バンオウ-盤王-(漫画)のネタバレ解説・考察まとめ

『バンオウ-盤王-』とは、集英社のWebアプリ『少年ジャンプ+』の将棋漫画。2022年12月から2024年6月まで連載していた。原作は綿引智也、作画は春夏冬画楽で、第31話からは棋士の梶浦宏孝が監修についている。
吸血鬼の月山元は、550年以上生きている吸血鬼。その長い人生の中で月山は将棋に出会い、300年以上指し続けてきた。和島将棋教室という世話になっている将棋教室の存続を賭け、竜王戦に挑んでいく。

『バンオウ-盤王-』の概要

『バンオウ-盤王-』とは、集英社のWebアプリ『少年ジャンプ+』の将棋漫画。2022年12月から連載を開始し、2024年6月7に完結した。原作は『少年ジャンプ+』読切漫画『その惑星で、彼は生きる。』や『SWORD IN THE CITY』を発表している綿引智也、作画は春夏冬画楽である。第31話からは監修として、棋士の梶浦宏孝がついた。「次にくるマンガ大賞 2023」にて、「U-NEXT賞」を受賞し、Webマンガ部門で10位を獲得している。

吸血鬼の月山元(つきやま はじめ)は、550年以上生きている吸血鬼。300年ほど前、江戸時代に将棋と出会い、その魅力に取り憑かれた。以来、300年以上将棋を指し続けてきている。
時は現代、月山が常連として通っている将棋教室・和島将棋教室が閉館することになった。理由は教室が入っているビルが老朽化して、補修・修繕が必要だから。費用は4000万円かかるという。その話をオーナーの和島泰弘(わじま やすひろ)に聞かされた月山は、自身がプロ将棋界のタイトル・竜王になり、その賞金を修繕の費用に充てることを提案。こうして月山はアマチュア棋士として、竜王戦に挑んでいくのだった。

『バンオウ-盤王-』のあらすじ・ストーリー

和島将棋教室の危機

主人公の月山元(つきやま はじめ)は、550年以上の時を生きる吸血鬼。300年ほど前、江戸時代に将棋と巡り合い、そこから将棋にのめり込んだ。以来ずっと将棋を指し続けている。特筆した才能は月山にはなかったが、悠久とも言える時間指し続けた結果、月山はあらゆる型を用いて戦うオールラウンダー棋士に成長。インターネットも普及する時代に突入し、家で「将棋ロイヤル」というゲームを通じて、世界中の棋士達と将棋を指す生活をしていた。

そんな月山は、ここ10年ほど和島泰弘(わじま やすひろ)がオーナーを務める和島将棋教室に常連として足繁く通っていた。しかし教室が入るビルが老朽化し、和島が教室を畳もうと考えていることを知る。ビルの改修・修繕、耐震補強など、しめて工事には4000万円が必要だった。そこで月山は自分が将棋の大会でプロ将棋棋士のタイトル・竜王(りゅうおう)を獲得し、その賞金でビルの工事をすることを思いついた。竜王とは、将棋の棋戦のタイトル戦の1つで、いくつかあるタイトルの中でも竜王と名人は別格のタイトルと言われている。現・竜王タイトルの保持者は新堂誠二郎(しんどう せいじろう)。竜王以外にもいくつかタイトルを保持する棋士で、現将棋界の中でトップクラスの棋士だった。この新堂竜王に勝てばタイトルを奪うことができ、多額の賞金を手にすることができるのだ。

吸血鬼である月山が目立つ行動をすれば、吸血鬼の退治を生業にする教団の人間に目をつけられる可能性もある。それに日光が大敵である吸血鬼にとって、昼間の長時間の行動は命を削る行為とも言える。それでも月山は大好きな和島将棋教室を存続させるため、竜王のタイトルを獲得することを誓うのだった。

アマチュア竜王戦

東京都予選

アマチュア棋士であつ月山が竜王のタイトルを持つ棋士に挑戦するには、まずアマチュア竜王戦全国大会で優勝する必要があった。月山はアマチュア竜王戦に申込み、東京予選大会に出場する。途中、前年度の優勝者である中溝武史(なかみぞ たけし)に当たってしまったが、そこも難なくクリア。残りは決勝戦だけという時、月山は体力の限界を迎えて倒れてしまう。そこを助けてくれたのは、フリーの記者をしている鈴木聡(すずき さとし)という男だった。

