ジャイアントロボ 地球が静止する日（GロボOVA）のネタバレ解説・考察まとめ

『ジャイアントロボ THE ANIMATION 地球が静止する日』の概要

『ジャイアントロボ THE ANIMATION 地球が静止する日』（ジャイアントロボ ジ・アニメーション ちきゅうがせいしするひ）とは、1992年から1998年にかけて発売された全7本のOVA。主役ロボットの略称からとって、「Gロボ」とも呼ばれる。
いわゆるロボットアニメに分類されるが、作中に登場する超人たちによる奇想天外なバトルも魅力の1つ。「父と子の絆」を大きなテーマとしており、疑似的なものから擦れ違ったまま死に別れてしまったものまで、様々な親子関係が描かれている。

横山光輝原作の特撮番組『ジャイアントロボ』が原案だが、主人公と主役ロボットの見た目と名前以外は完全に別物となっている。横山の他作品のキャラクターがスターシステムで次々と登場するのも特徴だが、これについては版権的な許可を取らないまま制作されて現場に混乱を招いたという噂がある。
個々が独立した作品の主役にもなれるだろう魅力溢れるキャラクター、全編を貫く重厚にして秀逸な演出、壮大かつ謎めいたストーリーで国内外から絶賛され、「90年代OVAの最高傑作」と評価する声も多い。一方、続編の予定も無いままいくつもの伏線を回収せずに物語が終了する点については、「風呂敷を広げまくって畳まない」との批判がある。

近未来。完全クリーンかつリサイクル可能な夢のエネルギー源「シズマドライブ」の恩恵により、人類はかつてない繁栄の時を迎えていた。しかし華やかな世界の裏では世界的犯罪組織BF団（ビーエフだん）が暗躍を続け、これに対抗するために国際警察機構（こくさいけいさつきこう）が結成される。父の遺した最強のロボ・ジャイアントロボを操る少年・草間大作（くさま だいさく）も、そんな国際警察機構の一員だった。
ある時、シズマドライブの開発者たちが次々と殺される事件が発生。最後に残ったシズマ博士もまたBF団の手の者に追われて危うい状況にある中、大作と仲間たちが彼を保護する。それはシズマドライブの開発に関する封じられた真実と、それを巡る世界の命運をもかけた大きな戦いの始まりだった。

『ジャイアントロボ THE ANIMATION 地球が静止する日』のあらすじ・ストーリー

2種のシズマドライブ

近未来。完全クリーンかつリサイクル可能な夢のエネルギー源「シズマドライブ」の恩恵により、人類はかつてない繁栄の時を迎えていた。しかし華やかな世界の裏では世界的犯罪組織BF団（ビーエフだん）が暗躍を続け、これに対抗するために国際警察機構（こくさいけいさつきこう）が結成される。父の遺した最強のロボ・ジャイアントロボを操る少年・草間大作（くさま だいさく）も、そんな国際警察機構の一員だった。
ある時、大作は国際警察機構の仲間である銀鈴（ぎんれい）、鉄牛（てつぎゅう）、戴宗（たいそう）らと共に「シズマドライブの開発者であるシズマ博士を保護しろ」との任務を与えられる。シズマ博士は通常のものとは異なる不可思議なシズマドライブを後生大事に抱えており、これを狙ってBF団のエージェントが動き出していた。

同じ頃、パリでは謎のシズマドライブ停止現象が発生。これはシズマドライブの開発過程で発生し国1つを滅ぼした大惨事「バシュタールの惨劇」に酷似した現象で、シズマ博士を保護した国際警察機構北京支部の中条長官（ちゅうじょうちょうかん）と参謀の呉学人（ご がくじん）は、「シズマ博士が持っていた不思議なシズマドライブは、パリで起きた事件やバシュタールの惨劇と何か関係があるのではないか」と考える。
そんな中、北京支部をBF団の超A級エージェント「十傑集」（じゅっけつしゅう）の一員たる衝撃のアルベルト（しょうげきのアルベルト）が襲撃。たった1人で守備隊を薙ぎ倒し、シズマ博士と不思議なシズマドライブの奪還を目指して暴れ回る。アルベルトと宿敵の間柄にある戴宗が彼の迎撃に向かい、大作は仲間たちと共にシズマ博士と不思議なシズマドライブを持って北京支部を離脱する。

