氷の城壁(漫画)のネタバレ解説・考察まとめ
『氷の城壁』とは阿賀沢紅茶によって、2020年から「LINEマンガ」に連載された青春恋愛漫画である。高校を舞台に、主人公・氷川小雪がさまざまな人物や出来事を通して、心の中の壁と向き合っていく。その中で互いのすれ違いや思い込みなどの人間関係の歯痒さ、友情から恋愛への気持ちの変化、言葉にならない感情と向き合い成長していく姿を丁寧に描いた作品。
『氷の城壁』の概要
『氷の城壁』とは阿賀沢紅茶のデビュー作であり、2020年1月より『LINEマンガ』にて公式連載になり、2022年4月まで連載された青春恋愛漫画である。作者は2017年頃から、「誰かが見てくれたらいいな」という思いで本作の制作を始める。最初に投稿していたアプリが終了してしまったため、『LINEマンガインディーズ』に移る。そこで投稿作を編集者に読んでもらえるという集英社とのコラボ企画に応募し、特別賞を受賞する。その後男女4人を中心にさまざまな関係性の変化が丁寧に描かれていることで人気を博し、コミックシーモアの年間ランキング2022の女性部門で1位を獲得する。2023年4月には1話と2話、10月には48話と49話がYouTubeの『集英社マンガ公式』より『ボイコミ』が投稿されている。
主人公・氷川小雪(ひかわこゆき)は人と接することが苦手で、他人との間に壁を隔ててしまう。そんな小雪は高校では誰とも関らずに1人で過ごしていたが、同学年の雨宮湊(あまみやみなと)と出会ったことで小雪の人間関係に変化が生まれる。霧ノ島中学(きりのしまちゅうがく)の同級生で幼馴染の安曇美姫(あずみみき)と高校で出会った雨宮湊と日野陽太(ひのようた)の4人と高校生活を送ることになる。その中で互いのすれ違いや、思い込みなどの人間関係の歯痒さや、友情から恋愛への気持ちの変化、言葉にならない感情と向き合い成長していく姿を丁寧に描いた作品である。
『氷の城壁』のあらすじ・ストーリー
出会い
高校生の氷川小雪(ひかわこゆき)は人付き合いが苦手で、他人との距離感がうまくつかめず、誰とも関らずに学校生活を送っている。そのせいで周りからは、「女王」と恐れられている。本人は人からどう見られているかなどは今更どうでもいいと思っていて、何もない平穏な毎日を願っている。その理由は中学の時のトラウマが原因だ。そのトラウマとは、中学時代の恋愛と部活動が原因で起こったイジメだ。
そんなある日、同じ学年の雨宮湊(あまみやみなと)と日野陽太(ひのようた)と出会う。湊は他人との距離感が近く初対面から小雪に遠慮なく話しかけるが、面識のない小雪は戸惑ってしまう。その戸惑いは過去のトラウマからくる警戒心と恐怖と疑問だった。小雪は中学時代のトラウマが原因で人と壁を作っていた。湊自身も小雪の態度から壁を作られていることを感じていた。だが過去に、壁を作るような人たちの壁を壊して仲良くしてきた湊。今回も同じように壁を壊そうとする。
一方の小雪は無理やり壁を壊そうとはしない陽太と意気投合する。その中で湊と陽太が、小雪の幼馴染の安曇美姫(あずみみき)と中学時代に、同じ塾で接点があったことを知る。そこから小雪と美姫と陽太の3人で、テスト勉強や、放課後に食事に行ったりするようになる。そんな時間を過ごすうちに、小雪の中で楽しかった時間の余韻に浸る瞬間や、また話したいと思っている自分がいることに気づいてしまう。関わりたくないと思っていた自分がなぜそんなふうに思うのか、小雪は自分の本心がわからなくなってしまう。そんな気持ちを抱えたまま3人で過ごす時間に湊が加わるようになる。
それぞれの変化
その日々の中で小雪は、相変わらず壁の中にぐいぐい入ってくる湊が苦手だが、どうやら美姫は湊が好きなのではないかと思い始める。しかしそれは小雪の勘違いで、美姫は湊に小雪を「可哀想」扱いするなと釘を刺していた。その理由は過去に美姫が湊に塾で1人でいるときに声をかけてもらたことがあり、声をかけた理由が「1人で可哀想だったから」と知ったとき、美姫は「同情されている」ことに虚しさを感じた経験があったからだった。美姫は湊に「可哀想かどうかなんてミナトが決めることじゃないから」、「自分がこうあるべきと思うことをこゆんに押し付けないで」と念を押す。美姫は湊と対等の友達になりたかっただけなのだ。
