であるが故に受刑した異色の受刑者のため、感覚が他の受刑者とズレていることが多い。
性格は大人しく優しい心の持ち主である。
伊笠(いがさ/演:香川照之)
受刑者番号134番。
罪名は婦女暴行罪及び未成年者売春。
おぼっちゃま受刑者で血液型はB型。メガネをかけている。
田辺(たなべ/演:田口トモロヲ)
受刑者番号124番。
罪名は殺人罪。
303号室で唯一の二級受刑者。
小屋(こや/演:松重豊)
受刑者番号128番。
罪名は窃盗罪。
左腕に自分で刺青を彫ったのだが「仁義」を間違って「仁議」と彫ってしまう。
同じ部屋の受刑者からは「仁議の小屋」とからかわれている。
竹伏(たけふし/演:村松利史)
受刑者番号62番。
罪名は覚醒剤取締法違反。
明るくおしゃべりが好き。
娘は高校を辞めて働いている。
主な受刑者たち
高橋(たかはし/演:大杉漣)
受刑者番号238番。
見栄を張る癖があり、皆から嫌われている。
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目次 - Contents
- 『刑務所の中』の概要
- 『刑務所の中』のあらすじ・ストーリー
- 「ニコチン拘置所」
- 「プクプク拘置所」
- 「それじゃさま懲罰房」
- 「5匹の生活」
- 「おぼっちゃま受刑者」
- 「うれしいお正月」
- 「冬の1日」
- 「願いますの壁」
- 「日本崩壊食」
- 「檻花火」
- 「銭解放」
- 「免業日」
- 「囚人の欲」
- 「軽屏禁」
- 『刑務所の中』の登場人物・キャラクター
- 303号室の受刑者たち
- 花輪和一(はなわかずいち/演:山﨑努)
- 伊笠(いがさ/演:香川照之)
- 田辺(たなべ/演:田口トモロヲ)
- 小屋(こや/演:松重豊)
- 竹伏(たけふし/演:村松利史)
- 主な受刑者たち
- 高橋(たかはし/演:大杉漣)
- 大内(おおうち/演:木下ほうか)
- 岸田(きしだ/演:長江英和)
- 中井(なかい/演:戸田昌宏)
- 原山(はらやま/演:森下能幸)
- 浜村(はまむら/演:窪塚洋介)
- 掃夫友田(ともだ/演:伊藤洋三郎)
- 青島(あおしま/演:黒沼弘己)
- 藤島(ふじしま/演:草薙良一)
- 向かいの雑居房の受刑者(演:林海象)
- 『刑務所の中』の用語
- 拘置所
- 刑務所
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- 『刑務所の中』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
- 「あの頃牢屋に入るなんて想像してなかったな。人生って不思議だな」
- 「甘シャリ」を食べる受刑者たち
- 『刑務所の中』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
- 花輪和一が拘置所内で読んだ官本