世界の終わりの魔法使い(せかまほ)のネタバレ解説・考察まとめ

『世界の終わりの魔法使い』とは、西島大介による漫画作品である。略称は「せかまほ」。2005年から刊行され、第1巻から3巻までは描き下ろし漫画として発表されているが、第4巻以降は漫画雑誌、同人誌、pixiv等様々な方法で発表されている。また、ラジオドラマ、オーディオブック等へのメディア展開もされている。魔法使いのサン・フェアリー・アンと魔法を使えない少年ムギが織りなすファンタジーラブストーリーである。ポップでキュートな絵柄ながら恋愛や戦争が複雑に絡み合うストーリーが多くの人を魅了している。

『世界の終わりの魔法使い』の概要

『世界の終わりの魔法使い』とは西島大介による漫画作品である。略称は「せかまほ」。2005年に第一部『世界の終わりの魔法使い』が河出書房新社より描き下ろしで発行され、以降、2006年に第二部『世界の終わりの魔法使いII 恋におちた悪魔』、2009年に第三部『世界の終わりの魔法使いIII 影の子どもたち』がそれぞれ描き下ろしで発行された。それ以降は発表形式が異なり、第四部『世界の終わりの魔法使いIV 小さな王子さま』は2007年5号から2008年9号まで『モーニング・ツー』にて連載され、2012年に単行本が発売。第五部『世界の終わりの魔法使いⅤ 巨神と星への旅』は2019年に第一話を同人誌にて発表し、それ以降はpixivFANBOXにて2019年12月から2021年5月まで連載。第六部『世界の終わりの魔法使いⅥ 孤独なたたかい』は全話pixivFANBOXにて2021年12月から2022年3月まで連載された。それぞれ2021年12月、2022年3月に単行本が発行されている。
第三部より先に第四部の連載が始まっているが、これは編集者が第三部の原稿を発行前に紛失したためである。第三部制作中から第四部がそれまでとは別の出版社にて連載されることが決定しており、第三部発行の目途が立たないまま連載が開始された。
メディア展開もされており、ラジオドラマが2013年7月22日から26日にNHK-FMの『青春アドベンチャー』内で放送された。2020年には本作をボードゲーム化した『影の魔法と魔物たち』が通信販売にて発売された。2021年には第一部がオーディオブック化され、Audibleにて配信された。
既刊は第一シリーズと第二シリーズが分かれており、第一部から第三部まではサン・フェアリー・アンとムギの物語、第四部から第六部はノロ王子ことテオドールを主人公とした物語となっている。作者の構想の段階ではこれらを含めて9部作となる予定で、第七部から第九部はアンの娘を主人公とした物語になる予定とされている。
ポップでキュートな絵柄ながら恋愛や対立等の人々の感情と魔法や戦争が複雑に絡み合うストーリーに多くの人が魅了されており、声優の平野綾もファンを公言している。

『世界の終わりの魔法使い』のあらすじ・ストーリー

第一部『世界の終わりの魔法使い』

魔物に襲われているムギ(右)を助けたのは謎の魔法使いサン・フェアリー・アン(左)だった

今から1000年前の魔法大戦争で惑星をいくつも壊した「悪魔」と呼ばれる最強最悪の魔法使いを閉じ込めている刑務所・通称「魔王のお城」。その近くの村に住む少年・ムギは村で唯一魔法が使えなかった。ある日、ムギは科学の力で開発したエア・ボードで空を飛ぼうと試みるも、失敗して魔王のお城を囲む森に墜落してしまう。そこで魔物に襲われたムギを助けてくれたのは、謎の魔法使いの少女サン・フェアリー・アンだった。アンは何故かムギにちょっかいをかけてくる。
村で行われたほうきレースに参加するムギとアン。そこでアンはムギに自分の正体を語る。魔王のお城に閉じ込められた魔法使いとは自分のことだ、と。ムギが魔法使いを脱獄させてしまったと慌てると、険悪な雰囲気になりアンは去ってしまう。
そんな中、突如魔法学校の先生がムギの目の前で消失する。アンに再び会おうとするムギ。やっとアンを探し出したムギに、彼女は全て自分が作り出した「影」なのだ、と話す。だが、そのアンさえも魔物に襲われ影となって消失してしまう。村人もどんどん消失し、世界が消えていく。残った魔物に襲われながらも、必死に抵抗し、刑務所の内部までたどり着くムギ。そこには、本物のアンが魔法陣で封印されていた。ムギが愛の力で封印を解くと、アンは魔法の力で魔物たちを制圧し、世界の崩壊を止める。
影の魔法で村を再建したアンは、ムギに魔法使いの星へ一緒に行こうと提案する。躊躇するも、抵抗するのは無駄だと察するムギ。何故なら彼自身もアンの作った影だからだ。

