殺さない彼と死なない彼女(漫画・実写映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『殺さない彼と死なない彼女』とは、SNS漫画家・世紀末による四コマ漫画およびその映画化作品。漫画は当初Twitterに投稿されたもので、2017年にKADOKAWAにより書籍化され、2019年には間宮祥太朗・桜井日奈子のダブル主演により映画化された。「殺す」「死にたい」が口癖のカップル、性格も見た目も正反対の女子2人、告白が日課の女子とそれを受け流す男子という3組の恋と友情を描く物語。映画版では、原作では独立していた3つの物語が1つにつながるというオリジナルの構成が見どころである。

『殺さない彼と死なない彼女』の概要

『殺さない彼と死なない彼女』とは、SNS漫画家・世紀末による四コマ漫画およびその映画化作品。漫画は当初Twitterに投稿されたもので、『きゃぴ子』『君が代ちゃん』『殺さない彼と死なない彼女』という3つの独立した物語だった。それらを1冊にまとめ、大幅に加筆修正したものが2017年にKADOKAWAにより刊行された。2021年には、続編である『殺さない彼と死なない彼女 After』が同じくKADOKAWAにより刊行されている。
2019年には、間宮祥太朗・桜井日奈子のダブル主演により映画化。漫画版ではそれぞれ独立した物語だったが、映画版では同じ高校を舞台とし、無関係だった登場人物を姉弟という設定にするなどして物語が再構築されている。第29回日本映画批評家大賞、新人監督賞、主演男優賞(間宮祥太朗)を受賞し、高い評価を受けた。
「殺す」「死にたい」が口癖の高校生カップル、性格も見た目も正反対の幼なじみの女子2人、告白が日課の女子とそれを受け流し続ける男子という3組の恋や友情をオムニバス形式で描く物語。主要登場人物が殺されるという予想外の結末を通して伝えられる、人生に対するメッセージが見どころの作品である。

『殺さない彼と死なない彼女』のあらすじ・ストーリー

小坂と鹿野がお互い惹かれ合うようになる

「殺す」が口癖の男子高校生・小坂れい(こさかれい)は、何事にも興味が持てず退屈な毎日を過ごしていた。そんな時、クラスメイトの鹿野なな(しかのなな)が、ゴミ箱に捨てられた蜂の死骸を拾って校庭に埋葬している姿を目にする。鹿野はリストカットをしていることで有名な女子生徒だったが、実は優しい心の持ち主だった。
ネガティブな性格ゆえに死にたがりの鹿野に対して、小坂は「マジで死にたいなら俺が殺してやるよ」と冗談を言う。鹿野は「余計死にたくなる」と返すも、まんざらではない様子だった。小坂も、そんな鹿野に興味を抱くようになる。
その後も鹿野はリストカットの習慣をやめられず、小坂の前でも手首を切ろうとし、小坂はその様子を動画に撮ろうとする。「いつ自分を殺してくれるのか」と尋ねる鹿野に対し、小坂は「テメーで勝手に死ねよ」と突き放す。それを聞いた鹿野は本当に窓から飛び降りようとし、小坂は慌ててそれを止めた。
小坂と鹿野の距離は次第に縮まっていった。ある日、テストの点があまりにも悪かった鹿野は小坂の家に泊まると言い出すが、小坂にはバイトのシフトが入っていた。小坂が帰宅すると、鹿野は小坂の家にあった花火を持ってひとり花火の準備をしていた。しかしこの花火は小坂が小学5年生の時に買って以来使っていなかったもので、火がつくことはなかった。小坂は今度は自分が新しい花火を買ってやると鹿野に約束する。(しかしその約束は果たされなかった)

きゃぴ子と地味子が揺るがない友情を築く

母から愛されずに育ったきゃぴ子は、愛を求めて数多くの男性と付き合うも、いずれも長続きせずに別れるということを繰り返していた。親友であり幼なじみの地味子(じみこ)はそんなきゃぴ子を心配し、なぜ男たちとすぐに別れてしまうのかをきゃぴ子に尋ねるが、きゃぴ子の返答は「ふられるのが嫌だから先にふるの」というものだった。
そんな折、きゃぴ子は新たな恋人・イケメンくんと付き合うことになる。しかし実は彼にはすでに別の彼女がおり、その彼女からはイケメンくんと別れるようにときゃぴ子を脅す連絡があった。
ある日きゃぴ子は、イケメンくんに「きゃぴ子と付き合うことで悲しむ女の子がいる」と言われふられてしまう。イケメンくんの別れ文句に、地味子は「何でその男は自分を想って泣くのがたったの1人だなんて想ったのかしらね」ときゃぴ子の悲しみに寄り添う。
きゃぴ子は母子家庭で育ったものの、母親は昔から子供よりも自分の恋愛を優先し、幼いきゃぴ子を省みることはなかった。そんなきゃぴ子をいつでも支え、味方になってくれるのが地味子であり、今回の一件でもきゃぴ子は地味子への信頼を厚くするのだった。