しかしBF団はこの動きを予想しており、待ち伏せしていた彼らのロボット兵器が大作たちを襲う。これを見て思わず注意を逸らした戴宗がアルベルトに深手を負わされる中、シズマ博士が錯乱しながら「罪を償う」と言って不可思議なシズマドライブを作動させる。すると「周囲のシズマドライブが機能停止する」というパリと同様の現象が発生し、シズマドライブで動くBF団のロボも倒れる。シズマ博士が抱えていたのは、シズマドライブの効果を打ち消すアンチ・シズマドライブだった。直後、アンチ・シズマドライブの回収を焦ったBF団のエージェントによって銃撃され、シズマ博士は致命傷を負う。
「回収するのがアンチ・シズマドライブだとは聞いていない」と驚いたアルベルトは、今回の作戦の指揮官である幻夜（げんや）を問い詰めるために撤退。その前に戴宗にトドメを刺そうとするが、戴宗の妻の楊志（ようし）、仙術の使い手である一清道人（いっせいどうじん）といった国際警察機構側の応援が駆け付けたことで仕損じる形となり、2人の因縁の決着は持ち越される。

一方、シズマドライブが完全停止した空間の中にあって、ジャイアントロボだけはなんら問題なく動き続けていた。実はジャイアントロボは、このシズマドライブ全盛の時代にあって原子力を動力源としており、アンチ・シズマドライブの影響を受けない稀有な存在だった。
これを知ったシズマ博士は、「ジャイアントロボならアンチ・シズマドライブを、それを運用するために作られたBF団の大怪球フォーグラーを止められる」と言い残して絶命。大作はシズマ博士の仇を討つべく、パリのエネルギー停止現象を巻き起こした大怪球フォーグラーの打倒を誓う。

豪傑たちの黄昏

パリを発った大怪球フォーグラーは、迎撃しようと持ち出された兵器のことごとくをアンチ・シズマドライブによって沈黙させつつ、人類に残された最後の大油田が存在する上海を目指していた。大怪球フォーグラーはアンチ・シズマドライブを動力源とする大型機動要塞であり、その1つを確保した国際警察機構を誘い出すこともその侵攻の目的だった。
後手に回ることとなった国際警察機構は大怪球の迎撃の準備を進めるも、アンチ・シズマドライブの影響の中で唯一完全な力を発揮できるジャイアントロボは、中条によって待機が命じられる。大作が「シズマ博士の仇を討つことができない」と不服を露わにする中、“子供のお守りをさせられている”ことに内心不満を溜めていた鉄牛が、「大怪球を倒すなら確かにこれが一番手っ取り早い」、「自分が協力したことは有耶無耶にして、後でこの小僧だけ長官に叱責されればいい」との考えから彼とジャイアントロボをこっそりと上海の戦場へと連れ出す。

国際警察機構は、大怪球フォーグラーを直接撃破することを諦め、電磁ネットワイヤーで宇宙に放り出す作戦を立てていた。BF団の作戦によってこれが失敗する中、横から乱入する形でこの戦いに殴り込んだ大作は、ジャイアントロボにその全力で大怪球を破壊するよう指示。しかしこれに応えて大怪球に叩き込まれたジャイアントロボの鉄拳は、相手の恐るべき強度の前にその右腕ごと砕け散る。
電磁ネットワイヤー作戦が失敗し、右腕を失ったジャイアントロボも沈黙する中、作戦の失敗を悟った国際警察機構の面々は撤退に転じる。仲間たちを逃がすため、戴宗は1人殿を買って出る。ジャイアントロボが倒されたことで打ちひしがれていた大作だったが、戴宗が命懸けで自分たちを助けようとしていることを知り、涙を拭って立ち上がる。そんな大作の想いに応えるように、中破したまま機能停止していたジャイアントロボは再び動き出し、国際警察機構の脱出行に加わる。

アンチ・シズマドライブを巡る一連の計画がBF団のナンバー2である諸葛亮孔明の画策したことだと知り、「機密」の一言で幻夜への詰問を禁じられたアルベルトは、「あのような新参者の若造に自分が使われるとは」と不満を溜めていた。その溜飲を下げると共にこれまでの因縁に決着をつけるべく、アルベルトは戴宗の下へと赴き、彼との決闘に臨む。
しかし、戴宗は最後の最後まで“アルベルトとの勝負”ではなく“仲間たちを逃がし、大怪球の動きを止める”ために命を費やし、そのまま力尽きる。大怪球の攻撃で上海が壊滅する中、幻夜と孔明の怪しげな計画に自分と戴宗との長きに渡る因縁までも踏みにじられたことに、アルベルトは強い衝撃を受ける。