第二部『世界の終わりの魔法使いII 恋におちた悪魔』

第一部より1000年前、人類対魔法使いの最終戦争である「魔法大戦」は長期に渡り続いていた。悪魔族最後のひとりであるサン・フェアリー・アンは魔法使いの戦闘部隊である魔法星団第8精鋭部隊を率いて、人類側の戦闘部隊「発達した科学団」との争いを繰り広げていた。ある戦闘で、トガリミミ族ノロ家第二王子テオドール・ノロの放った影の魔法に飲み込まれたアンは、不可侵条約で守られた「最後の地球」に墜落する。そこで彼女を助けたのは「発達した科学団」入団を目指し勉強中の少年・ムギだった。助けた見返りとして魔法で学校の課題を手伝わせようとするムギを殴りつけるアン。二人の出会いは最悪だった。一方、魔法星団はアン救出部隊を「最後の地球」に向かわせる。また、「発達した科学団」もアン保護のためア゛ー少佐を「最後の地球」に向かわせていた。
最初の出会いこそ最悪だったが、徐々に心を開き始めるアンとムギ。「また会えるかな」と問うムギに本気で「会いに来いよ!」と告げるアン。そこへ現れたア゛ー少佐は保護命令を無視してアンに攻撃を開始する。ア゛ー少佐はアンによって即座に制圧されるが、ノロ王子が参戦しアンと戦闘を始める。
時同じくして、魔法星団大魔導士と発達した科学団提督がノロ王子の謀略により暗殺される。ノロ王子は全ての罪をアンに押し付け、不可侵条約で守られていた「最後の地球」で大規模な戦争を開始する。王子の攻撃にアンは必死に抵抗するが、影のゴーレムに囚われ窮地に陥る。その時、ムギが勇気を振り絞ってアンを救う。その姿に、恋に落ちるアン。しかし、ムギは戦闘の最中に命を落とす。恋に落ちたことで悪魔として覚醒したアンは全てを巻き込み崩壊させる。
人間の世界すべてと魔法使いの世界のほとんどを崩壊させたアンは、罰として時の無い惑星(刑務所)に幽閉される。そこでアンは願う。1000年後、またムギに出会えることを。

第三部『世界の終わりの魔法使いIII 影の子どもたち』

第一部から続く世界。1000年の時を経て「時の無い惑星」から脱出したアンは、自ら作り出した影の少年ムギを連れ、故郷である魔法星団第一惑星ノロへ帰還する。アン不在の間に惑星ノロは荒廃していた。アン幽閉後にノロ王子の影の力によって王国が再建されたものの、王子が死に、魔法使い達の力は衰えていった。一方で影の代償として生み出された魔物たちが進化を遂げ、残った数少ない魔法使い達と争いを繰り広げていた。
ノロ王子の妹分ネズの手により魔物たちに囚われてしまうムギ。そこで出会ったのは魔物の王・黒きドラゴンだった。永遠の命により孤独となり、絶えない退屈に苛まれていた黒きドラゴンは、ムギを待つ「死」を羨んだ。そこへアンがムギの救出へ現れる。黒きドラゴンはアンを待ち侘びていたと語る。何故なら、魔物を生み出したのはアンだったからだ。ノロ王子の魔法の代償として生み出されたと思われていた魔物は、本当はアンにより生み出されていた。時の無い惑星でアンが影を作り出す度、惑星ノロに魔物が生み出されていた。その魔物の集合体たる黒きドラゴンはアンを母(ママン)と呼び、退屈を除くためアンに襲い掛かる。
黒きドラゴンと戦うアンを救い出す側に回ったムギは、科学の力で対抗する策を思いつく。1000年前にアンに破壊された最古のゴーレムの心臓を作り直し、ゴーレムを操って黒きドラゴンと戦おうという作戦だ。
魔法使いたちと連携しゴーレムを掌握したムギは、アンを救出する。そのまま魔法使いたちをゴーレムで回収し、惑星ノロを脱出しようと試みる。しかし、黒きドラゴンの追撃によりアンとムギが離脱。魔法使いたちはそのまま新たな世界へ旅立つ。残ったアンとムギは黒きドラゴンに名前を与えることで孤独から解放する。やがて影の存在であったムギが消え、アン一人が残る。旅の果てに辿り着いた地でアンは再びムギと出会う。そこは世界の終わりとも世界のはじまりともわからない。