恋に臆病になった八千代に君が代が愛を伝え続ける

千代八千代(ちよやちよ)のもとには、同級生の国歌君が代(こっかきみがよ)が毎日愛の告白をしに訪れていた。
しかし八千代は過去を引きずって恋愛に臆病になっており、君が代の告白を突き放すばかりだった。しかし君が代が諦めることはなく、告白はその後も止むことなく続いた。
ある日、君が代は八千代が観たいと言っていた映画のチケットを入手し、ついに八千代をデートに誘うことに成功する。しかし、その映画の帰り道、八千代の初恋の相手であるさっちゃんとまだ幼い彼女の子どもと遭遇してしまう。
八千代は幼い頃に年上のさっちゃんに恋心を抱いていたが、さっちゃんは望まないタイミングでの妊娠に苦しんでおり、八千代のことを突き放してしまう。それがきっかけで恋することができなくなってしまったと語る八千代に、君が代はさっちゃん親子と一緒にピクニックをしてはどうかと提案する。八千代は、君が代がいればそんな未来も思い描けると気づき、君が代に「僕は君が好きなんだ」と告白する。

小坂がサイコキラーくんに殺される

ある日、鹿野は小坂から「同じ大学に進学しよう」と提案される。小坂に比べて成績が良くない鹿野は尻込みするが、小坂は「未来の話をしようぜ」と明るく返答する。それを聞いて鹿野も進学に対して少し前向きな気持ちになるが、その帰り道で、小坂は怪しげな男・サイコキラーくんに刺殺されてしまう。小坂の死を小坂の母から聞かされた鹿野は、悲しみに暮れ生きる希望を失ってしまう。
その夜、鹿野は小坂の夢を見た。小坂は自分の机の中を見るように鹿野を促す。翌日、小坂の家に向かった鹿野は、彼の机の中から猫の置き物と小坂が自分に宛てた手紙を発見する。実はその日は鹿野の18歳の誕生日だった。
その夜、小坂は再び鹿野の夢の中に現れる。「いつまでも鹿野のことを見守っている」と告げる小坂に、目が覚めた鹿野は「たとえ夢でも励まされた」と涙をこぼし、その後の人生を力強く歩んでいくと決意する。

『殺さない彼と死なない彼女』の登場人物・キャラクター

主要登場人物

小坂れい(こさかれい/演:間宮祥太朗)

「殺す」が口癖の、何事にも興味が持てない男子高校生。
ゴミ箱に捨てられた蜂の死骸を拾って埋葬しようとする鹿野ななに興味を持ち、次第に惹かれるようになっていく。
長い前髪で左目が完全に隠れているのが特徴。物語終盤でサイコキラーくんによって殺害されるが、鹿野の夢に登場して彼女の今後の人生を励ます。
「小坂れい」という名前は、「ころさないかれ」から来ている。
映画版では、小坂を演じた間宮祥太朗の見た目が高校生に見えなかったことから、「サッカーでの挫折をきっかけに学校生活に意義が見出せなくなり留年してしまった」という設定に変更されている。

鹿野なな(しかのなな/演:桜井日奈子)

小坂れいのクラスメイト。ネガティブな性格で、日常的にリストカットを行なっていることが学校中の噂になっている。コミュ障でもあるため、クラスでも孤立している。
捨てられた蜂の死骸を拾って埋葬するなど本当は優しい心の持ち主で、次第に小坂のことを意識し始める。
原作漫画では、小坂の死の悲しみを乗り越えて画家となる。
「鹿野なな」という名前は、「しなないかのじょ」から来ている。

地味子/宮定澄子(みやさだすみこ/演:恒松祐里)

きゃぴ子とは幼稚園の頃からの幼なじみ。
愛に飢えてたくさんの男子と付き合うきゃぴ子のことを心配している。
とにかく地味で、華やかな見た目のきゃぴ子に対しては劣等感があるが、きゃぴ子にとってはどんな時も味方でいてくれるヒーロー的な存在である。
きゃぴ子をよく思わない女子からきゃぴ子の悪口を聞かされても、決して同調したりしない毅然とした性格の持ち主で、幼少期のきゃぴ子に対して、初めて「かわいい」と言った人物でもある。
原作漫画ではニックネームしか明かされていないが、映画版では宮定澄子(みやさだすみこ)というフルネームが与えられている。また、「八千代と姉弟である」という設定も追加されている。

きゃぴ子/堀田きゃぴ子(ほったきゃぴこ/演:堀田真由)

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