ジャイアントロボ 地球が静止する日(GロボOVA)のネタバレ解説・考察まとめ

『ジャイアントロボ THE ANIMATION 地球が静止する日』とは、1992年から1998年にかけて発売されたOVA。横山光輝原作の特撮番組『ジャイアントロボ』が原案だが、主人公と主役ロボットの見た目と名前以外は完全に別物である。横山の他作品のキャラクターがスターシステムで次々と登場するのが特徴。主役ロボットの略称からとって「Gロボ」とも呼ばれる。
国際警察機構に所属する草間大作とジャイアントロボは、世界的犯罪組織BF団と戦いつつ、夢のクリーンエネルギー・シズマドライブの謎に迫っていく。

梁山泊を襲撃したヒィッツカラルドは、スナッピング(いわゆる指パッチン)と共に真空波を放ち、人でも兵器でも一瞬で両断するというすさまじい技術を持っていた。大作の前に現れた際にも「ただし真っ二つだぞ」と言って、存分にその力を見せつける。
出番こそ短いものの、そのアクションの圧倒的な見栄えの良さだけで人気キャラクターとなったヒィッツカラルドを象徴するセリフである。

中条「私は長官としてだれ一人として救えなかった。友として何もしてやれなかった。そんな自分に腹が立つ!!」

国際警察機構北京支部の長官である中条は、同時に同組織最強の戦士・九大天王の1人である。長官という立場から前線に立つことができず、ただ仲間たちが倒れていく様を見ていることしかできなかった彼は、聖アーバーエーに侵攻してきた大怪球の前に1人立ちはだかり、唐突にシャドーボクシングを始める。
これに気づいた幻夜が「何をやっているのか」と戸惑う中、中条は最強最大の大技ビッグバン・パンチの発動を宣言。「私は長官としてだれ一人として救えなかった。友として何もしてやれなかった。そんな自分に腹が立つ!!」と絶叫し、そろえた両足からジェット噴射の如く煙を噴出して飛翔する。

何をやっているのか分からないが、とにかくすさまじい迫力と勢いで押し切られ、問答無用で「カッコいい」と思わされてしまう。今川監督の演出の妙味、その到達点の1つである。

黄信「真実とは問いかけることにこそ、その意味もあれば価値もある」

幾多の戦いの果て、「“犠牲無しに幸せを得ることはできない”のがこの世の真実だとしても、自分は生きている限り“本当にそうなのか”と問い続け、違う答えを探し続ける」と宣言した大作。梁山泊の守備隊をまとめる黄信は、大作利決意を「天晴」と称賛し、「真実とは問いかけることにこそ、その意味もあれば価値もある」との言葉を贈る。
本作のみならず、今川監督作品を貫く重厚なテーマの1つである。

幻夜「こんな恐ろしいものを僕に渡しておいて、どうしろって言うんだよ!」

フォーグラー博士の真意を知った幻夜は、自分が復讐のために費やした10年、その間に犯した数々の罪、そしてたった今妹の銀鈴までも殺したその全てが無駄どころか平和を願った父の想いを踏みにじるものだったと悟り、恐慌。「今さらそれはないじゃないですか」、「一言そうと言ってくれれば」と慟哭し、「こんな恐ろしいものを僕に渡しておいて、どうしろって言うんだよ!」と絶叫する。
幻夜の立場になってみればまったくもってもっともな言い分であり、誤解と勘違いで大罪を犯してしまった彼が哀れにさえ思えてくる。

アルベルト「世界の運命は、こんな若造などに好きにさせるものではない。全ては我々BF団と貴様ら国際警察機構とで決着をつけるものだ。違うか!」

大怪球との最後の戦いの中、ジャイアントロボを援護するように現れたアルベルト。「十傑集をなめるな」と雄々しく宣言した彼は、ジャイアントロボを阻む大怪球の熱波を吸収していく。この際、彼は「国際警察機構に加担するわけでも、慣れ合うわけでもない」と前置きしつつ、「世界の運命は、こんな若造などに好きにさせるものではない。全ては我々BF団と貴様ら国際警察機構とで決着をつけるものだ。違うか!」と問いかける。
ただ「世界の命運は我らが握るべきものだ」という、高慢とも呼べるほどの誇りに従い、アルベルトは命を懸けて大怪球に立ち向かう。声優を担当した秋元羊介の鬼気迫る怪演がすさまじい迫力を醸し出す、本作屈指の名シーンである。

『ジャイアントロボ THE ANIMATION 地球が静止する日』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

偶然が生んだヒィッツカラルドの真空波

予算の確保などの問題もあり、本作は長い期間をかけて作られたOVAである。十傑集の設定も当初は全員が固まっていたわけではなく、ヒィッツカラルドの真空波については途中でアイデアが固まったことを監督の今川泰宏が明かしている。
ある日買い物に出かけた今川は、たまたまスナッピングしたタイミングで自動ドアが開くのを見て、「これだ」と思いついたという。今川は「自分より先に誰かがこのアイデアを映像化するのではないか」と気が気ではなかったと語っており、それだけに実際にアニメで動き回るヒィッツカラルドには特に力が入っている。

アメリカでの販売に関するエピソード

『ジャイアントロボ THE ANIMATION 地球が静止する日』はアメリカでも販売され、その高いクオリティで大きな反響を得た。販売を担当した会社はこれに手応えを感じ、「この作品には特撮版もあると聞いた、その資料を送ってほしい」と日本に問い合わせた。
ジャイアントロボの特撮版は1967年に作られた作品で、フィルムも技術も非常に古いものである。しかしアメリカ側は、当時同国で流行していた「戦隊ヒーロー」系のような、最新の映像技術で作られた特撮作品を期待していたわけである。

この齟齬を理解していなかったのか、理解した上で無視したのか、ともあれ日本側は特撮版『ジャイアントロボ』の資料を郵送。これを見たアメリカ側は、怒りと困惑のまま「ふざけているのか」と電話をかけてきたという。

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