第四部『世界の終わりの魔法使いIV 小さな王子さま』

第二部より更に昔、シリーズ中最も過去の物語。いくつもの星が集まり、さまざまな種族の魔法使いが共存する魔法星団。その星団の中心にあり魔法王国の王都である惑星ノロに、内部に世界を終わらせる力を宿すと言われる悪魔の彗星が近づいていた。魔法星団全域を支配する王族のトガリミミ族ノロ家第二王子テオドール・ノロは、王族であるにも関わらず魔法が苦手なことで馬鹿にされ続け、いっそのこと悪魔の彗星に世界を終わらせてほしい、と思っていた。反対に乱暴で野心家の第一王子クリスパン・ノロは、預言者の種族である未来視と結託し、悪魔の彗星を破壊しようと企てていた。
悪魔の彗星が最接近する夜、クリスパンが彗星に攻撃するも破壊することはできなかった。しかし、それによって砕けた彗星の中から少女が現れる。悪魔族の血を引く魔法使いの少女サン・フェアリー・アンだった。彼女とテオドールが初めて出会う瞬間だった。
いつの間にか魔法使いの世界に混ざり、テオドールと行動を共にするアン。その力は強大なもので、テオドールにプレッシャーをかけてきたクリスパンを殺害してしまう。その姿にテオドールは恋に落ちる。
なんとか首から上だけ再生されたクリスパンは、その体のまま未来視の拠点を訪ねる。兼ねてからの疑問があったからだ。何故か父のノロ国王を含む多くの人々がテオドールを支持する。自分より圧倒的に能力が優れているにも関わらず。未来視が未来の惑星ノロを見通すと、そこでは長きに渡り続いていた人間と魔法使いの戦争である魔法大戦が終結し、トガリミミ族が国王として君臨していた。しかし、それはクリスパンではなくテオドールの姿であった。絶望するクリスパンに未来視が提案した打開策は、無限の複製を作り出す「影」の魔法を使い、分身として生き長らえることであった。
悪魔であるアンに心を奪われることにより「影」の魔法を発動させるクリスパン。だが、現れた影はすぐに消滅してしまう。クリスパンが影を操れなかった理由は、彼自身もノロ国王に作られた影であったからだ。国王は事故でクリスパンを失った悲しみから、クリスパンを影の魔法で複製していた。国王は区切りをつけるため、影のクリスパンを消し去り、テオドールやアンを含む全ての人々からクリスパンの記憶全てを消し去る。
一人前の王子になることを決めたテオドールは勇気を出してアンに告白するが、断られてしまう。アンの心の中にはまだクリスパンの記憶が残っていたのかもしれない。