バシュタールの真実

大怪球の攻撃の余波と、BF団の追撃により、飛行船での脱出を図っていた大作たちは雪山へと墜落。戴宗から「大作はまだ子供だ、アイツを守ってやれ」との最後の頼みを受け取った鉄牛は、兄貴分との約束を果たすべく、BF団の追っ手と戦いながら大作を探し回っていた。
その大作は、気を失って倒れていたところを幻夜によって保護されていた。大作がジャイアントロボの操者であることを知る幻夜だったが、“幼くして父を失い、同時にすさまじい力を遺産として受け取る”という境遇に共感を覚え、彼を害することなく介抱する。

実は幻夜は、バシュタールの惨劇を招いた張本人とされるフランケン・フォン・フォーグラー博士の息子だった。しかしこの大惨事の真相は世間に伝わっているものとは異なり、「シズマドライブの完成を急いだシズマ博士たちが危険な実験を強行してヴァシュタールの惨劇を巻き起こし、なんとか被害を食い止めようと1人その場に残ったフォーグラー博士に全ての罪を押し付けた」というものだった。
惨劇を生き残った幻夜は、シズマ博士たちがシズマドライブを完成させたことを知り、父に責任を押し付けて逃げた者たちが世界から喝采を浴びる現実に強い怒りと憎悪を抱く。幻夜が持ち込んだシズマドライブの現物を見たフォーグラー博士は、正気を失ったように研究に打ち込み、3本のアンチ・シズマドライブを完成させると「シズマを止めろ」との遺言を残して息を引き取った。その後幻夜は父の無念を晴らすためにBF団に協力を求め、孔明がこれに応じて始まったのが大怪球フォーグラーによる「地球静止作戦」の全貌だった。

鉄牛の奮闘で大作は救出され、駆け付けた国際警察機構側の増援により一行は窮地を脱する。一方、密かに様子を見ていたアルベルトは、ここで初めて幻夜がフォーグラー博士の息子であること、その目的が“父の復讐”という極めて個人的な理由にあることを知って激昂。幻夜を捕らえて孔明共々処刑すると息巻くが、「地球静止作戦はBF団の長ビッグ・ファイアの意志である」とする者たちに動きを封じられ、銃弾を受けて谷底へと姿を消す。

BF団の混乱

アルベルトの失踪は、BF団でも驚きをもって迎えられていた。幻夜がフォーグラー博士の息子であることを知った樊瑞（はんずい）たち一部の十傑集は、「幻夜と孔明がBF団を私物化して今回の計画を進めたことは明白だ、これは許しがたい反逆行為だ」として、独自に大怪球の破壊を試みるが、孔明が放った“ビッグ・ファイアの下僕たち”に逆らうことができずに捕獲される。
その頃、大作たちは国際警察機構の総本山である梁山泊へと集結していた。ジャイアントロボの修復も完了するが、その肩には溶けることも解析することも不可能な雪の塊が貼りついており、引き続き凍結されることが決定。さらに幻夜の妹であることが発覚した銀鈴までも「敵方に利する可能性がある」と捕らえられる。大怪球フォーグラーというかつてない脅威と戦うためには必要な処置ではあったが、大作は「どうして銀鈴さんまで」と強い怒りを覚える。

大作がかつて父から問われた「平和や幸せとは、誰かの犠牲無しに得ることはできないのか」との言葉を思い出し、ジャイアントロボ無しの自分に何ができるのかと自問する中、樊瑞たちとは別行動を取った十傑集たちが襲撃。彼らは国際警察機構が持つもう1つのアンチ・シズマドライブを回収し、地球静止作戦を完成させようとしていた。
国際警察機構の猛者たちがこれに立ち向かうも、十傑集の恐るべき力の前に為す術もなく返り討ちに遭っていく。子供でしかない自分にできることは何もないと知りつつ、大作は銀鈴を守るために十傑集の前に飛び出し、「誰かや何かを犠牲にして平和や幸せを得ても本当の解決にならない。それがこの世の摂理なのだとしても、自分は最後まで抗ってみせる」と宣言。これを聞いた銀鈴は、「自分もまた、父と兄の想いに本気で向き合わなければならない」と判断し、自身の持つ特殊な力で梁山泊を大怪球が迫る聖アーバーエーへと転移させる。