鈴木の正体は月山と同じ、吸血鬼だった。150年ぶりに再会を果たし、鈴木は一方的にそれを喜んだ。月山のほうは鈴木との再会をそれほど喜んでいない。鈴木はまだ月山が将棋を指していたことに驚き、何故大会に出ていたのか問いただす。そして月山が人間の経営する将棋教室のために人肌脱いでいることを知って大笑いする。しかしそれを否定することはしなかった。それどころか、以来、鈴木は何かと月山を応援し、サポートするようになっていくのだった。

全国大会

月山はアマチュア竜王戦の東京予選大会で準優勝を果たし、全国大会に駒を進めた。全国から集まった猛者の中には、去年のアマチュア竜王戦全国大会準優勝者の塩田剛人(しおた たけひと)やプロ入りができたにも関わらずプロにならなかった最強のアマチュア棋士・宮内兼治(みやうち かねはる)も出ていた。月山は塩田、宮内と連続してトーナメントで当たる。この日のために月山は地方大会などにも出場して、昼間長時間活動できるように訓練してきた。その甲斐あって、2人に勝つことができ、決勝大会ベスト4にまで残ることができた。アマチュア竜王戦全国大会4位以内に入れば、プロも参加する竜王戦本戦に出場することができる。ひとまず月山はその段階をクリアした。そして全国大会の優勝を目指して次の試合に臨んだ。

しかし結果はベスト4。4位だった。というのも、試合直前に鈴木からの差し入れであるバイソンの血を飲んだ途端酔っ払ってしまってまともに将棋が指せなかったからだ。鈴木はバイソンの血と偽って普通のワインを月山に渡していた。優勝を狙っていた月山は憤慨したが、鈴木としては月山が無駄に目立つようなことは避けたかったのだ。4位でも竜王戦本戦には進めるので結果よしとして、月山もしぶしぶ納得。アマチュア竜王戦全国大会は終わりを告げた。

竜王戦

予選トーナメント

竜王戦は1組から6組に分かれた予選トーナメントから始まる。数字が小さい組ほどトップクラスの棋士がおり、6組は若手棋士などが多い。アマチュアの出場枠が設けられるのも6組である。竜王戦の持ち時間5時間であり、月山は300年以上将棋を指してきて無類の強さを誇っているが、これほど長く将棋を指したことはなかった。それでも勝たなければ竜王への挑戦権は手に入らない。月山の戦いは、初戦の町田信吾(まちだ しんご)4段との対局から始まった。

2回戦目・冬川悟(ふゆかわ さとる)、3回戦目・光岡要(みつおか かなめ)と順調に勝ち上がっていき、ついに予選トーナメントの決勝戦に駒を進めた。決勝戦の相手は伊津道央(いず みちお)9段。プロ入り55年目の大ベテランで、現役最高齢のレジェンドと呼ばれる棋士だった。そして月山が50年以上推し続けてきた、最推しの棋士でもある。推しの棋士との対局への緊張や興奮、高揚感に一時は右往左往されたが、月山は必死いに伊津と戦った。そして見事に勝利を決め、6組の優勝を獲得した。

対局が終わった後、伊津は月山にプロにならないのかと尋ねる。アマチュア棋士がプロになるには師匠の推薦が必要だ。伊津は月山さえよければ自分が師匠になりたいと申し出る。それは月山にとって至上の喜びだった。しかし月山はプロにあるつもりはない。アマチュアがプロを押しのけ、竜王戦をここまで勝ち上がるのは前代未聞。これだけ目立ってしまえば、自分は長く将棋界にいることはもうできない。月山にとって、将棋界でこうやって人と指すのは今回限りという覚悟があった。月山は伊津に礼を言い、その場を去るのだった。

決勝トーナメント

決勝トーナメントの月山の初戦の相手は、新堂竜王唯一の弟子・天草翔(あまくさ かける)だった。月山は地方大会で優勝した時にエキシビションマッチで天草と対局したことがあった。その時は月山の体調不良が原因で対局を途中で新堂竜王に止められてしまったため決着はつかなかったが、最後まで指していれば天草が負けたであろうことは新堂竜王や天草自身にもわかっていた。天草はそこから月山に対して異様な執着を持ち始める。そしてようやく念願叶って天草は月山との対局ができたのだ。月山も天草もお互い持ち時間を全て使い切るまでの長丁場となり、激戦の末、月山が勝利する。天草は将棋界の若手棋士の中でもトップクラス。その天草がアマチュアの棋士の月山に負けるというのは、ほとんど誰も予想していない状況だった。決勝トーナメントは大波乱の幕開けとなった。月山はその後、2回戦で桐生健司(きりゅう けんじ)に難なく勝利を収め、3回戦目・滝川学(たきがわ まなぶ)との対局に進む。滝川との対局に辛くも勝利した月山は、次の対戦までの間、普段の生活に戻った。