それから4人の関わりが増えていく中で、小雪は自分のことを相手に話すことが上手く出来ずにいた。相手が嫌いなわけではなく、自分の内側を知られることが怖い。私を否定されないように、近づかれると距離をとってしまうのだ。そんなもどかしい思いを抱えているとき、自分を知ろうと踏み込んでくる湊に、探られていると思い一方的に「気持ち悪い」と暴言を吐いてしまう。そして湊はその言葉を聞いてからは、自分の行動は傲慢だったのかもしれないと、疑心暗記になり関わることをやめようとする。
小雪はその発言を後になって言い過ぎてしまったと反省していると、小雪と湊の姿を偶然見ていた陽太が現れる。陽太の話を聞き、過去に美紀が友達のことについて湊と陽太に相談していたことを知る。小雪の名前は明かしてはいないが、湊と陽太は小雪と美紀が一緒に過ごしているのを見て、それが小雪だと気づいたのだ。小雪は探られていると感じたのは勘違いだった。それから小雪は湊に不器用ながらも、泣きながら勘違いしたことや暴言のことを謝罪する。その仲直りをきっかけに、小雪は自然に湊と過ごせるようになり、冬休みを迎えることになる。そしてその出来事をきっかけに湊は小雪に対して特別な意識を始める。
思いの清算
冬休みになり、小雪と美姫は中学時代の友達の空(そら)と美春(みはる)の4人で近況報告を兼ねて集まっていた。その話の中で恋人ができたかの話になり、小雪も美姫も否定する。そこから美姫の恋愛観の話に発展した。美姫は中学時代には見た目や雰囲気から、接点のない人からはアイドルのような存在になっており、連絡先を渡され連絡を取り合ううちに恋愛に発展するが「思っていたのと違ったから別れて」と短い期間での恋愛を繰り返していた。その理由は見た目や雰囲気とはかけ離れた本当の美姫の姿に幻滅されたからだ。
美姫は同級生からはゴリラと言われるほど恐れられているし、私服は原色などを使ったボーイッシュな服装を好んでいる。そのため恋人という存在になるとそれが見えてしまい、理想との違いに別れを選択されてしまう。その経験から美姫は、自分が好きになった人に、自分から告白したいと3人に話す。
その後、「小雪はどうなの?」と小雪に皆の視線が向けられるが、小雪ははっきりと「私には無理なんだと思う」と告げる。それには中学時代のある出来事が関係している。中学時代に小雪は同級生の五十嵐翼(いがらしつばさ)と付き合っていたが、そのことで起きたさまざまなことがトラウマとなり、今の小雪の対人関係に影響を与えている。そのことについて美姫は自分にも責任があると感じており、後ろめたく思っている。小雪はこのトラウマに関して、高校2年の夏に五十嵐とコンビニでの再会で克服している。小雪はアイスを五十嵐は飲み物を買いにコンビニに行き、偶然再会する。その後、近くの公園に行き当時のことについて話す。その際、お互いに思っていたことを遠慮なく吐き出したことで、過去のトラウマを消すことができた。小雪はこの時、モノローグで「呪いの解ける音がした」と語っている。
冬休みが終わり小雪は部活にも委員会にも入ってないという理由で図書係になってしまう。そして美術部の霜島月子(しもつきつきこ)も運動部じゃないという理由で選ばれてしまう。月子は最初は小雪に怯えていたが、小雪と接していく中で怖い人ではないと知り2人は友達へと変化していく。そして小雪と陽太の関係にも変化が生まれる。小雪は陽太を優しい人と思っていて、その優しさは心の強さや余裕からくるものだと思っていた。しかしそれは我慢や諦めからくるもので、陽太は家庭環境が原因で家族の中に自分の居場所がないことに悩んでいた。小雪は両親が離婚していて、少しだけその気持ちが理解できたことから放課後に陽太の気持ちを聞くことにした。話をしていく中で陽太は「自分を責めないで」という小雪の言葉に救われる。陽太にとっての小雪の存在が大きくなった瞬間だった。そして陽太はさらに美姫のことが好きだと打ち明ける。その好きは付き合いたいとかではなく、思い続けるだけでいいものだと陽太は言う。それを聞いた小雪はとても嬉しいが露骨な行動はしないし、今日のことは秘密にすると約束をする。美姫と陽太の進展は、高校2年の体育祭で起こる。体育祭の備品の後片付けに空き教室に入り、そこで起きたトラブルによって陽太の気持ちが美姫にバレてしまう。隠せないと悟った陽太は後日、告白するが振られてしまう。だが陽太は美姫に対して、それからも今まで通り友達として接している。