地球静止作戦の終焉

聖アーバーエーでは、中条が大怪球と対峙していた。自身の持つ命の引き換えの切り札で大怪球を砕かんとする中条だったが、「自分に決着をつけさせてほしい」という銀鈴の言葉を受けて攻撃を中止する。その銀鈴は、1人大怪球の内部に転移し、兄と話をしようと試みる。「あれほど優しい父が復讐に狂ったとはどうしても思えない、何かの行き違いや隠された思惑があるのではないか」というのが銀鈴の考えだった。
妹が面と向かって歯向かってきたことに幻夜は混乱するが、なおフォーグラー博士の無念を晴らさんと銀鈴にすら銃を向ける。彼女を撃ち殺し、全てのアンチ・シズマドライブを手に入れた幻夜は、大怪球の力を完全な形で発動して地球全域のシズマドライブを停止させる。

この状況は世界中の国と組織はもちろん、BF団にとっても危険な状態で、各地の基地ではその構成員が次々と倒れていた。この惨事の中、孔明は「全て計画通り」とほくそ笑み、樊瑞は彼の目的が読めずに困惑する。
しかし、ここで「世界中のシズマドライブが変異して再起動する」という事態が発生。幻夜が戸惑う中、アンチ・シズマドライブに仕込まれていたフォーグラー博士の最後のメッセージが再生される。実はシズマドライブには「長年使い続けると大気に致命的な変異をもたらす」という危険性があり、世界で唯一これに気づいたフォーグラー博士は「世界中のシズマドライブを止めて、この変異が発生しない状態にバージョンアップしなければならない」と考えていた。アンチ・シズマドライブとは、「シズマドライブを止めるための装置」ではなく、「シズマドライブを安全なものに改良するフィールドを発生させる装置」だったのである。

これを知った幻夜は、父の願いを曲解して悪事に走り、実の妹まで手に懸けたことに恐慌。アンチ・シズマドライブの暴走によって大怪球が猛威を振るう中、大作はこれを止めるためにジャイアントロボと共に出撃する。大怪球の防衛装置のことごとくを破壊し、その間近にまで迫るものの、強烈な熱波に阻まれて先に進めなくなる。
ここでジャイアントロボの肩に貼りついていた雪の中に潜んでいたアルベルトが飛び出し、「世界の命運は我らBF団と貴様ら国際警察機構で争うべきものだ、これ以上こんな若造に左右されて堪るか」と援護。大怪球を覆う熱波を残らず吸い取り、そのまま崩れ去る。あらゆる障壁を突破したジャイアントロボにより、ついに大怪球は撃破される。己の過ちを悟った幻夜は、自爆プログラムの作動した大怪球を妹と同じ能力で宇宙へと転移させ、そこで爆死する。

多くの犠牲を出しつつ、地球静止作戦は国際警察機構によって阻止される形で終わる。大作は生き残った仲間たちと共に体勢を立て直し、父や銀鈴から託された問いの答えを探すために戦い続ける。
一方、BF団では孔明が樊瑞たちから作戦失敗の責任を問われていた。追い詰められた形となった孔明だったが、不敵に笑って「全て計画通り、これこそGR計画の第一歩」と宣言する。その頃、地上のどこかでは、行方不明だったBF団首領のビッグ・ファイアが長い眠りから目覚めていた。

『ジャイアントロボ THE ANIMATION 地球が静止する日』の登場人物・キャラクター

主要人物

草間大作（くさま だいさく）

CV：山口勝平

主人公。若干12歳にして史上最強のロボット「ジャイアントロボ」を操る少年。正義感に溢れ、年齢相応に幼い部分があり、それだけに周囲が見えないことも多いが、まっすぐに理想を追い求める様は周囲の大人たちから好意的に見られている。

銀鈴（ぎんれい）／ファルメール・フォン・フォーグラー

CV：島本須美

国際警察機構のエキスパート。19歳。大作とは顔見知りで、彼を弟のようにかわいがっている。自分の身ならず他の物質や物体も転移させられる強力なテレポーテーション能力を持つが、発動するたびに自分の肉体を失う諸刃の剣で、普段は銃器を用いて戦う。
実はバシュタールの惨劇に深く関わったフランケン・フォン・フォーグラー博士の娘で、本名はファルメール・フォン・フォーグラー。銀鈴はその素性を隠すための偽名である。

黒旋風の鉄牛（こくせんぷうのてつぎゅう）