第五部『世界の終わりの魔法使いⅤ 巨神と星への旅』

第四部と第二部の間の物語。人類対魔法使いの最終戦争「魔法大戦」は終結の気配すら見せず、果てしなく続いていた。人類史上最高の天才頭脳であるドクタームギは、平和調停のため地球から極秘裏に魔法王国を訪れる。途中、魔法使いの少女サン・フェアリー・アンの攻撃を受けながらも、なんとか魔法星団を束ねるトガリミミ族が支配する「惑星ノロ」に到着した。そこでムギが全魔法使いを統べるリーダーのノロ国王より受けた依頼は、魔法星団の最強兵器「ゴーレム」の開発であった。
魔法を科学的に解明しゴーレムの開発を続けるムギは、全く解析できない力の存在に気づく。それが「影」であった。そのことを問いただされた国王は「影の魔法」の存在を明かすとともに、その副作用についても明かす。影の魔法は完全な複製を作り出すことのできる力だが、同時に邪悪な「魔物」を生み出す。ゴーレムの開発の本当の目的は、戦争を終わらせることではなく、魔物に対抗するためであった。
順調に開発が進むゴーレムであったが、ある時魔法星団の魔物討伐隊が凶暴な魔物に襲われ、やむを得ず起動されてしまう。ゴーレムはその強大な力により魔物たちを討伐していくが、更に凶暴な魔物によって破壊される。魔法王国を壊滅させるかに見えた魔物の進軍は、悪魔の力に覚醒したアンによって制圧され、魔法王国は救われる。
その後、ドクタームギはゴーレム開発を失敗とみなされ、魔法王国から地球へ送還される。地球ではスパイ容疑など複数の罪で投獄されてしまうが、なんとか刑期を終え、人類の後進育成に尽力した。魔法戦争は一向に終わらず、ドクタームギがどれだけ長い時間をかけても解明されないものが山ほどあった。魔法について思うとき、ドクタームギはアンのことを思い出していた。

第六部『世界の終わりの魔法使いⅥ 孤独なたたかい』

第二部と第一部の間の物語。第二次魔法大戦は終結した。生き残った魔法使いたちの世界には平和が訪れていた。魔法星団の将軍でチビネズミ族のネズは、平和な世界にも関わらず何故か増員していく軍事編隊「影の騎士団」に疑問を持っていた。
一方、魔法星団を統べるトガリミミ族の国王テオドール・ノロのもとに謎の黒い少年が現れる。自らを魔物の森で生まれたと語る少年は、テオドールの使う影の魔法の副作用により魔物が現れるということを明らかにする。その様子に脅威を覚えたテオドールは、時の無い惑星へ少年を置き去りにしてしまう。
数か月後、テオドールは魔物の襲撃に対抗するため影の騎士団やネズと共に戦線へ出る。魔物の猛攻の中、窮地に陥るネズをテオドールが救う。しかし、テオドールは魔物の攻撃を受け、消滅してしまう。その姿は人間ではなく影のようだった。ネズは、共に戦っていたテオドール自身が影、つまりコピーであることに気づき、本物の彼を探す。
ネズはテオドールと初めて会った思い出の場所、地下道で再び彼と出会う。その姿はあまりにも変わり果てた姿だった。テオドールは国を統治するため自身や騎士団を影によって作り出した結果、魔法の力を使い果たした心身共にボロボロの状態になっていた。ネズは弱り切った国王を見限り、再び前線へ戻ってくる。もう助けは見込めず、魔物に制圧されそうになったとき、現れたのはボロボロのテオドールだった。彼は最後の力を振り絞り、最強の魔法使いサン・フェアリー・アンの影を作り出す。その力は強大で、ほんの数秒で魔物の軍勢を吹き飛ばした。テオドールは力尽き死んでしまい、影の軍団も姿を消す。
残った魔法使いと知能ある魔物はお互いに干渉しないことと影の魔法を使わないことを取り決めた。ネズはボロボロになった惑星ノロを再建させることを心に決める。遥か遠くの星の無い惑星では、黒い少年が進化し黒きドラゴンとなり、惑星ノロへ向けて飛び立った。

『世界の終わりの魔法使い』の登場人物・キャラクター

主要人物

サン・フェアリー・アン

CV:金元寿子(オーディオドラマ版)
第一部~第三部の主人公。魔法使いの少女であり、悪魔族最後の一人。世界の全てを破壊する力を持つ。恋をすることにより、悪魔の力を覚醒させる。悪魔の彗星の中で眠ったまま惑星ノロの到来。クリスパンの攻撃によって目を覚ます。第二次魔法大戦の戦犯として時の無い惑星で幽閉されている間に影の魔法を修得。トガリミミ族ノロ家以外で影の魔法を修得した唯一の存在である。

ムギ

CV:平田真菜(オーディオドラマ版)
第一部~第三部の主人公。人類の少年。発達した科学団の創設者を祖父に持ち、自信も発達した科学団に憧れているが、気が弱く落ちこぼれ。 サマースクールで行った最後の地球でアンと出会い、恋に落ちる。オリジナルは第二次魔法大戦の終期に魔法使いの攻撃によって死亡。以降は、サン・フェアリー・アンが作り出した複製がアンと行動を共にする。

maedamaeda
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