4人で過ごすようになり小雪の中で、人と関わることに対して少しずつ変化が生まれ始めた。小雪が踏み出したように、それぞれの気持ちや過去に向き合っていく。そして新たな人物の登場や予想外の出来事を経験して、高校生活を送っていく。
『氷の城壁』の登場人物・キャラクター
氷川小雪(ひかわこゆき)
CV:宮本侑芽
誕生日は2月2日、血液型はAB型、中学時代はバスケ部に所属していた。友達からはこゆんと呼ばれている。
『氷の城壁』の主人公で、人付き合いが苦手な女子高生。 中学生の頃のトラウマが原因となり、他人との距離感がうまくつかめずにいる。そのトラウマもあり1人でいることが好き。
いつも1人でいることから、 周囲からはクールなイメージを持たれており、陰では「女王」と呼ばれ恐れられている。
しかし周りに鈍感なのではなく、周りの人の感情に敏感で、些細な変化によく気づく。
物語の中で幼馴染の美姫や高校で新しくできた友達と関わる中で、トラウマを克服していく。
両親は中学生の時に離婚している。
雨宮湊(あまみやみなと)
CV:木村良平
誕生日は9月29日、血液型はB型、所属の部活はサッカー部、友達からはミナトと呼ばれている。
イケメンで誰とでも仲良くなれるクラスの人気者。クラスで孤立しているような同級生にも積極的に声をかけて仲良くなれる性格。小雪のことも当初はクラスで孤立しているため気にし始めるが、徐々に距離が縮まり異性として意識し始める。
カラオケに行くメンバーによって選曲を変えるなど、常に周りの人間がどうやったら楽しめるかを計算しているが、本心を明かさないタイプの人間でもある。何事も理屈的な考え方でどうにかなると考えていて、感情の動きは頭で制御できると思っていた。しかし小雪に対してはそれができずに、動揺する。
安曇美姫(あずみみき)
CV:青池優花
誕生日は6月6日、血液型はO型、中学時代はバレー部に所属、友達からは美姫や美姫ちゃんと呼ばれている。
小雪の幼馴染。可愛いだけでなく、コミュニケーション能力も高いことから、学校内で人気者として扱われている。小雪とは対照的なキャラクターだが、小雪のことを理解する親友として心の支えになっている。
アイドルみたいと人気を集めているが、実はガサツな性格の持ち主。そんな本性を高校からできた友人には明かせないという悩みを抱えているが、「高校デビューなの」と明かしたことで素を出せるようになった。
日野陽太(ひのようた)
CV:根岸耀太郎
誕生日は4月4日、血液型はO型、所属の部活はバスケ部、友達からはヨータと呼ばれている。
湊の友達。ナンパされていた小雪を助けてくれた、優しい少年。小雪は彼と父親を重ねているところがある。湊とは中学も一緒だった。美姫とは中学時代に塾が一緒で、湊と美姫と過ごしていた。そのため「素の美姫」を知っている人物だが、そのころから美姫に想いを寄せている。しかし美姫は気づいていない。
湊とは異なり自然な形で人との距離を縮めることができる性格で、周囲には人が自然と集まって来る。
人付き合いが苦手な小雪ともすぐに友達になった。
その一方、人知れず家族との関係を悩んだりと明るいだけではない一面も持っている。
『氷の城壁』の用語
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目次 - Contents
- 『氷の城壁』の概要
- 『氷の城壁』のあらすじ・ストーリー
- 出会い
- それぞれの変化
- 思いの清算
- 『氷の城壁』の登場人物・キャラクター
- 氷川小雪(ひかわこゆき)
- 雨宮湊(あまみやみなと)
- 安曇美姫(あずみみき)
- 日野陽太(ひのようた)
- 『氷の城壁』の用語
- 明天高等学校(めいてんこうとうがっこう)
- イートインの保健室
- 霧ノ島中学(きりのしまちゅうがく)
- 湊の愛犬 ぽん太
- 『氷の城壁』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
- 氷川小雪 「『言葉』になれない感情たち」
- 氷川小雪 「『良い所』なんて誰にだってあるよ」
- にやけガードα
- 雨宮湊 「すげー嬉しい…」
- 『氷の城壁』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
- 「女王」の以外な弱点
- 陽太はコンタクト派
- モノローグでカエルになった小雪
- 美姫の為に同じ高校を選んだ陽太