竜王戦で顔がだいぶ知れてきた月山は、次第に世の中が生きづらくなってきた。吸血鬼である自分の顔が広く知られるのはよくないことだ。しかし月山は自身が大切に思う和島将棋教室を存続させるために竜王戦を勝ち続けるしかなかった。そんな月山の耳に届いたのは、和島将棋教室存続の朗報だった。月山はその知らせを聞いて喜んだ。それと同時にこれ以上自分が竜王戦に望み続けてもいいのかという疑問を抱くようになる。吸血鬼である自分がこれ以上人の世界で目立つのは良くないと、月山は4回戦目の山岸(やまぎし)九段との戦いに負けることで竜王戦から退場しようと考えた。しかしその思いとは裏腹に月山はとてつもない集中力を発揮して山岸との対局に勝利し、ベスト4に進出してしまった。月山は和島教室存続云々の前に、自分が現代の棋士達と戦いたいと熱望していることを知った。迷いを捨てた月山は次なる相手、七島名人との対局に臨み、激闘の末勝利した。

決勝:新堂竜王との戦い

決勝まで上り詰めた月山と新堂竜王の戦いが始まる。新堂竜王はどんな局面でも表情を崩さないため、月山は新堂の感情を読み取ることができずに苦戦する。しかし表情から読み取るのではなく、盤面から全てを読み取ることを決意し、鬼気迫る勢いで新堂竜王を追い詰めていく。そして新堂竜王の鉄の仮面がついに剥がれ落ちた。新堂竜王は非常に負けず嫌いであり、どんな劣勢の局面でも表情を崩さないことで、相手を揺さぶって勝利を掴み取ってきた。しかし月山の今までの対局を見て月山にだけは負けたくない、勝ちたいという気持ちが大きくなり、本気の将棋を前に新堂竜王は激情を顕にするのだった。お互い持ち時間を使いきり、1分以内の攻防が続く。そして月山は新堂龍王に敗北した。

続く第2局も月山は新堂龍王に敗北する。第3局はついに月山が勝利した。しかし総合的な結果を見れば新堂龍王の勝ちであり、新堂龍王が龍王を防衛したという結果に終わった。竜王戦が終わった月山が和島将棋教室に現れることは二度となかった。

月山の竜王戦から3年後

月日が流れ、3年が経過した。その年の竜王戦が始まる。3年間、竜王のタイトルを防衛し続けた新堂竜王と、その弟子・天草が竜王のタイトルをかけて対局をする。この時の天草はタイトルを2つ所持していた。しかしこんなに熱い将棋が始まろうとしているのに、相変わらず誰も月山の居場所はわからなかった。

その頃、地球の反対側にあるブラジル南東部のとある場所では、月山が全世界対応になった「将棋ロイヤル」で誰かと将棋を指そうとしていた。

『バンオウ-盤王-』の登場人物・キャラクター

主人公

月山元(つきやま はじめ)/元四郎(げんしろう)

550年以上の時を生きる吸血鬼。300年ほど前、江戸時代に将棋を覚えてからのめり込む。以来、ずっと将棋を指し続けてきた。将棋の傑出した才能はないが、吸血鬼であるため指す時間が山ほどあり、その長い年月、様々な型を学んできた力こそが月山の力である。自分が何百年もかけて積んできた研鑽の頂きに、20年やそこらで辿り着く人間のプロ騎士を心からリスペクトするなど、将棋に対して真摯であり、そして純粋に将棋を愛している。現代で鈴木聡(すずき さとし)と名乗る吸血鬼・隆ノ介とは顔見知りで、鈴木からは昔の名前・元四郎(げんしろう)と呼ばれている。将棋ロイヤルでのアカウント名は「GEN」。

吸血鬼は目立たずに生きていかねばならい。年を取らないため、一箇所にとどまり続けるのは危険だが、和島将棋教室の雰囲気が良いため10年近く滞在している。そんな和島将棋教室を畳むという話をオーナーから聞き、教室存続のために立ち上がる。

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